著者
ノヴァック デイビッド 松井 恵麻
出版者
大阪市立大学都市研究プラザ
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.23, pp.181-198, 2020

今日、日本の都市部において、非営利で草の根的なアートの組織が問題を抱えた都市地域の中で展開されている。そうした場所では、創造的活動の中でも新自由主義的な手法が、社会的または経済的に排除された人々や場所を支援するために利用されている。ジェントリフィケーションは、現代社会の中で広く見受けられる現象であるものの、ポスト工業化した日本の都市地域では、そうした実践が特別な波及効果を生み出す、地域の文化的表現によって支えられている。……

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著者
グレゴリー デレク 潟山 健一[訳] 大城 直樹[訳]
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.3, pp.170-208, 1998

l 地理学再考 : 私はこの論文の題目を、地理的想像力a geographical imaginationが自分にとっては欠くことの出来ないものであるとする類希な批評家の一人、エドワード・サイードEdward Saidから拝借している。彼はあるとき次のように明言していた。「気づいてみれば、自分のしていること」は「地理について考え直すということ」なのであると。……
著者
馬場 康治
出版者
大阪市立大学文学部地理学教室
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.5, pp.10-36, 2000
被引用文献数
1

1. はじめに : 1.1. 問題の所在 : 日本における外国人労働者受け入れの基本方針は、「専門的な技術、技能又は知識を生かして職業活動に従事する外国人の入国・残留は認めるが、これら以外の外国人労働者(いわゆる単純労働の分野で働く外国人)の入国・残留は認めない」というものである。その根拠は、日本の「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)に定められた、日本に入国・在留する外国人の必要とする在留資格に求められる。……
著者
Mitchell Don 森 正人
出版者
大阪市立大学都市研究プラザ
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.7, pp.118-137, 2002

「新しい文化地理学」における「文化」の再概念化は, 諸過程や政治, そして社会生活の他の「諸領域」との相互関係へと関心を転換させる上で重要であるとしてきた。しかしこの再概念化は理論的または経験的な進歩を引き起こしたけれども, 文化地理学は「文化」を物象化し続けているし, それに存在論的なまたは説明的な地位を与えている。本稿において私は, そのような物象化が誤った考えであり, また文化地理学は「新しい文化地理学」に従っているためにその論理的な帰結を(存在論的な)ものとして文化は存在しえないという認識へといたらせることでより良きものとなるであろうことについて議論する。その代わりに私は, 文化という観念(もしくはイデオロギー)の唯物論的な展開に焦点を当てて議論をおこなう。.......
著者
成瀬 厚
出版者
大阪市立大学都市研究プラザ
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.23, pp.3-12, 2020

本稿は, 地名研究における新しい方向性を見出そうという試みである. 地名は大小の空間スケールを有する地理的実体に付された名称であり, 階層性を有する. ……
著者
網島 聖
出版者
大阪市立大学都市研究プラザ
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.23, pp.13-35, 2020

I はじめに : 西日本の大学にある人文系地理学教室の多くが史学科ないし史学地理学科に所属していたという伝統を共有する。その発信源となったのが、第二次世界大戦前における……
著者
メリフィールド アンディ 小谷 真千代 原口 剛
出版者
大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科
雑誌
空間・社会・地理思想 = Space, society and geographical thought (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.21, pp.107-114, 2018

晩年のアンリ・ルフェーヴルによるエッセイの一つ、「溶解する都市、地球の変貌」。1989年に『ル・モンド・ディプロマティーク』に掲載されたこのエッセイは、彼の著作のなかでもひときわ謎めいている。このタイトルが語るのは、ふたつが対であること、ただそれだけだ。……
著者
ネスミス キャシー ラドクリフ サラ 山元 貴継[訳] 神谷 浩夫[訳]
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.4, pp.94-108, 1999

近年盛んになりつつある女性と自然、環境をめぐる言説は、環境フェミニズムあるいはエコズムという総称でくくられる。現境問題に対する地理的アプローチを発展させるために、環境フェミニズムによって提起された諸問題に対する批判的検討が行なわれる。地理学の読者に対して環境フェミニズムの原理を手短かに紹介したのち、将来の地理学的研究のための三つの領域が概述される。それは、第1に自然と文化、ジェンダー、第2にグローバルな開発と環境とのジェンダー化された関係、第3にジェンダー化された景観とアイデンティティの問題である。とくに、フェミニズム地理学と文化地理学的考察は、環境フェミニズムのアプローチの将来的な発展に対して重要な扉になると主張される。
著者
Pred Allan 西部 均
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.9, pp.148-167, 2004

本稿は, 従来とは異なるタイプの地域地理学あるいは場所中心の地理学のために, 理論的基礎を提示するものである。その枠組みは, 時間地理学と登場しつつある構造化理論を集約したものに基づいている。それはまた, 景観として眼に映るさまざまな特徴の組み合わせとしてだけでなく, 絶えず生成する人間の生産物としても, 場所を概念化することで構築される。場所はひとつの過程とみなされ, その過程を介して社会的・文化的諸形態の再生産, おのおのの個人誌の形成, 自然の変形がやむことなく相互生成し, 同時に時間-空間の種別的な諸活動や権力諸関係が絶え間なく相互生成する。さらに, こうした諸現象が場所や地域の生成過程に織り込まれるときには, 普遍的法則にしたがうのではなく, 歴史的状況に応じてさまざまなやり方があると強調される。その枠組みからおのずと浮かび上がる三つの経験的論点について, 手短に検討される。
著者
加藤 政洋
出版者
大阪市立大学文学部地理学教室
雑誌
空間・社会・地理思想 (ISSN:13423282)
巻号頁・発行日
no.6, pp.51-58, 2001
被引用文献数
1

I はじめに : (1)課題 : 1935年に編まれた『大阪市域拡張史』には、大正期に形成された大阪市街地北部に位置する豊崎町について「大小二百有余の工場軒を並べ、煤煙天を覆ふの盛況を呈し、工場都市北大阪の大を誇るの観があった」、同じく南部に位置する今宮町についても、「其の状態全く市内と異らず、人口七万五千四百余人、戸数一万八千四百を有する全国著名の大町」であると記されている。このように近代都市大阪を工業都市として表象する場合、工場と煤煙、そして戸口の規模は誇るべき特徴になる。だが、ひるがえって、当時の市政の枢要を占めていた社会事業の点からみた場合、どちらの地区も「不衛生住宅地区」や「過密住宅地区」として表象され改善されるべき事業対象であった。実際に、今宮町に位置し、現在では日本最大の「寄せ場」として知られている「釜ヶ崎」については、「五十戸の安宿が軒を並べ、之に止泊する日稼労働者五千人を超へ、社会施設の急愈々切なるものがあった」とも記されているのである。「寄せ場」には日雇い労働者のための簡易宿泊所(ドヤ)が集中的に立地しているが、さきの昭和戦前期の記述にも見られるとおり、戦前の「釜ヶ崎」には、「日稼労働者」のための「安宿」と呼ばれる日払いを原則とした「木賃宿」を指す宿泊施設が多数存在していたようである。……