著者
三瓶 徹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.2-7, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

教育現場には,電子教科書,デジタル教科書,電子ジャーナル,電子学術書と呼ばれている電子書籍が存在する。その活用方法・目的は多岐に亘るが,ファイル形式はEPUB3とPDFが主流である。初等・中等教育でのデジタル教科書の導入は,授業運営方法の大きな変革とともに始まったところであり,大学についても教育改革の一端として図書館の電子化が進められてはいるが,欧米に大きく遅れている。本稿ではファイル形式の面から現状を紹介するとともに,その抱えている問題点などを示す。著作権法改正をイノベイティブなサービス創造のチャンスと捉え,教育現場における電子教科書の利用とその方法の分析を通して,今後のあるべき姿を考察する。
著者
大橋 拓真
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)

今月号の特集は,「教育現場における電子書籍の活用」と題してお届けします。スマートフォンの普及を始めとする技術進歩の恩恵により,電子書籍は今まで以上に身近で活用されるものとなりつつあります。また,現在もなお事態が終息していない新型コロナウィルスへの対策が求められている状況下では,遠隔地からでもコンテンツを閲覧できることは大きなメリットとなります。そして,文字だけでなく画像や音声などの情報も扱うことのできる電子書籍の特長は,研究や教育活動を進めるうえでも役立つことかと思います。本特集においては,遠隔地からの閲覧のみならず様々な可能性を持つ電子書籍の,教育現場における活用にスポットを当て,その特長や実際の現場での使用例などを紹介します。また,電子書籍を閲覧するために必要なビューワーにも着目し,その機能や活用についてもご紹介します。はじめに三瓶徹氏(日本電子出版協会)には,電子書籍そのもののファイル形式の面から現状や問題点,今後についてご説明いただきました。矢口勝彦氏(図書館流通センター)には電子書籍プラットフォームの提供者側からの視点として,TRCの電子図書館を例として概要やメリット,導入事例などをご紹介いただきました。南雲秀雄氏(新潟青陵大学)には電子書籍を閲覧する際に使用するビューアーについて,ビューアーの持つ機能や授業においての活用事例についてご紹介いただきました。田中雅章氏(ユマニテク短期大学)には電子書籍配信サービスの導入において,運用や注意点,学習への活用といった部分についてご説明いただきました。マクヴェイ山田久仁子氏(ハーバード・イェンチン図書館)には,海外の事例として,現在の環境下におけるオンライン教育での電子資料活用の事例を,職員としての観点も踏まえてご紹介いただきました。本特集では電子書籍が持つ様々な機能やメリットをご紹介しました。読者の皆さまが電子書籍を活用するための,そして新たな活用方法を模索するためのご参考となれば幸いです。(会誌編集担当委員:大橋拓真(主査),青野正太,今満亨崇,南雲修司,水野澄子,南山泰之)
著者
和田 玲子 中村 栄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.366-372, 2020

<p>経営層に戦略的IP情報を資するIPランドスケープを遂行する知財アナリストには,調査・解析ツールの機能を使いこなすデータ解析能力と,経営層にインパクトを与える事業課題を浮き彫りにし,その解決手段の候補を導き出す解析シナリオ構築力が特に求められる。AI時代は,データ解析がAIによってレベルアップし,それを用いる解析シナリオに広がりや深みを出せる,アナリストにとって追い風の時代である。本稿では,旭化成における戦略的な知財情報の活動の歴史を振り返りながら,最近のIPランドスケープの活動を紹介し,AI時代のアナリストに求められる解析シナリオ構築力とそのレベルアップについて述べる。</p>
著者
蒲生 英博
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.355-359, 2015

大学図書館が,学内で発行している紀要のオープンアクセス化を行い,研究情報の発信を支援することは,大学図書館による研究支援として,重要な活動と考えられている。本稿では,筆者が編集を担当しているNagoya Journa1 of Medical Scienceを例にして,2010年にオープンアクセス化を行い,2013年に最初のインパクトファクターを取得するまでの経緯を述べる。またその後,XML化を行いPMCに登録することで,医学系の重要なデータベースであるPubMedにフルテキストがリンクされて利用できるようになったことと,Nagoya Journal of Medical Scienceの現状と課題を述べる。
著者
福田 徹哉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.218-222, 2015

農文協は「農文協図書館」(1982年〜)開館後,農業の専門書店「農業書センター」(1994年〜)を千代田区大手町の旧JAビル内に開店させ(現在は神田神保町にて営業),その後「ルーラル電子図書館」(1996年〜),通販専門の書店「田舎の本屋さん」(1997年〜)を開設スタートさせてきた。現在は二つの専門図書館と二つの専門書店を農と食の総合情報拠点として位置付け,利用者,読者に連携して応えていく活動を展開している。「農家を減らさない」「農家の元気を育てる」ことこそ「地方創生」の根源に据えるべきであり「地域活性化」はこのことを抜きにしては考えられない。農文協図書館には地域と農家の元気を育てる実践的な情報がたくさんある専門図書館だ。農村を中心とした地域活性化につながる実践的なテーマに応えるレファレンスと蔵書の充実が農文協図書館の役割といえる。
著者
塩谷 綱正 神谷 昌男 髙梨 睦 堀池 彰夫 橋本 道枝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.595-599, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

