著者
伊庭 斉志
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.471-480, 2006-11-01
被引用文献数
1

進化型計算を用いた金融データ予測の研究が近年盛んに行われている.本稿では,遺伝的プログラミング(GP,Genetic Programming)とその拡張手法であるSTROGANOFFを用いて,日経平均株価とオプション価格を予測する研究について説明する.実験の結果,GPとSTOROGANOFFによる予測はおおむね両方のデータにおいて安定した成績を残すことができた.ニューラルネットワークとの比較実験では,ニューラルネットによる探索には山登り法の性質が良く出ているが,最良値はGP系の手法より低く局所値への陥りやすさがしばしば観察された.
著者
北河 博康
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.78-85, 2015-03-01

深刻な人手不足に悩む介護業界において,介護従事者の身体的・精神的な負担軽減や要介護者の自立促進を実現し,介護現場を支える一助として「サービスロボット」である「介護ロボット」が注目され,実用化に向けて介護福祉施設等にて試験的な導入が展開されているところである.一方で,介護ロボットでは,高齢者・要介護者など身体が不自由な方がユーザーとなるケースが多いため,事故防止およびリスクアセスメントへの特段の配慮とともに,万一事故が発生した場合に備えて,適切な「保険の手配」が不可欠である.介護ロボットの開発および普及・実用化の各段階における保険の現状と課題について解説する.
著者
大村 平
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.520-521, 1997-11-10
著者
弓削 哲史 佐々木 正文 柳 繁
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.3-10, 1995-05-10
被引用文献数
2

本論文は電気回路におけるスイッチや流体システムのバルブ等のアベイラビリティ解析について述べたものである.ユニットには導通, 遮断という2種類の命令が定周期で繰り返し与えられ, 2種類以上の故障モードが存在すると仮定している.3種類の数学モデルが定義され, それぞれマルコフ過程に従うことを用いてアベイラビリティが計算される.これらのモデルと従来の2-stateモデルを比較するためにいくつかの数値例が与えられている.
著者
森貞 晃 小林 孝之 蓬原 弘一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.163-179, 2004-04-01
被引用文献数
6

本論文では機械安全に関する国際規格上での人間/機械安全作業シテムの扱いをインタロック構造として定式化する。まず人間と機械が協調して作業を行うシステムで人間側と機械可動部側の作業状態を各々3通りに分けて、その結果として生じる人間/機械間の組み合わせ状態での安全確保論理をインタロック構造として定式化する。本論文で示すインタロックシステムは機械側の作業状態に対して再起動防止制御の機能をもつ。このため、機械側の作業実行状態において人間側が確実に安全状態に固定されるようなインタロックシステムと人間側が必ずしも安全状態に固定されないままで機械側は作業実行中とみなされる状態を継続するようなインタロックシステムを考えることができる。前者を相互インタロックシステム、後者を自己確認型インタロックシステムと呼んで両者の各々を定式化して示す。
著者
松田 栄之 中村 太一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.307-313, 2001-05-29
被引用文献数
2

インターネットの普及によりネットワークに接続されているパソコンなどの端末やサーバの数が急速に増大している.いつでも, どこでも, 気軽に利用できるインターネットの普及によりそのサービス形態にも大きな変化をもたらしている.従来のシステムは, 国内のユーザのみを対象にして, 朝8時から夜7時までのサービスというような形態であった.しかし, インターネットでのサービスは, 世界中のユーザを対象にし, 24時間365日の稼動が求められる.インターネットが社会のインフラとなりつつあり, システム構築にオープンシステムを利用するようになり構築技術も変わってきている.また, インターネット時代のサービスを保証する考え方も新しく生まれてきている.本稿では, システムの信頼性, 特に可用性を中心にインターネット時代のネットワークシステムの構築に関する動向について述べる.
著者
笠井 尚哉 関根 和喜
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.366-373, 2007-09-01

