著者
板倉 弘重 高橋 二郎 北村 晃利
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.173-182, 2008 (Released:2008-11-14)
参考文献数
72
被引用文献数
6 3

アスタキサンチンは,広く天然に存在する赤色のカロテノイドの一種であり,一重項酸素消去および抗脂質過酸化活性などの優れた抗酸化作用を有する.近年さまざまな生理活性が報告されるようになり,健康食品および化粧品素材として普及しつつ,予防医学の領域においても注目されている.本稿では,アスタキサンチンの由来,他のカロテノイドとの比較,化学的特長に触れつつ,抗脂質過酸化活性,抗炎症,血流改善,メタボリックシンドローム改善,眼精疲労改善,ピロリ菌抑制,脂質代謝改善,筋肉疲労改善,美肌効果,男性不妊症改善などの機能性,さらに体内動態および安全性についての細胞,動物試験,および臨床試験などの結果を取り上げ,補完代替医療素材としての可能性を紹介する.
著者
板東 浩
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-36, 2008 (Released:2008-03-12)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

現在,補完代替医療 (CAM) の一つとして音楽療法 (music therapy, MT) が注目されている.同療法には広義でレクリエーションなどを主とする音楽健康法と,狭義で治療の視点を有する狭義の音楽療法がある.セッションにより単に良くなったという判断は不十分で,何らかの評価法で改善したというエビデンスや効果の判定が必要となる.音楽を聴取する受容的音楽療法と,カラオケなどの歌唱や楽器演奏などを行う能動的音楽療法に大別される.対象者としては,小児や精神疾患患者,高齢者,認知症などがあり,本邦では高齢者対象の場合が多く,ニードが高い.高齢者では認知レベルや QOL, ADL の変化を評価し,療法の効果を判定すべきである.近年 MT と他の CAM との併用が行われ,行政の見地からも,展開する余地が残されている.今後は CAM の中で MT の重要性が増し,evidence-based MT ならびに narrative-based MT の両者で研究の発展が望まれる.
著者
稲川 裕之 河内 千恵 杣 源一郎
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.79-90, 2007 (Released:2007-07-19)
参考文献数
32
被引用文献数
1 1 1

我々は種々の臓器・器官に分布する組織マクロファージがネットワークを形成し,生体の恒常性維持に深く関与していると考え,この仮想的な制御機構を『マクロファージネットワーク』と名づけた.そこでマクロファージ活性化はマクロファージネットワーク自体を活性化して健康維持や疾病予防に繋がると考えている.これを実証するべく,長い食経験のある食品から,マクロファージ活性化物質をスクリーニングし,小麦共生グラム陰性菌由来の LPS (IP-PA1) を見出した. ところで LPS は強力なマクロファージ活性化作用を持つことが良く知られているが,脈管に投与される医薬品では有害物質であるとの認識が優先したため,免疫賦活素材として活用は考えられてこなかった.一方,LPS の免疫賦活活性に深く関わる TLR-4 経由のシグナル伝達は恒常性を維持する上で重要な制御機構であることが報告され,LPS の生体恒常性制御の意義が急速に認識されつつある. しかし,LPS や LPS を含む素材の免疫賦活作用を社会的有用性につなげるためには,個体に特有とされる健康維持機構の実態解明などの基礎研究,LPS の生理的意義の見直し等リテラシーの形成を促進すること,LPS の有用性の科学的実証の蓄積,が不可欠である.このためには,異分野・異業種からなる組織体制の整備が必要と考える. そこで,我々は,産官学連携により自主研究会,さらにヒトによる実証調査や食品等に含まれる LPS の質・量あるいは免疫賦活効果などの評価機能を有する NPO 法人,技術移転を行うとともに各種 LPS を機能性素材として開発し販売する大学発ベンチャーを設立し,行政からの支援を受け LPS 有用性の確立に取り組んでいる.本稿では,我々のコンセプトと新素材としての食経験を持つグラム陰性菌素材の開発の経緯について紹介する.
著者
岸川 禮子 宗 信夫 井上 定三 上村 正行 家守 千鶴子 河田 賢治 栗田 建一 城崎 拓郎 竹田 和夫 野上 兼一郎 三橋 勝彦 宿久 修 山田 篤伸 奥村 康 西間 三馨 石川 哮
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.127-136, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24

