著者
中橋 雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.406-411, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

本論文は,ソーシャルメディアを利用する際に求められる「読解力」の特徴とその教育方法について考察することを目的としたものである。具体的には,メディア・リテラシーに関する研究の蓄積,ソーシャルメディアの特性に関する議論,教材開発と教育実践の事例を概観して検討した。その結果,「多様な価値観をもつ人と人との相互作用で生成されていること」や「目にする情報の範囲を自分で限定していること」などを踏まえて読み解くことが,ソーシャルメディアの「読解力」として必要になることを指摘した。また,そうした能力を育む「探究と対話を通じた教育方法」の可能性を確認することができた。
著者
文部科学省初等中等教育局教育課程課
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.395-399, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

文部科学省では,PISA2003の調査結果公表以降,「読解力向上プログラム」や「読解力向上に関する指導資料」の公表,「言語力育成協力者会議」の設置,平成20年,21年改訂の学習指導要領における言語に関する能力の育成の重視など,読解力の向上や言語活動の充実に取り組んできた。新しい学習指導要領においても,子供たちの読解力に関する課題が指摘されていること等を踏まえ,各教科等における言語活動の充実,国語科における言葉の働きや語彙に関する指導の改善・充実,情報の扱い方に関する事項の新設など,全ての学習の基盤となる言語能力の育成を重視している。
著者
小山 信弥
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.389, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

2018年8月号の特集は「情報読解力を考える」です。インターネットの普及と,それを支える技術の進展は,人々の情報入手経路を大きく変容させたことは,既に読者の皆様も実感されていることかと思います。そういった環境の変化に対応し,情報提供部門は様々な取り組みを行い,情報を求める人たちに求める情報を提供してきたと思います。一方で情報の受け手側についても変化がおきていることは,様々な方面から指摘されているところです。例をあげれば「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」プロジェクトが実施した中高生を対象とした「リーディングスキルテスト」の基礎的読解力調査において,中学校を卒業する段階で約3割が表層的な読解ができておらず,高校生の半数以上が教科書の内容を読み取れていない1),という結果が出ています。PISA(国際到達度調査)において2006年に日本は読解力が15位となり2),各方面で様々な対応を行ってきましたが,2012年には4位3)まで上昇したものの2015年には8位4)となり,平均点も下がってしまいました。活字離れでまとまった文章を読む機会が減少したり,語彙(ごい)量が不足したりといった実態が読解力低下の原因とする専門家の指摘もあり,文部科学省は読解力向上に向け小中学校用「指導改善のポイント」を作成するなどして対策を講じています。そこで本特集では情報へのアクセスが容易になり,情報量が豊かになる中で,情報の「発信」側ではなく,「受信」側に起きている状況について調査・読解力向上に係る研究事例や文科省の取り組みを取り上げることとしました。早稲田大学教職大学院の田中博之先生には,PISA型読解力とはどのような力なのかを,OECDのキー・コンピテンシーへの位置づけや現行の学習指導要領との関わりなどをふまえて論じていただきました。文部科学省初等中等教育局教育課程課からはPISA2003の調査結果の公表以降の,読解力に関わる文部科学省の主な施策について執筆いただきました。田中先生の論考とあわせてお読みいただければ,国内の読解力向上に関する動向について更に理解が深まると思います。神戸学院大学の立田慶裕先生からは,米国の学校図書館協議会が提供している21世紀型スキルを学ぶための学校図書館基準とともに,コロラド州の資料から,学校司書に求められる評価基準としてのルーブリックなどのツールを紹介していただきました。武蔵大学の中橋雄先生からは,ソーシャルメディアを利用する際に求められる「読解力」の特徴とその教育方法についてご執筆をいただきました。いずれも図書館や情報部門において活用できる視点を提供していただいたと思います。本特集が,「情報読解力」についての議論の基盤となれば幸いです。(会誌編集担当委員:小山信弥(主査),古橋英枝,長屋俊,光森奈美子)参考文献1)新井紀子.“3教科書が読めない-全国読解力調査”.AI vs. 教科書が読めない子どもたち.東京,東洋経済,2018,p.168-252.(ISBN 978-4492-76239-4)2)OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2006年調査国際結果の要約 http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/04/23/1230782_001.pdf(参照20180703)3)OECD生徒の学習到達度調査~2012年調査国際結果の要約~.国立教育政策研究所 http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_result_outline.pdf(参照20180703)4)OECD生徒の学習到達度調査~2015年調査国際結果の要約~.国立教育政策研究所 http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/03_result.pdf(参照20180703)
著者
伊藤 裕之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.271-275, 2005-06-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
2