開放検査を行なわず,操業中に石油タンク底部の腐食損傷評価を可能にする新しいAE(Acoustic Emission)グローバル診断システムの考え方と内容を紹介した.この技術は,消防法に準拠して計測された離散的板厚データ群を整理して得られる腐食リスクパラメータとAE計測から求められるAE活動度が相関を持つことをベースとしている.多くの実タンクを対象に,得られた腐食リスクパラメータとAE活動度からデータベースを構築することで,腐食評価検量線を作成し,これを用いれば,供用中のAE活動度計測から,石油タンク底部全体としての腐食損傷を定量的に評価することが可能となる.この診断システムの大きな特徴は,法規に基づき行われている離散的板厚計測で保障される評価と等価な評価結果が担保される点にある.従って,現行腐食管理技術の低コスト代替評価技術として汎用化されることが期待されている.
著者
秋田 雄志 荻野 隆彦
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.71-79, 2005
参考文献数
13
被引用文献数
6

鉄道の安全性を維持し、さらに向上するにはリスクの概念を採り入れた目標管理が必要である。本論文は、最初に過去50年間に発生した日本の鉄道の致死事故を分析し、事故の規模に応じた事故死リスクの実績を示す。次に、鉄道における事故死リスクを、自発的行為の結果を含む事故死リスクR_Aと被災による事故死リスクR_Bに分け、それぞれに対して許容リスク水準R_<A1>とR_<B1>、および広く受容されるリスク水準R_<A2>とR_<B2>の指標値を提案する。また、他の輸送機関における致死事故のリスク実績との比較等により、提案する水準の妥当性を考察する。
著者
横川 慎二
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.811-820, 2003-11-25
被引用文献数
2

ロジックLSIのトランジスタ間を接続するCu配線のエレクトロマイグレーション試験では,寿命分布がBimodal(双山)形状となることが最近報告されている.このBimodal分布の分布形状の把握には,大量のサンプルと長時間の試験が必要となる.また,故障解析も容易ではない.今回,1個のサンプル中に多数の試験対象セグメントを含むTEG(Test Element Group)を開発した.これを用いたサドンデス試験法により,少数サンプルによる試験でも,多数サンプル評価に匹敵する結果を得ることが出来た.同時に,試験時間の短縮を可能にした.加えて, OBIRCH (Optical Beam Induced Resistance CHange)による解析を考慮した設計により,故障解析の容易化を実現した.実験の結果,初期分布は上下配線層を接続するvia中のボイドモードであり,真性分布はvia下のボイドモードであることがわかった.
著者
高田 毅士
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 = The journal of Reliability Engineering Association of Japan (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.84-89, 2010-03-01
参考文献数
10

構造物,設備や部品から観測データや試験データが入手できれば,これらの性能の評価精度は向上する.これにはベイズの更新理論(Bayesian Updating Theory)が有効であることはよく知られている.具体的には,対象物の保証試験(Proof test)による試験データあるいは無被害データ(大きな力を受けても壊れなかったという事実)を有効に利用できる.また,構造物に作用する外荷重の評価においても建設地点固有の観測データが得られれば容易にベイズ更新理論を応用してより精度の高い予測を行うことができる.本解説ではこれらの応用例を紹介する.まず,保証截荷試験を構造信頼性理論の視点から論じ,構造部材の耐力に関する試験データという新しく獲得された情報を用いて対象部材の信頼性を評価した場合,試験実施の効果について論じている.ベイズの更新理論の応用例として,近年,高密度に配備されてきた全国地震観測網で観測される地震動データを活用して,観測点固有の地震動予測式を構築することができ,その有用性について紹介している.いずれの応用においても,貴重なデータを最大限に活用しようとする試みであり,試験や観測実施のインセンティブとなることを願っている.
著者
奈良 登喜雄
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.406-411, 2008-07-01

平成20年2月23日にH-IIAロケット14号機を打上げ,超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」を所定の軌道に役人することに成功した.これは民間移管された三菱重工業株式会社(以下MHI)によるH-IIAロケット打上げ輸送サービスとしては2機目の打上げである.今後この打上げ輸送サービス事業を発展させていくためには,打上げ成功の実績を積み重ねて衛星顧客の信頼を得ることが必須である.本報告では,H-IIAロケット打上げ成功を継続させるための信頼性向上への取り組みを紹介する.
著者
伊藤 貞則
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.670-677, 2008-11-01
被引用文献数
1

