著者
長島 剛
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.445-451, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

ベッドタウンを取り巻く状況および地域金融機関の現状を踏まえた上で,地域金融機関の創業支援の責任者だった筆者が,20年間の歩みを紐解きながら,地域金融機関の創業支援について論じる。政府系金融機関や自治体との連携によるエコシステムをつくり,志のある市民を創業の中間支援機関として応援していく。そして,自治体の広域連携を促していく。都心へのアクセスの良さもあり,地方とは一線を画すような生きがいと豊かさを提供する創業が増える。これらの流れをしっかりと捉えて支援のネットワークを維持していくことが,ベッドタウンの創業支援として重要である。
著者
室田 浩司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.439-444, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

日本の大学による起業支援制度は,近年急速に整備されている。中でも,文部科学省と主要国立4大学による「官民イノベーションプログラム」は,大学における起業支援の中核事業へと成長し,特に,「POCファンド事業」と「大学ベンチャー投資事業」の果たす役割は大きい。一方,運営組織のデザインやガバナンス手法が,これら2つの事業の成否に大きな影響を及ぼす。また,POCを的確にデザインできる人材がこれらの事業に参画することが望まれる。さらに,良質な大学発ベンチャーを連続的に創出する環境を発展させ,日本の産業力向上に貢献していくには,事業開発経験を有する博士号取得者の活躍が極めて重要である。
著者
市川 祐子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.434-438, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

日本の公立図書館におけるビジネス支援サービスは,導入から約20年が経過し,公立図書館の約35%が取り組む一般的なサービスとなった。本稿では,市立図書館におけるビジネス支援サービスの一例として,安城市図書情報館の取り組みを紹介する。安城市図書情報館は,図書館資料および「場」の提供と,館内に開設されたビジネス支援機関「ABC(安城ビジネスコンシェルジュ)」との連携で,ビジネス支援サービスを行っている。専門機関である「ABC」と,豊富な情報を備え誰でも自由に利用できる図書情報館との連携は,相乗効果を生んでいる。専門機関への案内を含めた適切な情報提供が,公立図書館におけるビジネス支援サービスの在り方だと考える。
著者
安田 武彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.422-427, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

既に存在する企業の抱える問題を解決するこれまでの中小企業政策は,1990年代,製造業の開廃業率の逆転が観察される中,起業支援を視野に含めるようになった。起業支援の対象は当初,ベンチャービジネスであったが,1999年の中小企業基本法改正を機に「まちの起業家」へと拡大した。創業融資を中心に幅広い政策が展開されたが,起業希望者の減少により開業率上昇には至らなかった。現在では無関心者の起業への関心換起のための政策が採用されているが,他方,副業起業等,従来に比べ広い範囲の起業に政策の射程は広がりつつある。副業起業等は,イノベーションをもたらすものとは言い難いが,働き方を選ぶ社会を形成する一助となることが期待される。
著者
青野 正太
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.421, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

今月号は,「起業支援における情報提供」と題してお届けします。起業の促進は雇用創出や地域経済活性化という点で効果があるとされ,重要であると考えられています。しかし,世界各国の起業活動を比較したGlobal Entrepreneurship Monitor(GEM)調査によれば,日本の起業活動は先進国の中でも低水準であると言われています1)。そうした状況を改善すべく,国・自治体や商工会議所といった様々な団体により,起業の支援が行われています。特に,近年の起業支援の特徴は情報提供をはじめとするソフト支援にあると言われています2)。そこで本特集では,起業支援における情報提供をテーマとして扱うことにしました。起業支援の現状や,起業希望者が求めている支援を明らかにした上で,起業支援において情報提供を担っている機関が,各々の強みを生かしてどのような支援を行っているかをお伝えします。まず,総論として,東洋大学経済学部の安田武彦様には,日本における起業支援策の展開と今後の動向についてご解説いただきました。現代に至るまで日本はどのように起業支援策を展開してきたかを時系列で,生じた課題等を踏まえながら述べていただいています。次に,神戸大学大学院経営学研究科の内田浩史様,帝塚山大学経済経営学部の郭チャリ様には,起業者を対象とするアンケート調査から得られた5つの起業者のサンプルを比較分析し得られた起業者の属性や傾向について,ご解説いただきました。特に,起業において大きな課題となりうる資金調達について,述べていただいています。さらに,起業支援において情報提供を担っている機関として,図書館,大学,金融機関の3機関に事例をご解説いただいています。安城市アンフォーレ課の市川祐子様には,公共図書館における起業支援の事例として,安城市図書情報館におけるビジネス支援サービスについてご紹介いただきました。記事中では,館内に併設されている産業支援センターである「ABC(安城ビジネスコンシェルジュ)」との連携についてもご解説いただいています。京都大学産官学連携本部の室田浩司様には,大学における起業支援の事例として,文部科学省と主要国立4大学による「官民イノベーションプログラム」についてご紹介いただきました。特に,基礎研究を事業化するための資金助成制度である「POCファンド事業」と,大学発ベンチャーに対して株式投資を行う「国立4大学ベンチャー投資事業」の取組を中心にご解説いただいています。多摩大学経営情報学部の長島剛様には,地域金融機関における起業支援の事例として,多摩信用金庫における起業支援をご紹介いただきました。当該金融機関の所在する多摩地域や,地域金融機関を取り巻く状況を踏まえ,取組内容を詳しくご解説いただいています。読者の皆様におかれましては,起業支援における現状,課題を把握していただくとともに,自らの組織の強みをいかして支援を行っている事例を学んでいただければと思います。本特集記事を通して,ご所属の組織においてどのように起業支援に係る情報提供を行うのか,考えるきっかけとしていただければ幸いです。(会誌編集担当委員:青野正太(主査),海老澤直美,炭山宜也,水野澄子)1) 岡田悟.我が国における起業活動の現状と政策対応.レファレンス.2013,no.744,p.29-51.2) 金恵成.日本の起業の特性と支援課題.大阪観光大学紀要.2013,no.13,p.37-44.
著者
笹原 和俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.309-314, 2020

