著者
ポン・ヴェン・キェン 屋井 鉄雄
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.2-14, 2016

<p>本研究の目的は,プノンペンで新たに導入されたバスを対象に,パラトランジット運転者がバスをどう受け入れるかと,端末交通としての事業運営の意向を明らかにすることである.運営企業であるMotodopsとRemorksの運転者へのインタビュー調査結果を用いて構造方程式を構築した結果,端末交通としての事業運営に対して,Motodops運転者はバスをどう受容するかに関わらず前向きである一方,Remorks運転者は生計への悪影響の恐れから後ろ向きであることが明らかになった.これを踏まえ,端末交通への参加を促すためのパラトランジットへの規制についても考察した.</p>
著者
赤倉 康寛 竹村 慎治
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.17-23, 2011

<p>北米航路コンテナ船の最短ルートである日本海に近接しているとの優位性を踏まえ,日本海側拠点港湾の検討が開始されようとしている.しかし,これまで,日本海を通航した全てのコンテナ船を把握することは困難であったため,定量的に通航隻数を把握した統計データや研究は見当たらなかった.以上を踏まえ,本研究は,船舶動静データに,津軽・関門海峡におけるAIS(船舶自動識別装置)データを組み合わせることにより,北米航路コンテナ船の日本周辺での通航海域を把握・分析したものである.さらに,過去の通航海域についても推計を行った.</p>
著者
浅井 康次
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.55-59, 2008

<p>本稿はケーブルカーを核とする観光鉄道の現況を,主として経営面から概説したものである.路線の類型化,運行面における特徴,コスト構造,行楽地アクセスとしての地位,入込客数との相関を示し,廃止路線の要因分析を試みた.経営は厳しく廃止もみられるが,地域活性化に資し環境適合性の高い観光鉄道を再評価,存続維持を模索する時期にきている.</p>
著者
楠木 行雄
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.002-010, 2015-04-24 (Released:2019-02-12)
参考文献数
49

大手民鉄の大都市の路線に対する外資ファンドの廃止要求が株式の公開買付けに際して明らかになり,外為法の規制の適用,個別法への外資規制の導入,事業廃止規制の復活が要望されている.対象の5線のうち4線は輸送密度が8千人を超えているが,5線すべてが赤字と推定される.この問題は鉄道業の収支構造からみて他の大手民鉄にも可能性があり,大部分の大手民鉄には買収防衛策があるが機能しないこともありうる.しかし外為法の適用は容易でなく,外資規制の導入は前提条件に欠ける.鉄道特性のある路線の廃止の申請は,鉄道事業法が想定していなかったことであるので,事業廃止の部分認可制の創設又は事業改善命令の活用が必要である.
著者
中条 潮 伊藤 規子
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-32, 1998

<p>本稿は英国とオーストラリアの空港民営化およびニュージーランドの管制の公有商業会社化を紹介することによって,航空下部構造の民営化・商業会社化が価格の低下と投資の拡大を含む良好な成果をもたらすと考えられることを示す.また,民営化・商業会社化を日本で実行するためには,内部補助システムを排除し,思い切った規制緩和を実行し,経営の自由度を保証することが必要であることを述べる.</p>
著者
塚田 幸広 長澤 光太郎
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.029-035, 2009-04-21 (Released:2019-05-31)
参考文献数
20

道路政策の分野では有料道路料金割引施策やスマートICなど,全国的な社会実験が多く行われており,各社会実験の事例ではそれぞれ地域住民等の参加を得つつ,地域の実情に応じて施策の内容や方法に工夫が加えられるなど,PDCAサイクルで事業が改善されている.学会でも,これらの社会実験から得られた知見に基づいた様々な研究事例が報告され始めた.本報告では,有料道路料金割引の社会実験を一つの例として,その普及の経緯を概観し,分析事例を紹介する.その上で,①社会実験の特徴と成立要件,②時間管理手段としての社会実験の特徴,③社会実験が社会基盤の政策マネジメントに果たす役割,の3点について考察を加えた.
著者
森川 高行 永松 良崇 三古 展弘
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.20-29, 2004
被引用文献数
3

<p>需要予測における誤差要因を解明するため,愛知県小牧市の名鉄小牧駅と桃花台ニュータウンを結ぶ桃花台線ピーチライナーを取り上げ検証した.計画者が4段階推計法を用いて行った需要予測値約31,000人/日は実績値約2,100人/日の約15倍の過大予測であった(比較年:1991年).分析の結果,ニュータウン入居者数の予測誤差による「発生」段階で約1.7倍,分担率曲線の時間移転性や競合路線の未考慮による「分担」段階で約7倍の誤差が確認された.計画者と同じデータを用いて構築した非集計モデルでは,競合路線と予測時点の社会経済属性の前提が適切であれば,予測が実績に大きく近づくことが示された.</p>
著者
藤井 聡
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.2-9, 2004
被引用文献数
2

