著者
溝口 紀子 光本 健次 田辺 陽子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.77-82, 2005

フランスのスポーツクラブの歴史を調査すると、その歴史や現状に関しての先行研究、統計資料は、フランス国内において多数発表されているが、日本国内においては、それらの資料の入手が困難であるため、フランスのスポーツクラブに関する研究はほとんど行われていなかった。本研究では、フランスのスポーツクラブの歴史を明らかにし、最近のスポーツクラブの変化を捉えることでクラブが組織化された背景を検討する。
著者
高田 和文
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.133-142, 2004

本稿は平成十三年度、十四年度に学長特別研究事業として行なわれた「現代イタリア演劇の研究」に関する報告である。事業の目的は、イタリアのノーベル劇作家ダリオ・フォーの作品を、実際の舞台上演を通して本学学生及び一般市民に紹介することにあった。上演されたのは、フォーの初期の一幕喜劇『泥棒もたまには役に立つ』(十三年度)と代表的な政治風刺劇『アナーキストの事故死』(十四年度)で、いずれも日本では未公開の作品である。上演は本国講堂において行なわれたが、日本ではまだあまり知られていない劇作家であるにもかかわらず多数の観客が来場し、たいへん好評であった。また、舞台上演と並行してフォーの演劇活動を紹介する写真パネル展、イタリア独自の演技の方法を用いたワークショップを実施した。ワークショップには浜松で活動する劇団の俳優や高校の演劇部員が参加し、地域の演劇関係者との直接的な交流を図ることができた。
著者
石川 清子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-12, 2012

ウジェーヌ・ドラクロワ『アルジェの女たち』(1834)は、オリエントのハーレムの女性を画材にしたオダリスク絵画の代表的名画であり、以降のオリエンタリズム絵画、裸婦像に多大な影響を及ぼした。しかし、1830 年のフランスのアルジェ占領があってこそ、画家はハーレム内部に入ることができ、ゆえにこの絵を描くことができた。フランスのアルジェリアに対する植民地支配の産物とも言える。また名画として鑑賞されてきたこの絵を、フランス語表現の女性作家はどのような視点で見て、どのように自己の作品に反映させ、自らのアイデンティティを構築していくか。この論考はその後半部で、アルジェリアとフランス両方にルーツをもつフランス人作家、レイラ・セバールのシェラザード三部作を検討し、80 年代に顕在化する北アフリカ系フランス人の若者の自己構築の諸相を、この名画と関連づけて考察する。
著者
根本 敏行
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.123-135, 2012

今日、先進諸国の都市では、新しい創造的な諸活動の受け皿として、近代以降の産業遺産を活用した都市政策が展開されている。一方、先進国の近代化の過程には、戦争や民族紛争、奴隷貿易、強制労働などの負の文化遺産も同時に存在する。本論考では、英国、ドイツ、とりわけアイルランドにおいて、負の文化遺産にも正面から真摯に取り組み、新しい都市や地域の発展に結び付けようという試みについての事例を取り上げている。(文化政策研究科長研究委2011 による調査報告/根本担当分を含む )
著者
パルス トーマス ショウバック マイケル
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-6, 2006
被引用文献数
1

立命館大学理工学部ならびに静岡文化芸術大学用に開発したプレゼンテーション授業運営・評価ツールの意義とその詳細、および実証的効果について概説する。ツールはリアルタイム・オンライン・ピア・フィードバックシステムを備え、教員は個々のオーディエンスが行った評価(イントロダクション、ボディ、コンクルージョン、内容、ビジュアルエイド、デリバリー、質疑応答の7項目)にリアルタイムでアクセスできる。プレゼンテーションをした当人は、終了後すぐに、教員による評価、ピア・エヴァリュエーションの結果(匿名)に加えて、両者がどの程度一致しているかをパーセンテージで表したものについても閲覧できる。一方、教員は、色分けされた円グラフで、個々のオーディエンスがどの程度プレゼンテーションの内容を理解できたか、どの程度プレゼンテーションの方法論を理解しているかを容易に把握することができる。このシステムにより学生の授業態度、習熟度、授業満足度が飛躍的に向上したことが、セメスター毎に実施するオンライン授業評価アンケートの数値にも顕著に表われている。
著者
ヒューズ メアリー パルス トーマス
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.99-106, 2006

現在進行中のカリキュラム、英語ディプロマコース(以後EDC)の進展状況を報告する。EDCは、二年にわたって集中的に行われるインテンシヴな教育プログラムである。学習意欲の高い学生を対象とし、学生の英語によるコミュニケーション能力を-特にオーラル・コミュニケーションに焦点を合わせて-発展させることを目標としている。学生たちは、時事問題や個人的関心についての多様なトピックを適切な語彙を使用して、形式にとらわれずに話すことを学ぶと同時に、ビジネスにおいて使用できるレベルでも話せるように学習している。教材には、新聞、ビジネスレター、ラジオやテレビのニュース、インターネット上の情報などの多様なメディアを使用している。課題は様々なプレゼンテーションやレポートから成り、卒業後を視野に入れたテーマが設定されている。学生がこのコースを通じて成果をあげるためには、自習のために充分な時間を-例えばLL教室やインターネット上の材料を利用したり、日記をつけたりして活用しなければならない。このコースは学生の側に多大な献身を要求するものであるが、それなりの努力をした学生はコース終了時に、社会に出て働くにあたって英語を活用する準備が整っていることになろう。EDCは、それぞれが重なり合う三つのスキルを学生に伸長させることを意図している。それらは、英語力、生涯学習を続けるスキル、社会で働くためのスキルである。
著者
黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.41-47, 2007
被引用文献数
1

