著者
原田 忠直 大島 一二
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.49, pp.75-92, 2014-09-30

マカオでは,2002年にカジノ経営権の国際入札が始まり,アメリカ・香港を中心に巨額な資本が投下されている.なかでも,カジノ産業だけではなく,宿泊施設・飲食店・ショッピングモール・劇場等のレクリエーション施設・展示場・会議場,さらにその他の観光施設等からなる複合的な「統合型リゾート」の建設が進められている.そして,この「統合型リゾート」を核として,マカオは劇的な経済成長を遂げ,雇用の確保,高福祉の実現など,多くの恩恵をマカオの地元住民に与えている.しかし,その陰で,低学歴層を中心に就業・生活面で「周辺化」されつつある人々,犯罪率の増加などの課題も存在している.
著者
舘 健太郎
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.30, pp.115-123, 2005-02-28

Most criminal cases are resolved out of court by plea bargaining in the United States. Plea bargaining is similar in form to an economic transaction, so the principles and tools of economic analysis are useful to investigate its effectiveness. This paper briefly reviews some important aspects of plea bargaining, such as its effects on the judicial system and criminal activity.
著者
安宅川 佳之
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-30, 2007-08-31

本論文の目的は, 少子化現象の本質的原因を明らかにすると共に, 出生率回復のために真に有効な政策を提案することにある. 産業革命後, 約 200 年の工業社会においては, 労働者と資本家の間の対立が最も重要な社会階層対立であったといえよう. 1970 年代の先進国では資本主義経済に社会主義的修正を加えた福祉国家型資本主義経済がほぼ完成したと考えてよかろう. その結果, 1980 年代以降は, 労使紛争が急激に減少すると共に, 労働組合組織率も急速に低下してきている. 労使対立はもはや社会問題としての重要性を失ったかにも見える. 代って, 世代間の対立が重要な社会階層対立軸として脚光を浴びつつあり, 環境・資源問題と少子化問題が主要な社会的・経済的問題となった.この世代間対立が深刻となった原因として, 家計の意思決定が後続世代の効用を重視するダイナスティ仮説から, 自己の世代の効用をもっぱら重視するライフサイクル仮説に大きく変化したことが重要である. 資源も労働サービスも現役世代重視に配分されると, 環境や資源は後続世代に十分残されなくなり, 後続世代の育成・教育が疎かになるのである. 厄介なことに後続世代は現役世代ほど, 雄弁ではないから, 現役世代が, 努めて後続世代の立場に立った政策を実行することが求められる. 少子化を押し止めるためには, 公共政策の対象を個人ではなく家族に移すことによって, 「家族の生活保障機能を再構築する」 ことが必要である. 具体的政策としては,(1)所得税, 住民税の税率を家族一人当たりの富裕度を基準に決めること,(2)相続税における基礎控除を減額する一方, 相続人一人当たりの控除を増額すること(3)社会保障給付も家族を基準に再構成すること(4)児童手当財源を含めて 「出産育児保険」 を創設し, 家族を形成しようとしている若年家計を支援することを提案したい.
著者
張 淑梅
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The Journal of Economic Studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.71-87, 2016-09-30

本稿は, 近年脚光を浴びている共有型経済に注目し, その中核的要素の1 つである協働的消費に焦点を当てて, 経験価値の創出によるサービス・イノベーションのあり方について議論するものである. イノベーションを実現させる最新の事例分析を通じて, 成功したビジネスモデルの本質が消費者の潜在的需要を見抜き, 優れた経験価値の提供にあることを明らかにする. その上で, 既存の企業が共有型経済のトレンドに適応すべく, 経験価値の観点から自社のサービス定義を再考し, その提供方法を実験的に見直すべきであることなど, サービス・イノベーションを実現させるための戦略と課題について考察する.
著者
毛利 良一 Ryoichi Mohri
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The journal of economic studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.51, pp.33-60, 2015-09

本稿は,「広島・長崎への原爆投下から福島第一原発崩壊へ」をメインタイトルに,「日米核同盟,核燃料サイクル,原発の新増設・脱原発を中心に」をサブタイトルにする.狙いは,①原爆投下地広島・長崎の非戦闘員・一般住民が無差別かつ大量に殺傷(両市の死者は20万人超)されたこと,②福島第一原発崩壊による無辜の住民(およそ10数万人)が長期にわたる避難生活を余儀なくされていること,③1953年のマーシャル諸島近海のビキニ環礁で静岡県焼津のマグロ漁船「第五福竜丸」が被曝をし,世界に例を見ないマルチ被ばく国日本という国が,「日米原子力協定」という日米核同盟に繋がっていることの政治経済学的意味,④地球上では米・英・独など西側主要国が中止するに至った核燃料サイクル政策の分裂,すなわち他方でフランス,ロシア,さらには新興中国と並んで日本が追い求めている理由と展望,⑤福島第一事故後の世界でルネッサンスとも呼ばれる原発推進や新規導入,原発輸出に走る国々の思惑と,⑥脱原発を選択したドイツやスイスの政治的社会的決断の重みの比較,を私なりに整理してみたいと考えたからである.「マンハッタン計画」および広島・長崎への原爆投下から始めたのは,原発の歴史および根源を理解しておくためである.福島の被災地の住民の状況や日本国民の選択をむすびで書きたかったが不勉強ではたせなかった.原発推進国と対比してドイツ国民の脱原発で稿を閉じるのは,地球世界の連続と不連続を統一的に把えたいと考えたからである.「戦後70年」における私なりのひとつの総括としたい.This paper studies on the facts and meanings of the followings:(1)More than 200 thousand of non-military citizens at Hiroshima and Nagasaki were killed by atomic bombs. (2)Around 150 thousand citizens at Fukushima have been forced to evacuate for more than four years and more.(3)Japan has maintained tenacious Nuclear Alliance with U.S. in spite of Japan's radioactive contamination for four times, historically rare in the world, including nuclear exposure at the Marshall islands.(4)Japan has desperately pursuited nuclear fuel cycle in spite of resignation of other advanced countries such as U.S., UK, Germany, etc., but France, Russia and China have continued the efforts. (5)So-called Runaissance of nuclear power plants building and export boom are in bloom in many countries unwisely, on one hand. (6)We have heard hopeful decisions the people of Germany, Switzerland and others have selected wisely phase-out policy of nuclear power on the other hand.
著者
張 淑梅
出版者
日本福祉大学経済学会
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The Journal of Economic Studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.71-87, 2016-09-30

