著者
福田 道雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S25-S28, 2014 (Released:2015-01-07)
参考文献数
12
被引用文献数
2

カワウ Phalacrocorax carbo の骨格標本の性別判定を行うため,頭骨の 7部位(上嘴長,眼窩間面最小幅,後眼窩突起幅,大脳隆起最大幅,頬骨突起幅,旁後頭突起幅,頭骨長)を計測して,判別関数式を作成した.計測したカワウは,福島県から兵庫県にかけての 1都12県から新鮮死体で収集した51個体で,剖検によってオス23個体とメス28個体と判明していた. 7部位の計測値はすべて有意にオスが長く,上嘴長と頭骨長では計測範囲が重複していなかった.判別関数式は上嘴長と頭骨長に残りの 1部位の計測値を加えた 3部位の計測値を用いた 5組の式と,上嘴長と頭骨長が計測できない場合で,残りの 5部位の計測値を用いた 1組の式を作成した.全ての判別関数式の判別的中率が 100.0%であった.これによって,破損などによって一部の部位の計測が困難な頭骨の骨格を含めて,性別判定ができるとわかった.
著者
関 伸一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A35-A48, 2012 (Released:2013-01-17)
参考文献数
17

トカラ列島の3つの無人島(臥蛇島,上ノ根島,横当島)に上陸して直接観察を行なうとともに,森林内に自動記録装置(赤外線センサー式自動撮影カメラとタイマー機能付録音機)を1年以上にわたり設置して鳥類相を調査した.3島で記録された種数はそれぞれ40 種,30 種,28 種であったが,繁殖の可能性が示唆された種は 13 種,9種,8種であった.直接観察でのみ記録されたのは海鳥類やサギ科など森林を利用することが稀な種であった.また,いずれの島でも自動記録装置でのみ記録された種が約3分の1を占め,渡りの途中で一時的に滞在したり,越冬したりする渡り鳥で,上陸調査の実施可能な時期には観察しにくい種が多く含まれた.森林性で繁殖していると推測された種は複数の手法で共通して記録されることが多かったが,繁殖の可能性を判断する根拠となったのは主に録音機による繁殖期の連続的なさえずりの記録であった.自動記録装置は,動作安定性に課題が残されてはいるが,遠隔地では非常に効果的な調査手法であることが明らかになった.
著者
峯岸 典雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.S5-S8, 2005 (Released:2005-09-16)
参考文献数
4
被引用文献数
1

全国21か所のゴルフ場に約3,000個の巣箱を設置し,1991年から2001年まで巣箱の鳥類による利用状況についての調査を行なってきたが,1995年にこれまでは数件しかなかったカラス類による巣箱の破壊が急激に増加し,1999年までは多くの巣箱が被害を受けた.しかし,2000年以降は被害がほとんど無くなった。カラス類の個体数には大きな変化はなく,なぜ全国ほぼ一斉に被害がはじまり,5年で被害がなくなってしまったのかは不明である.
著者
山路 公紀 石井 華香
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.A21-A29, 2022 (Released:2022-05-07)
参考文献数
15

ジョウビタキ Phoenicurus auroreus が日本で繁殖域を拡大している.ジョウビタキは元々樹洞営巣性であるにもかかわらず,開口部が巣箱や郵便受けよりも広い換気扇フードを営巣場所として多く選んでいた.その理由を知るために,利用された換気扇フードと利用されなかった換気扇フードの二群を,巣からの視界に注目して比較した.その結果,開口部の面積によらず,巣を視点とする垂直視野角または立体角が有意に小さい換気扇フードが利用されていた.また,換気扇フードには,巣からの視界が狭くなり,その視界に捕食者が入りにくい特性があった.これらから,捕食者から見つかりにくいことが換気扇フードが利用される理由と考えられた.立体角などをもちいて巣からの視界を調査することは,営巣場所の評価として有益である.
著者
藤井 忠志 渡邊 治
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.S25-S30, 2012 (Released:2013-01-05)
参考文献数
11

