著者
財津 亘
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-11, 2022-03-31

本研究は,連続バラバラ殺人における事件リンク分析の有効性を検討したものである。事件リンク分析とは,犯罪捜査の支援を目的として,統計学や心理学的手法を用いて犯行現場を分析する犯罪者プロファイリングの一種である。本研究では,二つの仮説を通して事件リンク分析の妥当性を検討した。一つ目の仮説は,同一犯人による連続殺人の犯罪行動は事件間で類似するといった「行動の一貫性」仮説であり,もう一つは異なる犯人の場合は連続殺人における犯罪行動は事件間で異なるといった「行動の識別性」仮説である。104名による120事件をオンライン新聞データベースより収集し,28カテゴリ(例.殺害方法や遺体の損壊,被害者の遺棄など)を多重対応分析によって検討した。多重対応分析の結果によると,連続犯の犯罪行動はその連続事件を通してまったく同じあるいは類似していたことから,前者の仮説は部分的に支持された。さらに,多重対応分析によると,次元上において104名がそれぞれ敢行した104事件の犯罪行動はまったくお互い合致することがなかったことから,後者の仮説を支持した。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-10, 2021-03-31

本研究では,片づけ行動を促進する要因を明らかにするために,片づけ動機および実行機能が片づけ行動に及ぼす影響を検討した。さらに,片づけ行動の心理的効果を明らかにするために,片づけ行動がwell-beingに及ぼす影響についても検討した。大学生を対象に質問紙による調査を実施し,回答に不備のない525名を分析対象とした。仮説モデルに沿って,構造方程式モデリングを実施した。その結果,片づけ動機から片づけ行動に有意な正の影響がみられたことから,片づけ動機が高いほど片づけ行動が実行されていることが示唆された。また,実行機能から片づけ行動にも有意な正の影響がみられたことから,実行機能が高いほど片づけ行動が実行されていることが示唆された。さらに,片づけ行動からwell-beingに正の影響がみられたことから,片づけ行動がwell-beingを高めていることが示唆された。
著者
渡邉 勉
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-15, 2018-03-31

高村(旧姓,長沼)智恵子(1886~ 1938)は油絵画家として自立する志を抱き,『青鞜』創刊号表紙に凛とした女神を描いた。本論は彼女のその後をイメージの観点から臨床心理学的に考察した。彼女は彫刻家・詩人の高村光太郎(1883~ 1956)と出会い芸術家同士の新しい生活を始めたが,油絵制作の悩みや共棲の葛藤に直面していた時に,郷里の原家族が破産した。精神のバランスを崩し自殺を企て,その後統合失調症を発症した。入院後彼女は色紙の切抜きを日課にして,膨大な作品を残した。特に「蟹」は傑出していて自己イメージの投影が生じたようだ。光太郎は健やかな妻も病む妻も詩集『智恵子抄』に謳いあげた。賞賛も批判もあるが,誰も二人の生活のミステリアスな謎を解明することはできない。智恵子の死後,光太郎は十和田湖畔に二人の女性の裸像群を建てた。それは智恵子の面影を写していると評されたが,彼は完全に肯定していない。智恵子を賛美する自分を認識している,その自分の自覚を表現しているのかもしれない。いのちの最期に彼らが創出したイメージは,あたかも無意識に導き出されたかのように,それぞれの本来の資質を明らかにしているだけでなく,彼らの生涯を象徴している。智恵子の紙絵は,美しいものを求める執念だけでなく,ようやく自己の本来性を探り当てた喜びの表現でもあるに違いない。だからこそ光太郎ひとりにその秘かな楽しさを打ち明けたのではないか。
著者
青柳 宏亮 沢崎 達夫
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.13, pp.23-34, 2017-03-31

心理療法やカウンセリングをはじめとする心理臨床において,ノンバーバル・コミュニケーションの重要性は学派を越えて広く認知されている。本研究では,心理臨床におけるノンバーバル・コミュニケーションに関する実証的研究を,①セラピストとクライエント間のノンバーバル・コミュニケーションを構成する各要素に着目し,それぞれの影響を検討する要素還元的アプローチ,②セラピストとクライエントの相互交流そのものを研究対象とするアプローチ,に大別して概観した上で,臨床理論的研究との関連を検討し,今後の研究課題について検討を行った。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro Journal of Psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-64, 2019-03-31

本稿では,日本における片づけについて先行研究を概観し,片づけにおける研究の課題について考察する。保育・家政学の分野における片づけ,発達障害・精神疾患と片づけの関連,情報処理における片づけ支援の観点から,それぞれの先行研究について概観した上で,今後の片づけに関する研究の展望を論じた。全体を概観して捉えられる研究の動向の特徴としては,まず一つ目として,片づけを促すための方策や支援を提案した研究がどの観点においても見られることである。「どうすれば片づけられるのか」という視点は,片づけの研究において中核をなすものだといえるだろう。二つ目は,片づけを,個人を理解するための指標として活用できる可能性を示唆する研究が見受けられることである。子どもの発達の状態を理解するために,片づけは指標となると考えられる。現状として,片づけに関する研究は保育における研究が多い。今後は,幼児期以降の片づけに関する研究が進められることが望まれる。
著者
元井 沙織 小野寺 敦子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
no.15, pp.53-64, 2019