通常の薬物治療を行っているスギ花粉症患者を対象に,カテキンより強力な抗アレルギー性を有すると報告されているメチル化カテキン含有品種べにふうき茶の飲用効果を,やぶきた茶飲用群と花粉飛散時期に比較検討した. 福岡県内 12 施設の耳鼻咽喉科医院を受診したスギ花粉症患者 486 例に,単盲検法に準じてべにふうき茶飲用群(A 群)とやぶきた茶飲用群(B 群)に分けて 2005 年 2 月 1 日から毎日,スギ,ヒノキ科花粉飛散終了まで飲用させた.症状の重症度,薬剤使用量および QOL 障害度をスコア化して 2 群間内で比較した. A 群と B 群との間で眼・鼻症状の日毎推移・QOL 障害度に差はなかった.しかし,スギ花粉飛散時期において合計薬剤スコアが A 群において低く,とくに飛散ピーク時期以降 A 群が B 群より低く推移する傾向が得られた (p < 0.1). 花粉飛散時期に通常量のべにふうき茶を飲用することで,スギ花粉症増悪時に薬剤使用量が対照茶より少なく経過する傾向が得られたことから,補完的治療対策の 1 つの選択肢となる可能性が示唆された.
著者
八重樫 弘信
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.59-62, 2010 (Released:2010-04-02)
参考文献数
6
被引用文献数
7 6

発熱後 48 時間以内に A 型インフルエンザと診断した 18 歳以上の患者 14 名を,麻黄湯・小柴胡湯(6 名:麻黄湯エキス顆粒 7.5 g・小柴胡湯エキス顆粒 7.5 g/日,3 日間内服)と,オセルタミビル(8 名:150 mg/日,5 日間内服)にて治療した.各群の治療開始から解熱までの期間に有意差を認めなかった.
著者
赤井 佑三子 茂木 香保里 定成 秀貴 武本 眞清 松原 京子 大黒 徹 土田 裕三 桜井 大輔 村山 次哉
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日代替誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.83-91, 2017
被引用文献数
1

我々はこれまでに,イネ科植物クマザサの含有成分の一つであるtricinが,ヒトサイトメガロウイルス (human cytomegalovirus: HCMV) に対して抗ウイルス効果を示すことを明らかにして来た.本研究では,既存の抗炎症薬でありCCR2アンタゴニストであるgermanium化合物を用いて,tricinとの抗HCMV作用を比較検討することでその作用機序を明確にすることを目的とした.その結果,HCMV感染により増加したCCL2とCCR2の遺伝子発現とタンパク質発現およびHCMV増殖は,germanium化合物処理により濃度依存的に抑制された.またtricin処理では,germanium化合物に比較してより強い抑制効果が観察され,約1/100の濃度で有意に抑制されることが明らかになった.これらの結果から,既存の抗炎症薬・germanium化合物より強力なCCL2発現抑制作用や抗HCMV作用をもつtricinは,これまでの抗HCMV薬には見られない新たな作用機序を持つ抗炎症性HCMV治療薬の候補となる可能性が示唆された.
著者
鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.141-151, 2018

妊娠中のハトムギ使用について解説した.市販のハトムギ茶を妊娠中に摂取して流産や早産になるという証拠はなく,産後に市販のハトムギ茶摂取を禁ずる科学的根拠もない.したがって,妊婦が常識の範囲内でハトムギ茶を飲用もしくはハトムギ調理品を食することは,問題ないと考えた.ただし,ハトムギ摂取に過敏になっている妊婦は,無理にハトムギ飲食を行う必要はない.また,妊娠中のハトムギ摂取に関しては医師に相談することが肝要である.妊娠中のハトムギの製薬であるヨクイニンの内服については,必ず産婦人科医師の管理のもとに行うべきである.また,ハトムギの栄養補助食品も,妊娠中は中止するか,もしくは医師と相談の上で使用するのが望ましい.ただし,妊娠中にこれらの医薬品や食品を飲み続け,流産,早産,児の奇形等が発症したとする報告はない.妊娠中はハトムギ摂取を控えるべきであるという伝承については,ハトムギに麦角菌が感染し,産生された麦角アルカロイドによる子宮収縮が深く関与していたという仮説を立てた.また,小麦・大麦・ライ麦,トウモロコシなど麦角菌に感染する可能性のあるイネ科植物の麦角アルカロイド汚染の有無を知ることは,妊婦の流産・早産予防上,重要であることも指摘した.
著者
貴志 浩久 不破 輝彦 久保村 大樹 杉浦 敏文
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.75-80, 2014 (Released:2014-11-07)
参考文献数
25