自治体は,高齢化をはじめとした複雑な社会課題に向き合うことが求められている。従来,社会課題の抽出手法として集団討議やデータ解析等が存在しているが,特定の自治体の社会課題を客観的,かつ,合理性高く成立させた手法はない。そこで本研究では,高齢化を題材に,客観性を保ちながら,その地域における新規な社会課題を抽出する手法を検討した。市議会議事録を情報源として採用し,ベンチマーク都市と調査対象都市の比較を行うという本研究で検討した手法により,各自治体にとって,高齢化に関する新規な社会課題を客観性高く抽出できることがわかった。本研究で検討した手法は,自治体での活用が期待される。
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.567, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)

いつもなら“第○回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFOPRO)にご参加,ご発表頂いたみなさまありがとうございました。”から始まることが多い実行委員長の振り返り記事は,今年において,特殊にならざるを得ない状況となりました。COVID-19によって,我々は未知のウィルスに対応するという試練を与えられ,INFOPRO運営を直撃しました。学協会におけるもっとも重要な活動の一つに,年次大会を開いて会員が参集し,情報交流を通じて知己を得ることがあり,INFOSTAの看板シンポジウムであるINFOPROがその役割を果たしてきました。その開催が危ぶまれたというのは,学協会の存続にかかわることでもありました。委員長としては,他の学協会大会の様子や判断を観察しながら,委員と共に様々なオプションを検討し,判断材料を整えていきました。個人的な気持ちとしては,1990年代より電子ジャーナル化という,今でいうデジタルトランスフォーメーションの端緒に携わり,現在オープンサイエンスという科学の変容を志向する調査研究と実践に邁進して来ましたので,今回はむしろデジタルトランスフォーメーションの千載一遇のチャンスであり,何も挑戦せずに単に中止や縮小するという選択はあり得ませんでした。その一方で,INFOSTAのリソースは限られており,また,スケジュールの都合もありましたので,理想的あるいは独善的なオンライン開催を行うわけにもいきませんでした。委員長として現実的な落としどころを見つける必要があり,慎重に検討を重ねました。その結果として,INFOPRO2020自体は誌上開催としつつ,Plusとして希望者によるオンライン発表の機会を作り,電子ポスターやプロダクトレビューも加えた紙とオンラインのハイブリッドと開催となりました。運用においても,zoomの導入を中心として手探りながらも段取りつけて当日を迎え,今後のオンライン開催の目途をつけ,また,課題を見つけることができました。この経験と得られた知見はINFOSTAにとって大きな資産となったのではないでしょうか。より詳しい,開催までの経緯や当日の裏話等については,本号の座談会記事をご覧いただきたいと思いますが,何より嬉しかったのは,致命的なトラブルは全くなく,また,他のイベントで多くで経験したような遅延や座長や発表者の戸惑いもほとんどなかったことです。最後の最後に委員長の閉会の挨拶で,マイクトラブルが起きたのはご愛敬ですが,本当に最後に唯一起きたトラブルだった思います。これも一重に山﨑会長を筆頭とするINFOSTA三役,理事のご英断をはじめとする,実行委員,そして事務局のみなさまのご尽力とチームワークがあってのものでした。特に川越副委員長におかれては,特別講演の調整やリハーサルの指揮を含め様々にご尽力いただきました。この場を借りて関係の皆様に厚く御礼申し上げます。今回のこの経験,知見を生かして,来年のINFOPRO2021に向けてインフォプロの新たな出発をより確実かつ魅力的なものにできるよう,みなさまのご賛同とご協力を改めてお願いする次第です。また,今回のINFOPROはINFOSTAの歴史の特異点であり,また大きな転換点となる可能性が非常に高いと思われます。そこで,このインシデントとその対応について様々に記録して後世に残すことが重要と考え,通常の特別講演や一般発表の聴講記事に加えて,電子ポスターや運営の裏側を語る座談会に関するものやアンケート結果など,会誌編集委員会との連携によりさまざまな記事を企画しました。それらの記事も是非ご覧いただき,奇譚のないご意見や今後に向けた示唆を賜ればと思います。COVID-19は学協会の変容を確実に進め,また,その変容はまだ緒に就いたばかりともいえます。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。(INFOPRO2020 実行委員会委員長 林 和弘)INFOPRO2020 実行委員会 委員長:林 和弘(科学技術・学術政策研究所),副委員長:川越康司(ジー・サーチ),委員:矢口 学(科学技術振興機構),小山信弥(関東学院大学),鷹野芳樹(クラリベイト),廣田拓也(クラリベイトジャパン),山中とも子(㈱ファンケル),担当理事(正):増田 豊,担当理事(副):佐藤京子,棚橋佳子,吉野敬子,谷川 淳
著者
Uyehara Cecil H 藤巻 美恵子 藤本 帝子 三浦 圭子 須永 雅子 山田 理子 山下 智久
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.85-92, 1990-02-01

ある一連の行動の方向や不活性を変えたり,行動の意識やその行動を強調しようとする意識を変えるには,大変な努力を要することはいうまでもないことである。過去10年間さまざまなやり方で日本の科学技術の脅威を十分に意識し,警戒する動きがアメリカ国内で勢いを得てきた。これらの活動のいくつかはおそらくアメリカの国外でよく知られているであろう。このペーパーは,この脅威に対する対応としてアメリカ国内で起こった活動を広範囲に記述し,評価するものである。これらの活動については以下の項目を立てて論じる:意識喚起活動,連邦政府の立法活動と国際協定,教育活動,日本の科学技術情報の流通,組織化,ライブラリーコレクション,日本の科学技術の評価,技術開発,日本の科学技術情報の利用調査,おわりに-