- 著者
-
伊部 恭子
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 社会福祉学部論集 (ISSN:13493922)
- 巻号頁・発行日
- vol.9, 2013-03-01
本稿の目的は,社会的養護を受けた人々への生活史聞き取り調査(2007?2010年度に実施) から,家庭復帰をした人とその家族関係・社会関係に焦点をあて,支援に関する課題を考察することである。ここでは,社会的養護のなかで,主に施設ケアを取り上げる。施設への入所前,入所中,退所後という時間的経過のなかで,当事者が,その生活とおかれている状況,家族関係,社会関係をどのようにとらえてきたのか,どのような困難や課題があり,どのように対処したのか等を明らかにし,支援の過程に則して課題を考察した。生活史インタビューの結果,家庭復帰後にも多様な生活困難,生活課題,家族関係・社会関係における葛藤や困難,課題が生じていることが明らかになった。支援の過程,すなわちアドミッションケア,インケア,リービングケア,アフターケアにおいて考慮すべき点として,特に,退所後の支援を見通したインケアにおける支援のあり方が,当事者の生と生活の力を育み,施設退所後に困難等を抱えた時の対処の仕方や課題解決の仕方に活かされる可能性,インケアと並行して親支援を行うことの重要性が確認された。引き続き,当事者の生活と支援について,時間軸に着目して分析し,回復に向けた支援に関する考察を深めていくことを課題とする。