<p>交通ネットワーク整備をはじめとする様々な交通政策を実施する際に近隣住民の合意が得られず,それ故にその政策を実施できないという局面は年々増加しているものと考えられる.こうした合意形成の問題に対処すべく,本稿では,社会的ジレンマ(藤井,2003)の理論的枠組を用いて社会状況を捉えることで,人々が特定の政策に対して合意する傾向を促進できる可能性を,社会心理学的アプローチに基づいて探る.特に,行政手続きに対する公正感(i.e. 手続き的公正)と行政に対する信頼の重要性を指摘するとともに,それらの高揚を目指すためには計画の修正可能性を担保すること,そして,計画上の誤りが明らかとなった場合には行政側の謝罪が決定的な役割を演ずることを理論的に指摘する.</p>
著者
楠木 行雄
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.010-021, 2011-01-31 (Released:2019-05-31)
参考文献数
43

2010年8月に開始された「東京の地下鉄の一元化等に関する協議会」は,国,東京都,東京メトロのそれぞれの主張があって,難航の兆しがある.本稿は,都営地下鉄とメトロの統合,メトロの完全民営化及び利用者サービス改善の関係を歴史的な経緯から,分析するとともに,これまでの著作で分析の重点になかった最近の一元化についての都の主張の背景を探求した.また,本稿では,各種調整手段に関連して統合や運賃水準統一の是非を検討するとともに,交通調整の根拠であった陸上交通事業調整法がまだ生きていることから,その復活適用の可能性や独占禁止法との関係についても論じた.
著者
藤井 聡
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.002-009, 2004-10-29 (Released:2019-05-31)
参考文献数
17

交通ネットワーク整備をはじめとする様々な交通政策を実施する際に近隣住民の合意が得られず,それ故にその政策を実施できないという局面は年々増加しているものと考えられる.こうした合意形成の問題に対処すべく,本稿では,社会的ジレンマ(藤井,2003)の理論的枠組を用いて社会状況を捉えることで,人々が特定の政策に対して合意する傾向を促進できる可能性を,社会心理学的アプローチに基づいて探る.特に,行政手続きに対する公正感(i.e. 手続き的公正)と行政に対する信頼の重要性を指摘するとともに,それらの高揚を目指すためには計画の修正可能性を担保すること,そして,計画上の誤りが明らかとなった場合には行政側の謝罪が決定的な役割を演ずることを理論的に指摘する.
著者
原田 昇
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
2020

<p>この本は,MaaS(Mobility as a Service)の実践を検討している若手の騎士四名(日高洋祐,牧村和彦,井上岳一,井上佳三)が,世界的に進むMaaSの議論と実践を踏まえて,MaaSの「本質」を事例とともに解説し,その「先」にある交通,社会,ならびに全産業のビジネスモデルの変革を論じたものである.世界にやや遅れてMaaSへの取り組みが進んでいる我が国において,MaaSに取り組むあらゆる人たちに,そして,その社会的影響に関心のある人たちに,役立つ内容となっている.</p>
著者
谷口 守
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
2020

<p>楽しい本である.たとえて言えば,まるでバイキング料理のようだ.執筆者はそれぞれの専門分野から総勢18名.書き方や内容を特に調整している様子はうかがえない.自動運転というキーワードのみ著者間共通で,あとは素材の切り取り方も味付けもそれぞれに自由奔放である.全部で16章ある各章のポイントとなる用語を独断で抜き出して並べてみても,「幸せ」「安全・安心」「戦略」「つながる」「管制システム」「ゲームAI」「ロボット」「イノベーションジレンマ」「建築」「都市」「公共交通」「高齢ドライバー」「パーソナルモビリティ」「運輸人手不足解消」「農業自動化」「電力事業」とそのカバーする範囲は極めて広い.自動運転がタイトルにつく書籍は近年とみに増えているが,その中でも異色の存在といえよう.また,内容から判断し,自動運転だけの領域にとどまらず,いわゆるCASEと呼ばれるモビリティ・イノベーション全体を視座に含めた書籍と位置付ける方が適切だろう.</p>
著者
小坂 浩之 布施 正暁 鹿島 茂
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.020-031, 2012-07-24 (Released:2019-04-03)
参考文献数
44

本稿は,貿易統計に存在する不整合問題について検討する.貿易統計の不整合問題は,ある国が公表する輸入額と,それに対応する相手国が公表する輸出額が一致しない問題である.この問題は,様々な研究者や組織によって古くから検討が続けられているが,貿易額に関する分析が多く,貿易数量に関する分析は少ない.本稿は,貿易統計の不整合問題に関するレビューを行うと共に,アジア地域の貿易統計データを使用し,特に数量データに着目して不整合問題の特性把握を行った.その結果,数量データを活用することで,不整合問題を調整するための有益な知見が得られることを示している.
著者
小坂 浩之 谷下 雅義 鹿島 茂
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.19-31, 2001

<p>港湾計画や船舶の運航形態等の分析に用いる国際海上貨物流動統計は,その特性や精度が示されている必要がある.本研究は,重量とTEUベースで国・地域間の海上貨物流動量を示す統計を対象とし,その現状を示すことを目的とする.国際海上貨物流動量は,荷主や船社の輸送量から直接把握されるのに加え,金額ベースの貿易統計を用いた推計から把握される.そのため,最初に,国連統計局の既存研究である貿易統計から重量ベースの国際海上貨物流動量を推計する手法を検討する.次に,アメリカ,EU,アジア地域の重量とTEUベースの国際海上貨物流動統計の現状を示す.特にアジア地域においては,既存の統計を比較し,その特性と精度を示す.</p>