著者
奴賀 俊光 小島 一幸 永友 繁 前川 真紀子
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S1-S4, 2017 (Released:2017-04-15)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2015年と2016年に東京都内湾運河部の防衝杭上でウミネコの繁殖を確認した.2015年6月18日にヒナを,2016年5月10日には同じ場所で3卵の巣を2巣確認し,周囲に10~20巣程度あると考えられた.5月18日にはヒナを確認し,6月24日には16羽の幼鳥を確認した.過去の繁殖記録から,ウミネコは内陸部から海岸部へ徐々に営巣地を移し,当地で営巣するようになったと考えられる.
著者
福田 道雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.S15-S18, 2012 (Released:2013-01-05)
参考文献数
10

1977~1984年と1990~1995年の5~8月に,東京都恩賜上野動物園の西園でスズメの巣内ヒナ数の調査を行なった.平均ヒナ数とその標準偏差は1977~84年が3.4±1.3羽(n=22),90~91年が2.9±1.3羽(n=17),92年が2.5±1.1羽(n=45),93年が2.1±0.9羽(n=46),94年が2.2±1.1羽(n=55),95年が2.3± 1.1羽(n=44)で,年による有意な差がみられた.また月による平均巣内ヒナ数にも有意な差が見られた.
著者
山田 一太
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A57-A60, 2011

春の渡り時期にハヤブサ <i>Falco peregrinus</i> の捕食成功率を明らかにする目的で広島県大竹市の海岸で調査を行なった.調査は1991-2011年まで,2000年と2005年を除く,のべ19年間に146日行ない,ハヤブサの捕食行動は115日観察した.ハヤブサの狩りはヒヨドリ <i>Hypsipetes amaurotis</i> を狙った攻撃が多かった.記録の多い海上における成鳥雌雄のヒヨドリに対する捕獲成功率は,雌は68%,雄は89%と雄の捕獲成功率が有意に高かった.ヒヨドリに対する捕獲成功率の違いに影響する要因としては,平均攻撃回数が雌が6.2回だったのに対して雄は2.8回と少なく,体の小さい雄の方が小回りがきき,退避行動をとるヒヨドリにうまく追従して攻撃したことが考えられた.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.R1-R4, 2019 (Released:2019-12-29)
参考文献数
2

気候変動の鳥類の繁殖時期への影響をモニタリングする目的で,6地点の森林に設置したICレコーダでタイマー録音を行ない,その聞き取りをした結果である.2009年からのデータがあり,調査年は場所により異なっている。森林の鳥類のさえずりの長期にわたるデータは少なく,さまざまな研究を行なう上でも有用な情報と考えられるため,ここに公開する. データダウンロード:http://www.bird-research.jp/appendix/br15/15r01.html
著者
福田 篤徳 小田谷 嘉弥 白川 浩一 白川 浩子 小澤 重雄 今井 光雄 深川 正夫 梅垣 佑介 山口 恭弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.A1-A14, 2019 (Released:2019-06-27)
参考文献数
27

シマクイナの生態は不明な点が多く,茨城県を含め全国的な生息状況はよく分かっていない.そこで,2016年1月から2018年5月にかけて,茨城県内のスゲ類などの低茎草本が優占しヨシ類などの高茎草本が混在する植生環境を含む12地域(14地点)でプレイバック法を用いて調査を行なった.種の同定は,声紋の解析や鳴き声が発せられた場所から飛び出した鳥の特徴から行なった.調査の結果,県内の7地域(9地点)において生息を確認し,その中の4地域(5地点)で複数個体の存在を確認した.そのうち1か所では,冬期3シーズンにかけて8-15羽/haという高い個体密度で安定して生息していることを確認した.また,通年調査を行なった結果,県内に11月上旬から4月中旬もしくは下旬まで生息していることが示唆された.本研究により,県内である程度の個体数が継続的に越冬していることが明らかになった.
著者
嶋田 哲郎 植田 睦之 高橋 佑亮 内田 聖 時田 賢一 杉野目 斉 三上 かつら 矢澤 正人
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A1-A12, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
9