本稿では,日本における片づけについて先行研究を概観し,片づけにおける研究の課題について考察する。保育・家政学の分野における片づけ,発達障害・精神疾患と片づけの関連,情報処理における片づけ支援の観点から,それぞれの先行研究について概観した上で,今後の片づけに関する研究の展望を論じた。全体を概観して捉えられる研究の動向の特徴としては,まず一つ目として,片づけを促すための方策や支援を提案した研究がどの観点においても見られることである。「どうすれば片づけられるのか」という視点は,片づけの研究において中核をなすものだといえるだろう。二つ目は,片づけを,個人を理解するための指標として活用できる可能性を示唆する研究が見受けられることである。子どもの発達の状態を理解するために,片づけは指標となると考えられる。現状として,片づけに関する研究は保育における研究が多い。今後は,幼児期以降の片づけに関する研究が進められることが望まれる。
著者
福島 和郎 岩崎 庸男 渋谷 昌三 Kazuro Fukushima Tsuneo Iwasaki Shouzo Shibuya 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間社会学部 目白大学人間社会学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculity of Human and Social Sciences Mejiro University Faculity of Human and Social Sciences
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.(2), pp.65-74, 2006

終助詞「よ」と「ね」に関する研究の特徴を研究分野ごとに大別すると、初期の国文法分野を中心とする構文論的アプローチや、最近の発達研究と自閉症研究の分野を中心とする事例に基づくアプローチは、主に「よ」と「ね」の対人関係機能を指摘し、日本語文法、日本語教育、言語心理学の分野を中心とする語用論的アプローチは、主に「よ」と「ね」の内在的意味を指摘し、認知科学分野を中心とする談話管理理論に基づくアプローチは、主に「よ」と「ね」が果たす情報伝達時の手続き的な指示機能を指摘しており、研究分野によって解釈が様々に分かれている。また、研究方法については、大半の研究で研究者の経験や理論に基づいた用例解釈が採用されている。発達研究と自閉症研究および一部の言語心理学分野では統計データを重視した研究方法も採用されているが、こうした研究では分析対象とされる発話文の種類が限定的な用法に留まっている。「よ」と「ね」に関する研究の更なる進展には、学問分野を越えた幅広い視点からの実証的研究が求められよう。
著者
齋藤 路子 沢崎 達夫 今野 裕之 Michiko Saito Tatsuo Sawazaki Hiroyuki Konno 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間学部 目白大学人間学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculty of Human Sciences Mejiro University Faculty of Human Sciences
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.(4), pp.101-109, 2008

本研究の目的は,完全主義と帰属スタイルの関連の検討,および完全主義が抑うつに至るプロセスに関するモデルを構成し,共分散構造分析による検討を行うことであった。大学生444名は完全主義,内的安定的帰属スタイル,抑うつを測定する質問紙に回答した。その結果,完全欲求および高目標設定は成功場面でも失敗場面でも内的安定的帰属と関連する一方で,失敗過敏および行動疑念は失敗場面のみ内的安定的帰属と関連することが示された。共分散構造分析の結果,(a)適応的完全主義が強いほど,対人領域における成功に対して内的安定的帰属をしやすく,ポジティブ感情が強まること,(b)不適応的完全主義が強いほど,対人領域における失敗に対して内的安定的帰属をしやすく,抑うつが強まることが示された。最後に,完全主義が抑うつに至る認知プロセスについて介入方法も交えて議論した。
著者
住沢 佳子 福島 脩美 Yoshiko Sumizawa Osami Fukushima 目白大学大学院心理学研究科 目白大学人間学部 Mejiro University Graduate School of Psychology Mejiro University Faculty of Human Sciences
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 = Mejiro journal of psychology (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.111-123, 2008

人型シールは,充分な面接時間がとれずとも質的に低下せず,圧迫感を与えない方法でクライエントの対人関係や対人距離感を知ることを目的とし主に学生相談の中でタックシール(住沢,2002),HRシール(Human Relation seal)(住沢,2003),そして人型シールと徐々に形を変えて導入されてきた。本研究は,クライエントによって認知された対人関係を的確に査定するため,また面接の話題を具体化する道具としても活用することを目的に開発するものである。本稿は人型シール開発のための一連の研究の1つとして人型シール同士の方向,距離,大小,上下について調べた。調査方法としては,大人と子供,好きな相手,過小評価,支配的,味方,板ばさみなどを含む事例を参加者が人型シールで表現し,表現された人型シールから,方向,距離,大小,上下の特徴を調べた。その結果,たとえば互いに好意を持つ関係を表現する場合,2人を向かい合わせに貼るという表現もあるが,近くに貼ることで表現されること,つまり,方向と距離の表現の関係が明らかになった。大小に関しては大人と子供の表現の他に大きく感じる人には大,小さく感じる人には小の人型シールが使用されることがわかった。また上下に関しては立場の強い人が上,立場の弱い人が下に貼られる傾向がみられた。また,貼られた人型シールに漫画の描き込みが多く見られ,人型シールによるクライエント理解に新たな側面を見出すことができた。The "Hitogata-seal" (person form seal) was developed as a tool of adequate assessment of perceived interpersonal relationship in the counseling situation. Also it was expected to become a interaction topic between client and counselor. This paper was one of research projects with hitogata-seal. Participant were given the brief description of two cases in which interpersonal relationship were presented, and were asked to express their perception by arranging of hitogata-seals, in direction, distance, size, and position. The results were the following : The distance was related to the direction for each other. A large seal showed a adult, and a small one expressed a child. In addition, a large seal was used also for the person whom the participant felt important or influential, and a small one as unimportant or weak. A person in strong position was arranged in upper part, and a person in weak was arranged below. A lot of cartoons were drawn on the hitogata-seal. This was able to find a new aspects to the client understanding with hitogata-seal.