機能性食品における抗疲労効果に関してはアンケートによる主観評価法が主として用いられており,簡便,且つ直接的に疲労を評価している報告は少ない.本研究では筋電図を用いたアンセリンの抗疲労効果を検証する方法を提案するとともに,健康な成人男性 17 名(平均年齢 35.5 ± 5 歳 体重 75.5 ± 5 kg)に対して臨床試験を行い,その効果を検証した.試験プロトコールとして 1 回の試験につき 2 度足上げ運動を行い,筋電図周波数中央値の変化を算出,二回の運動中のその一次回帰直線の傾きの回転角を疲労指標 (AFI) とすることにより変動による差を低減させた.さらに,周波数解析区間を分けることにより,アンセリンの筋肉疲労軽減効果を確認した.
著者
梶本 修身 久保 行理 西川 和男 川添 尚子 杉野 友啓
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.19-30, 2012
被引用文献数
1

本試験では,プラズマクラスターイオンのダニアレルゲン低減による通年性アレルギー性鼻炎および疲労に対する効果について検証するため,健常成人男女を対象としたランダム化二重盲検 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.ヤケヒョウヒダニ特異的 IgE 陽性であり,ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の諸症状を有する 13 名において,プラズマクラスターイオン 2.5 万個/cm<sup>3</sup> またはイオンなしの試験室で,ダニアレルゲンを播種し 4 時間の精神負荷作業を実施した.その後,試験室外で 2 時間の回復期を設定した.<br> その結果,プラズマクラスターイオンはダニアレルゲンを 80~90%低減することにより,アレルギー性鼻炎の症状である鼻づまりを緩和,QOL の低下を抑制し,通年性アレルギー性鼻炎に対して効果を有すること,さらに精神作業負荷中のパフォーマンスの低下を抑制し,疲労に対しても効果有することが明らかとなった.<br>
著者
梶本 修身 白市 幸茂 大塚 雅生 妹尾 敏弘 川添 尚子 杉野 友啓
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-41, 2012 (Released:2012-04-06)
参考文献数
20
被引用文献数
3

本試験では,新開発 LED 照明による室内環境制御による快適性について,睡眠改善効果および日中使用時の生体への作用により検証するため,成人男性を対象としたランダム化 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.ピッツバーグ睡眠質問票 (PSQI) にて睡眠障害の基準である 5 点以上を示す 12 名において,新開発照明または従来照明の条件下で,睡眠 (22:00~7:00) および 4 時間の精神作業負荷を実施した. その結果,睡眠評価において,新開発照明(試験色 1)は眠り SCAN による睡眠状態の評価,セントマリー病院睡眠質問票による主観的評価により,顕著な睡眠改善効果が確認された.さらに,日中使用時の評価において,新開発照明(試験色 2)は,照度が低いにも関わらず,作業能率の低下をはじめ日中の作業時において悪影響となる作用は認められなかった. 新開発 LED 照明は就寝前の適切な照度および色温度の環境をつくり,室内環境の快適性を高める有用な機器であると考えられた.
著者
鈴木 信孝 杉本 勇人 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-60, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両膝から下腿前面の摩擦性黒皮症の1例を経験したので報告した.患者は,58歳男性.柔道整復師という職業柄,両膝をつき衣服で皮膚が擦れることが多く,20年来,両膝蓋部から下腿前面にかけて広範囲に強い色素沈着を認めていたが,CRD含有食品(CRD 4.2g/日)を6ヶ月間摂取したところ,病変は著しく改善した.本例は,通常の業務を行っていたにも関わらず,CRD摂取により摩擦性黒皮症が軽快した例であった.今後は,同様な例についてさらに検討を加えたいと考えている.
著者
梶本 修身 吉田 勝 藤代 光明 廣畑 亮輔 杉野 友啓 西谷 真人 梶本 佳孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.143-150, 2009 (Released:2009-11-11)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究では,エアーマッサージチェアの疲労に対する有用性を検証するため,健常成人を対象としたランダム化 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.8 時間のデスクワーク負荷の条件下で,VAS, ATMT による作業効率評価,生化学的検査により検証した結果,エアーマッサージチェア群は対照群と比較して,VAS で疲労感の軽減,ATMT の作業効率評価でパフォーマンスの低下抑制がみられた.このことからエアーマッサージチェアがデスクワークによる疲労に対し効果を有することが明らかとなった.また,生化学的検査で唾液アミラーゼの上昇抑制がみられたことから,その作用機序は疲労時に起こる自律神経機能の乱れを調節することであると考えられた.エアーマッサージチェアは,デスクワークによる疲労をはじめとした日常生活において生じる疲労に対して有用であると考えられた.
著者
細山田 康恵 山田 正子
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.43-49, 2020-05-26 (Released:2020-06-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1