電子情報資源の増大は図書館員の業務を一変させた。その反面, 紙媒体の情報資源管理を目的とした総合図書館システム(Integrated Library System, ILS)を利用して, 基幹の受け入れ業務を行っている図書館がまだまだ主流をしめている。紙媒体の情報資源と電子情報資源とは性格の異なる部分が多く, 今や電子情報資源管理を支援する適切なツールの不在は明らかである。本稿では, 電子情報資源管理システム(ERMS)の現状とその機能について, 主に北米の大学図書館における取り組みを紹介していく。
著者
岩﨑 正幸 梶間 幹弘 小川 ゆい 久田 梨香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.354-358, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

昨今,産業分野を問わず多くのM & Aが活用されており,知財デューディリジェンス(DD)の重要性が高まっている。そこで我々は,知財DD実務対応力を向上させることを目的に,過去のM&A事例を用いて,調査分析実務のケーススタディに取り組んだ。調査分析のシナリオとして,①M&Aや出資の必要性②T社への出資による課題解決の可能性③他候補に対するT社への出資の優先度の3つの論点を押さえて事業部長への回答を作成する方針とし,分析結果から第三者特許権クリアランスや主要発明者の活躍状況等を留意点として指摘した。最後に,ケーススタディに取り組んだ経験から,効率的に知財DD業務を進めるためのポイントを整理した。

1 0 0 0 OA 協会だより

出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.385-387, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)
著者
桐山 勉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.374-381, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

In the first half of this report, the summary of the PIUG 2018 Annual Conference was described by an ordinal participant who performed one presentation in the session of the second-day primary conference. In the second half of this report, the details of IPI-Award 2018 ceremony was described by an IPI-Award 2018 recipient himself while using many photos that were kindly given from the secretariat of IPI-Award Institute.
著者
浅野 敬司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.368-373, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

欧州特許庁(EPO)ウィーン支局が毎年開催している,アジア特許情報についてのフォーラムである,「East Meets West」に参加した。この会議は,アジア圏の特許情報の流通と利用を目的としており,情報の発信源となる各国特許庁の関係者や,データ提供事業者,サーチャーなど,世界中から特許情報のユーザが集まってくる。近年は日本・中国・韓国だけでなく,インドや中東圏の特許情報を有効活用したいというニーズが広がってきているため,それらの地域の特許情報について紹介するプレゼンテーションも行われるなど,より広範囲の特許情報の発信と収集が行われるイベントとなっている。本稿では今年のEast Meets Westへ参加した内容,及び,前日にオーストリア特許庁へ訪問した時の内容を報告する。
著者
田畑 文也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.348-353, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

AI(人工知能)について,日本では新聞などのメディアで毎日目にしないことはないぐらいホットな話題であり,すでに実生活においても至る所で使われている。これに対して中国はどうかと言うと,“日本より,すでにより広く,より深く使われている”のが,実感である。これらの中国のAI動向を調べる上では,単に正攻法的に分析するだけでなく,政策,規制,ビジネスの進め方など,中国独特の情況を理解して解析しないと,正しく情況を捉えることができない場合もある。本稿では,中国AI動向を例に,中国情報をより正確に理解する上での注意点を紹介する。
著者
富永 泰規 久々宇 篤志
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.338-342, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

