著者
柳 繁
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.411-420, 2003-07-25
被引用文献数
2

「難しい式がたくさん出てくる」.これが信頼性理論に対する殆どの方の印象だと思います.また,一般的に用いられる用語と信頼性用語のギャップも気になります.この点に注意しつつ,本稿では信頼性評価のための数学モデルのさわりの部分を紹介し信頼性理論への橋渡しにしたいと思います.
著者
長塚 豪己
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.580-587, 2009-11-01
参考文献数
22

推定を安定化させる技術の一つとして最近注目されているL^p正則化推定法について紹介を行う.特にL^1ノルムを用いて正則化を行うLassoを中心に述べる.
著者
上野 誠也
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.386-391, 2008-07-01

航空宇宙システムの制御系は,その故障が重大な人身事故や多額の損失に至るために,高い信頼性が要求されている.本稿では,事例を紹介しながら,開発の歴史や将来の方向性を解説する.航空システムの制御系は,機体に搭載されたハードウエアのみならず,パイロットを含む閉ループ系で考察する必要がある.さらに地上支援の管制を含めれば,管制官を含むシステムで信頼性を扱う必要がある.安全性を高める目的で様々な対策が取られているが,人間が介在するために,人間中心の設計が重要であることが要求されている.一方,宇宙システムでは逆に人間が介在できない環境下で長期間運用することが要求されている.制御系を構成する電子部品には宇宙空間は厳しい環境であり,その環境でシステムが連続的に成立し続けることが必要である.高い信頼性の部品を使用し,冗長構成が採用され,故障が生じた時のFDIR機能を組込んだ制御系が使用される.それが厳しく制限させられたリソース内で実行されなければならない.また,ハードウエアの信頼性だけでなく,ソフトウエアの信頼性も高めることも必要である.その対策の事例を紹介する.
著者
大西 一功
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.37-45, 2004-01-25 (Released:2018-01-31)

微細加工技術の進展とともに,半導体素子の高密度高集積化が進み,パーソナルコンピュータから携帯電話,デジタルカメラと,今や社会のあらゆるところで当然のように使われるようになった.これは低消費電力,小型,高機能というだけでなく,非常に高い信頼性(故障し難い)を有しているためである.地球上のあらゆる環境で高信頼性を発揮する半導体素子であるが,原子炉周辺や宇宙放射線環境では非常に故障しやすい.本稿では,半導体素子の放射線から受ける影響について,物質との相互作用として,電離と変位損傷があり,これらが素子内部でどのようなメカニズムで故障や劣化を引き起こすのかを概説した.また半導体素子は宇宙応用には欠かせない部品であり,地上とは異なり故障すれぱボードを取り替えればよいというわけにいかないため,半導体素子の耐放射線性が如何に重要であるかを広く認識していただければとの願いを込めた.
著者
高橋 芳浩
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.460-467, 2014-11-01 (Released:2018-01-31)

半導体デバイス(集積回路)は地上においては非常に高い信頼性を有するが,人工衛星などに搭載して宇宙空間で使用すると,強い宇宙放射線を受けて特性劣化や誤動作が引き起こされることがある.宇宙空間は高エネルギーの陽子線,電子線,重イオンなどが高密度に存在する劣悪な放射線環境であり,これらが半導体デバイスに照射されると,構造内で電離(電荷発生)や結晶欠陥が生じる.放射線照射により半導体デバイスが受ける影響は,半導体デバイスの材料や構造,また放射線の種類やエネルギーにより異なり,吸収線量と共に電気的特性変化が蓄積される「トータルドーズ効果」,電離能力の高い荷電粒子の入射によって発生する「シングルイベント効果」,高エネルギーの粒子線照射による結晶欠陥を起因とした「変位損傷効果」に大別される.本稿では基礎的な放射線と物質との相互作用について示した後,放射線により半導体デバイスが受ける具体的な現象,および耐放射線性強化に関する研究例を紹介する.
著者
北河 博康
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.78-85, 2015-03-01 (Released:2018-01-31)

深刻な人手不足に悩む介護業界において,介護従事者の身体的・精神的な負担軽減や要介護者の自立促進を実現し,介護現場を支える一助として「サービスロボット」である「介護ロボット」が注目され,実用化に向けて介護福祉施設等にて試験的な導入が展開されているところである.一方で,介護ロボットでは,高齢者・要介護者など身体が不自由な方がユーザーとなるケースが多いため,事故防止およびリスクアセスメントへの特段の配慮とともに,万一事故が発生した場合に備えて,適切な「保険の手配」が不可欠である.介護ロボットの開発および普及・実用化の各段階における保険の現状と課題について解説する.
著者
佐藤 博之
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.141-147, 2018 (Released:2019-12-02)