近年、第3セクターを巡っては、経営破綻や法的整理なども続き、批判的な論調が強いが、一方で、地方圏には小規模ながら健闘している第3セクターも少なくない。本稿では、そのような第3セクターの事例を6社取り上げて、調査分析を行った。そこから、プロパー体制、デザイン戦略など組織面、戦略面にわたり6つの留意点を抽出することができた。
著者
永井 聡子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.67-72, 2014

帝国劇場における「貴賓席」は舞台と客席を繋げる前舞台領域に存在し、両者の関係性を提示している。本論文では、劇場の近代化の過程において議論となった舞台と客席の前舞台領域における関係性を考察するため、1911年に開場した帝国劇場とその劇場建設のモデルのひとつとなったパリのオペラ座(ガルニエ設計)を例に、当時設けられた「貴賓席」の配置について考察する。考察の方法は、劇場に関する当時の資料、劇場関係者の言説を中心として論じる。
著者
鈴木 元子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-8, 2008

本稿では、『夏の夜の夢』や五月祭、および広場での笑いのシーンにバフチンのカーニヴァル的な笑いの理論を援用して、アメリカの代表的作家サナニエル・ホーソーンの"My Kinsman, Major Molineux"を新たに読み解くことを試みた。主人公ロビンの名前の起源には、春を告げる小鳥(ロビン)のほかに、『夏の夜の夢』のパックことロビン・グッドフェローや、ロビン・フッド伝説のロビンが考えられ、作品の文学世界はアメリカからイギリスへ、新大陸から旧大陸、そして中世へと広がる。この短編のクライマックスである広場に行列が通るシーンは、『夏の夜の夢』の劇中劇に触発された「ペイジェント」として、「演劇的な仕掛け」がこの作品にあることを論じた。
著者
福岡 欣治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.69-77, 2007

大学新入生の心理的適応におよぼす家族および友人のソーシャル・サポートと達成動機の影響を検討した。福岡(2000)の枠組みを踏襲しつつ、本研究では精神的健康度を含め2時点においてこの問題を検討した。247名の大学新入生から得た入学後3ヶ月時点でのデータを分析した結果、主として友人のサポートが自己充実的な達成動機を高めることで大学新入生の学業および大学生活全般についての意欲低下を防ぐ効果をもつこと、また家族および友人のサポートが精神的健康を支える効果をもつことが示された。また、 3ヶ月時点の回答者のうち127名から得られた入学後9ヶ月時点でのデータでも、同様の分析結果が得られた。ただしこれらの回答者はやや授業に対する意欲が高い傾向にあり、再検討の余地を残すものであった。これらの結果をふまえ、大学新入生における環境移行への心理的適応過程に対する今後の検討の方向性を考察した。
著者
阿蘇 裕矢 黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.61-74, 2010

近年、人口の減少・高齢化、地球環境問題など新たな社会経済構造の変革に伴い、生活環境の悪化や都心の衰退などに伴う都市行政や都市経営の課題が指摘されている。また、住民の快適な住環境への関心が高まるなど、より良い都市のあり方、良質な市街地のストックが求められている。本研究では、従来の再開発に関わる手法によって都市や市街地の質や価値を高めてきた流れを検証しながら、まちづくりにおける再開発事業の事例を通して、住民にとってより快適で良質な地域コミュニティを創出するための方策等について考察する。特に、計画から事業完了までのプロセスを洗い出すために浜松市東地区の再開発をケーススタディとして、従来の手法によって補うことができない問題や課題とは何かを考察する。
著者
的場 ひろし 和田 和美
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.83-89, 2011

メディア造形学科では、研究・教育の成果を様々な形で学外へ発表しており、特に地域の文化施設との連携による情報発信を推進している。2010年に浜松科学館で行われた企画展では、教員の指導のもと、学生によるメディアアート、インタラクティブアートをベースとした作品展示が実現した。本論文では、このプロジェクトの詳細について報告する。
著者
森 俊太
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-56, 2002

