- 著者
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大庭 英雄
- 出版者
- 日本信頼性学会
- 雑誌
- 日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.7, pp.388-399, 1999-09
21世紀の前半には, 欧米から出発した情報革命によって, 世界を巻き込んで政治・経済・社会・文化などが連携し, 情報を知的に活用する社会システムが確立されること想定されており, これを情報社会と言う.情報社会では, 情報と言う媒体を共有して, 国という境界が薄れ, 世界を巻き込んだ共同体としての新しい社会システムに移行するのであるが, そのとき, 情報を積極的に活用する環境を整備した欧米と乗り遅れた各国との間には, 国の繁栄に大きな格差が生じてくる.また, クライシスにおいても世界では, 戦争, テロ, ゲリラ闘争, 組織犯罪, 大量殺害事件, 爆発事故や原子力発電所等の事故, 自然災害, 人災, 政治的なクライシス, 金融不安・通貨不安, エネルギー, 貿易のアンバランスなどから発生する関税障壁, 人口爆発/食料, 難民流入, 宇宙機の落下, 隕石の落下, ミサイルの(誤)発射, 情報戦略戦争など数限りなく発生することが考えられる.欧米では, 情報社会で構築された情報を知的に活用し, これらあらゆるクライシスを想定し, 即応的に真の原因や要因を正しく理解した上でクライシス未然の防止策など, 被害を最小限に食い止めるために知的なクライシスコントロールの研究開発がなされている.我が国は, 島国で閉鎖環境にあり, 危機意識が非常に薄い傾向にある.21世紀に向けて, 情報社会の社会システム構築と平行して, 情報社会におけるクライシスコントロールを真剣に取り組む必要がある.