岩手県雫石町七ツ森の町有林で,雄2個体,雌1個体が関与したサンコウチョウ Terpsiphone atrocaudata の繁殖を観察した.雄は尾羽の短い若鳥と,尾羽の長い成鳥であった.給餌行動や雄,雌による排他的行動から,雌個体とつがい形成していたのは,前者であると考えられた.尾羽の長い成鳥の雄がどのような経緯で繁殖に関与するようになったのかは不明である.今後,このような事例が見つかった場合は,DNAサンプルを採取して父性を調べると同時に,本種の繁殖生態を精査することが重要である.
著者
浜地 歩 植村 慎吾 仲地 邦博 高木 昌興
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S27-S33, 2017 (Released:2017-10-19)
参考文献数
21

2015年から2017年にかけて,宮古諸島でオオジュウイチとオニカッコウを記録した.オニカッコウは複数羽での長期滞在が確認されたことから,繁殖の可能性も考えられる.国内におけるこの2種の記録は増加傾向にあり,今後分布を拡大させる可能性がある.
著者
平野 敏明
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.A1-A11, 2013

ヒバリ <i>Alauda arvensis</i> の個体数におよぼすヨシ焼きの影響を明らかにするために,栃木県南部の渡良瀬遊水地で繁殖期にヒバリの個体数調査を行なった.渡良瀬遊水地は,面積3,300 haの大部分がヨシを主とする高茎植物で覆われている.ここでは,毎年3月中旬に全域でヨシ焼きが実施されているが,2011年にはヨシ焼が行なわれなかった.そこで,ヨシ焼き前後およびヨシ焼きのあった2004, 2005年となかった2011年との比較を行なうことで,ヒバリの個体数におよぼすヨシ焼きの影響を検討した.2004年4月中旬から7月下旬にかけて1週間ごとにヒバリの個体数と草丈を記録したところ,ヨシやオギの高茎植物はヨシ焼き後に徐々に成長し,ヨシ焼き後100日あたりでは草丈が約2.1mに達した.一方,ヒバリの個体数は,草丈が約60cmに成長するヨシ焼き後40日でピークとなり,その後急速に減少し,ヒバリの個体数と高茎植物の草丈とのあいだには,有意な負の相関が得られた.また,草丈の高い2か所の調査地では,ヒバリの個体数はヨシ焼きを実施した年のほうがヨシ焼きを中止した年より有意に多かった.さらに,ヨシ焼きを実施した年におけるヨシ焼き前後の調査では,草丈の低い調査地ではヒバリの個体数に差がなかったが,草丈の高い調査地2か所のうち1か所ではヨシ焼き後のほうが有意に多かった.これらのことから,渡良瀬遊水地では,ヒバリはヨシ焼きによって古いヨシやオギが焼失することで広大な繁殖環境を得ていることが示唆された.もし,2011年の繁殖期のようにヨシ焼きが中止されると,ヒバリは道脇や堤防,ヨシ刈り地など極めて限られた場所で繁殖しなければならなくなると考えられた.
著者
高橋 雅雄 磯貝 和秀 古山 隆 宮 彰男 蛯名 純一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A65-A71, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
26

2014-2015年冬期と2015-2016年冬期に,関東地方の都市部と農村部の計32か所の湿性草原でオオセッカの生息調査を行ない,13か所で計94個体を確認した.そのうち4か所は都市部に位置し,住宅地等で囲まれて孤立した環境だった.また3か所では耕作放棄田で,別の3か所では自然生態観察公園で生息が確認され,これらの環境も越冬地として利用されることが確かめられた。さらに,オオセッカは多様なタイプのヨシ原環境で確認され,従来考えられていた以上に多様な植生環境を利用する可能性が示唆された.
著者
時田 喜子 吉野 智生 大沼 学 金城 輝雄 浅川 満彦
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S13-S18, 2014 (Released:2014-06-10)
参考文献数
19

