著者
秋本 憲一 斉藤 博之 赤沢 晃 橋本 光司 勝沼 俊雄 野々村 和男 海老沢 元宏 永倉 俊和 植草 忠 恩田 威文 福田 保俊 飯倉 洋治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.96-100, 1990-08-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

重症のアトピー性皮膚炎患児のなかには食物除去療法, 環境整備, 薬物療法, 免疫療法, ステロイド外用療法等を行っても治療に抵抗するものが結構多い. 重症アトピー性皮膚炎患者が夏休み明けに軽快していることがしばしば経験し, 海水浴がアトピー性皮膚炎の治療に役立つのではないかと考え, 昭和63年の夏にアトピー性皮膚炎患児9名を対象に一週間の海水浴療法を経験し, 好結果を得た. 今回行った方法は, 患者を神奈川県二宮町の国立小児病院二宮分院に入院させ, 食物療法, 薬物療法等の治療に加え二宮町の海岸で午前一時間, 午後二時間, 海岸で海水による皮膚の洗浄を行うものである. 僅か一週間の短期間で通常の入院治療より優れた寛解が得られ, 厳格な食物除去療法のような社会的・栄養的な問題, 薬物療法による副反応等の問題がないため, 海水浴療法は重症の小児アトピー性皮膚炎に対して是非試みるべき治療法と考えられた.
著者
林 大輔
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.36-40, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
20

母乳栄養とアレルギーの関係について多くの研究が行われ, 完全母乳栄養がアレルギーに防護的であると考えられていた. EAACIは食物アレルギー予防のために生後4~6か月の完全母乳栄養が望ましいとしている. しかし, 人工乳開始時期と牛乳アレルギー発症時期を検討した研究では生後14日以前に人工乳を開始した群で牛乳アレルギーの発症頻度が低下していた. また, 牛乳アレルギー児の哺乳状況の後方視的調査では牛乳アレルギー児で新生児期からの1日1回以上の継続的な人工乳摂取の頻度が低く, 卵アレルギー児の牛乳アレルギー併発と人工栄養の関係の調査でも牛乳アレルギー併発群では生後3か月以内の継続的人工乳摂取の頻度が低かった. これらの知見より新生児期からの継続的な人工乳の摂取が, アレルギー発症を予防する可能性が考えられる. 一方で母乳栄養には感染症やSIDSの予防効果などもあり, 継続的な人工乳の摂取がこれらにどのような影響を与えるかはわかっていない. 乳早期導入の効果・安全性の検証のためさらなる知見の集積が必要である.
著者
柴田 瑠美子
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.56-60, 2007-03-01 (Released:2007-12-04)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

食物アレルギー児は保育園,学校の給食時に症状が誘発されやすく,アナフィラキシーの回避のためには,医療機関との十分な連携が必要である.食物アレルギーの診断を行い,除去食指示書(診断書)により現在の正確な医療情報,誤食時の対応法,アレルゲン除去食品,代替食対応の知識を提供し,全職員・他の児童を含めた食物アレルギー児への理解をはかることが大切である.
著者
夏目 統
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.27-35, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
29
被引用文献数
1

食物アレルギーの発症予防法は, 食物除去から乳児期早期摂取開始へとパラダイムシフトが起こった. これは, 食物アレルギーの原因が経腸管感作ではなく, おもに経皮感作であることが明らかにされ, 経口摂取はむしろ免疫寛容をもたらすことがわかってきたためである. 実際に, 乳児期早期の経口摂取が食物アレルギーの発症を予防できることが明らかにされたのは, 2015年のランダム化比較試験が初めてである. 卵に関するランダム化比較試験は現在までに6研究が報告され, メタアナリシスで早期摂取開始により卵アレルギーの発症が予防されることが明らかにされた. ただし, 実際に予防法を実践する上では即時型アレルギー反応の誘発に配慮する必要がある. 日豪, アジアからの提言で卵アレルギー発症予防の関連部分では, 有害事象を減らすために 「加熱卵」 を 「少量から」 摂取するように推奨し, 摂取開始時期等はアトピー性皮膚炎で層別化されている. しかし, その後の増量方法は明確な記載が少ない. 今後, 増量法, 摂取回数, 継続期間等の検討が行われることを期待したい.
著者
西藤 成雄
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.267-274, 2008
被引用文献数
1

