著者
益子 洋人
出版者
日本学校心理学会
雑誌
学校心理学研究 (ISSN:13465732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.61-68, 2022-03-31 (Released:2022-06-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では,コンフリクト解決教育プログラムからメディエーションの要素を取り上げ,異質性の受容に及ぼす影響をbootstrap法によって検討した。中高一貫校に在籍する有志生徒20名の回答を分析した結果,コンフリクト解決の態度やスキルの全4因子で得点が有意に向上し,先行研究と同等以上の効果が示された。また,異質性の受容に関する指標にも改善が見られ,コンフリクト解決教育が共生教育に一定の効果を持つことが示唆された。
著者
上倉 安代 大川 一郎 益子 洋人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.21306, (Released:2021-11-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

Dohsa-hou therapists assist clients through physical contact, however, this is not advisable during the coronavirus pandemic; instead, contactless Dohsa-hou is safer and more secure. In this study, we examined the possibilities of applying contactless Dohsa-hou for outpatients with schizophrenia as a self-care method and its effects on them. We administered the program 7 times for 8 outpatients with schizophrenia in a psychiatric rehabilitation center. Thereafter, they underwent a voluntary implementation period for two to three weeks at home. The results suggested that the contactless Dohsa-hou improved self-existence of mind and body (d = 0.83) notably, and slightly improved sense of independence (d = 0.49), balance of mind and body (d = 0.21), irritability and anger (d = 0.23), well-being (d = 0.39), and third-party evaluation (d = 0.29). Therefore, the study showed that contactless Dohsa-hou can stabilize the physical and mental state, even when conducted under the self-restraint period during the pandemic. This study may provide helpful information in implementing contactless Dohsa-hou for outpatients with schizophrenia amid the coronavirus pandemic.
著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2010-10-01

本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。
著者
益子 洋人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.133-145, 2013 (Released:2013-10-10)
参考文献数
32
被引用文献数
8 1

本研究では, 過剰適応を「関係維持・対立回避的行動」と「本来感」から捉えた。本研究の目的は, 自他双方が満足できる葛藤解決を目指す「統合的葛藤解決スキル」をとる程度と, 関係維持・対立回避的行動, 本来感との関連を検討することであった。予備調査では, 大学生429名の回答を分析し, 「丁寧な自己表現」「粘り強さ」「受容・共感」「統合的志向」からなる統合的葛藤解決スキル尺度(Integrating Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)を開発した。α係数や再検査信頼性の値から, 一定の信頼性が確認された。また, 社会的スキル, 友人満足感, 対人葛藤方略スタイルとの相関分析から, 一定の妥当性が確認された。本調査では, 大学生197名の回答を分析し, 統合的葛藤解決スキルと関係維持・対立回避的行動, 本来感の関連を検討した。共分散構造分析の結果, 統合的葛藤解決スキルは本来感を向上させ, 過剰適応者の適応を促進する可能性が示唆された。
著者
上倉 安代 益子 洋人
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.21308, (Released:2022-06-30)
参考文献数
26

Dohsa-hou therapists usually assist clients through physical contact but physical contact is not advisable during the coronavirus pandemic. We explored a non-contact form of self-care Dohsa-hou that clients could conduct by themselves with the aid of therapists’ instruction, advice, and feedback. In this study, we created two groups of young adults for a single 60-minute session: a face-to-face Dohsa-hou group (N = 28) and an online Dohsa-hou group (N = 17) via a video platform. We compared the effects of stress reactions, the sense of mind-body harmony, and authenticity. The results indicated that both methods were equally effective in reducing stress reactions and in increasing the sense of mind-body harmony and authenticity. The online group showed larger effect sizes in the sense of physical stability and authenticity compared with the face-to-face group. These effects were obtained by using visual information and deepening immersions in the online Dohsa-hou group. Self-care Dohsa-hou would be useful for young adults because they could engage in Dohsa tasks without the therapist’s physical assistance and maintain a healthy mind-body harmony.
著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-26, 2010-10-01 (Released:2021-04-08)
被引用文献数
3