目的:ラットに高脂肪食で魚油と酒粕を添加し,血清脂質濃度や不安行動へ及ぼす影響について検討することを目的とした. 方法:5 週齢のSD 系雄ラットに大豆油(コントロール),大豆油+酒粕,魚油,魚油+酒粕の実験飼料を18 日間摂取させた.対照群に大豆油を用いた.血清脂質濃度や不安行動などの測定を行った. 結果:血清コレステロール濃度はコントロール群と比較し,魚油+酒粕群で有意に低値を示した.血清トリグリセリド濃度および遊離脂肪酸濃度については,魚油群と魚油+酒粕群で有意に低値を示した.不安行動では,コントロール群と比較し,酒粕群でオープンアームの滞在時間が有意に高値を示した. 結論:魚油と酒粕の同時摂取が血清コレステロール濃度の上昇抑制に有効であり,脂質異常症の予防や改善に役立つと考えられる.また,酒粕摂取は不安行動の抑制に有効であると期待される.
著者
鈴木 信孝 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.61-65, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両手指の難治性貨幣状湿疹の1例を経験したので報告した.患者は52歳,女性.2012年3月に湿疹が多数出現し,全身に広がった.貨幣状湿疹の診断のもとにステロイド軟膏と抗ヒスタミン薬の内服を受けるも,好転しないため,発症から3年目の2015年に薬を中止した.2017年10月からCRDを1包あたり2.2 g含有する栄養補助食品を1日当たり2包摂取し始めたところ,急速に病変は改善し始め,摂取1ヶ月目には完治し,現在に至っている.本例は,発症から5年半という長期にわたって,とくに両手指に発疹と強い掻痒感が続いていたが,CRD摂取により,約1ヶ月という短期間に根治をみた例である.
著者
池内 眞弓
出版者
The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.65-74, 2022-10-31 (Released:2022-11-16)
参考文献数
44

本研究では,気分障害患者に対して能動的音楽聴取および受動的音楽聴取による効果を評価する目的で,近赤外分光法(NIRS)を用いた前頭葉の活性化と唾液ストレスマーカーの評価を行った.対象は健常者15名,気分障害群12名とした.ベースラインと比較して,音楽演奏課題中のOxy-Hbは,健常者群ではすべてのチャンネルで上昇していたが,気分障害群では有意に低下するか,変化が少ない傾向が見られた.音楽聴取中のOxy-Hbは,健常者群ではすべてのチャネルで低下したが,気分障害群では有意に上昇する傾向が見られた.歌唱課題でのOxy-Hbは,健常者群では多くのチャンネルで上昇した.気分障害群では,音楽療法セッション後に血中および唾液中のコルチゾールレベルが有意に低下した.この結果は,音楽療法がストレス解消にプラスの影響を与えること,能動的な音楽課題と受動的な音楽課題では前頭葉の活性化に対する効果が異なることを示唆している.
著者
山本 樹 山田 勝久 鈴木 信孝 許 鳳浩 高橋 正征
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.67-77, 2018-09-30 (Released:2018-10-12)
参考文献数
84
被引用文献数
1

海洋深層水(Deep Sea Water: DSW)とは200m以深に存在する海水である.海洋深層水の豊富なミネラル分, 清浄性, 富栄養性といった特性を活かした産業利用では, 日本が最先端を行っている.また, 海洋深層水の資源活用, とくに未病や予防医学への応用についても世界中から注目を集めるようになった.そこで今回, 特に, 生活習慣病である脂質異常症, 高血圧症, 糖尿病, 動脈硬化症をはじめ, アトピー性皮膚炎, 骨粗鬆症, がん, 消化性潰瘍, 白内障, 便秘症における海洋深層水の基礎・臨床医学研究成果をレビューしたので報告する.
著者
大野 智 住吉 義光
出版者
日本補完代替医療学会 = The Japanese Society for Complementary and Alternative Medicine
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.83-88, 2006
被引用文献数
2

