著者
高田 治樹 菊地 学 尹 成秀
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-13, 2020-03-31

本研究は,多種のオタクカテゴリとオタクカテゴリに対する印象との関連性を検討することを目的として調査を実施した。調査対象者は,自身をオタクと自認するオタク群258名となり,自身をオタクと認識しない一般群258名を対象とした。オタク群と一般群によるオタクカテゴリごとの印象の差を検討した結果,カテゴリによって,オタク群は一般群よりも社交性に関するポジティブなイメージを抱きやすく,マナーの悪さに関するネガティブなイメージを抱いていた。また,一般群はオタク群よりもオタクカテゴリに対して不健康で,大人しいという印象を抱いていた。さらに,オタクカテゴリと印象評定との相互関連性を双対尺度法によって検討した結果,腐女子とマンガオタクは過激で妄想しやすいという印象でまとめられ,女性アイドルオタクと声優オタクは不健康という印象でまとめられ,ゲームオタクと鉄道オタクは陰気でマナーが悪いという印象でまとめられ,アニメオタクやコスプレイヤーは恋愛が苦手で大人しいという印象でまとめられた。本研究の結果から,一般群においていまだにオタクに対する偏見がみられ,その偏見はオタクカテゴリごとの異なる印象が統合された偏見である可能性が示唆された。
著者
須賀 知美 庄司 正実
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.137-153, 2008
被引用文献数
1

感情労働が職務満足感やバーンアウトに及ぼす影響については,これまでの研究で一貫した結果が得られていない。本稿は,これまでの研究を概観し,研究対象や測定方法などを整理することを目的とした。その結果,さまざまな職業が調査対象とされ,感情労働の測定指標もさまざまであることが明らかにされた。この測定指標の混在が,一貫した結果が得られない理由の一つと考えられる。また,感情労働以外の独立変数や調整変数,媒介変数について,仕事の自律性やソーシャル・サポートなどの労働条件や職場環境に関する変数は多いが,パーソナリティや態度のような変数が少ないこと,労働者が感情労働を行うことよるクライエントや客からの感謝・承認を含めた検討がほとんどないことが指摘された。また,感情労働と他の変数の交互作用の検討も少ないことが示された。さらに,日本での文献数は外国の文献数と比較すると遥かに少ないことが明らかになった。これまでの研究の問題点に対する今後の課題について言及された。
著者
相浦 沙織 氏森 英亞
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.131-145, 2007
被引用文献数
1

発達障害児をもつ母親は,診断が確定しにくい点から,母親は子どもが障害を持っているかどうかの疑いの時期が長く,障害の肯定・否定の葛藤を繰り返すといわれる(中田,1995)。葛藤を起こしている状態は,心理的に危機的な状態だといえ,障害の疑いの時期から診断名がつくまでの時期における母親を対象とした事例を中心に調査研究を行うこととした。その結果,障害の疑いから診断までの時期が平均して,2年1ヶ月の期間を要しており,先行研究と同様に,診断までの期間が長いことが発達障害児の特徴であることが明らかになった。この期間に対象者全員が,障害があるかどうかの葛藤や不安を感じており,つらかった時期であった。また,10人中8人の母親は,子どもを養育する中で最もつらかった時期としてこの時期をあげた。このような疑いから診断までの時期で,母親の心理的過程に影響を与えたものは,特に,夫からの心理的サポート,同じ悩みをもつ母親同士のピアサポート,専門機関や病院からの実際的サポートであった。以上より,臨床家によって夫への子育ての参加を促す場,同じ悩みを持つ母親同士のピアサポートが得られる場,専門機関や病院につなげるサポートなどの提供が必要であると考察された。
著者
須賀 知美 庄司 正実
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.77-84, 2007

サービス業従事者は,職務上適切な感情状態を保つための感情管理-感情労働-が,職務の一部として求められている。特に,接客サービスを基本とする職種では,そのサービスの質には従業員個人のパーソナリティが大きく影響すると考えられている。本研究では,飲食店従業員(203人)を対象に,感情労働を行っていることを示す行動-感情労働的行動-とパーソナリティの関連を検討した。本研究では,サービス業と関連があるパーソナリティとしてセルフ・モニタリングと自己意識について取り上げた。重回帰分析の結果,予想通り,セルフ・モニタリングの自己呈示変容能力が感情労働的行動の下位尺度のすべて(感情の不協和,客の感情への敏感さ,客へのポジティブな感情表出)と関連を示した。しかし,予測に反して,自己意識の公的自己意識は感情労働的行動との関連がほとんど見られず,私的自己意識が関連を示した。今後は,感情労働に関連するパーソナリティについて,顧客満足のためのパフォーマンスと,従業員自身の職務満足感の両側面から捉えた研究が必要であると考える。
著者
高田 治樹 菊地 学 尹 成秀
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-13, 2020

