著者
中村 達生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.323-328, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)

世の中の事象が指数関数的に変化し,様々な種類の情報が環境化しているデジタルトランスフォーメーション(DX)時代において,レジリエンス(復原力・弾性力)を高める情報解析のあり方を考察した。それは,データの不完全性に対する理解,知財やその他データの融合(データフュージョン),適切なメトリクス作成,インデックスの選択,判断力の醸成を実行することである。さらに,公平性・再現性を担保するには,俯瞰的・客観的なアプローチが必須要件である。これらを実現すれば,争点の少ない創造性豊かな社会の実現に近づける。
著者
田中 裕紀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.317-322, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)

ビジネス環境が急速に変化する中,富士通はDX企業になるとの強い決意のもと,「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていく」といったパーパスを掲げて変革に取り組んでいる。富士通の知財部門は,パーパス実現において重要となる,信頼,共感,挑戦といった循環を構成する各要素での貢献を目指して活動している。本稿では,まず,富士通の知財戦略の進化について触れ,パーパス実現に向けた知財部門の取り組みのうち,特に挑戦について,①新型コロナウイルスに関連する知財貢献,②図書館改革,③新しいサービスIP Insightの3つを紹介する。
著者
小林 英司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.303-309, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)

2020年5月,知的財産戦略本部において『知的財産推進計画2020~新型コロナ後の「ニュー・ノーマル」に向けた知財戦略~』が決定された。同計画には,データ利活用促進に向けたルール整備や,デジタル社会における標準の戦略的な活用に向けた取組,企業におけるDX事例の「経営デザインシート」を活用した分析等が盛り込まれた。近年では,機関投資家が知財情報を活用する動きや企業に対する知財情報の開示要請の動きが見られる。本稿では,これら知財を取り巻く環境変化を踏まえた政府の最新の取組の紹介と,知財関係者がこのような非連続的な変化に対応するためのDXの必要性と,その実現手法の解説を行う。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.7, pp.289, 2021-07-01 (Released:2021-07-01)

「Society 5.0」や「第四次産業革命」とともにDX(Digital Transformation)という言葉を目にし,耳にする機会が増えたと感じています。「DXで第四次産業革命を推し進める」,「DXでSociety 5.0を実現」と言われますが,多くの人にとって政府が掲げる中長期目標,大学の先生の近未来予測,一部先端企業の取り組みといった,どこか遠くの動きだったのではないでしょうか。ところが,COVID-19の感染拡大をうけて,テレワークだ,リモート会議だと言われ,それに伴ってDXという言葉が頻繁に使われるようになりました。図らずも世の中が一気に「DX化」したという印象を持ったのは,私たちパテントドキュメンテーション委員会メンバーだけではないはずです。DXには「デジタル技術やデジタルデータを活用して業務の効率化を目指す」という側面と,「データを活用した新しいソリューションの創造」という側面があると思います。では,DXで言う「データ」とは誰が生み出し,誰のもので,それはどこで管理され,利用に際してはどのような制限や留意点があるのか,ニューノーマルと言われる新しい社会で,自分(自社)をどうDX化していくのか,これらの問いに自分事(自社の事)として答えられる人は少ないと思います。この特集号は,意識レベルや置かれている状況にばらつきのある受け手に向け,知財活動におけるDXの観点から,「DX」をご紹介したいという思いで企画しました。はじめに日本イノベーション融合学会の岸和良氏に,初心者向けにDXについて解説していただきました。第二稿は,マスクドアナライズ氏に,知財DXの観点から豊富な例を挙げて,解説していただきました。第三稿は,内閣府の小林英司氏に,知財DXを政策面から「官」の取り組みとしてご紹介いただきました。続く第四稿,第五稿は,「民」の立場から,知財DXの先端企業と言われる,旭化成株式会社の佐川譲氏(共著者中村栄氏)と,富士通株式会社の田中裕紀氏に,知財DXのフロントランナーとして,取り組みの様子をご紹介いただきました。そして最後にVALUENEX株式会社の中村達生氏に,知財の解析の観点から知財DXの未来を展望していただきました。この特集号が,読者の皆様の新しい興味への動機付けや,DXへの取り組みをインスパイアするものとなればうれしく存じます。パテントドキュメンテーション委員会(江口佳人,大島優香,桐山 勉,佐藤秀顕,清水美都子)知財担当理事(中野 剛,山中とも子)
著者
岩谷 宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.145-150, 1995

複数の章〜節等から成る比較的長い論文等の執筆を支援する,アウトラインプロセッサと呼ばれるソフトウェアを紹介するとともに,それにほぼ相当する機能を,ワードプロセッサやエディタなどの一般的な執筆用ソフトの使い方の工夫により実現できる,と主張。また,執筆活動を支援する個人用データベースは,カード型など一定形式を遵守するものよりは,任意のメモなどから成る非定型な原文データベースと最新の情報検索テクニックを併用するほうが,自由度や柔軟性があってよい,と説く。
著者
加納 信吾
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.263-268, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

グラントメトリクスは,論文によるビブリオメトリクスや特許によるパテントメトリクスに対し,助成金プロジェクトを分析単位とするメトリクスの総称である。近年,国内の主な助成金提供機関の助成金データベースが整備され,網羅的な助成金検索が可能となったことから,グラント情報を利用した,先端医療分野における新規製品の実用化レベルの時系列なトレンドの変化を分析するアプローチを紹介する。また,トレンド変化と製品の薬事審査ガイドラインの整備のタイミングとの関係についても分析し,Regulatory Horizon Scanningにおける定量的なアプローチとしてのグラントメトリクスの利用可能性についても検討する。
著者
入江 満
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.258-262, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

