著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.15, pp.110-123, 2008-03-31

宏観異常現象というのは,「特別な機器を利用せずに観察できる異常現象」である。この言葉は地震前の前兆として起こる様々な異常現象に対して使われ,古今東西を問わず,様々な形で世の中に知れ渡っている現象である。兵庫県南部地震以降,この異常現象は注目され様々な形で取り上げられている。特に,動物の行動異常に関する情報は多く,この異常現象の情報をうまく収集することができれば,短期予測が可能なのではないか,と考えられる。そのことから,麻布大学動物人間関係学研究室(現:介在動物学研究室)では,NTTドコモの第三次携帯端末FOMAを利用して,イヌとネコの飼い主から普段見受けられない異常行動を発現したときにその行動を写した動画を同研究室に送信し,その行動は地震前兆前の異常なのかどうかを客観的に分析し,異常行動を起こすメカニズムや異常行動に関するデータを収集する,というシステムを始動している。この研究は,このFOMAを利用したモニターの説明を受けた人々が,宏観異常現象(特に動物の異常行動)や,このようなシステムに関してどのように受け止めたのかなどを,アンケート形式で答えていただいて,システムや地震,宏観異常現象の研究についてどのように考えているのかを分析していくものである。アンケートの結果から,ほとんどの人が大学の研究内容について知る機会がないとの回答であった。また,アンケートに回答していただいた方のうち,動物を飼っている人が過半数であるにもかかわらず,モニター参加をしてもよいと答えていただいた人は17%ほどしかいなかった。自由回答の欄では宏観現象について興味があると答えていた人でも実際には自ら「モニターになりたい」と答えていた人はほとんどいなかった。臨震情報を作り上げる上で,動物の異常行動の小さな情報を積み上げていくことは,とても重要なことである。臨震情報によって,多くの命を救うことができることが,被害想定でもしっかりと予測されている。地震の被害を最小におさえるために,各専門家や企業,個人が自分には何ができるのかをしっかりと考えて行動し,「差し迫る危険」に対してどう対処すべきなのかをじっくり考える機会を待つべきである。このシステムに参加することにより,日ごろから地震に対する防災意識が芽生えるとともに,ペットとのよりよい関係を築くことができれば,よりよいペットとの住空間を作り上げることができると考える。
著者
太田 光明 江口 祐輔 大木 茂 大谷 伸代
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.17, pp.167-172, 2009-03-31

1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生した。神戸市など震源地周辺で飼育されていたイヌのうち約20%が地震発生前に異常行動を示したことが地震発生後の調査によって報告された。本研究では,イヌの示した異常行動の原因は地震前に発生する電磁波を感知したためではないかとの仮説のもと,人工的に発生させた電磁波をイヌに照射し,照射後の行動および神経内分泌学的な変化を観察した。
著者
山本 静雄 栗林 尚志 本田 政幸
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.15, pp.267-273, 2008-03-31

ヘモグロビンに代わる潜血の仮の指標として糞便および尿中の炭酸脱水酵素アイソエンザイム-I(CA-I)濃度を酵素免疫測定法(ELISA)により評価した。健康な各種年齢の実験用ビーグル犬113頭(雄50頭,雌63頭)における糞便中のCA-I濃度は,4.3から16.7ng/g便(平均;7.0±2.9ng/g便)であった。3頭の健康なビーグル犬から採取した血液1ml中に含まれるCA-Iは,それぞれ1,047, 1,062および1,150μgであった。自己血(10ml)を胃内へ注入したイヌの糞便CA-I濃度は大変低かった。しかし,自己血(5ml)を上行結腸部へ注入したイヌの糞便CA-I濃度は大変高かった。糞便中のCA-Iの検出は大腸からの出血があるイヌを見分けるのに有用であろう。健康な55頭のビーグル犬から採取した尿を化学的検査で調べた結果,44頭が陰性であったが,これら尿中のCA-I濃度はELISAで1.8から12.6ng/ml(平均;6.9±5.4ng/ml)であった。また,尿の潜血検査の結果が陽性であった11頭のイヌのCA-I濃度は,ELISAで41.2から525.0ng/mlであった。CA-Iは赤血球の特異的な指標ではないが,Hbに対する抗体を用いた特異的な免疫学的検査キットが開発されるまで,CA-Iはイヌの糞便および尿の潜血の検出に用いられるであろう。
著者
江口 祐輔 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
no.13, pp.178-182, 2007-03-31

