著者
藤高 道子 杉原 雄三 岡畠 宏易 池田 政憲 有田 昌彦
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.755-762, 2008
被引用文献数
1

広島県における小児科医師の喘息治療の傾向を知るために,2005年6~8月の間,これまで10年間開催された広島小児アレルギー研究会に参加した小児科医師80名にアンケート調査を行った.JPGL2002の認知度は全国調査と同様に高いが参考度は低かった.吸入ステロイド剤(ICS)の早期使用は積極的には支持しない意見が多く,ICS を使用するには副作用情報が最も多く必要とされ,スペーサーの選択基準等の具体的な吸入方法の情報を必要とする意見も多かった.重症度別の長期管理薬は,テオフィリン,LTRA,ツロブテロール貼付剤が全ての重症度で,ICS,DSCG とβ<SUB>2</SUB>刺激薬の混合吸入が中等症以上で支持された.ICS の使用優先順位は中等症でも3位と消極的な位置付けであった.自宅での吸入器の発作時使用法は,β<SUB>2</SUB>刺激薬を DSCG か生食水と混合して平均4時間毎に1日2回吸入して改善しなければ病院受診,と指導されていた.地域の治療傾向を把握した上で JPGL の啓蒙と意見交換を継続することは,地域の喘息治療の進展に繋がると思われた.
著者
小島 崇嗣 谷内 昇一郎 青木 孝夫 小野 厚 蓮井 正史 高屋 淳二 小林 陽之助
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.184-192, 2004-06-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
7

アレルギー疾患合併小児162例 (A群) (男/女: 92/70) とアレルギー疾患非合併小児47例 (B群) (男/女: 25/22) を対象としてインフルエンザワクチンの副反応を検討すると同時に, フマル酸ケトチフェンによる予防内服の有用性を調べた. A群のうち即時型の卵アレルギーを有する症例は15例であった. A群の79例とB群の15例 (計94例) ではワクチンの100倍希釈液で皮内テストを施行した. また, 全209例中44例でフマル酸ケトチフェンの予防内服を施行しその有効性を検討した. その結果, 皮内テスト施行例のうち皮膚スコア2 (発赤径20-39mm) を示した症例は, A群24% (卵アレルギー群での検討では13%), B群20%と差を認めなかった. しかし, 両群とも約10%に皮内テストから予測できない強い即時型局所反応がワクチン接種部位に認められた. 遅発型局所反応は209例中24例 (11%) に認められ, A群18例 (11%), B群6例 (11%) であった. 即時型局所反応ろコアとワクチン接種回数との関係では, 即時型局所反応スコアが2以上を示した割合はそれぞれ, 初年度例の6%, 2年度例の23%, 3年度例の26%, 4年以上例の42%であり, 複数回接種により接種部位の即時型局所反応が出やすくなることが判明した. また, 遅延型局所反応でも同様の関係が認められた. フマル酸ケトチフェンによる予防内服の効果に関しては, 即時型局所反応, 遅延型局所反応ともに有効性が認められた.
著者
斎藤 博久
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.729-736, 2005-12-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
34

遺伝子が転写されるためには転写因子の存在のほか, 転写因子と結合する部位がクロマチンとして結合可能な立体構造をとる必要がある. このクロマチンの構造はエピジェネティックなメカニズムつまりDNAメチル化とヒストン修飾により調節されている. 従来, 遺伝子解析研究といえばDNA配列の個人差を研究する遺伝子配列解析と組織や細胞のmRNAを定量する遺伝子発現解析の2通りの研究手法が主流であった. エピジェネティック研究はこの2つの研究手法の中間に位置づけられる研究分野である. 従来の遺伝子解析手法では得られなかったアレルギー性炎症や組織リモデリングに関わる機序解明が期待できる.
著者
西牟田 敏之 渡邊 博子 佐藤 一樹 根津 櫻子 松浦 朋子 鈴木 修一
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.135-145, 2008-03-10
被引用文献数
12 20

<B>【目的】</B>喘息ガイドラインの治療管理が適確に遂行されるために,重症度とコントロール状態の両方を簡単に判定できる JPAC 設問票を開発し,有用性を検討した.<BR><B>【方法】</B>JPAC 設問票は,喘息症状,呼吸困難,日常生活障害に関する3設問から重症度を判定し,これに運動誘発喘息と β<SUB>2</SUB> 刺激薬使用頻度を加えた全5設問からコントロール状態を判定する.下志津病院受診中の5歳から19歳の喘息患者225名を対象に,JPAC 点数と重症度,呼吸機能検査との関係を検討した.<BR><B>【結果】</B>重症度増加と JPAC 点数減少は,Jonckheere-Terpstra 検定によって p<0.0001と有意な関連性を示した.症状と頻度から判定した各重症度におけるJPAC点数のmean±S.D.は,寛解15±0,間欠型14.9±0.3,軽症持続型13±1.2,中等症持続型9.2±1.0,重症持続型7±2.4であり,完全15点,良好12~14,不良11点以下と設定したコントロール基準と整合性があった.JPAC 点数と呼吸機能検査の関係は,%FEV<SUB>1.0</SUB>,%MMF,%V'<SUB>50</SUB>において p<0.0001と有意な相関を認めた.<BR><B>【結語】</B>JPAC は,患者の重症度とコントロール状態を判断するのに適しており,ガイドライン治療の普及に役立つ.
著者
鳥居 新平 赤坂 徹 西間 三馨 松井 猛彦 三河 春樹 三河 春樹
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 = The Japanese journal of pediatric allergy and clinical immunology (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.288-300, 2005-08-01
被引用文献数
5 4