<B>背景</B> 幼児の呼気終末で喘鳴を確認するために,玩具を用いた小児の聴診手技の向上について検討を行った.<BR><B>調査方法</B> 風車,吹き上げボール(ボール),象さん吹き上げ糸(ゾウ)の3つの玩具を選び,呼吸音をソノグラフにより解析を行った.また Web ページにてそれら玩具のモニター医師を募集し,77名のアンケート回答が得られた.<BR><B>結果</B> ソノグラフでは,風車は吸呼気比は短くばらつきも最も大きかった.ボールは吸呼気比は最も長いが,ばらつきが大きい.ゾウは吸呼気比は吹き上げボールに及ばなかったが,ばらつきは最も小さい.アンケートでは,呼吸音と喘鳴の聴取においてゾウが最も高く評価された.ボールは取り扱いが難しく誤飲の指摘があった.<BR><B>考案</B> ソノグラフでは,ゾウが規則正しく呼気終末まで努力呼吸を繰り返していると考えられ,またアンケートの総合評価でも聴診の補助具としての評価が高い.本玩具を用いることで幼児でも呼気終末まで喘鳴の消失が確認しやすくなり,より確実に病状の把握ができることを期待する.
著者
益海 大樹 竹村 豊 有馬 智之 長井 恵 山崎 晃嗣 井上 徳浩 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.262-267, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
16

エリスリトールは低分子の糖アルコールで, カロリーが極めて低く, 甘味料としての需要が拡大している. 症例は10歳女児. 8歳, 9歳時にアイスクリームなどを摂取後のアナフィラキシー歴を3回有していたが, 原因は不明であった. 10歳時, 公園で遊び, 複数の菓子を摂取後に咽頭痛と乾性咳嗽, 蕁麻疹を認め, 当院外来を受診. 菓子内にはエリスリトールとソルビトールが含まれ, アレルゲンの可能性が考えられた. エリスリトールとソルビトールのプリックテストはともに陰性で, 皮内試験ではエリスリトールのみ陽性であった. 両者の食物経口負荷試験を施行し, ソルビトールは陰性, エリスリトールは合計1.7g摂取し30分後に皮膚・呼吸器症状を認め, アナフィラキシーを呈した. のちに実施した好塩基球活性化試験 (BAT) では反応を認めなかった. 近年, エリスリトールによる即時型食物アレルギーの報告例が増加している. 小児で摂取頻度の高い菓子に含有されていることがあり注意を要する. 本症例の糖類摂取における食事指導に有用であった.
著者
相原 雄幸
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.284-289, 2003-08-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
20

特定の食物摂取後の運動によりアナフィラキシーが出現する場合, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー (food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FEIAn) と呼ばれる. その病因は明らかではなく, これまでの報告では10~20歳台の症例が多いとされるがまとまった疫学調査はほとんどなされていない. そこで, 横浜市立中学校全生徒を対象に養護教諭にアンケート調査を実施した. 145校中有効回答は130校 (89.7%) で, 対象生徒数は76,229名, FEIAnは13名 (0.017%) であり, EIAnは24名 (0.031%) であった. また, 養護教諭のFEIAnについての認知度は約30%と低く, 学校における症例の把握や指導が不十分で不慮の事故の危険性が示唆された. 今後, この疾患についての学校医や養護教諭などへの啓蒙が必要と考えられる.
著者
藤枝 重治 大澤 陽子 坂下 雅文
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.139-148, 2013 (Released:2013-09-02)
参考文献数
26

小児のアレルギー性鼻炎の診断は,5歳未満の未就学児において難しい.とりわけ3歳未満は,感染性の鼻炎との鑑別がつきにくく困難を要する.実際には,抗原特異的IgEの検出と詳細な問診が必要である.最近本邦では,アレルギー性鼻炎の低年齢化が問題となっている.我々は1歳6ヵ月検診(408名)を利用した疫学調査を行った結果,ダニ・ネコ・スギいずれかの抗原特異的IgE陽性者は,計10.7%であった.また鼻汁中好酸球陽性者は,7.1%であり,両者が陽性であったのは2%であった.最近,小児において数種類の第二世代抗ヒスタミン薬が保険適応になり,治療しやすくなった.鼻閉に関しては抗ロイコトリエン薬,鼻噴霧用ステロイドの併用が良い.スギに関しては舌下免疫療法が保険申請中であり,12歳以上は治療の選択が広がる.
著者
海老島 優子 末廣 豊 岡藤 郁夫 福家 辰樹 二村 昌樹 村田 卓士 森川 みき 南部 光彦
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.75-83, 2016

アトピー性皮膚炎 (atopic dermatitis : AD) 治療には適切なスキンケア (清潔と保湿) が必要であるが, 入浴方法・石けん使用の是非・保湿剤の塗り方などについて具体的な方法を示すエビデンスは乏しい. 今回われわれは国内外のアトピー性皮膚炎ガイドラインおよび日本小児アレルギー学会員を対象としたアトピー性皮膚炎診療実態調査 (以下AD実態調査) をもとに, 現時点で妥当と考えられる適切なスキンケアについて検討したところ, 以下の4点となった. ①1日1回以上の入浴, ②適切な方法での石けんの使用, ③1日2回以上の保湿剤の確実な塗布, ④抗炎症薬と保湿剤の塗布順序に関しては患者の皮膚状態や塗りやすさなど考え, 続けやすい方法を指導する, である. 今後のわが国におけるエビデンスの蓄積が期待される.
著者
室田 浩之 奥田 英右 片山 一朗
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.157-164, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
28

