著者
岩崎 久美子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.20-27, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
15
被引用文献数
2

「エビデンスに基づく教育」(Evidence-based Education)とは,教育研究によって政策や実践を実証的に裏づけることを意味する言葉である。エビデンスを産出するとされる研究は,さまざまな形態を取る研究のうち,社会的活用を第一義として行われるものである。本稿では,「エビデンスに基づく教育」という言葉が登場した社会的背景として,知識経済下における知識生産,研究成果の効率的活用といった変化を取り上げる。次いで,エビデンスを巡って,供給側の研究者の動きとして医療や教育研究の有効性の問題,需要側の政策立案者の動きとして説明責任,教育予算の獲得と費用対効果の問題を概観し,最後に知識マネジメントの観点から研究と政策との関係について考える。
著者
岩崎 久美子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_17-1_29, 2010 (Released:2014-05-21)
参考文献数
43

エビデンスの概念は、わが国の教育分野では、一般的に知られているとは言い難いが、昨今、「エビデンスに基づく政策」(evidence-based policy)という言葉が政策を論議する文献等で多く散見されるようになってきている。本論では、このような背景にあって、第一にコクラン共同計画やキャンベル共同計画が基本とする、ランダム化比較試験(RCT)の系統的レビュー(メタ・アナリシス)で産出される厳密な定義でのエビデンスを中心に、産出、普及、活用の上で生じる課題を明らかにする。第二に広義の科学的根拠という意味で、経済協力開発機構(OECD)が、近年「エビデンスに基づく政策」という言葉を用いて政策提言を積極的に行ってきている背景を人的資本論に基づきながら論じる。そして、最後に教育におけるエビデンスに基づく政策についての方向性を示唆する。
著者
中村 浩子 岩崎 久美子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.181-192, 2009-10-20 (Released:2021-08-01)
参考文献数
19

Oversupply of post-doctoral fellows (postdocs) has become an increasingly serious problem in Japan, especially after the policies implemented in 1990’s to expand graduate education to produce advanced professionals. This paper, focusing on the career formation of postdocs, analyses why postdocs do not, or cannot become advanced non-academic professionals and stay as postdocs. The investigation is based on two research results on theoretical physics majors (nuclear and particle physicists). One was conducted to interview postdocs themselves, and the other was carried out sending questionnaire to Ph. D. holders who had decided to pursue their careers in the fields other than academic posts. The reason why we focused on theoretical physics was because it is a basic research field whose achievements do not lead directly to employment in industries, and that the field has been facing the unemployment problem for a long time in Japan. Based on our research results, we found three phases that are confining their careers as postdocs, and two conditions necessary for their career change. Also in conclusion we made suggestions for initiatives to tackle the situation based on our analyses.
著者
岩崎 久美子
出版者
日本キャリア教育学会
雑誌
進路指導研究 (ISSN:13433768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.26-34, 1999-01-30 (Released:2017-09-22)

A questionnaire survey was conducted with 168 cram school students to examine their consciousness of future career and achievement based on attribution theory and self-esteem. For the purpose of comparison, data were simultaneously obtained from 132 local elementary school students as the control group. It was found that over 60% of the cram school students wanted to receive higher education whereas over 60% of local elementary school students indicated that they were not decided or uncertain about the prospect. Early career decision is apparently influenced greatly by information and cultural capital that the family retains. In addition, advancement to the higher education appears to be governed more by the possibility of admission to prestigious schools than by the students' aptitude, capacity or interests. For psychological factors in achievement, cram school students with high self-esteem tended to have good scores were the result of controllable factors such as their own efforts and ability. By contrast students with low self-esteem tended to consider good scores as the result of uncontrollable factors such as the degree of difficulty of the examination. This phenomenon has been termed self-serving bias. There was also a positive correlation between self-esteem and family support of the items of attribution of good score. This suggests a connection among parents' attitude, self-esteem and achievement. There was a significant difference between career consciousness and self-esteem. This result suggests that to foster self-esteem it is essential to instill a career consciousness right from elementary school.
著者
岩崎 久美子 豊 浩子 立田 慶裕 福本 徹 金藤 ふゆ子 須原 愛記 笹井 宏益
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、貧困家庭の増加など、子どもをめぐる成育環境の悪化が社会問題化し、家庭の社会経済的背景に由来する教育格差が拡大・再生産される懸念が生じている中で、国内外の格差是正のための先導的事例を検証し、我が国の施策に資する知見を提供することを目的としている。平成29年度は、英国に焦点を当て、子供の貧困に関する関係書籍や文献による分析を行い、併せて英国での現地調査を実施した。英国の現地調査では、英国に在住する海外共同研究協力者とともに子供の貧困問題を扱うチャリティ団体を特定し、視察・関係者への聞き取りを行った。訪問したチャリティ団体は、①就学前教育や保育の分野の研究にさまざまな助成金を提供しているNuffield Foundation、②ロンドン市長がパトロンでロンドンの貧困層の子供たちを対象にウェルビーイング、スキル、雇用と起業に関する支援を行うThe Mayor's Fund for London、③Lambeth地区の貧困家庭に対し10年計画の早期介入プログラムを多機関連携により実施しているLambeth Early Action Partnership、④ホームレスの若者に住居を提供、雇用支援、教育(英語、リテラシー、ITスキル、職業訓練、幼児教育、育児教育)などを通して雇用機会や社会復帰を支援するThe Cardinal Hume Centre、⑤貧困と子供の保護に関するプログラムを提供することを通じ課題を把握し国、地方自治体への政策提言を行っているThe Children's Society、⑥貧困、恵まれない環境、社会的孤立状態にある人々への実践的、情緒的、財政的支援を行う英国で最も古いチャリティの一つであるFamily Actionである。これらの聴取内容の一部は、雑誌『社会教育』に、英国NPO(チャリティ)の事例紹介として連載している。
著者
古沢 常雄 池田 賢市 板倉 裕治 岩崎 久美子 岩橋 恵子 上原 秀一 小林 純子 園山 大祐 高津 芳則 高橋 洋行 夏目 達也 藤井 穂高 堀内 達夫 小野田 正利 藤井 佐知子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、学業失敗や無資格離学、失業など我が国と共通の様々な教育問題を抱えるフランスにおいて、社会統合と公教育の再構築に向けたキャリア教育の取り組みがどのように行われているかを、全教育段階を対象に総合的に明らかにした。フランスでは、我が国のキャリア教育(英語のCareerEducation)に相当する概念はほとんど用いられていないが、先進諸国においてキャリア教育が必要とされる社会的背景を共有しており、フランスにおいてキャリア教育と呼びうる様々な教育活動が義務教育、後期中等教育及び社会教育・継続教育の分野でどのように実際に展開されているのかを総合的に明らかにした。
著者
金藤 ふゆ子 岩崎 久美子
出版者
文教大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は、保護者や地域住民による学校支援が、教員の職務遂行に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。学校・家庭・地域の連係による教員の推進は、教育基本法に明記される新たな教育の方向性であり、本研究はその効果を教員の観点から解明した。学校支援は、放課後子ども教室事業や学校支援地域本部事業に着目し、当該事業を実施する学校に勤務するか否か別に、教員の意識やストレスを比較分析した。K県全小中学校教員調査、及び全国小学校教員調査を質問紙調査により実施し、分析を行った。保護者や地域住民の学校支援は、教員の職務遂行上の肯定的意識を高め、かつ児童生徒を肯定的に捉える傾向に影響することが明らかとなった。