2004年10月までに喘息死亡例として登録された189例についてその年次変化をみるとこれまでの報告にも指摘されているように1998年頃から減少傾向にある.<br>そこで最近の変化をみるために1988年~1997年に死亡した158例と1998年~2004年に死亡した30例に分け集計した.<br>男女比は1997年以前は97:62であったが, 1998年以降は19:11であり, とくに大きな変化はみられなかった.<br>重症度との関係に関しては1997年以前と1998年以降と比較すると不明・未記入例を除くと重症例は44%が50%に, 中等症では30%が28%に, 軽症では26%が22%となり重症例ではやや増加傾向がみられたが, 中等症, 軽症では減少傾向がみられた.<br>死亡場所と死亡年齢の関係では病院における死亡は0~3歳 (71.1%) が最も多く, 次いで7~12歳 (54.2%), 13歳以上 (39.8%) と加齢に伴い減少傾向がみられた. 一方病院外の死亡は加齢とともに増加傾向がみられた.<br>既往歴に関しては入院歴, 意識障害, イソプロテレノール使用歴は1997年以前と1998年以降で減少傾向がみられたが, 挿管歴は増加傾向がみられた.<br>死亡の要因については予期不能がこれまでの集計にもあったように最も多かった.<br>死亡前1年間の薬物療法に関してはキサンチン薬剤が多かったが, 1998年以降は減少傾向がみられ, その他ステロイド薬やβ刺激薬の内服も減少傾向がみられるが, BDIが増加傾向となり1997年以前にはみられなかったβ刺激薬貼布薬の使用があらたにみられるようになった.<br>β刺激薬吸入過度依存例は全体として減少傾向にある.<br>怠薬は全体として減少傾向がみられるが, 年齢別にみると思春期に多くなる傾向がみられる.<br>怠薬と欠損家庭の関連をみると怠薬あり群は怠薬なし群に比べやや欠損家庭が多い傾向がみられるが, 有意な差とは考えられない.
著者
西川 清
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.60-68, 1988
被引用文献数
6 6

これまであらゆる治療法を駆使しても, コントロールの困難であった成人を含む重症・難治群が, 電動ネブライザーを使用したDSCG+salbutamol 吸入の regular use (DSCG 2ml+salbutamol 0.25~1mg 1日2回) により最長8ヵ月, ほぼ全例に著明な臨床症状および日常生活の改善をみた. regular use 施行前3ヵ月と施行後3ヵ月の臨床症状を比較すると, 発作点数は難治群で71.7から17.4に, 重症群で22.8から10.2に減少した. 救急外来受診回数は, 7名の外来難治群で27.3回 (3~44回) から1.1回 (0~3回) に, 12名の重症群では12.3回 (0~38回) から3.1回 (0~13回) に減少した. また難治群の副腎皮質ホルモン使用量は Prednisolone 換算で460.7mg (150~945mg) から74.2mg (0~415mg) へと減量できた. 学校・仕事の欠席日数は, 難治群で14.1日から0.6日に, 重症群で11.1日から2.0日に減少した. 著明な臨床症状の改善をみた症例, 家族とも, 心理的にも大幅な改善を示した.<br>DSCG+β<sub>2</sub> agonist の regular use は, 気管支拡張持続作用と気道炎症の抑制作用により発作を予防するだけでなく, これまで困難であった難治群の0レベルを実現し, 気道過敏性に影響を与え, 寛解に導き得る治療法となる可能性を示唆した.
著者
鈴木 修一 下条 直樹 有馬 孝恭 河野 陽一
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.56-61, 2009-03-01 (Released:2009-06-03)
参考文献数
22
被引用文献数
3

乳児アトピー性皮膚炎おける皮膚黄色ブドウ球菌の役割を明らかにするために,われわれは千葉市乳児健診において,全乳児のアトピー性皮膚炎の有無および重症度の診断とともに,頬部皮膚黄色ブドウ球菌の培養を行い,生後4か月より1歳6か月,3歳まで追跡した.4か月および1歳6か月において,黄色ブドウ球菌の皮膚への定着はアトピー性皮膚炎の重症度と関連していた.また,4か月および1歳6か月のアトピー性皮膚炎のない児において,黄色ブドウ球菌の定着は後の発症に関連していた.これらの結果は黄色ブドウ球菌の皮膚定着は乳児におけるアトピー性皮膚炎の重症化だけでなく発症にも関与し,黄色ブドウ球菌の皮膚定着防止が乳児アトピー性皮膚炎発症予防の有力な手段となりうることを示唆している.