近年我が国ではイノシシによる農作物被害が増加している。農作物被害を防ぐためには,イノシシの行動を把握することが重要となるが,イノシシの行動学的研究は少ない。そこで本研究では,イノシシの行動制御技術開発のための基礎的知見を得ることを目的として,超音波を含む音刺激およびブタ由来のニオイ刺激(唾液フェロモンおよび発情・非発情時の尿)に対するイノシシの行動を調査した。実験1(音刺激に対する反応)では,飼育下のイノシシ4頭(雄2頭,雌2頭)を供試した。実験時は個別飼育檻に入れて1頭ずつ音を提示した。中-高周波数で10k~80kHzの8種類,中一低周波数で2k~5Hzの9種類に設定したサイン波の音を,超音波発生装置を用いて発生させた。音の提示時間内の反応を記録した。超音波に対してイノシシは,「静止」,「スピーカー定位」,「スピーカー探査」の反応を示した。500Hz及び200Hzで忌避反応と思われる「逃避」,「身震い」を示した。その他の中-低周波数の音に対しては忌避反応は見られなかった。これらのことから,イノシシは超音波を嫌うことは無いが,特定の周波数の音に対して忌避反応を示し,音による農作物への被害防除に有効である可能性が示唆された。実験2(ブタ由来のニオイ物質に対するイノシシの反応)では,飼育下のイノシシ7頭(雄2頭,雌5頭)を供試した。ニオイ物質には,アンドロステノンと雄ブタの唾液,雌ブタの発情期の尿と非発情期の尿,対照として蒸留水を用いた。ニオイ物質はイノシシの鼻の高さに調節した提示装置に入れて設置した。提示後30分間のイノシシの行動を記録した。雄イノシシのニオイ嗅ぎ行動は,雌ブタの発情尿において他のニオイよりも多く発現し,雌イノシシでは雄よりもニオイ嗅ぎ行動の発現割合が高かった。雌のニオイ嗅ぎ行動は,特に雄の唾液において他のニオイよりも多く発現した。雄イノシシでは,発情尿と非発情尿を提示した時,ニオイ物質に近いエリアに滞在する割合が高かった。飼育個体が,異性のフェロモンを含むニオイに強い反応を示したことから,ニオイによるイノシシ誘引効果が示唆された。
著者
江口 祐輔 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13/14, pp.178-182, 2007-03-31