本研究は,多種のオタクカテゴリとオタクカテゴリに対する印象との関連性を検討することを目的として調査を実施した。調査対象者は,自身をオタクと自認するオタク群258名となり,自身をオタクと認識しない一般群258名を対象とした。オタク群と一般群によるオタクカテゴリごとの印象の差を検討した結果,カテゴリによって,オタク群は一般群よりも社交性に関するポジティブなイメージを抱きやすく,マナーの悪さに関するネガティブなイメージを抱いていた。また,一般群はオタク群よりもオタクカテゴリに対して不健康で,大人しいという印象を抱いていた。さらに,オタクカテゴリと印象評定との相互関連性を双対尺度法によって検討した結果,腐女子とマンガオタクは過激で妄想しやすいという印象でまとめられ,女性アイドルオタクと声優オタクは不健康という印象でまとめられ,ゲームオタクと鉄道オタクは陰気でマナーが悪いという印象でまとめられ,アニメオタクやコスプレイヤーは恋愛が苦手で大人しいという印象でまとめられた。本研究の結果から,一般群においていまだにオタクに対する偏見がみられ,その偏見はオタクカテゴリごとの異なる印象が統合された偏見である可能性が示唆された。
著者
黒沢 幸子 日高 潤子 張替 裕子 田島 佐登史 Sachiko Kurosawa Junko Hidaka Yuko Harigae Satoshi Tajima 目白大学人間学部 目白大学人間学部 目白大学人間学部 目白大学人間学部 Mejiro University Faculty of Human Sciences Mejiro University Faculty of Human Sciences Mejiro University Faculty of Human Sciences Mejiro University Faculty of Human Sciences
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.4, pp.11-23, 2008

筆者らは心理学を専攻する大学生をボランティアとして,小・中学校へ派遣するシステムを構築した。この「メンタルサポート・ボランティア活動」システムは,子どもたちの心理的支援のためのボランティア活動と,それを支える大学での授業から成り立っている。本研究は,このシステムにおいてボランティア活動を体験した学生の変化・成長の様相を明らかにすることを目的とした。そのため,学生が活動を振り返って記述した感想と活動評価アンケートへの回答を対象として,KJ法による分類を行った。分析対象となった回答は,延べ179名分であった。分析の結果,学生の変化・成長は,「学生自身の人間的変化・成長」,「現場での実践から得た学び」,「授業から得た学び」の3つの大グループと,その他3つの中グループに分類された。この3つの大グループは,相互作用・相互促進していることが見出された。キャリア教育の視点から見た学生の変化・成長は,「自他の理解能力」,「コミュニケーション能力」の2つに集約された。また,本システムにおけるボランティア活動が学生の「人間関係形成能力」を育成している可能性が示唆された。
著者
磯ヶ谷 尊
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.(2), pp.35-47, 2006

解離性同一性障害の状態を訴えた二十代女性のクライエントとの面接過程を報告する。面接開始当初クライエントは、恋人に対する暴力的な振る舞いの間の記憶が失われると話し、これは解離性健忘と思われた。しかし経過中に別人格の存在を報告するようになり、面接においても解離性同一性障害様の状態が現れた。結果的に事例は、解離症状の改善を見ながらも中断した。この事例との関わりにおいて筆者には、面接内に持ち込まれない感情を担っており、行動化を起こす別人格とされる部分とどう触れていくかが問題となった。筆者は、別人格があるという訴えを強化してしまう危険性を考え、迷ったが、最終的に、その人格部分が<面接に来られるといい>と伝える事で陰性感情転移を扱おうと試みた。考察では、それぞれ異なった人格として示される部分の取り扱いについて、『本当かも知れないし、そうではないかも知れない』という不安定な位置に自らを置きつつ、セラピストが、時にはクライエントの語る別人格があるとの文脈に乗り、その文脈に沿って介入を工夫することが必要な場合もあることを論じている。また、別人格があるとされる訴えとクライン派精神分析の「病理構造体」との類似点を論じた。中断に到った理由についても検討し、セラピストの逆転移あるいは逆転移の抑圧が面接素材理解に及ぼす影響を論じた。
著者
田中 勝博 土田 恭史 今野 裕之 丹 明彦
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.49-61, 2008

本研究は,卵画と洞窟画における描画内容および対象者の自己印象評定と自己イメージとの連関について検討した。その結果,自己イメージの違いによって,卵画や洞窟画に投影される描画アイテムが異なることが示唆された。自己イメージ高群は明るく,構成的な描画を行うのに対して,低群は暗く非構成的な描画を行うことが多い傾向が認められた。描画に対する印象評価は,描出された描画の全体的な印象や構成度などによって影響を受けるが,自己イメージも描画の印象評定に影響をおよぼすことがうかがわれた。