特許庁では,人工知能(AI)技術の活用に向けた検討を進めており,その一つのテーマとして,特許文献への分類付与が挙げられている。特許文献への特許分類(Fターム)付与においては,特許文献の一部の記載を根拠として分類が付与されることがあり,分類付与の根拠となる箇所を機械的に推定することにより,付与精度の向上,及び,付与支援システムへの活用に有効である可能性がある。そこで,各種の機械学習モデルを用い,特許文献に付与すべき特許分類(Fターム)や,その分類に対する明細書中の付与根拠箇所(段落)を機械推定し,その精度を比較評価した。
著者
野守 耕爾
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.332-337, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

テキストマイニングにPLSA(確率的潜在意味解析)とベイジアンネットワークという2つの人工知能技術を応用した新たなテキスト分析技術とそれを特許文書データに適用した分析事例を紹介する。風や空気に関連する約3万件の特許公報の要約文を対象とし,PLSAの実行でその要約内容を数十個のトピックに集約して全体像をシンプルに理解可能にした。またそのトピックを軸に,技術のトレンドを把握したり,各出願人のポジショニングを可視化することで提携戦略や競争戦略の検討について考察した。さらにベイジアンネットワークにより用途と技術のトピック間の確率的因果関係をモデル化することで,企業が保有する技術の新たな用途展開の着想を検討した。
著者
那須川 哲哉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.326-331, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

個々のテキストに目を通しただけでは得られない有用な知見を大量のテキストデータから獲得するためのテキストアナリティクスの技術について,概要と仕組みと動向を紹介した上で,その要素技術である自然言語処理における深層学習の影響について考察する。さらに,特許情報分析に対するこれらの技術の影響と方向性を考察する。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.315, 2018-07-01 (Released:2018-07-01)

本誌では,昨年「特許情報と人工知能(AI)」(Vol.67 No7)という特集を発行し,システム開発者やユーザの視点から,特許情報と人工知能の関係について,それぞれ論じていただきましたが,その後の1年間で,各社より人工知能を使用した新サービス(システム)が発表されたことも追い風となって,特許情報の分析に人工知能を利用するユーザが増加しているようです。また,以前は漠然としていた「人工知能をどのように利用するのか?」ということについても,情報担当者(サーチャー・アナリスト)の要求に適合する文献を抽出するため,あるいは技術者や開発者が不要な(ノイズ)情報をフィルタリングするために導入する,など,利用者の層や利用目的も明確になってきた状況です。一方で,人工知能を搭載したツールやサービスを利用することによって,業務が改善される可能性があることは理解していても,自社の特許情報活動へ応用する場面がイメージできない,あるいは,現在行っている特許情報の管理方法との結果の差や費用対効果が分かりにくいということもあり,導入することを迷っている方も多いと思います。そこで,今号では前回に引き続き「特許情報と人工知能(AI)-Ⅱ」というテーマで,人工知能という技術を特許情報に利用することについて,前回とは別の観点から考察する特集を企画しました。はじめに,野崎篤志氏の総論人工知能と特許情報業務の関わりやツールを使用する際の心得などを,パテントアナリストの視点から論じていただきました。つづく,那須川哲哉氏にはテキストアナリティクスの概要や動向,特許情報分析にテキストアナリティクスを用いることについて論じていただき,野守耕爾氏には複数の人工知能技術を組み合わせた特許情報分析から導く技術戦略の検討を,具体的な事例で論じていただきました。富永泰規氏と久々宇篤志氏には特許文献への分類付与における付与根拠箇所推定に関して,特許庁の最新の取り組み状況を,坂元徹氏には市販ツールを使用した分析の手順と結果の考察を,田畑文也氏には海外の特許情報と人工知能という観点から,中国の政策や特許出願などについて,それぞれ解説をいただきました。今回の特集も,「人工知能」というツールを理解し,特許情報へ人工知能を適用することの可能性を考えるきっかけとなっていただければ幸いです。(パテントドキュメンテーション委員会)

1 0 0 0 OA 編集後記

出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.314-314, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)

1 0 0 0 OA 協会だより

出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.312-313, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)