近年我が国ではイノシシによる農作物被害が増加している。農作物被害を防ぐためには,イノシシの行動を把握することが重要となるが,イノシシの行動学的研究は少ない。そこで本研究では,イノシシの行動制御技術開発のための基礎的知見を得ることを目的として,超音波を含む音刺激およびブタ由来のニオイ刺激(唾液フェロモンおよび発情・非発情時の尿)に対するイノシシの行動を調査した。実験1(音刺激に対する反応)では,飼育下のイノシシ4頭(雄2頭,雌2頭)を供試した。実験時は個別飼育檻に入れて1頭ずつ音を提示した。中-高周波数で10k~80kHzの8種類,中一低周波数で2k~5Hzの9種類に設定したサイン波の音を,超音波発生装置を用いて発生させた。音の提示時間内の反応を記録した。超音波に対してイノシシは,「静止」,「スピーカー定位」,「スピーカー探査」の反応を示した。500Hz及び200Hzで忌避反応と思われる「逃避」,「身震い」を示した。その他の中-低周波数の音に対しては忌避反応は見られなかった。これらのことから,イノシシは超音波を嫌うことは無いが,特定の周波数の音に対して忌避反応を示し,音による農作物への被害防除に有効である可能性が示唆された。実験2(ブタ由来のニオイ物質に対するイノシシの反応)では,飼育下のイノシシ7頭(雄2頭,雌5頭)を供試した。ニオイ物質には,アンドロステノンと雄ブタの唾液,雌ブタの発情期の尿と非発情期の尿,対照として蒸留水を用いた。ニオイ物質はイノシシの鼻の高さに調節した提示装置に入れて設置した。提示後30分間のイノシシの行動を記録した。雄イノシシのニオイ嗅ぎ行動は,雌ブタの発情尿において他のニオイよりも多く発現し,雌イノシシでは雄よりもニオイ嗅ぎ行動の発現割合が高かった。雌のニオイ嗅ぎ行動は,特に雄の唾液において他のニオイよりも多く発現した。雄イノシシでは,発情尿と非発情尿を提示した時,ニオイ物質に近いエリアに滞在する割合が高かった。飼育個体が,異性のフェロモンを含むニオイに強い反応を示したことから,ニオイによるイノシシ誘引効果が示唆された。
著者
高槻 成紀
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.19/20, pp.139-147, 2010-03-31
著者
森田 英利 坂田 亮一 加藤 行男 久松 伸
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5/6, pp.176-181, 2003-03-31

亜硝酸ナトリウム(NaNO_2),塩化ナトリウム(NaCI)あるいは数種類の抗生物質で処理したベロトキシン産生大腸菌(VTEC)O157:H7の3株から,ベロトキシン(VT)1型と2型の放出量を定量した。VTEC O157:H7のうち,2株がVT1型とVT2型の両者を産出し,1株がVT2型のみ産出した。VTEC O157:H7をNaNO_2(最少発育阻止濃度である6,000mg/L)で処理したがVT1型およびVT2型の放出量は増加しなかった。NaNO_2由来の一酸化窒素(NO)の抗菌メカニズムを明らかにするために,NaNO_2で処理したVTEC O157:H7の細胞を77Kでの電子常磁性共鳴吸収(EPR)法に供した。その結果,g値2.035と2.010のEPRシグナルを検出し,細胞内に鉄硫黄タンパク質とNOが反応して形成されたジニトロシル鉄硫黄錯体が存在した。またATPの合成も阻害されていた。このことから,NaNO_2出来のNOは細胞内に入り,呼吸鎖に関与する酵素を不活化したものと考えられた。
著者
大仲 賢二 古畑 勝則 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.241-247, 2006

Vibrio vulnificus感染症の感染経路や感染源を解明する一環として,環境由来株とヒト臨床由来株について血清型別,各種抗菌剤の薬剤感受性試験およびPFGE法によりDNA解析を行い分子疫学的検討を行ったところ,以下の成績が得られた。1.由来別に血清型を検討したところ,環境由来では72.5%が18菌型に型別され,O7が43.1%と最も多く,次にO4が6.1%などであった。ヒト臨床由来では87.1%が8菌型に型別され,O4が43.5%と最も多く,次にO7が12.9%などであった。その地域別において,東日本地域では69.2%が18菌型に型別され,O7が44.6%,04が5.7%などに,西日本地域では64.8%が8菌型に型別され,O7が20.4%と最も多く,次にO4が11.1%などにそれぞれ型別された。2.由来別に薬剤感受性をMIC_<90>で比較検討したところ,環境由来ではABPC,PIPC,CPZ,CTX,LMOX,MEPM,GM,EM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,CER,CET,CTX,CMZ,KMおよびLCMに対して耐性株が認められた。ヒト臨床由来ではEM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,ABPC,PIPC,CER,CET,CPZ,CTX,CMZ,LMOX,MEPM,KM,GM,AMKおよびLCMに対して耐性株が認められた。3.Not IとSfi Iの2種類の酵素を用いてそれぞれDNA切断を行い,PFGE法でDNA解析を検討したところ,酵素別のDNAパターン判読率は,Not I では76.9%,sfi Iでは97.9%を示し本菌のDNAパターン判読率はSfi Iが優れていた。4.Sfi IによってDNAパターンが判読された菌株をUPGMA法で解析を行ったところ,類似度が低く多岐のクラスターを示し,本菌感染症は複数のクローンから発生していることが明らかとなった。また,由来等が異なるが類似度が89%以上の類似度で,臨床株と環境株の組合せが認められることから,環境からヒト,ヒトから環境への感染の可能性が考えられた。
著者
大仲 賢二 古畑 勝則 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13/14, pp.241-247, 2007-03-31