バイオインフォマティクスやマテリアルズインフォマティクスといった「X-インフォマティクス」分野および計算化学や計算物理学といった「計算-X」分野が,人工知能(AI)技術の応用により発展してきた。また,AI技術の普及により,インフォマティクスにおける計算科学や,計算科学におけるインフォマティクスというように,分野の垣根を超えた取組みが増えてきた。本稿では,ともに「自然科学×情報科学」の枠組みの中にあるこれらの分野について概念を記述すると共に,関係性を整理する。また,それぞれの分野においてAI技術がどのように応用され,発展しているのか,従来の統計手法との比較も交えて議論する。
著者
阿久津 達也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.247-251, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

バイオインフォマティクスは生物学と情報学の学際領域であり,1990年代から2000年代前半にかけて実施されたヒトゲノム計画や,他のゲノム計画の進展に伴い大きく発展した。本稿ではバイオインフォマティクスにおける代表的な研究課題を紹介する。具体的には,配列アラインメント,配列検索,遺伝子発見,進化系統樹推定,ゲノムワイド関連解析,タンパク質立体構造予測,遺伝子発現データ解析,生体ネットワーク解析などについて簡潔に説明する。日本におけるバイオインフォマティクス研究の歴史や発展についても紹介するとともに,近年における新たな展開や今後の展望について議論する。
著者
北本 朝展
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.240-246, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

第四パラダイムとは,実験・観測科学,理論科学,計算科学に続く第四の科学研究の枠組みであるデータ中心科学を指す言葉である。大規模データを集約したデータベースの構築から始まり,データ駆動型分析を通して新しい知見を得るという科学研究の方法論が様々な分野に浸透し,X-インフォマティクスと呼ばれる新しい分野群を形成しつつある。本論文はX-インフォマティクスの特徴を概観するとともに,いくつかの分野における事例をもとに,その強みと弱みをまとめる。さらにX-インフォマティクスが引き起こす研究方法の変化についても,測定者と解析者の分離と信頼などの点から論じる。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.239, 2021-06-01 (Released:2021-06-01)

2021年6月号の特集は「X-インフォマティクス」です。情報科学と生物科学を融合した情報生物科学がバイオインフォマティクスという言葉で広く知られるようになってきましたが,「バイオ」以外の「X-インフォマティクス」という言葉もよく耳にするようになってきました。蓄積された膨大なデータに情報学的アプローチを適用することで新しい発見を狙うX-インフォマティクスは,自然科学分野を中心に広がりを見せています。本特集では,X-インフォマティクスの特徴や事例について5人の方々から解説をいただきました総論では国立情報学研究所の北本朝展氏に,科学研究のパラダイムシフトにおいて第四パラダイムという概念から,X-インフォマティクスについて,自然科学,人文学,社会科学等の各分野の状況と今後の進展について解説していただきました。京都大学の阿久津達也氏には,1990年に始まったヒトゲノム計画をきっかけにX-インフォマティクスの中で先行してきたバイオインフォマティクスについて,代表的な研究課題を紹介していただくとともに,国内における研究の歴史や発展について解説していただきました。物質・材料研究機構(NIMS)の出村雅彦氏には,データ駆動型の材料開発手法として最近注目されているマテリアルズ・インフォマティクスについて,NIMSで行っているデータ駆動研究とこれを支えるデータインフラについて解説していただきました。MI-6株式会社の入江満氏には,自然科学分野の代表的なX-インフォマティクスの比較及びX-インフォマティクスと計算科学や人工知能との関りについて解説していただきました。東京大学の加納信吾氏には,医療分野におけるテキスト情報によるデータを活用した分析事例として,助成金データベースを利用した先端医療技術のトレンド分析について解説していただきました。近年の第三次AIブームも相まって自然科学分野でのデータ駆動型研究が活発化しています。人文学や社会科学の分野ではデジタル-Xやコンピュテーショナル-Xとも呼ばれ,今後データを活用した研究の発展が期待されています。本特集が情報やデータを扱うインフォプロの業務の参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),野村紀匡,水野澄子,南山泰之)
著者
福嶋 聖淳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.17-22, 2020

<p>インターネット上の情報は今日の社会において欠かすことのできないものとなっており,2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)を後世に伝えていくためにも,それらの保存が課題の一つである。国立国会図書館はインターネット資料収集保存事業(WARP)により,東京2020大会に関連する様々なウェブサイトの保存に努めている。ウェブアーカイブに関する国際協力組織であるIIPCにおいても同様に,オリンピック・パラリンピックに関するウェブサイトの保存が図られている。近年は,ウェブアーカイブの研究利用も進められており,オリンピックやスポーツ関連のウェブアーカイブを利用した試みもなされている。</p>
著者
村田 龍太郎 海老澤 直美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.226-231, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

日本原子力研究開発機構(JAEA)では,JAEAの研究者が成果発表や特許申請の決裁手続きを電子的に行う際に入力した情報をベースとして,研究開発成果情報を管理し,機関リポジトリを通じて発信を行っている。このうち,掲載資料や発表会議,研究者といった情報は名寄せし,典拠コントロールを行うことで,効率的かつ効果的な研究開発成果情報の管理・発信を実現している。本稿では,このうち研究者に関する情報にスポットを当て,その典拠コントロールを中心に紹介する。さらに,researchmapを通じた研究者情報の発信や,今後の課題と展望について述べる。