著者
石崎 俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.335-340, 2015

ISO/TC37はすべての標準化活動の基盤となる用語に関する標準を中心に60年以上の歴史を持つ。近年はコンピュータによる大規模言語資源の管理と利用,さらに翻訳と通訳などの分野にも国際標準化活動を展開している。TC37の標準化組織,標準化活動に参加する国々,リエゾン,制定した国際標準などを紹介する。具体的には,5つの分科会が担当する標準化テーマは,用語の標準化の原則と手法,用語辞書の編纂法,コンピュータによる用語データの管理法,大規模言語資源の管理法,翻訳と通訳などを含む。2015年6月には日本の松江市で,TC37としては初めて日本における総会を開催した。これを一つの契機に積極的な標準化活動を展開していく。
著者
住 太陽
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.72-77, 2004

インターネット検索エンジン業界の勢力地図について解説する。検索エンジン市場の,検索プロバイダ,ディレクトリプロバイダ,広告ブロバイダ,ポータルサイトの4者のプレーヤーの業務提携や企業買収,検索技術の開発などの話題について述べる。
著者
長塚 隆
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.340-346, 1999-07-01
被引用文献数
1

インターネットの急速な普及により,データの編集物としてのデータベースのコンテンツが不正抽出されたり,再利用される恐れが広がった。このような中で,1991年のFeist判決は,従来米国の著作権法ではデ一タベースは「額に汗」論により保護されるとの考えを覆したので,ヨーロッパ諸国に著作権でデ一タベースの保護が十分できないのではないかとの大きな関心を引き起こした。EC委員会は,1996年に加盟国にデ一タベースの法的保護であるEUデータベース指令を発した。著作権を補うデータベースのコンテンツ保護である新たな権利(sui generis)を盛り込んだ本指令は,1998年までに加盟国での法制化を指示している。著作権によるデータベースの保護に加えてファクトの編集物の保護ための著作隣接権としての新たな権利(sui generis)はわが国における法制化の際にモデルのひとつとなっている。
著者
吉井 潤
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.458-461, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

専門紙・業界紙は,情報収集に役立つ優れたレファレンスツールである。その特徴として速報性・内容の深さに加え流通が限定的なことが挙げられるが,様々な人がアクセスできる公共図書館で専門紙・業界紙を提供することでより多くの人が手に取ることができる。どんな新聞があるのかを知ることのできる資料は限られており,長く続いているもの,第三種郵便物であること,発行母体を資料評価ポイントとして収集するとよい。レファレンスにおいては統計・人事情報を得る資料として活用できる。
著者
徳毛 貴文
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.452-457, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

「あの時,あの時代に何が起きたか」を調べるには,新聞記事データベースが有用だ。読売新聞の「ヨミダス歴史館」はその先駆けで,明治の創刊号から現代まで140年余りの記事を,図書館などで検索することができる。テキストデータがない活字時代の紙面も検索できるよう,1本1本の記事にキーワードをつけ,新聞広告や連載小説まで検索可能にした,近現代史のデジタル・アーカイブだ。ヨミダス歴史館は毎日,新たな紙面を追加収録すると共に,検索キーワードの見直しも続け,今も進化し続けている。SNSに雑多なニュースが流れ,消費される中,情報を的確に読み解くために新聞記事データベースが役立つことを期待したい。
著者
江村 亮一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.446-451, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

日本経済新聞電子版は2018年6月,有料会員60万人に到達した。2010年3月の創刊当初,月額4000円は「高すぎる」といわれたが,20代,女性層に有料会員のすそ野が広がり,創刊当初の予想を超える成長軌道を描いている。日経電子版は記事を提供するだけでなく,エンジニアと編集部門が一体となって「仕事に使えるツール」を目指し,改良を続けてきた。日経電子版のこれまでの歩みと今後の方向性,デジタルメディアの共通課題に触れながら,デジタルメディアの将来を展望したい。
著者
松本 恭幸
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.440-445, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

地方紙のデジタル化の進捗状況は,個々の地方紙の抱える条件が大きく異なり,電子版の有料化についても違った対応をしている。だが今後,紙媒体の購読者が減少する中,単にニュース記事の課金ビジネスだけで乗り切ることは出来ないだろう。本稿では地方紙が今後もローカルジャーナリズムの担い手としての役割を維持していくため,ニュース配信以外にも様々なコンテンツやサービスの提供によるデジタル事業のマネタイズ化,合理化が求められる紙面づくりへの市民参加の可能性の追求,宅配網を維持するための販売店の多角化,地方紙のリソースを活かした新規事業開発等の必要性について,様々な先進的な取り組みの事例をもとに紹介する。
著者
久松 薫子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.433, 2018-09-01 (Released:2018-09-01)