2000年から2010年にかけて八重山諸島で回収された16個体のカンムリワシの胃内容物を検査した.そのうち13胃に何らかの内容物を認め,それらを70%エタノールにて固定後1mmメッシュの篩を通して種ごとに分け,乾燥させた後に乾燥重量を測定した.含まれていた内容物は貧毛類(フトミミズ科),甲殻類(ベンケイガニ,小型カニ類),昆虫類(半翅目セミ科,直翅目の1種,属種不明昆虫類),両生類(オオハナサキガエル),爬虫類(キシノウエトカゲ,イシガメ科の1種),鳥類(シロハラクイナ,属種不明小型鳥類),植物片および小石の計13品目で,甲殻類がもっとも高頻度で検出された.捕食することによる中毒や,殺鼠剤散布による影響が懸念されていたオオヒキガエルやネズミ類は検出されなかった.石垣島の個体からは3品目,西表島の個体では13品目と,島によって食物の出現種数が異なっていた.甲殻類は夏季だけでなく冬季にも出現し,カンムリワシの食物として重要であることが示唆された.
著者
渡辺 朝一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S5-S11, 2014 (Released:2014-05-01)
参考文献数
26

ハゴロモモ(フサジュンサイ) Cabomba caroliniana は,北米大陸南東部と南米原産の沈水植物である.水槽植物として世界各地に持ち込まれ,日本列島でも,本州,九州,四国,北海道に定着している.しかし,被害に係る知見が不足しているために,特定外来生物種ではなく要注意外来生物種となっている.そこでハゴロモモと水鳥類の関係を明らかにするために茨城県清水沼で2011年4月から2012年3月にかけて調査を行なった.その結果,コハクチョウ,オオハクチョウ,オカヨシガモ,ヨシガモ,ヒドリガモ,マガモ,オオバンがハゴロモモの水中茎および沈水葉を採食していることを確認した.今後は水鳥がハゴロモモの分布拡大にどのようにかかわっているか,水鳥による摂食がハゴロモモにどのような影響を与えるのかについての調査が必要である.
著者
前川 侑子 田口 華麗 牛込 祐司 佐藤 匠 小林 啓悟 芳賀 智宏 町村 尚 東海 明宏 松井 孝典
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.A71-A86, 2022 (Released:2022-09-05)
参考文献数
50

鳥類ではポイントカウントやラインセンサス等によりモニタリング調査が行なわれている.近年,費用対効果が高く,調査圧の少ない新しい調査として,録音データからAI技術により鳥類の鳴き声を自動で検出・識別する方法が試行されているが,その詳細な方法は定まっていない.そこで,本研究では,いくつかの異なる条件での鳥類の鳴き声の識別精度を比較することで,鳴き声の識別を行なう際の最適な条件を検討した.なお,条件としては,最適な音声の検出(長時間のデータから効率的な解析を行なうための前処理)方法・学習する音声の時間幅・学習の手法を検討した.対象種は,環境省レッドリストにおいて絶滅危惧Ⅱ類に指定されているサシバで,解析には2地点で録音したサシバの鳴き声を含む音声をもちいた.その結果,音圧が1-3dB上昇した時点を検出し,2-3sの時間幅で切り出した音声をもちいて,畳み込みニューラルネットワークにより学習を行なうことで,高精度で鳴き声を検出できることがわかった.交差検証と汎化性能のF値は最高でそれぞれ0.89,0.71であった.
著者
松宮 裕秋 沼野 正博
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.A87-A97, 2022 (Released:2022-12-06)
参考文献数
19

シマクイナの生息分布は不明な点が多く,関東地方を除き詳細な越冬状況は分かっていない.そこで,2020年1月から2022年4月にかけての本種の越冬期に,本州中部地方および近畿地方の太平洋に面した地域(静岡県,愛知県,三重県,和歌山県)において,プレイバック法をもちいた生息確認調査を行なった.その結果,調査を実施した34か所のうち,12か所で生息を確認した.これらの地域では越冬期を通した生息が確認され,越冬地である可能性が高いと考えられた.確認環境の多くは耕作放棄地に成立した湿性草地であり,そのような環境が本種の重要な生息地として機能していることが示唆された.本種は生息の実態が把握されないまま生息地が消失している可能性が高く,さらなる生息状況の把握が望まれる.
著者
植田 睦之 島田 泰夫 奴賀 俊光 佐藤 功也
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S19-S25, 2017 (Released:2017-09-14)
参考文献数
19