GPS-TXは発信機内のGPSにより得た位置情報を無線で受信機に送信し,受信機で記録を残すシステムである.位置精度の誤差は6m,測定範囲は平地など開けた環境では受信機の位置を中心に半径10km以上の範囲をカバーするため,開けた環境で活動するガンカモ類を詳細に追跡するときに有効である.またGPS-TXではリアルタイムに位置情報を取得することができるため,位置情報を得られた時点の環境をすみやかに確認できる利点もある.こうした特性を生かし,2015/16年と2017/18年の越冬期における伊豆沼・内沼周辺のオオハクチョウ Cygnus cygnus,オナガガモ Anas acuta,マガモ A. platyrhynchosの環境選択をGPS-TXによって明らかにした.オオハクチョウは昼行性でハス群落の分布する岸よりの水面や給餌場所に滞在したほか,沼周辺の農地でも活動した.オナガガモは昼行性,夜行性いずれの特徴もみられ,2015/16年では,給餌場所を中心に分布しながらも,沼の北部から東部の農地へ夜間移動した例もあった.夜間に移動した農地までの距離は伊豆沼から平均2.5kmであった.2017/18年では,給餌場所を中心に分布し,昼間は餌付けがなされる駐車場付近に多く,夜間は給餌場所の奥まったヨシ群落周辺に分布した.マガモは夜行性で,雌雄とも伊豆沼西部に滞在し,夜間沼北部の農地へ移動した.夜間に移動した農地までの距離は伊豆沼から平均4.5kmであった.農地における土地利用をみると,オオハクチョウとオナガガモは乾田を,マガモは湛水田を選択した.GPS-TXはガンカモ類の環境選択を明らかにするときに有効な手法であり,さらに多くの種の追跡を行なうことでそれらの越冬生態を明らかにすることができると考えられる.
著者
山路 公紀 林 正敏
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A23-A31, 2018 (Released:2018-07-03)
参考文献数
15
被引用文献数
1

日本では冬鳥であるジョウビタキ Phoenicurus auroreus が2010年6月に長野県富士見町で繁殖していることが発見された.その後8年間の経年調査の結果,八ヶ岳とその周辺では64件の繁殖が確認され,繁殖が継続・定着していた.繁殖に利用された環境には,いくつかの特徴があり,林地よりも別荘・リゾートが,非定住家屋よりも定住家屋がより多く利用されていた.営巣場所は,換気扇用フードなど,すべてが人工物であり,巣の地上高は2m前後が多かった.住宅地であっても繁殖場所は林縁部に近かった.これらから,ジョウビタキは林に依存しながらも人の活動と密接な関係を保つ場所で繁殖していると考えられる.
著者
嶋田 哲郎 植田 睦之 高橋 佑亮 内田 聖 時田 賢一 杉野目 斉 三上 かつら 矢澤 正人
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.A15-A22, 2019 (Released:2019-08-02)
参考文献数
14

鳥類や哺乳類の行動調査を目的として開発されたGPS-TXは,発信機内のGPSにより得た位置情報を無線で受信局に送信し,受信局で記録を残すシステムである.2017/18年と2018/19年の越冬期に伊豆沼・内沼周辺においてマガモ Anas platyrhynchos 16個体,カルガモ A. zonorhyncha 2個体のGPS-TXによる追跡を行った.マガモは夜行性で,雄雌ともに夜間の行動パターンにはばらつきがあり,沼内に滞在する個体がいた一方,沼外では伊豆沼から北側に位置するハス田や湛水田,ため池,河川などに分布した.カルガモもマガモと同様に夜行性で,沼から北側の狭い用水路(川幅<5m)やハス田,湛水田などに分布した.河川や広い用水路にはみられず,狭い用水路でみられた割合が高かったことがマガモと異なる点であった.今後,GPS-TXの改良とともに追跡できる対象種が増えていく中で,越冬期のカモ類追跡においてさらなる展開を期待できる.
著者
關 義和
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S1-S5, 2009 (Released:2009-02-16)
参考文献数
10

