著者
寺本 大修 スガオ タカヒコ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.596-599, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

文理融合による実学教育のための拠点として開設されたアカデミックシアターには近大独自の図書分類「近大INDEX」を採用した「BIBLIOTHEATER(ビブリオシアター)」という図書空間がある。ここでは学生が図書と触れるきっかけを作る工夫としてAIを活用した書籍とのマッチングサービスを提供している。本サービスは利用者のSNS投稿分析と,書籍のタイトルや説明文の分析によって導き出されたスコアをもとに,関心度の高いと思われる書籍をおすすめするものである。利用者にとって意外性の高い書籍であるケースも多く,普段なら手に取らない「偶発的」な書籍との出会いを生み出すきっかけとなっている。
著者
相澤 彰子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.574-579, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)

学術論文の数が加速度的に増加する中で,研究活動に必要な最新の情報を逐一入手することは,もはや研究者の手に負えなくなってきている。人工知能は,このような問題への解決の糸口を与えるものと期待される。そこで本稿では,人工知能による学術情報の検索・理解支援に焦点をあてて,(1)大量の論文の中から関連論文を容易に見つけるための検索・推薦技術,(2)論文の内容を素早く的確に把握するためのキーワード抽出・自動要約技術,(3)論文に書かれた知識を抽出して活用するための言語解析・知識獲得技術などについて,現状と課題を概観する。
著者
渡辺 真希子 松村 有子 登坂 善四郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.196-199, 2018

<p>近年,医学学術雑誌や各種診療情報のデジタル化が進み,その利用環境は大きく変化している。本稿では,2013年から直近までの神奈川県立病院機構における医療情報の整備状況を報告し,病院における医学情報整備の課題を検討する。段階的にオンラインジャーナル等の契約改善に取り組んだ結果,オンラインジャーナルの契約誌数が約3倍に増加した。しかしながら,医師らへのアンケートでは,その満足度は十分とはいえない。その理由として一部を除いて,医学情報を管理する図書室は体系的に整備されていない。今後も価格高騰,病院向けの医学・学術情報の維持・管理,及びコンソーシアムを含めた包括的な議論が必要である。</p>
著者
杉浦 徳利
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.559-565, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

インターネット書店の隆盛で,従来型の書店は淘汰の波にさらされている。一方で実空間の店舗ならではの“ぶらぶら歩き”による「思いがけない図書との出合い」を期待する声も根強い。図書との思わぬ出合いを促すような書店の設計を目標に据えつつ,書架のブラウジング実験を行った。見る,触れる,手に取る,読むのような図書への関与の行動の発生頻度と書架配置および図書の配架方法との関係について論じる。さらに機械学習の枠組みの一つである帰納論理プログラミングを用いて,特定の書架配置と配架方法に固有な,被験者の潜在的行動パターンを発見する試みについて紹介する。
著者
飯野 勝則
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.542-547, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

図書館ウェブサービスでは,ウェブスケールディスカバリーに代表される「検索システム」における「ディスカバラビリティ」と,「検索システム」の一部としてふるまう図書館ウェブサイトにおける「ファインダビリティ」の両者を向上させる必要がある。このためのデザインでは,データとUIのふたつの要素からのアプローチが必要である。佛教大学図書館における事例を基に考えると,図書館における理想的な「検索システム」とは,ウェブスケールディスカバリーと図書館ウェブサイトを組み合わせた,「見かけ」のインスティチューションスケールに最適化されたウェブサービスであると考えられる。
著者
三輪 眞木子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.536-541, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

多様な文脈において人間が情報ニーズを生成し,そのニーズを満たすために情報を試行錯誤により探し出し,有用な情報を獲得し,それを利用するという一連のプロセスである探索型検索は,探索者の知識構造を変化させる究極の自律学習である。情報を探しやすくするには,探索的検索をシームレスに実行できるようなシステム環境を整備するとともに,探索者の経験知,領域知識,自己効力感を高める必要がある。インフォプロには,情報システムの整備とともに,情報探索プロセスの理解,情報探索を通じた効率的・効果的な自律学習方法の伝授,情報探索経験知の形式知への変換が求められる。
著者
長屋 俊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.535, 2018-11-01 (Released:2018-11-01)