Vibrio vulnificus感染症の感染経路や感染源を解明する一環として,環境由来株とヒト臨床由来株について血清型別,各種抗菌剤の薬剤感受性試験およびPFGE法によりDNA解析を行い分子疫学的検討を行ったところ,以下の成績が得られた。1.由来別に血清型を検討したところ,環境由来では72.5%が18菌型に型別され,O7が43.1%と最も多く,次にO4が6.1%などであった。ヒト臨床由来では87.1%が8菌型に型別され,O4が43.5%と最も多く,次にO7が12.9%などであった。その地域別において,東日本地域では69.2%が18菌型に型別され,O7が44.6%,04が5.7%などに,西日本地域では64.8%が8菌型に型別され,O7が20.4%と最も多く,次にO4が11.1%などにそれぞれ型別された。2.由来別に薬剤感受性をMIC_<90>で比較検討したところ,環境由来ではABPC,PIPC,CPZ,CTX,LMOX,MEPM,GM,EM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,CER,CET,CTX,CMZ,KMおよびLCMに対して耐性株が認められた。ヒト臨床由来ではEM,TC,DOXY,MINO,CP,NAおよびCPFXに感受性を示したが,ABPC,PIPC,CER,CET,CPZ,CTX,CMZ,LMOX,MEPM,KM,GM,AMKおよびLCMに対して耐性株が認められた。3.Not IとSfi Iの2種類の酵素を用いてそれぞれDNA切断を行い,PFGE法でDNA解析を検討したところ,酵素別のDNAパターン判読率は,Not I では76.9%,sfi Iでは97.9%を示し本菌のDNAパターン判読率はSfi Iが優れていた。4.Sfi IによってDNAパターンが判読された菌株をUPGMA法で解析を行ったところ,類似度が低く多岐のクラスターを示し,本菌感染症は複数のクローンから発生していることが明らかとなった。また,由来等が異なるが類似度が89%以上の類似度で,臨床株と環境株の組合せが認められることから,環境からヒト,ヒトから環境への感染の可能性が考えられた。
著者
服部 正平 森田 英利
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.59-60, 2016-03-31

メタゲノムからヒト常在菌叢の生態と機能を読み解く
著者
原 元宣 木内 明男 福山 正文
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.215-220, 2004

一般的に雄は仔猫に興味を示すことはなく,仔猫の世話をするのは専ら雌猫であるが,今回は,雄成猫が感染源となり,仔猫へ感染するという結果となった。
著者
大木 茂
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.11-24, 2007-03-31