日本信頼性学会・故障物性研究会では,不再現現象分科会を立上げ,電子機器や電子部品で発生する 不再現現象の事例を共有し,故障メカニズムや環境要因などとの関連性を調査・研究してきた.ここで は,不再現現象に結びつきやすい電子部品の故障メカニズムやその対策案について解説する.
著者
織原 幸一 齊藤 嘉久 中村 英夫 押立 貴志
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.191-199, 2017 (Released:2019-10-01)

我が国の鉄道は,1872(明治 5)年 10 月 14 日に開業した.鉄道の創始国であるイギリスよりも 47 年 遅れての出発であったが,2022 年には開業 150 年を迎える.その間,「安全と信頼」に対する先達の英 知と努力が脈々と受け継がれ,今日の我が国の安全・安心な鉄道を支えている.鉄道創成期における先 見性に満ちた技術的な選択や辛苦,新しい技術を積極的に導入してきた経緯を含め,我が国の鉄道信号 における安全性・信頼性技術の変遷について述べる
著者
和田 哲明
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.588-594, 2009-11-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15

耐用寿命の予測及び製造工程での欠陥による初期不良の除去(スクリーニング)のために,短期間で実使用上ストレスを加速する加速信頼性試験が用いられている.この加速試験の考え方と能動部品(半導体),受動部品(実装基板),電池(リチウムイオン電池)での事例を紹介する.加速試験では,加速要因を明確にすると共に,加速限界を十分に注意しなければ誤った信頼性予測となることも示す.
著者
佐藤 孝司 纐纈 伸子 橘 克一 下村 哲司
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.9-17, 2019 (Released:2022-01-13)

近年,お客様の要求に柔軟かつ素早く対応しながらソフトウェア開発を進めるのに適したアジャイル開発が多く導入されている.アジャイル開発では,小さく分割されたソフトウェアの開発要件を重要なものから順に開発することで,実現したいシステムの要求に柔軟かつ迅速に対応可能になる.筆者らの組織では,一部のパッケージソフトウェアの開発を,従来のウォーターフォール開発からアジャイル開発のスクラム手法に切り換えてきた.本稿では,ウォーターフォール開発で長年培ってきた開発プロセスのメトリクスによる定量的管理をスクラム手法にも応用して,スクラム手法のスプリントレビューにおいてメトリクスによる判定を加えた定量的管理の導入事例を紹介するとともに,適用効果を考察する.
著者
杉本 旭 蓬原 弘一 染谷 美枝
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.174-183, 1998-03-10 (Released:2018-03-02)

安全はリスクを許容できる限界まで下げることであり, 最悪の状況を想定した危険性評価(リスク評価)をまず行う。しかし, その評価に基づく防護策は, リスクの低減効果(確率)を求めながらも, 防護策の故障時の防護機能維持, 具体的には故障時機械が停止できることの立証(安全立証)を要求している。ここでは, 安全の確保が, まずリスク評価(確率論)によって危険性を認識するが, 高リスクに適用すべき高安全性が, 防護の構造に対する立証性を求めていることを示し, そのための基本的な論理について説明する。
著者
倉地 亮
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.68-76, 2017 (Released:2019-08-07)

現在販売されている自動車の多くは,安全性が高く設計されている一方で,セキュリティ対策が施さ れておらず,攻撃者に対して脆弱であることが幾つかの研究事例により指摘されている.このため,近 年,自動車のサイバーセキュリティに対して注目が集まっている.自動車のような安全性に関わる制御 システムが攻撃されると,人命や安全に対して様々な危害を加えることが可能である一方,コスト効率 の高い制御システムであるために,情報セキュリティで行われるような対策手法をそのまま適用出来な いことが課題とされている.本論では,これらの自動車のサイバーセキュリティ強化に向けた取り組み を中心に,現状を概説する.
著者
松井 元英
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.162-167, 2016 (Released:2019-07-22)

レールは鉄道の重要部材であるが,その材料劣化要因の一つである転がり疲労のメカニズムは十分に 解明されたとは言い難く,国内外でその解明に向けた取り組みが精力的に実施されている.本稿では, その取り組みの一つとして検討している X 線フーリエ解析について,車輪との繰り返し接触による転が り疲労がレール表層部の金属組織に与える影響と併せて,実物レールに適用した例について紹介する. X 線フーリエ解析は転位密度等の塑性ひずみに関連の深い指標を見積もることが可能である.使用履歴 の異なる実物レールを解析したところ,転がり疲労を受けたそれぞれの金属組織の相違を反映するよう に転がり疲労の影響が小さいと思われるものについてはX線フーリエ解析からも同様の結果が得られた. また,総じて転がり疲労層の最表面から内部に向かって転がり疲労による材料劣化が和らいでいくこと が確認された.このようなことから,レール転がり疲労層の最表面から急激に深さ方向に変化していく 材料劣化状態の定量化への適用が期待される.