私たちは生活や仕事の数多くのシーンで必要な情報をさがし,得て次の行動を考え選択し人生を歩んでいます。日々の天気予報や家事のノウハウを知りたいとき,趣味や新しくものごとを学ぶとき,進学先や就職先あるいは転職先に悩むとき,体調不良時や病気を告げられたとき,などなど。情報をさがすことができるかどうかについては「その情報がそもそもこの世界に存在しているかどうか」という問題もありますが,「その情報が既に存在しアクセス可能な状態なのにさがすことができていない(=Findability)」という問題もあります。本特集では後者の問題を取り上げます。また,情報に出会った後に「私はこんな情報が欲しかったんだ」と思う(=Serendipity)ような潜在的なニーズにも焦点を当てました。三輪眞木子氏に,総論として利用者の情報行動という観点から情報検索者の多様な情報探索プロセスについて執筆いただきました。情報探索者の知識構造を変化させるシステム環境に求められること,情報をさがしやすくするためにインフォプロに求められるスキルもまとめていただきました。「情報」=「ウェブ上の情報資源」という観点で,飯野勝則氏には,佛教大学において図書館ウェブサービスを検索システムとしてどのようにデザインし利用者の利便性を高めてきたかについて執筆いただきました。検索用メタデータも意識し各種情報資源が最大限利用されるようにデザインしている実践例を具体的に解説いただきました。川添歩氏,篠原稔和氏には,情報探索におけるユーザビリティという視点で,情報探索のしやすいデザインについてデザインパターンとして詳細に執筆いただきました。具体例として国立国会図書館サーチを事例に挙げつつ各デザインパターンを解説いただきました。「情報」=「本」という観点で,赤木かん子氏には,どのように本を分類し書架を作ることで子どもたちが本と出合えるようになるかノウハウをまとめていただきました。長年続けてきた学校・公共図書館改装の過程で子どもたちと対話をすることで培ってきた手法や考案したツールを解説いただきました。杉浦徳利氏には,実空間での「思いがけない図書との出会い」を誘発する書架設計を目的とした書架でのブラウジング実験について執筆いただきました。機能論理プログラミングを利用した潜在的な行動パターンを発見する新たな試みについても執筆いただきました。本特集が読者諸賢にとって日々の活動における一助となれば幸いです。(会誌編集担当委員:長屋俊(主査),當舎夕希子,久松薫子,南山泰之)
著者
藤垣 裕子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.102-108, 2004-03-01 (Released:2017-05-25)

レビュー誌とは,すでに出版された学術情報を再考し,批評し,回顧し,概説を与える(統合して評価する)雑誌を指す。レビュー誌にとりあげられることによって,もとの学術情報は再考され,全体における位置づけを得る。それでは,「もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを得る」とは何を意味するのだろうか。この問いを考えるために,本稿では次の2つの考察を行った。まず,もとの学術情報とは何かという問いについて,知識生産論,ジャーナル共同体論の側面から考察した。続いて,もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを変えることの意味について,引用論をもとに考察した。これらの2つの方向からの考察をもとに,レビューとは何を意味するかを再考した。
著者
池川 佳宏 秋田 孝宏
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.133-139, 2014-04-01 (Released:2017-04-13)

平成22〜23年度の文化庁メディア芸術デジタルアーカイブ事業マンガ分野において,国立国会図書館,川崎市市民ミュージアム,明治大学米沢嘉博記念図書館,京都国際マンガミュージアム,大阪府立中央図書館国際児童文学館の5つの機関のマンガ所蔵をデータベース化するプロジェクトが行われた。これに際し,どのような内容のデータを集め,どのような共通のメタデータ項目を設定し,どのようにデータを整理し書誌の同定を行ったかについて,実際の作業内容をもとに報告する。また,プロジェクトの成果として,現在,所蔵元が明確なマンガについて,その数量を明らかにした。