カルガモの季節移動について調べるために,山梨県の大野調整池とその近隣河川において,年間を通してカルガモの個体数調査を行なった.調整池では,5月から 9月までの繁殖期にはカルガモは観察されたが,10月から翌年 4月までの越冬期にはほとんど観察されなかった.一方,河川では,カルガモの個体数は増減をくり返していたが,調整池ほどの越冬期の個体数の顕著な減少はみられなかった.調整池では,マガモやその他の越冬カモ類が多数観察されたが,河川ではほとんど観察されなかった.先行研究によりカルガモとマガモのあいだには著しい社会的干渉があることが報告されている.したがって,カルガモの越冬期の分布を決める要因として,その他のカモ類,とくにマガモなどの飛来個体数が関与している可能性が考えられる.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A11-A18, 2007 (Released:2007-03-20)
参考文献数
8
被引用文献数
2

環境省が行なった「ガンカモ科鳥類の生息調査」の結果と気象庁による積雪の深さと最低気温の記録をもちいて北海道,東北地方,中部地方日本海側で越冬するハクチョウ類とカモ類の越冬数におよぼす積雪や気温の影響について解析した.北海道のカモ類を除き,ハクチョウ類もカモ類も年々記録数が増加する傾向があった.気象要因については,東北および中部地方の日本海側の地域では,ハクチョウ類は気温の,カモ類は積雪の影響を強く受けることがわかった.気温は開水面の凍結を通してねぐらや休息地の状況に影響を与え,積雪は水田などの採食地での食物の採りやすさに影響を与えると考えられる.したがって,ハクチョウ類は給餌への依存度が高く,止水域をおもな生息地としているために気温の影響を強く受け,カモ類は,水田などが重要な採食地になっているので,積雪による影響を強く受けると考えられる.
著者
渡辺 朝一
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A11-A18, 2012

レンコン栽培が盛んな茨城県下のハス田で,レンコン食害を防ぐための防鳥ネットに,コガモ <i>Anas crecca</i>,ヒドリガモ<i> A. Penelope</i>,オオバン <i>Fulica atar</i> など,多くの野鳥が羅網して落鳥する事態が続いている.防鳥ネットが多く敷設されている霞ヶ浦湖岸のハス田で,2010 年から2011 年にかけての冬期に5回の調査を行なった.その結果,羅網鳥は15種が記録され,種の識別ができなかったものも含め,のべ185羽の落鳥が記録された.防鳥ネットの天井面積を1haに換算すると,1日の調査では7.5 ± 1.8 羽が記録された.マガモ属は主に翼を引っかけて羅網し,オオバンは主に足を引っかけて羅網していた.コガモの羅網はレンコン収穫前のハス田でより多く記録されたが,オオバンの羅網はレンコン収穫後のハス田で多かった.種の識別ができたのべ145羽の羅網落鳥個体のうち,98羽は同じネットで連続的に記録されず,確実に 1 か月以内にネットから消失していた.生息している鳥類は25種が記録された.サギ類,シギ・チドリ類は防鳥ネットの敷設されたハス田にはわずかな出現かあるいは全く出現せず,防鳥ネット敷設により生息にマイナスの影響を受けていた.スズメ目のハクセキレイ,セグロセキレイ,タヒバリ,ツグミは防鳥ネットの有無に関わりなく記録され,防鳥ネットは生息の障害となっていないと考えられた.
著者
深澤 圭太 三島 啓雄 熊田 那央 竹中 明夫 吉岡 明良 勝又 聖乃 羽賀 淳 久保 雄広 玉置 雅紀
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.A15-A28, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
21