<p>多様な情報と人々をつなぐはずのソーシャルメディアが,社会的分断や情報のタコツボ化を助長しているという問題が顕在化している。特に,エコーチェンバーやフィルターバブルといった閉じた情報環境は,自分の好みに合致した情報のみが来やすく,自分とは異なる観点からの情報が来にくいため,フェイク(偽)ニュースやヘイト(憎悪)の温床となる危険性を孕んでいる。本稿では,計算社会科学の観点から,偽ニュースが拡散する仕組みについて解説し,ウェブの負の側面について論じる。また,今後のウェブの技術が克服すべき問題について議論する。</p>
著者
嘉味田 朝功
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.436-442, 1999
参考文献数
52

宇宙時代を迎え, 知識パワーが資本パワーと結合して, 地球全域を揺さぶっている。この威力を人間的統御の下におくためのメタレベルの知識が必要と考える。西洋経験科学の知識ベース (形式知) と東洋生命哲学の知恵ベース (暗黙知) を交叉させ、動態秩序の構成原理を探った。「二にして一なるもの」と[産出プロセスのネットワーク」という理念であった。この視座は近代のものの見方「主客分離」からの訣別を意味する。インターネットという超知識システムの実現がこの原理の具体例である。知識探究者たちが自発的に各自の時間と技能を持ち寄り, デジタル思考とアナログ思考を交叉させながら, 中央制御装置を持たない巨大な新システムを創出したのである。
著者
李 東真
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.385, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)

今月号の特集は,「海外学術出版社の研究支援サービスの変化」と題してお届けします。約20年の間,学術コミュニケーションは大きな変革を遂げました。近年でも,研究成果のドラスティックなオープンアクセス(以下,OA)化を求めるPlan Sの発表とcOAlition Sの発足は,学術界,出版業界に大きな衝撃を与えました。また,COVID-19パンデミックにより,研究成果(論文,研究データ,ソースコードなど)のオープン化,迅速な情報共有を目的としたプレプリントサービス,厳密かつ透明性の高い査読(ピアレビュー)などへの関心が以前にも増して高まったといえるでしょう。本特集では,学術コミュニケーションが絶え間なく発展する中で,学術出版社がそれらの動向をどのように捉え事業を展開してきたのかあるいは展開していくのか,当事者の視点からご解説いただきます。総論として,増田豊氏(ユサコ株式会社)に,国際STM出版社協会の活動から学術出版社の近年の動向をご説明いただきます。各論では,大手出版社の方々にOA,アナリティクス事業の拡大,新たな研究出版ソリューション,プレプリントサービスの動向についてご解説いただきます。Liz Ferguson氏およびBen Townsend氏(Wiley社)には,同社が新規OAジャーナルの創刊や既存ジャーナルのフルOA転換などを通じてOA出版へのニーズの高まりに対応してきたことをご紹介いただきつつ,コンソーシアムとの契約を事例に転換契約(Transformative Agreement)の仕組みやその影響力をご説明いただきます。高橋昭治氏(Elsevier社)には,同社がアナリティクス事業に注力することになったきっかけをご紹介いただいた後,研究力分析ツールを含めた同社の製品・技術面での進展,研究評価者などへの利用者の拡大,今後期待される研究支援のDX(デジタルトランスフォーメーション)への貢献の展望についてご解説いただきます。Taylor & Francis社傘下F1000 Research社のLiz Allen氏には,学術出版における最近の変化の要因とその影響,今後の動向をご考察いただいた後,研究・出版などに関わるステークホルダーの連携によって生まれる研究エコシステムおよびそのインパクトを最大化するF1000 Research社の研究出版ソリューションについてご説明いただきます。最後に,野村紀匡氏(Digital Science社)に,文献調査および動向分析によって得られたプレプリントサービスのビジネスモデル,プレプリント投稿数の推移,プレプリントサービス運営における課題などを示していただきます。読者のみなさまが,これからの学術コミュニケーションを展望するうえで,ご参考となれば幸いです。(会誌編集担当委員:李東真(主査),南雲修司,野村紀匡,光森奈美子)
著者
高橋 菜奈子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.376-381, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