アトピー性皮膚炎の臨床症状は乳幼児期と学童期以降では臨床症状および経過そして治療反応性が異なる. 学童期以降では痒みが先行し, 掻破部位に慢性皮膚炎/苔癬化病変を形成する. よって痒みの制御が治療において重要である. アトピー性皮膚炎では皮膚の感覚過敏が生じており, 疼痛や温感など通常は痒みに感じない感覚を痒みに感じることがある. この痒み過敏の原因として炎症に伴って生じる皮膚知覚神経の異常な伸長, 神経栄養因子アーテミンの作用, そして中枢神経の増感などが考えられる. 温熱など環境因子によって誘導される痒みの管理にはまず皮膚炎の治療が優先されるべきである. 汗による痒みの対策として, かいた汗を適切に処理することと, 適切な量の汗をかけるように皮膚炎を制御することが大切である. 刺激のみならず, 視覚的刺激や聴覚的刺激も新たな痒みを誘発する. この “伝染する痒み” はアトピー性皮膚炎患者で顕著にみられる. 本稿では痒みの悪化要因と, それらに対する対処方法に関する知見を紹介するとともに過去の論文をレビューする.
著者
菅井 和子 木村 博一 宮地 裕美子 吉原 重美 緒方 裕光 岡山 吉道
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.22-27, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
22

乳幼児期のウイルス感染に伴う下気道感染症では喘鳴発症が多く, それが反復喘鳴や喘息発症の一因であることが多く報告されている. 特に, RSV, HRVは喘鳴のおもな起因ウイルスであり, アトピー-素因, 吸入抗原感作等と関連し, 喘息発症と関連するとの報告も多い. 低月齢児では肺機能等客観的な評価は困難だが, 非侵襲的に反復喘鳴予測ができれば, 喘息管理において, より早期の介入が可能となる. 喘息患者で気道上皮由来のTSLP, IL-25, IL-33やTh2サイトカイン等が注目されているが, 喘息発症前の初回喘鳴時のより強力な気道炎症誘導因子の存在も考えられる. われわれは, ウイルス感染に伴い初回喘鳴を呈した乳幼児対象の研究で, MIP-1αによりその後の反復喘鳴が予測可能となる研究結果を得た. 簡便に採取可能な鼻汁検体からの反復喘鳴予測の可能性が示唆された. パリビズマブの早産児におけるRSV感染後の反復喘鳴予防の有効性や, ワクチンの研究もあるが, 実用化には至っていない. ウイルス感染後の喘息発症予防において, 感染予防とともに発症予測因子に関する研究も今後さらに必要と考える.
著者
竹井 真理 柳田 紀之 佐藤 さくら 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.22-26, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

2008年に二重抗原曝露仮説が提唱され, 抗原に対する感作経路および食物アレルギー発症経路として炎症のある皮膚面, つまり湿疹の存在が重要視されるようになった. 乳児期の湿疹・アトピー性皮膚炎の存在は食物アレルギー発症のリスク因子であることはすでに報告されている. われわれが行った乳児湿疹を認める生後1か月児のコホート研究の中間解析結果からは, 乳児期早期発症の湿疹は食物アレルギー発症のリスク因子であり, 特に持続する湿疹病変, 皮膚バリア機能異常の存在が食物アレルギー発症にかかわる重要な因子であることが示唆された. 皮膚バリア機能を念頭においた乳児の湿疹に対する早期介入が食物アレルギーの発症予防につながる可能性が示唆されるが, 今後の前向き研究での検証が期待される. また湿疹病変がなくても食物アレルギーを発症している児がいることは事実であり, 感作経路や発症経路の解明も含め, まだ検討されるべき課題は多い.
著者
溝尻 素子 真田 幸昭
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-12, 1988-07-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
25

国立療養所兵庫中央病院に長期入院中の気管支喘息児15名に副流煙のみでCO7~8ppm, 30分間の受動喫煙負荷を行った.負荷前及び負荷6時間後まで Flow-volume Curve, FRC, TGV, Raw, SGawを測定し, また, 負荷2時間後までのCO-Hbも測定した.CO-Hbは0.21%上昇し, 負荷中止2時間後も高値を示した。Flow-volume 系には有意の差がなかったが, FRC, TGVの低下, Rawの上昇, SGawの低下が見られた.特に負荷6時間後もRawの上昇, SGawの低下傾向が持続した.タバコ煙に対するアレルゲンテストが陰性であり, これらの受動喫煙による変化はアレルギー機序よりもタバコ煙のもつ易刺激性が非特異的刺激として, 気道過敏性を介して発作誘発をもたらすと推測される.
著者
五十嵐 隆夫
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.57-65, 1998

