著者
宮下 哲 馬場 寿夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.598-603, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

ナノテクノロジー・材料技術とは,現在のIoT/AI時代やビッグデータ時代の中で,高感度で信頼性の高いセンシング技術や高度な情報処理技術を支え,新たな技術や産業を牽引するデバイスや材料を実現する技術領域であると同時に,持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために技術ベースで支えるものである。本稿では,ナノテクノロジー・材料分野の俯瞰として,主要国におけるナノテクノロジー・材料科学技術政策・国家戦略,社会・産業の変遷とナノテクノロジーの進化,研究開発のトレンド・潮流,俯瞰図,ナノテクノロジー・材料技術に対する6つのニーズと10のグランドチャレンジについて説明する。
著者
青木 孝
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.593-597, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

システム・情報科学技術ユニットは,科学技術振興機構研究開発戦略センターで,情報処理関連技術(IT)全般を広く見ているユニットである。本稿では,2019年3月に発行した俯瞰報告書の作成プロセスについて述べる。社会の要請やビジョンと,技術のトレンドを元にITの研究開発領域を分類し,人工知能・ビッグデータ,ロボティクス,社会システム科学,コンピューティングアーキテクチャの4つの区分を俯瞰し,20の推進すべき重点テーマを抽出した。俯瞰報告書の執筆はシステム・情報科学技術ユニットのメンバーが行うが,外部有識者にインプットを依頼し,議論を繰り返すなどして,納得性の高いものを目指している。
著者
中村 亮二
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.587-592, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

環境・エネルギー分野は人間社会の基盤として社会の発展を支えている分野である。気候変動をはじめとする様々な地球規模課題が深刻さを増す一方,持続可能な開発目標(SDGs)のような国際社会における取組みが本格化している。また各国・地域ごとのエネルギー安全保障や循環型経済の実現に向けた取組みも様々に見られる。本稿では,こうした社会経済情勢の中での同分野の研究開発動向の俯瞰について紹介する。具体的には俯瞰報告書の作成プロセスを紹介するとともに,26の研究開発領域の動向の概観や国内状況,また今後の展望・方向性としての「ZACSS(ザックス)」について紹介する。
著者
冨田 英美 原田 裕明
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.581-586, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

JST研究開発戦略センター(CRDS)は,主要各国(日,米,英,独,仏,中,韓)およびEUの研究開発の動向を「研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略」としてまとめている。日本の研究開発にかかわる政策は,科学技術基本法のもと,科学技術基本計画,統合イノベーション戦略に沿って推進されている。公的な競争的研究資金の大型化,産学官連携や地域振興と連携した人材育成等が最近の特徴である。また,海外では卓越した科学技術を生み出し,いち早くイノベーションにつなげることを目標に,各国それぞれの戦略で重要技術分野(人工知能,量子科学)の研究開発を推進している。本稿では,日本,米国,EU,中国の動向を紹介する。
著者
根上 純子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.576-580, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