筆者らは福島第一原発事故による避難指示区域内外を対象とした録音による鳥類のモニタリング調査を2014年より実施している.研究者と地域住民との対話・得られたデータの透明性確保に資することを目的に,モニタリングで得られた音声データを聞き,鳥類組成のデータを作成する参加型イベント「バードデータチャレンジin福島」を2015年に実施した.イベントに際しては,WEBベースの音声再生・種名入力支援ツール「SONO-TORI」,即座に出現種や種判別の進捗状況の可視化を行なうためのシステム「SONO-TORI VIS」を新たに開発し,それらを活用して参加者が楽しみながら録音音声による種判別を進められるよう努めた.当日は定員である30名の参加者が集まり,5つの班に分かれて聞き取り作業を実施した.その結果,計63分の音声データに対して種判別を実施し,23種の鳥類が確認された.作業後のアンケートの結果,参加者の満足度および再訪意欲は高く,これらと参加者間の親睦や鳥類種判別技能の向上とのあいだに高い相関がみられた.今回の取り組みは結果に関する情報共有のありかたや,班ごとに分担する音声データの決め方などについて課題があったものの,録音音声による種判別がイベント形式の市民参加型調査として成立しうる可能性を示したと考えられる.
著者
福田 道雄
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S7-S11, 2013

1996年 3月から2012年 6月までのあいだ,東京湾内の葛西臨海公園の人工なぎさで休息するカワウ <i>Phalacrocorax carbo</i> の羽数を調べた.カワウの羽数は2月から3月に急減し,6月から9月に急増していた.本調査地の周囲でのコロニーを利用しているカワウは冬期は内陸で採食するものが多く,夏期は海で採食するものが多いと考えられることから,休息地を利用する数にこのような季節変化が見られたものと考えられた.2004年7月以降羽数が次第に減少していたが,近隣コロニーの生息数は減少していなかった.これは,採食地や餌資源量が変化したことを示唆していた.朝,正午,夕方に行なった調査のうち,最多羽数が記録されたのは正午の調査であることが多かった.休息地の近隣のコロニーは立ち入り禁止地にあったので,攪乱はほとんどなく,帰還時間の制約がなかった.そのため,休息していたカワウは夕方をまたずににコロニー戻ることができるため,正午が多かったものと考えられた.
著者
平野 敏明
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.A1-A9, 2015

近年,オオセッカが新たに繁殖期に生息するようになった渡良瀬遊水地で,繁殖期の個体数の変化と生息環境について2007年から2014年の繁殖期に調査を実施した.調査地のオオセッカは,2007年から2009年は1-2羽が生息していただけだったが,2010年に8羽,2012年には15羽と,2010年以降急激に増加した.増加の要因は,日本の主要な繁殖地での個体数の増加と調査地における春先の良好なヨシ原の存在が考えられた.渡良瀬遊水地では毎年3月中旬にヨシ焼きが実施されるが,個体数が増加した2010年から2012年はヨシ焼きが中止されたか,または降雨によって良好なヨシ原が残った.調査地におけるオオセッカの生息地点の植生は,青森県仏沼などの高密度生息地と酷似していた.すなわち,ヨシなどの単子葉高径植物の密度が16.2±9.1本/m<sup>2</sup>,高さが209.2±32.7cmで下層にスゲ類が密生している環境であった.渡良瀬遊水地では,オオセッカは調査地の特定の場所に集中してなわばりを占有する傾向があった.これは,本調査地での本種の生息密度が低いためと推測された.
著者
三上 修 三上 かつら
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S1-S6, 2013