本論では、日本の大学とアメリカの大学の学期制度を比較した。具体的には、静岡文化芸術大学とアメリカ合衆国の異なるタイプの2大学、カリフォルニア大学サンタクルズ校(州立)とコロラドカレッジ(私立のリベラルアーツ大学)の学期制度を比較した。静岡文化芸術大学では、セメスター制度に移行した日本の多くの大学と同じように1セメスター15週制を採用しているが、この制度の下では学生が学期中に平均10科目以上もの多くの科目を履修することになり、また一週間に1回の授業では、教員が学生に接する時間も少ない。1セメスターに3ないし4科目程度を履修し、1科目の授業を週に2-3回行なうアメリカの大学の学期制度が教育効果は高い。今後、学期制度を本来の形態を維持し教育効果をあげているアメリカの大学をモデルに変革し、教育力を高める必要があると思われる。
著者
尾野 正晴
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.61-69, 2003

「天地 (あまつち) 耕作」は、浜松近郊に在住する三人の美術家、村上誠、村上渡、山本裕司によって結成された。本稿は、12年にわたる彼らの活動を映像と写真によって回顧するとともに、活動の終焉を告げた展覧会「天地耕作、まで」の報告書である。入場者数は約300人。名古屋や京都からも入場者があった。浜松展終了後、規模を縮小して、7月11日 (金) 〜26日 (土) まで、成安造形大学ギャラリー (大津市) に巡回した。
著者
林 在圭
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.17-30, 2010

韓国の伝統的な食生活は医食同源の考え方に基づき、日常の食事は主食と副食から構成されている。そのため、野菜を中心とする多様な副食から均衡のとれた栄養素を取り込むことが可能である。 そこで本稿では、韓国農村の一村落を対象として日常の食事記録をとり、日常食の特徴と基本パターンを検証する。「飯バンサン床」と呼ばれる日常の食事は固有のルールをもっており、基本飲食を除くおかずの数によって格式化されている。 しかし実際に調査してみると、調査対象村落における日常食の基本パターンは主食1に副食4の5品であった。最も質素な「三サムチョップバンサン楪飯床」の7品に比べ、当該村落は2品が少ない結果となった。また日常食の特徴としては今日でも主食と副食とが明確に区別されており、食材と調理法の重複を避けて、栄養バランスがとれるように工夫されている。したがって、韓国の村落社会における医食同源の考え方は、依然として強く受け継がれていることが確認できる。しかし近年、幼児を含む世帯を中心に外食行動も増え、肉食化の傾向がみられる。
著者
和田 和美
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.103-111, 2011

H20〜H22年度において、学長特別研究により遂行された「ネット販売の教育的可能性に関する研究」では、メディア造形学科、空間造形学科、生産造形学科の、デザイン学部3学科で取り組む課題として、大学公式のネットショップのあるべき姿の展望を図り、実施に向けたユニバーシティ・グッズの研究・開発を行った。本研究の一部として、優良なウェブサイトに仕上げるためのSEO対策まで含めて、最終的にウェブ教育に反映・充実させていきたいと考えている。
著者
古瀬 敏 林 左和子 河手 太士
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.163-166, 2012

大学教員は研究・教育その他さまざまな活動を行っており、その成果として多くの知的生産物が生み出されている。しかしながら、そうしたものは大学において生み出されたにも関わらず、個人の成果としてしか検索できない状況が続いた。それらを組織としての成果物として、大学が対外的に体系的に提供しようという試みがしばらく前から行われている。それが「学術機関リポジトリ」と呼ばれるものである。ここでは、本学においてその構築の仕組みを検討した結果を報告する。なお、本検討は、平成22 年度・23 年度の2 年間にわたり学長特別研究として行った。
著者
野中 壽晴 渡邊 章亙 迫田 幸雄 黒田 宏治
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.85-97, 2003

本学の教育基本理念であるユニバーサルデザインは、デザイン学部の共通必須科目として位置付けられている。そのユニバーサルデザインについての様々な情報を各方面から継続的に収集し、体系的に集約して情報発信することで、ユニバーサルデザインの研究拠点としての基礎を確立しなければならない。これまで、わが国が福祉のモデルとしてきたのは北欧諸国であり、そのデザイン思想もヨーロッパ型になると考えられてきた。しかし、今日の日本におけるこの分野におけるデザイン理念は、アメリ力型の「ユニバーサルデザイン」が普及進行中である。かねてよりヨーロッパにおける「Design for All」う言葉と、アメリ力発の「Universal Design」にどのような違いがあるのか、その違いがあるとしたらそれをどう捉えたらよいのか気になっていた。今回の視察は、福祉先進国北欧2国 (デンマーク・スウエーデン) を訪問し、それらを肌で感じ、自分の目で実態を見て見極めようと言うことがねらいであった。
著者
永井 聡子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要 (ISSN:13464744)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-33, 2009

本論文は、明治末期より昭和期に至る日本の劇場の変遷を、帝国劇場、築地小劇場、東京宝塚劇場などの劇場改革を踏まえて現代性を描きだすことを目的としている。「劇場」とは、「専門家の配置、舞台作品の製作、空間の設計、観客の資質」という4つの要素が関わることが重要であり、時代は経ても変わることのない部分である。本論では、その前提となる建設の背景および劇場空間における前舞台領域との関係性において考察した。特に、劇場建設に対する言説から考察し、民間劇場が残した財産を現代の公共劇場がどう担うのか、これからの劇場のあり方を提示する。