市場の要求品質のレベルアップと軽薄短小,環境代替,新技術の投入などを含んだ新商品の開発期間の短縮化は,信頼性評価に対し入念な評価と早期の判断を要求することになっている.信頼性技術はこの要求に応えなければならない.本稿では如何に故障を炙りだすかの観点から筆者が経験した信頼性試験事例を中心に紹介する.
著者
川上 大介 阿部 俊一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.68-71, 1995-11-10

機器の使用時間Xと使用回数Yが共に機器の劣化に影響を与える場合、XとYから合成されたストレスZによって機器故障が起こるというモデルが、ある一定の条件を満たせばXのみまたはYのみを考慮した場合の最適予防保全計画よりも費用が小さくなることが示されている。そこで本報告では前報告の結果をさらに般化し、また、ある具体的な事例を取り上げ、Zの確率分布がワイブル分布で、観測データが両側から打ち切られた2変量不完全データの場合の計算例を示す。
著者
坂 清次
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.431-437, 2006-10-01
参考文献数
2

あり得ないJCO事故で20世紀が終わり21世紀の幕が明けたが,牛乳集団中毒事件,自動車のリコール隠し,牛肉偽装事件,回転ドア死亡事故などに始まりアスベスト問題,相次ぐ鉄道事故や耐震偽装事件,原子力発電所死亡事故から最近はエレベーター,ガス瞬間湯沸かし器,シュレッダー事故など事件・事故が続発している.また新興IT会社や伝統のある大企業の粉飾決算や公共事業をめぐる談合問題など企業不祥事も相次いでいる.一方で学術研究分野でも捏造や資金の不正使用などが国内外で大きな問題となっている.当事者である技術者や企業・組織の取り組む問題として技術者倫理,企業倫理とともに企業・組織の社会的責任が大きな関心を集めているが,これらを読み解く鍵に社会の激変がある.コーポレートガバナンス,コンプライアンス,アカウンタビリティー,リスクマネジメント,ステークホルダー,CSR,SR,SRIなどカタカナ・横文字のオンパレードであるが問題の国際性がうかがわれる.以下では,安全とは何かから表題の技術者倫理,企業倫理と社会的責任について,非寛容さを増している社会の変化を踏まえて展望してみる.
著者
平山 雅之
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.206-214, 2008-05-01

近年,様々な分野でコンピュータを利用した組込みシステムが利用されるようになってきている.これらの組込みシステムを構成する要素の中でも特にそれらに組み込まれて動作する組込みソフトウェアの信頼性を如何に確実なものとするかは極めて重要な課題となってきている.本稿では,組込みソフトウェアの品質を向上させるための考え方を紹介していく.
著者
伊藤 誠
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.354-360, 2003-06-25
被引用文献数
4 1

自動化は作業効率や安全の向上に貢献しうる反面,利用者がシステムに頼りすぎるとかえって安全性が損なわれうるため,過信の防止が重要な課題である.しかし,過信を防ぐための方法は確立しておらず,概念の整理も十分でない.本校では,過信を分類することによって,過信が単なる慢心や油断だけではなく,誰にでも起きうるものでもあることを指摘する.さらに,自動化システムの動作限界を利用者に正しく理解させることの重要性を示す.
著者
杉本 旭
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 = The journal of Reliability Engineering Association of Japan (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.276-281, 2011-09-01
参考文献数
5

国際規格ISO12100によれば,「安全とは受け入れ難いリスクがないこと」である.よって,マネジメントの立場から,「製造者は,許容されるリスクレベルの製品を提供すべき」とする安全の原理(Risk-based management safety)が存在する.もう一つの設計者による安全確認の原理(Design-based control safety)は,「危険の可能性のある機械的操作は安全確認を条件とし,安全が確認できないときは操作を実行しない」とされ,安全確認の原理とも言われる.技術的限界で残る危険であれば,使用者(労働者)に使用安全(Safety of use)を委託することになるが,その場合,使用者(労働者)は,安全の原則に準拠して達した「許容リスク」と「使用安全の条件」に関する説明を受ける権利を有する.本論文では,「安全確認→運転許可」の安全確認の原理に則り,運転許可を与える安全の条件を制御によって積極的に作り出す安全を「積極的安全」と位置づけ,わが国の消極的安全と対峙し,近年の欧州が機械の高稼働率のために適用している積極的安全について述べる.