JST研究開発戦略センター(CRDS)は,国の科学技術イノベーション政策に関する調査,分析,提案を中立的な立場に立って行う組織として,科学技術振興とイノベーション創出の先導役となるシンクタンクを目指し,国内外の社会や科学技術イノベーション,および関連政策の動向を俯瞰・分析し,それに基づいて政策や研究開発戦略の提言を行い,その実現に向けて取り組んでいる。「研究開発の俯瞰報告書」は,科学技術イノベーションや関連政策の動向を俯瞰・分析した結果を,CRDS独自の視点でまとめたものである。
著者
小野寺 夏生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.575, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究開発戦略センター(CRDS)は,国の科学技術イノベーション政策に関する調査,分析,提案を中立的な立場に立って行う組織です。その中核的業務は,国内外の科学技術動向,その社会の動きとの関係,それらに関する政策の動向などを調査・分析し,その結果を報告書や提言の形に取りまとめて,行政,産業,研究等の世界での活用の推進を図ることです。その基盤となる国内外動向の調査・分析において,CRDSでは,調査対象の科学技術分野における研究開発の動きだけでなく,それを取り巻く環境や背景,社会の動向などを含めた広い視野で,すなわち「俯瞰的に」捉えることを重視しておられます。調査・分析結果をまとめた報告書の名も「研究開発の俯瞰報告書」となっています。CRDSは,国の科学技術振興とイノベーション創出を先導するシンクタンクを目指しておられるので,その調査結果の活用先として第一に念頭にあるのは,科学技術イノベーション政策の立案・実施に関わる府省や政府関連機関ですが,上に述べたとおり,産業界や研究界での活用推進にも努めておられます。当然,それらの世界で情報活動の推進に携わっておられるインフォプロの皆様にも関係のあることですので,第16回情報プロフェッショナルシンポジウム(INFPRO2019)の実行委員会は特別企画「科学技術イノベーションの潮流~研究開発の俯瞰から見えるもの~」を設け,「研究開発の俯瞰報告書(2019年)」についてCRDSの6名の方にご発表いただきました。そのときの参加者の関心が高く質疑も活溌でしたので,より多くの会員の皆様に読んでいただきたいと考え,CRDSの発表者に執筆をお願いしてこの小特集を組むことができました。この小特集は,全体説明(根上純子氏),主要国の研究開発戦略(冨田英美氏,原田裕明氏),環境・エネルギー分野の俯瞰(中村亮二氏),システム・情報科学技術分野の俯瞰(青木孝氏),ナノテクノロジー・材料分野の俯瞰(宮下哲氏,馬場寿夫氏),ライフサイエンス・臨床医学分野の俯瞰(桑原明日香氏,山原恵子氏)の6編からなります。これはINFOPRO2019での特別企画の構成と同様で,そのときの発表内容に基づいていますが,そこで十分説明されなかったことも含まれています。この小特集を読まれることにより,日本や世界における研究開発の大きな動向を掴むことができるだけでなく,情報の調査・分析・取りまとめ・報知の方法を考える上でも参考になると思います。(INFOSTA会誌経営委員会委員長 小野寺夏生)
著者
林 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.549, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)

「インフォプロの未来を考える ~INFOPRO 新たな出発!~」のテーマで開催された第16回情報プロフェショナルシンポジウム(INFOPRO2019)にお越しいただき,あるいは,ご発表,ご登壇頂いたみなさま,誠にありがとうございました。タイトなスケジュールの中,スポンサーとなっていただいた企業様にも厚く御礼申し上げます。INFOPROは開催時期を秋から夏に移すために,一日開催となった昨年の移行期間を経て,2年ぶりの2日開催となりました。移行のためとはいえ,一旦縮小したイベントの規模を戻すことができるのだろうかという不安もありましたが,結果として一昨年と変わらず多くのご参加と発表をいただいたことで文字通り安堵いたしました。とはいえ,新米委員長にとっては,勝手がわからない中の運営であり,文字通り“番頭さん”として動いてくれた川越副委員長を始めとする実行委員はもちろんのこと,会長を筆頭とする三役や担当理事のみなさま,さらには,JSTさん他,関係のみなさまの全面的なバックアップにより無事開催することができました。この場を借りて御礼申し上げます。さて,今回のテーマの副題は“INFOPRO新たな出発!”ということで,いくつかのチャレンジをしてみました。中でも一番大きなものは,プロダクトレビューのプレゼンテーションに投票を取り入れたことです。これは製品や企業の優劣をつけるのではなく,そのプレゼンをしている方を褒めるのはどうか,ということで試行的に行ってみたものです。その目的や意義自体にも賛成・反対のご意見をいただいた中,ある程度のリスクを覚悟で行ってみると,投票のためにプロダクトレビューの枠の間,最後まで参加者が留まってくださり,また,後半,製品の特徴や違いをはっきりさせるディスカッションができたなど,これまでのプロダクトレビューでは実現できなかった濃度の高い場が提供できたように思います。一方,プレゼンの評価にどのくらいの意味があったかは,みなさんにご意見を伺ってみたいところです。また,特別講演の代わりにJST CRDS(研究開発戦略センター)の全面的なご協力のもと,科学技術俯瞰報告書の最新の内容を網羅的にご紹介いただきました。これも,企業と繋がりたいCRDSさんと,意外に俯瞰報告書自体を認識していなかったインフォプロという具合で,一見近いようで実はそれほど交流がなかったことがわかり,今後に繋がりそうな話となりました。(そして3iの裏番組だったために,参加ができなかった方々にはお詫び申し上げます。)他にも,OUGのコマを設けてガイダンスを行ったり,ポスターをよりオープンにしてミニ発表の時間を設けたりもしました。ポスターと展示会場が賑わっているのは,やっぱりいいですね。懇親会は昨年の低コスト手弁当スタイルを踏襲し,食事や飲み物の質よりもコミュニケーション促進を重視することで,狙い通り,コストパフォーマンス良く活発な交流を促すことができたと思います。そして,最近はワークショップ形式で行うトーク&トークでは,副題に正面から向き合い,インフォプロの将来像を探るべく,清水さん(IMIC),森長さん(NEC),黒沢さん(医中誌)さんをロールモデルに議論を行いました。各参加者が自分ごととして,その立ち位置を確認しながら将来を模索する姿を見て,このような対話の場を提供するのがINFOPROの大事な役目だと改めて確認した次第です。このようにして,INFOPRO2019は,リニューアル初回としては致命的なトラブルもなく,成功裏に終わったと言えると思います。この経験,知見を生かして,来年のINFOPRO2020に向けて,実行委員会一同ほぼ同じメンバーで臨みます。インフォプロの新たな出発をより確実かつ魅力的なものにできるようみなさまのご賛同とご協力を改めてお願いする次第です。まずは,INFOPRO2019の記事をご覧いただき,奇譚のないご意見や今後に向けた示唆を賜ればと思います。引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。(INFOPRO2019 実行委員会委員長 林 和弘)INFOPRO2019 実行委員会 委員長:林 和弘(科学技術・学術政策研究所),副委員長:川越康司(㈱富士通総研),委員:高杉秀隆,矢口 学(科学技術振興機構),小山信弥(関東学院大学),矢田俊文(クラリベイト・アナリティクス),山中とも子(㈱ファンケル),担当理事:吉野敬子(日本医療研究開発機構),副担当理事:増田 豊(ユサコ㈱)
著者
長澤 雅男
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.204-210, 1994-04-01 (Released:2017-05-26)