本研究の目的は,過剰適応傾向を「対人関係や社会集団において,他者の期待に過剰に応えようとするあまりに,自分らしくある感覚を失ってしまいがちな傾向」と定義した上で,本来感に対する過剰な外的適応行動と内省傾向(自分の感情を理解しようとする傾向)の影響を検討し,過剰適応的な人の本来感を高める方法を考察することであった。大学生を対象に質問紙を配布し,163名の回答を分析した。分析の結果,過剰な外的適応行動のうち,「よく思われたい欲求」および「自己抑制」は,本来感と中程度の負の関連を示していた。また,内省傾向は,本来感と弱い正の関連を示していた。この結果は,他者によく思われようと努力したり自分を抑えたりする行動は本来感を減少させるが,自分の感情を理解しようとする傾向は本来感を向上させると解釈された。ここから,過剰適応傾向の高い人の本来感を高めるためには,過剰な外的適応行動を間接的に軽減するため,その原因であるとされる見捨てられ不安を緩和する方法を開発していくことや,過剰な外的適応行動の低減が難しい場合に備えて内省傾向を高める働きかけを行うことが必要であると考察された。
著者
益子 洋人
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.69-76, 2009-09-30 (Released:2021-04-08)
被引用文献数
1

本研究では,過剰適応傾向を「自分の気持ちを後回しにしてでも,他者から期待された役割や行為に応えようとする傾向」と定義した。本研究の目的は,第一に,一般高校生における過剰適応傾向と抑うつ,強迫,対人恐怖心性,不登校傾向との関連を検討すること,第二に,過剰適応傾向のサブタイプによって,それら4つの精神的健康指標がどのように異なるのかを,探索的に検討することである。420名の高校生に,質問紙調査を行った。相関分析の結果,過剰適応傾向のすべての因子は,抑うつ,強迫,対人恐怖と,有意な正の関連を示した。中でも抑うつと対人恐怖は,比較的強い関連を示しており,強迫は,比較的弱い関連を示していた。他方,不登校傾向は,過剰適応傾向の一部の因子としか有意な正の相関を示さず,関連も弱いものだった。また,過剰適応の5つのサブタイプを独立変数,精神的健康指標を従属変数とする一元配置分散分析の結果,各因子得点が高い過剰適応群は,多数がcut off pointを超えるほどに不健康であり,いくつかの因子得点が高い群がそれに続くが,「自己不全感」が低い群は,過剰適応していない群と同程度にしか不健康ではないことが示された。以上の結果から,一般の高校生における過剰適応傾向は,特に抑うつや対人恐怖につながりやすく,強迫や不登校にはあまりつながらないであろうことや,全般的に過剰適応している群は,精神的健康において,臨床群とほぼ同等の問題を抱えている可能性があること,過剰適応的な行動をとっていても,「自己不全感」が高まっていなければ,比較的健康に過ごせる可能性があることが明らかになった。今後の課題として,過剰適応傾向,特に「自己不全感」を低減させるための具体的な方法を開発することや,過剰適応と特定の不適応との関連を明らかにすることがあげられる。
著者
大川 一郎 上倉 安代 清水 良三 益子 洋人
出版者
日本老年行動科学会
雑誌
高齢者のケアと行動科学 (ISSN:18803474)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.41-56, 2021 (Released:2021-12-25)

このコロナ禍の中,高齢者施設等で行われていた体操やからだを使ったレクリエーション等が感染防止という目的の中で控えられている。また,世界中で会議・講演・講義・研修が Zoom や Microsoft teams 等のアプリケーションを用いて行われるようにもなってきている。このような現状を踏まえ,本研究では,高齢者支援する人を対象にして,健康動作法による心理的支援のための実習(講義・実技)をオンライン(同時双方向)で行う方法論について取扱説明書という形で提示することを目的とする。具体的には,説明と実技という実習形式で健康動作法を行うための方法を,その準備から説明,実技,参加者へのアンケートという一連の流れの中で構造化し,そのポイントを提示し,チェックリストを作成し,それらを取扱説明書としてまとめていく。併せて,高齢者に実施する際の支援者サイドの留意点についての考察も行う。
著者
益子 洋人
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.125-132, 2020-08

本研究の目的は,援助要請における利益・コストの予期がその意図におよぼす影響を,過剰適応傾向の調整効果を確認するという観点から再検討することであった。大学生179名の回答を分析の対象として,「援助要請意図」の3因子を目的変数,援助要請における利益・コストの予期と過剰適応傾向の各因子を説明変数とする階層的重回帰分析を行った。その結果,「心理・対人関係に関する悩み」や「学業の悩み」を相談しようとする意図には「ポジティブな結果」の予期のみが有意な関連を示すことが示された。また,「健康の悩み」を相談しようとする意図には「ポジティブな結果」の予期だけではなく,「友人への他者志向性」と「友人への自己抑制」の交互作用項が有意な関連を示すことが示された。援助要請の利益・コストの予期と援助要請意図の間の関連の再現性が示され,相談相手と文脈を共有できるかどうかが明白ではない場面では,過剰適応傾向が一定の調整効果を持つ可能性が示唆された。