著者
朴 光駿
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.11, pp.79-99, 2015-03

The Homenyiin System combined with the public assistance implemented by the Japanese Government-General of Korea had disappeared just after the Nation Independence of 1945, but the System of that of Japan has existed till now. The paper attempts to explainabout that from the three points of view. The first explanation concerns that the Homenyiin System was originated by the Japanese indigenous culture, the region initiative development and the paternalistic atmosphere of the society, and it was quite different from that of Korea. The second explanation is relating to the personnel of the system, and the Korean members of Homenyiin was tended to be defined by the people as the national traitor. And the third one concerns that how the system relevant to the relief of poverty, the original aim of the public assistance. As far as in colonial Korea is concerned, the Homenyiin system was less relevant to the essential function of the poverty relief in Korea.HomenyiinSystemHistory of KoreanSocial WelfarePublic AssistanceComparative Social Policy
著者
朴 光駿
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.14, pp.133-152, 2018-03

本研究の目的は,朝鮮王朝の防貧・救貧制度である倉制度(還穀制度)が大規模化したことの説明を思想的観点から試みることである。倉制度は中国の産物であり法家的制度であったが,それを輸入した朝鮮王朝ではそれを全くの儒家的制度として解釈しており,それがその大規模化の一因をなしたことを明確にしたい。法家思想においても倉制度の目的の1つは飢饉の際に貯蔵穀をもって貧民を救済することにあったが,米価格の変動から農民の生活を安定化すること,勤勉で自立した農民を養成することがより重要な目的であった。ところが,儒家の影響がほぼ絶対的であった朝鮮王朝では,還穀はもっぱら国王の仁政を実現する手段として捉え,ほぼ全人民への穀物提供が日常化された。また,本研究は,還穀制度が大規模に実施されたことが,朝鮮社会の貧困観,民衆の貧困に対する態度,そして全体としての社会経済システムにどのような影響を与えたのかについても検討する。本研究は基本的には文献研究であるが,韓国で倉制度を専門的に研究してきた歴史学者からのヒアリング,そして韓国歴史研究会での研究報告と意見聴取などの研究方法を併用した。朝鮮王朝救貧政策倉制度環穀制度法家思想
著者
加美 嘉史
出版者
佛教大学社会福祉学部
雑誌
社会福祉学部論集 = Journal of the Faculty of Social Welfare (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
no.12, pp.27-50, 2016-03

本稿は戦前期の京都市に焦点をあて,「浮浪者」(ルンペン)対策の歴史的展開から戦前期日本の貧困の一側面を明らかにすることを目的としている。本稿では特に失業者の激増に伴って浮浪者問題が社会問題となった昭和初頭から日中戦争開戦前後を中心に京都市における浮浪者の実態とその対策について検討した。昭和恐慌期,失業問題が深刻化するなかで京都市では日雇労働者や浮浪者が増大した。市の浮浪者概況調査によると市内出身地はわずかで,その多くは若年失業者であった。失業問題の激化は日雇労働者などを浮浪化させ,市内流入を促進させていた。浮浪者の増加はその類型化に基づく対策の必要性を提起された。京都市では「準浮浪者」層に対する無料宿泊所が設置され,さらに「労働者更生訓練道場」での,精神的な訓練教化によって戦時体制へと移行する国家の人的資源提供の一端を担った。ルンペン救護法失業者準浮浪者惰民養成
著者
藤松 素子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.39-56, 2012-03-01

「地域福祉の時代」と言われて久しいが,地域福祉とはどのようなものであり,どのような要件のもとに成立しうるのかについての議論は曖昧なまま,個別の実践に対する評価,援助技法についての効果測定がなされているのが現状である。また,近年,国家や地方自治体に対応困難な地域課題を地域住民の自発的な活動 (「新たな支え合い」) 等により解決することを期待する政策が展開されている。そもそも,地域福祉は国家政策と切り離して成立しえるものではない。コミュニティが崩壊・弱体化した日本社会において,地域福祉を推進していくためには,私たちの地域生活基盤を支える国家政策,地方自治体政策が機能していることが必要条件となる。また,地域福祉促進の重要な担い手である社会福祉協議会が本来的な機能を遂行していくための政策を持ち得ているのか,地域福祉計画が地域住民の生活を維持・発展させていくために機能しているのかについても批判的な検討を深めていく必要がある。
著者
植田 章
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.19-32, 2010-03-01
被引用文献数
3

障害のあるなしにかかわらず,老化には個人差がある。ダウン症者においては壮年期にさしかかった頃にアルツハイマー症状を呈したり,身体的機能の低下をもたらすなどの「早期老化」傾向が確認されているが,知的障害のある人たちの「老い」が一律的に早いということではない。しかし,彼らが被ってきた社会的な不利益が壮年期・高齢期の暮らしを大きく規定していることは確かであり,このことは,知的障害のある人たちの加齢研究の重要な視点と言える。 本小論では,筆者が実施した「知的障害のある人(壮年期・高齢期)の健康と生活に関する調査」の結果をふまえ,健康保持と日常的な生活アセスメントの重要性や環境要因についての検討の必要性,高齢化する家族に対応した支援のあり方など,壮年期・高齢期の人たちの地域での暮らしをより豊かなものにしていくための生活支援の実践的課題について明らかにした。さらに,終末期を含めて後期高齢期の支援には,ただただ健康や疾患に配慮するだけの消極的な支援ではなく,「人生の満足」を追求した積極的な視点が求められていることも示した。
著者
伊部 恭子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.9, 2013-03-01

本稿の目的は,社会的養護を受けた人々への生活史聞き取り調査(2007?2010年度に実施) から,家庭復帰をした人とその家族関係・社会関係に焦点をあて,支援に関する課題を考察することである。ここでは,社会的養護のなかで,主に施設ケアを取り上げる。施設への入所前,入所中,退所後という時間的経過のなかで,当事者が,その生活とおかれている状況,家族関係,社会関係をどのようにとらえてきたのか,どのような困難や課題があり,どのように対処したのか等を明らかにし,支援の過程に則して課題を考察した。生活史インタビューの結果,家庭復帰後にも多様な生活困難,生活課題,家族関係・社会関係における葛藤や困難,課題が生じていることが明らかになった。支援の過程,すなわちアドミッションケア,インケア,リービングケア,アフターケアにおいて考慮すべき点として,特に,退所後の支援を見通したインケアにおける支援のあり方が,当事者の生と生活の力を育み,施設退所後に困難等を抱えた時の対処の仕方や課題解決の仕方に活かされる可能性,インケアと並行して親支援を行うことの重要性が確認された。引き続き,当事者の生活と支援について,時間軸に着目して分析し,回復に向けた支援に関する考察を深めていくことを課題とする。
著者
林 悠子
出版者
佛教大学
雑誌
社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-94, 2011-03-01

本稿の目的は,保育の質において重要であるとされる「過程の質」は保育者にとってどのように経験されているのかを,保育記録の質的分析より明らかにすることである。筆者が保育者として記した保育記録の内容をKJ法を用いて分析した結果,保育者がその日の実践を振り返り書き残したことは8つのグループに分類でき,その特徴から保育者は子ども・保育者・職員・保護者との関係性を重視していることが明らかになった。グループ間の意味の連関からは,子どもの育ちへの願いを持った保育者が子どもと出会い,子どもの行為の意味を考え,次の関わりを展開する,保育者と子どもとの関わりの積み重ねの中に「過程の質」が見いだせることが考察できた。