一次情報の記録物としての一次資料の意義を規定し,その特性と対比して,二次資料の特性を明らかにしたうえで,事実解説的な二次資料と案内指示的な二次資料とに大別して,その種類について説明した。次いで,二次資料を収録対象とするレファレンス資料の解題書誌,主題別リスト,書誌の書誌などの三次資料がその探索トゥールとして利用できることを述べ,それらの三次資料の具体例として,日本語,英語の主要なタイトルを選び,内容解説を加えながら紹介した。合わせて,電子メディアとしての二次資料の探索トゥールとして,幾つかのディレクトリにも言及した。
著者
棚橋 佳子 辻 幸子 野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.535-541, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

日本の学協会ジャーナル出版について,現状分析を行った結果を紹介する。ジャーナルインパクトファクターを取得している日本のジャーナル数は,中国・韓国より多い。トップジャーナルに限ると中国がより多く,また韓国も近年存在感を増している。日本のトップジャーナル出版では比較的小規模の学協会が健闘している。またそのトップジャーナルの大半を,大手出版社が出版している。日本のジャーナルの課題は世界に向けての発信力であり,編集面・技術面で改善が必要なジャーナルもある。学協会の会員数減少,商業誌との競争等厳しい環境において注目度を上げているジャーナルも存在し,その国際的なプレゼンス向上への取組は参考になる。
著者
岸 真由美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.504-509, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)

アジア経済研究所は2016年度に研究成果発信の新たな方針を策定し,外部出版社を通じた出版以外の研究成果については有料出版物を廃止し,原則オープンアクセスで社会に提供することとした。この方針にもとづき,2018年度からは和文の定期刊行物5誌をJ-STAGEで電子出版している。本稿では,アジア経済研究所がJ-STAGEを採用した経緯を報告するとともに,J-STAGEの利点について確認したい。方針策定以前にすでに海外商業出版社との提携を開始した英文ジャーナルについては,当時検討したポイントを紹介する。さらに,研究成果の発信媒体として,冊子体を廃止し電子出版のみとする場合の課題についても触れたい。