小倉百人一首LODは,かるたゲームの情報と和歌の情報を整理し,Linked Open Dataにまとめたデータセットである。本稿ではデータのモデルと語彙の設計を解説する。全国各地の図書館に所蔵され,オープンデータとして公開されている古典籍の画像データをLODでつなぐことにより,オープンデータ画像の活用事例を示す狙いがある。画像データは,IIIFを使って,正確に領域を特定してリンクし,画像の比較が容易にできるようにした。翻訳本も対象に追加し,多言語に対応したモデル設計を行った。文化情報資源を組織化し,精緻にLOD化することで,人文学研究や文化的な利用にデータを活用できることを示した。
著者
福田 一史
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.366-371, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

ビデオゲームに関わる教育や研究活動が国際的に活発化しており,ビデオゲームの知的情報資源としての側面に注目が集まりつつある。膨大に頒布されるビデオゲーム群を保存し,資料体として共同で管理し運用するためには,目録が必要不可欠である。本稿ではビデオゲームの目録作成とりわけそのデータ構造について着目し,先行研究を概観した上で,立命館大学ゲーム研究センターのゲーム保存の事例を通じて,その記述的特性を踏まえた機能要件の抽出とデータモデルの策定ならびに目録作成や,オンライン目録などによるデータ公開の手法を論じる。
著者
中井 孝幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.228-234, 2013-06-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1

公共図書館と大学図書館では,利用者層や利用内容,提供しているサービスも異なるが,アンケート調査や行動観察調査から,利用者が図書館という「場」に何を求めて利用しているのかを整理し,図書館計画への示唆を得ることを目的としている。公共図書館では,図書の貸出が主な利用ではあるが,館内での滞在的な利用も多くなっている。少数ではあるが人ごみに紛れることで匿名性を確保して,落ち着きを求めている利用者も見受けられた。大学図書館では,個人で集中して勉強する場としての利用が多いが,会話を伴う学習形態も増えている。静かな場所とにぎやかな場所,アナログとデジタル資料など,利用者は図書館サービスを適切に使い分けている。
著者
山田 祥恵
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.684-688, 1998
参考文献数
1

弊社は「メッセージを伝えたい人とメッセージを受け取る人を『つなげて』, メッセージを『伝える』」コミュニケーションのコンサルティングを行っている。コミュニケーションの媒体として企業のホームページを制作する機会が増えてきた。1996年に「ウィメンズ・ゲートウェイ」という"世界中で活躍するプロ意識のある女性のためのホームページ"を開設し, 情報提供やオンライン上での交流の場の提供も行っている。その他, 働く女性のネットワーク「NAPW」の運営や国際女性ビジネス会議の開催など, 女性を対象とした活動も多い。それらの活動を通して, 「リンクする」「リンクを作る」ということについて日頃感じていること, 考えていることを述べたい。
著者
末廣 恒夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.457-460, 2016

<p>神奈川県資料室研究会の活動の中心は,8月を除く毎月開催している月例会である。月例会では,講演会,見学会,グループディスカッション等を行っている。理事会が月例会の企画・運営を行っており,年間計画を立てて総会に提案している。講演会では,電子ジャーナル・学術雑誌関連,実務関連,著作権関連などのテーマを中心に取り上げている。毎回詳細な記録を作成し,「神資研ニュース」と年報「神資研」に掲載している。小規模やワンパーソンで運営しているところが多い会員に対して,「泥臭さ」と「半歩先を行く」というモットーの元に月例会を開催しているところに,神資研が月例会を開催する意義がある。</p>