明治期から現在まで,日々発行され情報を発信し続けている新聞は,身近な情報源として多くの購読者をかかえてきました。近年ではインターネットの普及とデジタル機器の発展の影響を大きく受け,読者,特に若年層の減少が多く指摘されています。新聞の情報は,速報性やアクセスのしやすさ・信頼性において,いまどのような位置づけにあるのでしょうか。新聞が今,デジタル情報の発展にどのように対応し,どのようにその情報は人々に届けられているのか,そしてそれらはどのように活きているのか,概観する特集を企画しました。日本大学の石川徳幸氏には,各種メディアが普及しその重要性が高まっていく中で変化した国内の新聞の状況について総括していただきました。続いて,数多くある地方紙の現状や電子化への対応・課題について,武蔵大学の松本恭幸氏に報告していただきました。また,電子化された新聞として,個人向け契約の電子版と図書館等で機関契約する新聞記事データベースについて,それぞれ日本経済新聞社の江村亮一氏,読売新聞東京本社の徳毛貴文氏に解説していただきました。こうして提供される新聞の情報を活用している2つの事例として,図書館における専門紙の提供について図書館総合研究所の吉井潤氏に,神戸大学附属図書館デジタル版新聞記事文庫をその活用の傾向も含めて,神戸大学の末田真樹子氏・花﨑佳代子氏にご報告を頂きました。新聞の情報がさらに活用されるきっかけとなれば幸いです。(会誌編集担当委員:久松薫子(主査),當舎夕希子,長野裕恵,松本侑子)
著者
藤本 仁史
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.222-225, 2000
参考文献数
2

昨今, 出版界ではオンデマンド出版(POD)がホットな話題になっている。PODは, ニッチなマーケットを扱う学術出版, 返本率の異常な高さ, 過剰在庫, 品切れや絶版本に対する小口注文の扱いなど, 出版界が抱える懸案課題の一部を解決するだろう。PODは, 出版ニーズが少部数化に向っている現在, 出版界の改革を促す役割を果たすであろう。しかし, 従来の画一的な製作・流通環境の再構築を行い, 効率的かつ良質本の出版に移行しない限り, 出版界の本質的な問題は解決しない。本稿では, 紀伊國屋書店が「電写本」を始めた理由やそのサービスの仕組みを解説するとともに, 現在の出版界が抱える本質的な懸案課題についても論じる。
著者
橋元 博樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.242-247, 2012-06-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
10

学術情報流通においては,英文のジャーナルと比較して和書モノグラフは依然としてデジタル化が進んでいない。近年,たしかにいくつかの商用サービスはスタートした。また,「電子書籍元年」と呼ばれた2010年には,さまざまな議論が沸き起こり新たな技術も紹介された。だが,学術書にかんして言えば,いまだ有効なビジネスモデルが見出されているとはいえない。学術書の電子化について何が課題となっているか,また成功の条件はなにか。研究者や大学図書館からは望まれつつも,なかなか離陸しない日本の学術書の電子化について,主にその流通の側面から考える。

1 0 0 0 読書の現在

著者
塚田 泰彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.508-512, 2016

<p>読書とはそもそもどういう行為なのか。高度情報社会となって,伝統的な読書環境から大きく変貌を遂げた現代の読書環境は,読書や読者をどう変えたのか。これらの問いに答えるために,まず読書関連の用語の定義を再確認することで,伝統的な読書観にもとづく読書行為全体の様相を視野に置いて,読書の心理的過程と社会的文化的過程の両面から現在の読書の偏りや変化をとらえた。次に,読書科学と読書教育研究の歴史をレビューして読書の研究と実践の成果を確認し,そこで得られた枠組みと論点に沿って現在の読書が抱える問題点を4つ抽出し,来るべき読者の立場からその改善の見通しについて論じた。</p>
著者
渡辺 智暁
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.64-69, 2011-02-01 (Released:2017-04-20)
参考文献数
22

本稿ではウィキペディアを使う上で重要となるメディア・リテラシーを論じている。具体的には, ウィキペディアの運営・品質管理体制や方針, 参加者の動機, 利害関係者の動機や影響力などを解説し, ウィキペディアの特定の項目の信頼性を見積もる上でそれらがどのように手がかりとなるかを論じる。また, ウィキペディアの信頼性・品質に関する既存の調査の傾向に触れつつ, 限界を指摘する。他の資料との併用が有益であること, ウィキペディアは他の資料への入口としても有用性を増しつつあることを述べる。最後に, 中長期的な視点に立つと, ウィキペディアへの貢献も, 信頼性の問題への有意義な解決方法であり, 直接的な貢献の他にも多様な間接的貢献法があることを説明する。