The purpose of this paper was to clarify the structural changes in sanchoku producer organizations (direct purchasing between co-op and producer organization). Since the 1990s based on the survey of consumer coop A's producer organizations. We also make some suggestions for the coop sanchoku business model. Sanchoku were started in the 1970s in order to obtain safe foods, which are low in agricultural chemicals. Throughout the 1980s sanchoku coops developed continuously, establishing safe food supply systems. But in the 1990s', coop retail busineses faced difficulties, especially with fresh food collection and supply systems. In 2002, mislabeling and use of non-permitted pesticide was discovered. Sanchoku coops were seriously damaged with sales falling by half. As a result of our survey we reached some conclusions. 1) Producer organizations are diversifying in each food category with regard to size, area, purpose, and sales volume. 2) Especially, type of management is getting diverse. 3) Most farmers just focus on their farm management. They aren't concerned about their local society and other farmers. Moreover, there are some differences among their points of view. Rice farmers tend to have a viewpoint of their local area. Fruits & vegetable farmers focus on the quality of their produce more than other farmers. Stockbreeding farmers have concentrated on the survival of their own farm or company. These results suggest that coops should build alliances with producer organizations in order to control or keep priority of their fresh food buying-distribution systems. If coops can't tie up with producer organizations, the food system might become supervised by big powerful agribusinesses. Under such a system we would never know any information without it being provided by big companies.
著者
岩橋 和彦 吉原 英児 青木 淳
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 = Journal of Azabu University (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.115-119, 2009-03-31

我々はセロトニントランスポーター (5-HTT) 3'非翻訳領域 (3'UTR) 遺伝子多型の影響, 疼痛感受性個人差の原因, 性格の遺伝要因を解明する一助として5-HTT 3'UTR遺伝子多型と痛覚閾値およびパーソナリティとの3つの要因の関連性について調査検討を行った。 181人の健常者を対象に, 5-HTT 3'UTR遺伝子多型の判定には制限酵素切断長多型解析法を用い, 痛覚閾値に関しては冷水刺激試験および圧刺激試験を, パーソナリティの測定にはTCI (Temperament and Character Inventory) を行った。 遺伝子多型と痛覚閾値には関連がなかった。遺伝子多型とTCIの相関について, 男性ではST3{超個人的同一化 (vs. 自己弁別)}が遺伝子型G/G群で有意に高く, 女性ではST (自己超越性総合点) およびST2{自己忘却 (vs. 自己意識経験)}が遺伝子型G/T + T/T群で有意に高かった。痛覚閾値とTCIとの関係について, 男性群で冷水刺激閾値とNS4{無秩序 (vs. 組織化)}およびNS (新奇性追求) で負の相関, 女性群で冷水刺激閾値とSD4 (自己受容), C5{純粋な良心 (vs. 利己主義)}および圧刺激閾値とSD4 (自己受容) で正の相関が認められた。本研究から5-HTT 3'UTR遺伝子多型はCloningerの理論における性格次元に影響を与える可能性がある一方で, 痛覚は5-HTT 3'UTR遺伝子多型と関与せず, 一方でパーソナリティの一部と相関関係にある可能性が示唆された。To estimate the genetic factors influencing individual differences in sensitivity to pain, we have examined the associations among serotonin reuptake transporter (5-HTT) 3' UTR gene polymorphism, sensitivity to pain and personality. After the procedures were fully explained and written informed consent was obtained, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism was investigated by PCR-RFLP, and personality assessment was performed by means of Temperament and Character Inventory (TCI), and pain threshold by means of cold water and pressure stimulation tests in 181 healthy Japanese volunteers. Males with the T allele (T/T and T/G) showed a significantly lower Self-Transcendence (ST) 3 subdimension score than those without the T allele (G/G). Females with the T allele (T/T and T/G) showed significantly higher ST2 subdimension and ST dimension scores than those without the T allele (G/G). There was no significant relationship between 5-HTT 3' UTR gene polymorphism and pain sensitivity. As for pain sensitivity and TCI, there was low negative correlation between cold water stimulation in males and Novelty Seeking (NS) 4 subdimension and NS, and low positive correlation between cold water stimulation in females and Self-Directedness (SD) 4 subdimension and Cooperativeness (C) 5 subdimension, and between pressure stimulation in females and SD4. It is possible that 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may affect the character dimension in the theory of Cloninger, however, 5-HTT 3' UTR gene polymorphism may not be related to the sense of pain, and that there is low correlation between pain and a part of the personality.