厚生労働省は 2001 年から,補完代替医療の利用実態調査に関する研究班(主任研究者・兵頭一之介・筑波大学)を組織し,全国のがん専門病院の患者を対象にアンケート調査を行なった.その結果,多くの患者が医療従事者に相談なく個人の判断でさまざまな補完代替医療を利用している現状が明らかとなった.そのため,2005 年に新たに研究班(主任研究者・住吉義光・四国がんセンター)が組織され,CAM の科学的検証と情報提供を主な研究目的として活動を開始した.その成果のひとつとして,2006 年 4 月に患者向けの「がんの補完代替医療ガイドブック」を作成し公表した.本稿では,このガイドブックに寄せられた意見や要望を取りまとめ報告するとともに,今後の改訂版作成に向けた課題についても論じる.<br>
著者
水上 尚典
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.53-57, 2009 (Released:2009-07-07)
参考文献数
23

葉酸代謝拮抗薬(トリメトプリム,トリアムテレン,抗けいれん剤等)は神経管閉鎖障害児妊娠等の危険を押し上げる.妊娠前からの葉酸サプリメント服用はこれら奇形の危険を減少させるとともに,ダウン症児妊娠を減少させる可能性がある.葉酸入りビタミン剤の長期服用は高血圧,大腸癌,乳癌の発症抑制の可能性が指摘されている.高ホモシスティン血症は血栓症,心筋梗塞,痴呆,鬱血性心不全,骨粗鬆症性骨折等の危険因子であるが,葉酸強化食品の摂取は中高年の血中ホモシスティン濃度を低下させる.したがって,葉酸サプリメント服用はこれら疾病予防に効果が期待できる.実際,高齢日本人において葉酸とビタミン B12 服用が骨折予防に有効であることが証明された.葉酸含有天然食品からの葉酸摂取は赤血球内葉酸濃度上昇に関して葉酸サプリメント服用に比し有効でないことが証明されている.葉酸状態改善のためには葉酸サプリメント服用が強く勧められる.
著者
高橋 多喜子
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.77-84, 2004

音楽療法は一言でいえば,音楽による心理療法ということができる.言葉では表現できない何か,言葉を超える何かをクライエントと共有し,そのことでクライエントが成長し,またはそのことで自己治癒力が増進する,またはクライエントのQOL(生活の質)が向上するというのが音楽療法といえよう.これは芸術療法一般に共通することでもある.ここでは,わが国の音楽療法の現状,歴史,音楽療法の形態,及び対象者について概観し,次に,わが国で深刻な問題となっている痴呆高齢者のための音楽療法と終末期医療における音楽療法について最近の効果研究を挙げ,この領域での音楽療法を紹介する.<br>
著者
細山田 康恵 山田 正子
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.27-32, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
20

目的:ラットに, 高脂肪食とアルコール(Alcohol:Alc)を摂取させ, カプサイシン(Capsaicin:CP)の添加が脂肪蓄積量や酸化ストレスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 方法:4週齢Sprague-Dawley系雄ラットを用いて, 4週間飼育した.実験群は, 4グループを設定した.グループA:高脂肪食+水(Control:C群), グループB:高脂肪食+カプサイシン+水(CP群), グループC:高脂肪食+10%アルコール(Alc群), グループD:高脂肪食+カプサイシン+10%アルコール(CP+Alc群)とした.脂肪重量, 酸化ストレスなどの測定を行った. 結果:体重増加量, 総飼料摂取量に差は見られなかった.後腹壁脂肪重量, 肝臓トリグリセリド濃度および酸化ストレス度は, C群よりCP群とCP+Alc群で有意に低値を示し, Alc群よりCP+Alc群で有意に低値を示した. 結論:高脂肪食とアルコール摂取ラットにおいて, カプサイシンは, 脂肪蓄積量および酸化ストレス度を低下することが明らかとなった.カプサイシン摂取が,酸化ストレスを緩和し, 脂質異常症の予防に役立つことが期待される.