本稿は, 近年脚光を浴びている共有型経済に注目し, その中核的要素の1 つである協働的消費に焦点を当てて, 経験価値の創出によるサービス・イノベーションのあり方について議論するものである. イノベーションを実現させる最新の事例分析を通じて, 成功したビジネスモデルの本質が消費者の潜在的需要を見抜き, 優れた経験価値の提供にあることを明らかにする. その上で, 既存の企業が共有型経済のトレンドに適応すべく, 経験価値の観点から自社のサービス定義を再考し, その提供方法を実験的に見直すべきであることなど, サービス・イノベーションを実現させるための戦略と課題について考察する.
著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The journal of economic studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.49, pp.93-119, 2014-09

競争的労働市場においては, 賃金は限界生産力に等しくなり, 均等化する. しかし, 現実には産業間, 企業規模間において賃金格差は発生する. 賃金格差を人的資本理論に基づいた観察される個人属性の相違で説明を試みることには限界があり, 同一特性の労働者であっても格差は存在する. そのため, 観察されない個人属性, 効率賃金仮説等で残余部分を説明することが試みられてきたところである. 近年のデータ整備と統計解析手法の発展は, 観察されない個人属性や企業の賃金政策に起因する固定効果が賃金格差に重要な影響を与えていることを示した. 固定効果は労働市場における情報の不完全性といった摩擦に密接に関連していることから, 均衡サーチ・モデルを用いて賃金格差を説明することが試みられている. 代表的なモデルである BM モデルは労働者と企業のそれぞれの同質性と労働者の転職行動を前提として賃金掲示分布を決定するものであり, 応用範囲の極めて広いモデルである.
著者
篠原 三郎
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.20, pp.13-22, 2000-02-29

This paper aims to explain how the political economics of environment has come into existence in modern capitalism, concerning the process of the accumulation of capital. Moreover, it discusses the social relation between the environmental problems and the fetishism of commodities.
著者
新谷 司
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.46, pp.91-125, 2013-03-31

本論文全体の研究目的はフーコー主義会計研究が生成される段階 (フーコー主義会計研究が特定の会計研究雑誌に最初に掲載される段階とその前後の段階) の状況を検討し, その生成されたフーコー主義会計研究及びその後に展開されたフーコー主義会計研究の到達点と課題を検討することにある. このフーコー主義会計研究はその理論的源泉の相違により第一世代と第二世代に区分することができる. 本論文の第一の目的は, フーコーの著作を理論的源泉とするフーコー主義会計研究の生成過程について明らかにすることである. 第二の目的は, 第一世代のフーコー主義会計研究に関する一定の評価 (到達点と課題) を明らかにすることである. 第三の目的は, 第二世代のフーコー主義会計研究に関する一定の評価 (到達点と課題) を明らかにすることである. 第四の目的はフーコー及びフーコー主義者の著作と第一世代及び第二世代のフーコー主義会計研究を検討した諸論文において示された評価自体に関わる補足説明とその再検討を行うことである. 本論文の分析形式は文献レビューである.
著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.41, pp.173-200, 2010-09-30

現在の日本において貧困は深刻な社会問題となっている. 1990 年代後半以降, 格差問題が活発に議論されていたが, 焦点は貧困問題へと移行している. 先進諸国において, 従来の社会保障制度は働く貧困層 (ワーキング・プア) の増加に対応できない状況となっている. 貧困問題に真摯に対応することは社会の基盤を構築する上で重要であり, 最低所得を保証するものとして負の所得税やベーシック・インカムが提起されてきた. 欧米の先進諸国では, ワークフェアの一環として, これらを基礎とした税額控除制度が実施されているところである. 福祉国家という概念は, リベラリズムや自然権のみならず, 自由主義思想の影響も受けている. 日本においても社会保障制度を再構築するために制度の哲学的基盤を整備する必要性がある.
著者
加茂 浩靖
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.40, pp.133-142, 2010-03-31

本研究では, 人材サービス業にとって主要な労働力調達地域である国内周辺地域を対象に, 人材サービス業で就業する労働者の就業状況を分析し, この産業への労働力供給の要因を考察する. このため, 鹿児島市の 17 の人材サービス事業所で得た聞き取り調査の結果, および就職説明会参加者 68 人に対する聞き取り調査の結果を用いて分析を行った.労働者データの分析の結果, 人材サービス業での就職を希望する最大の理由は 「賃金支給額の多さ」 であり, 賃金の地域差がこの地域からの労働力供給の要因になっている. ただし, 年齢で動機や就業行動が異なると考えられるため, 回答者を 35 歳未満と 35 歳以上に分類して分析すると, 35 歳未満の若年者とりわけ単身者では, 条件の良い職業を求めて短期間で転職を繰り返している点が特徴的である. これに対して 35 歳以上の中高年では, 製造業務の経験を生かせる職業を求めて人材サービス業に応募している点が特徴的である. 後者には直接雇用での製造業務経験者が 57%と多く, 近年減少した直接雇用求人の代わりに人材サービス業を選択している.