著者
中平 勝子
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田教育評論 (ISSN:09145680)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.109-124, 2002-03-31

今後社会を担うことになる学生に対してしかるべき情報処理教育を行い, 情報弱者にならないよう, また, 情報の正誤を判断できるための能力を育成することは重要である。本報告では, 文系女子大生に対して実習の各工程に電子化・電子教材を導入した情報処理教育を行い, 学生の実習における各工程での「電子化」が学生に与える学習効率を追跡調査した。情報表現のツールには, 一般的な表計算ソフトであるMicrosoftエクセルを用い, 数値情報の加工(素データ入力と簡単な計算処理による情報抽出)・表現(表・グラフによる表現, 数値による重要な情報抽出)技術を養うことをその目標とした。訓練を伴う授業展開を行うには, 履修している学生の実習結果をチェックしながら学生が理解し得なかった部分のフィードバックを常に教材や授業で取り上げる項目に反映させなければならない。ここでは, 学生が各テーマ実習時間内に理解し得なかったことを次週の実習時間内に再度取り上げるという工夫をこらすことによりフィードバックを常時心がけた。また, 講師が作成した電子教材に対する学生の実習内容や理解状況を蓄積・解析することにより教材に反映させた。
著者
中垣 恒太郎
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田教育評論 (ISSN:09145680)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.55-68, 2003-03-31

マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』はアメリカ文学史において正典(キャノン)として位置づけられてきたばかりでなく,出版当時から児童文学としても読まれてきたために,アメリカ合衆国では,小中学校,高校,大学を通して教材として用いられてきた。作品の受容史を振り返るならば,文学史の生成過程をめぐる問題や,批評理論などを通じて,それぞれの時代思潮を反映した読まれ方がなされてきていることがわかる。文学研究の教材としてこの作品は様々な用い方が可能であろう。出版直後から議論を呼んできた作品でありながら,長い間,教材の定番として読み継がれてきたが,公民権運動の1960年代以降,複雑な人種問題を内包しているがゆえに,多様な文化背景の生徒たちが集う,教室での教材としてはふさわしくないのではないか,という声が出始め. 1980年代半ばから90年代にかけて,教材のリストから除外される傾向が強くなった。はたして,『バック・フィンの冒険』は教材としての耐用年数を超えてしまったのか。マーク・トウェイン研究者による,教育教材としての作品研究への最新の取り組みなどを参照しながら,教育現場での文学教育のあり方について考える。同時に,アメリカ文学を外国文学として学ぶ日本の教室の事情について考察する。作品の流入史などを,英学史,比較文学の観点なども含めてたどることによって,外国文学を研究することの意味についても考えることになるだろう。さらに,制度としての文学研究の変遷をも意識しながら,日米における文学研究のあり方を比較文化的に(比較教育学的な視座まで含めて)考察していくうえでの序論となることを目的としている。
著者
小池 正春
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田教育評論 (ISSN:09145680)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.133-150, 2004-03-31

米国では,1983年に発表された報告書「危機に立つ国家」をきっかけに全国的な教育改革運動が起こった。また同年に「アメリカの高校教育改革」という全米各地の学校実態を調査した報告書による教育改革の提案がなされた。1991年大統領により「2000年のアメリカ:教育戦略」が発表され,2002年には連邦法No Child Left Behind Actの制定に至った。本報告書は,このアメリカの一連の教育改革を様々な報告や研究レポートを参照し鳥瞰図的に眺める。次に「アメリカの縮図」といわれるメリーランド州の教育改革の流れを見る。そして最も「アメリカ的な問題」を抱える同州プリンス・ジョージズ郡に焦点を当て,第2次大戦後同郡がどのように社会と経済,人種構成上で大きな変貌を遂げ,それが教育環境にどのような影響を及ぼしたかを事例を見て今後の行方を探る。