青森県弘前市にて2012年6月から7月にかけて1つがいのアリスイ <i>Jynx torquilla</i> が繁殖した.孵化から巣立ちまでの巣の様子をカメラのインターバルタイマー機能で撮影した.一眼レフカメラに300mmレンズを装着し,15秒に1回のタイムラプスで1日あたり約10時間の撮影を行なった.照度不足と風による振動は撮影成功率を低下させた.6月22日に孵化直後のアリスイのヒナ2羽がみられ,7月13日に1羽が巣立った.育雛期後半は餌を咥えていた写真の枚数はピーク時よりも減ったが,コムクドリに対する警戒と思われる入り口から外を警戒している写真が増えた.餌ははじめアリの繭だったが,途中からアリの成虫や卵も加わった.1回に運んでくる餌量は途中で横ばいになった.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A15-A23, 2005 (Released:2005-09-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2

2004年12月から2005年 4月上旬にかけて,渡良瀬遊水地の谷中湖で,ヨシなどの背の高い植物が植栽されている浮島がチュウヒの探餌のための環境利用におよぼす影響を調査した.調査は,浮島が設置された方形区(500×500m)と浮島が設置されていない方形区で行なわれた.浮島設置区域では,チュウヒの探餌飛行の頻度は,浮島非設置区域より有意に多かった.また,浮島設置区域において,チュウヒの探餌飛行は,浮島が含まれる方形区の方が,含まれない方形区より有意に多かった.さらに,浮島設置区域とヨシ原に設置された方形区の探餌飛行の頻度は,両者で有意な違いがなかった.調査中,合計17回の狩り行動が観察された.このうち,76.5%は浮島の縁の部分で,17.6%は浮島の上,5.9%は湖上であった.以上の結果から,浮島は,越冬期におけるチュウヒの重要な生息環境となっていると思われる.これは,浮島に植栽されている背の高い植物が,チュウヒの不意打ちハンティングに効果的であることによると考えられる.
著者
植田 睦之 神山 和夫
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F33-F36, 2014

気候変動に対する鳥類の反応をモニタリングするために2005年に開始した参加型調査「季節前線ウォッチ」により収集したデータである.モズ(高鳴き),ヒバリ,ウグイス,メジロの初鳴き日,ホトトギス,カッコウ,アオバズク,ツバメ,オオヨシキリ,ツグミ,ジョウビタキの初認日,ヒヨドリの秋の渡り開始日,カルガモのヒナの初認情報も収集した.これらのデータを集計することで,どの種も年により初認時期が違うこと,温暖な地域ほど初認時期が早く,寒冷な地域ほど遅いという地理的な差があり,その差は1-2月にさえずりはじめるヒバリやウグイスでは大きく,3-4月に渡来するツバメやオオヨシキリは中くらいで,5月に渡来するホトトギスやカッコウでは小さいことなどがわかった.今後,情報を蓄積していくことで,気候変動の鳥類への影響などを解析することができると思われる.
著者
所崎 聡 江崎 正裕
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.S21-S24, 2015 (Released:2015-12-15)
参考文献数
9

鹿児島県トカラ列島平島でオオジュウイチの鳴き声を観察した.これは日本におけるオオジュウイチの初めての録音観察記録と考えられる.また同所では2012年より4期連続で同種の観察されている.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S19-S22, 2013 (Released:2013-08-30)
参考文献数
10

シジュウカラは主要な捕食者であるツミが繁殖してる林では,飛行形態がツミと似ているキジバトに対して,警戒声を発する頻度がツミの繁殖していない林と比べて高かった.シジュウカラはツミの繁殖している危険度の高い場所では警戒度合を高めていて,キジバトに対しても反応することで,捕食のリスクを低めており,危険度の低い場所では,警戒度合を下げることで警戒のコストを下げておいるのだと考えられた.
著者
高橋 雅雄 宮 彰男 上田 秀雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S15-S18, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
14

2011年7月11日に,青森県仏沼湿原にてリュウキュウヨシゴイの声を録音した.本種は日本では主に琉球列島に生息する留鳥であり,本州においては関東甲信越から中国地方において数例の観察記録があるだけである.本報告は,東北地方におけるリュウキュウヨシゴイの初記録である.