小児アレルギー性疾患のコストエフェクトを研究する目的で, 気管支喘息の診療コストを調査した. 診療所, 総合病院, 大学病院の小児科外来を受診した0から20歳の気管支喘息患者の1ヶ月間の外来診療コストを, 受診回数, 処置薬剤料, 処方薬の種類と薬剤料, 検査料について調べた. 外来診療費は, 診察料が, 6,000~7,000円 (病院4,000円減), 処置薬剤料が600円, 処方薬剤料が11,000円であり, 処方箋料が1,800円, 検査料が, 2,700円, 総計で22,000円であった. 処方薬剤料の内訳は, DSCGが30%, 抗アレルギー剤が28%, テオフィリン製剤が24%, β<sub>2</sub>刺激剤内服が7%, BDPが4%, β<sub>2</sub>刺激剤吸入が2%, その他が5%であった. 処方薬剤料は, 医療機関別あるいは年齢層別に差は認めなかったが, 重症度別では, 軽症と重症で2~3倍の差が認められた. 気管支喘息の診療コストの削減を考えるポイントは, 抗炎症作用が強力な吸入性ステロイドを軽症例から導入するか否か, 長期的副作用や薬物依存性も考慮して判断する必要がある.
著者
安冨 素子 大嶋 勇成 眞弓 光文
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.253-258, 2008-06-01 (Released:2008-08-01)
参考文献数
13

エリスロマイシンは抗菌作用のみならず,抗炎症作用を持つことから慢性気道炎症性疾患への応用が注目されている.樹状細胞は気管支喘息の病態における抗原感作とアレルギー性炎症の増悪に重要な役割を持つと考えられることから,エリスロマイシンが病原体由来の刺激による樹状細胞の活性化とT細胞刺激に及ぼす影響について検討した.その結果,エリスロマイシンは poly (I:C) と LPS 刺激による樹状細胞の表面マーカー発現とサイトカイン産生を選択的に抑制した.エリスロマイシンはpoly (I:C) と LPS 刺激によるIRF-3 活性化,IFN-β産生を抑制し,poly (I:C) 刺激によるナイーブT細胞のTh1分化を特異的に抑制した.また,エリスロマイシンは peptidoglycan 刺激を受けた樹状細胞によるメモリーT細胞の IL-17産生誘導も抑制した.これらの結果からエリスロマイシンは,アレルギー性炎症を修飾する気道感染の病原体刺激の種類により異なる抗炎症作用を示すことが示唆された.
著者
浜崎 雄平 放生 稔 坂本 亘司 宮崎 澄雄 西間 三馨
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.39-46, 1990

長期入防施設で, 3年間の加療後, 外来治療に変更して3カ月目に大発作をおこし, 6カ月間人工呼吸管理をおこない死亡した気管支喘息の13歳男児例を報告した. 1. IgE値は入院中, 次第に低値となったにもかかわらず, 発作は軽減せず, 機序として気道過敏性の重要性が強く示唆された. 2. 経過中に中枢性尿崩症があきらかとなり, これは脳波の低振幅化, 徐波化の所見と時間的に一致し, 無酸素脳症として予後不良の兆候と考えられた. 3. 本症例のような重症児の発作 (特に夜間の) による死亡を予防するためには, 気道過敏性の病態の解明に加えて, 両親および本人に発作時に具体的にどうするのかを, 繰り返し徹底する必要があると考えられた.
著者
柳田 紀之 今井 孝成 海老澤 元宏
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.39-46, 2010 (Released:2010-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
5 4

経口減感作療法の有効性の報告は増えてきているが,現在,経口減感作療法に標準化された方法はない.当院では学童期以降で少量の原因食物の摂取でアナフィラキシー症状が誘発される児を対象に初期量を閾値と同量,1日2回摂取,100%増量とする急速法を6~9日間かけて行なっている.当院の経験とこれまでの報告を交えて適応や方法について検討し,経口減感作療法の標準化の可能性を探ってみたい.
著者
赤澤 晃 田中 和子
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.34-38, 2001-04-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
3

1979年にラテックスアレルギーが報告されて以来, 欧米では数多くのアナフィラキシーショック症例, 死亡例が報告されるようになり, 米国アレルギー学会, FDAによる調査・研究・行政指導・法制定によりその対応がなされてきた. 日本国内でのラテックスアレルギーの患者調査では81名の患者報告があった. 小児科領域では, ラテックス製医療用具の使用者, 多種目の食物アレルギー患者はハイリスクグループであり, 一般でも小児への日常生活での注意も必要である.