洋上風車に対する海鳥の反応を明らかにするために,2013年と2016年に銚子沖で船舶用レーダを使った調査を行なった.いずれの調査でも風車から100m以内を鳥が飛行することは少なく,また,風車のそばで飛行方向をかえる行動が記録され,海鳥は風車を回避して飛んでいると考えられた.2013年と2016年を比較すると,2016年の方が風車のより近くを飛行する傾向があった.以上の結果から,洋上風車の海鳥への影響としては,バードストライクより風車を忌避したり,その海域を使わなくなったりする影響の方が大きいと考えられるが,レーダによる調査データには天候等の偏りがあり,海鳥への影響を明らかにするにはさらなる調査が必要である.
著者
峯岸 典雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A01-A09, 2007 (Released:2007-02-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1

長野県軽井沢町で1989年より2006年の繁殖期に105日の定点録音を行ない,鳥類の出現状況について解析を行なった.オオルリとハシブトガラスは増加傾向にあったが,それ以外の種は減少傾向にある種が多く,キジ,カッコウ,ツツドリ,クロツグミ,アカハラ,ウグイス,ホオジロ,ノジコ,アオジは調査開始当初は普通に記録されていたにもかかわらず,まったく記録されなくなった.減少した種の多くでは,一度,記録数が増加し,その後減少するパターンがみられた.増減のおきた時期は周囲で開発が行なわれた時期と一致しており,開発により生息できなくなった個体が一時的に調査地に移入し,その後,消失してしまうため,このような増減が起きたのかもしれない.
著者
西 教生
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F27-F32, 2014 (Released:2015-01-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1

富士山北麓において2014年の繁殖期にソウシチョウの調査を行なった.2009年の調査結果と比較したところ,個体数は有意に減少し,分布の変化も確認された.ソウシチョウの個体数の減少および分布の変化は,ニホンジカの摂食によってスズタケが衰退したからであると考えられた.しかしながら,生息環境が類似するウグイスおよびコルリの個体数は,2012年と2014年では有意な差はなかった.
著者
深瀬 徹
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.S9-S11, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
3

2020年11月に宮城県仙台市でツバメの繁殖が観察された。近年秋期のツバメの繁殖が記録されるようになったが,この記録は現時点で最北の秋期の繁殖記録と思われる.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.A21-A30, 2015

湿地再生のための新たな池の造成が越冬期のチュウヒ <i>Circus spilonotus</i> の探餌飛行におよぼす影響を検証するために,栃木県南部の渡良瀬遊水地において2004年および2014年の10月中旬から11月と2015年の1月から2月に,再生湿地と隣接するヨシ原における探餌飛行および狩り行動の頻度と探餌飛行の利用時間の調査を行なった.池の造成前の2004年には,探餌飛行の頻度はヨシ原の方が再生湿地より有意に高かった.一方,造成後の2014年には,チュウヒはヨシ原より再生湿地を有意に多く利用した.同様に探餌飛行時間でもチュウヒは有意に多く再生湿地を利用した.この季節,再生湿地の池にはチュウヒの主要な食物資源であるカモ類やカイツブリ類,オオバンが多数生息し,狩り行動も再生湿地で有意に多く行なった.しかし,カモ類がほとんど生息しなくなった2015年1月から2月には,再生湿地とヨシ原で探餌飛行の頻度や利用時間に有意な違いはなかった.したがって,越冬シーズンを通してチュウヒの採食環境を創出するためには,食物資源であるカモ類など大型の鳥類が長期にわたって多数生息できるような池の構造や水位および植生の管理が必要と考えられた.
著者
三上 かつら 平野 敏明 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.A33-A44, 2018

<p>都市環境の鳥類相は,時間の経過とともに変化する.21世紀初頭の住宅地環境における鳥類群集の特徴を記述するため,特定非営利活動法人バードリサーチが全国的に行なっている参加型調査"ベランダバードウォッチ"のデータを解析した.住宅地の鳥類について,1)記録地点数の多い種は何か,2)記録率の高い種は何か,3)季節によりどのような違いがあるか,4)種数の年変動はどのくらいあるか,5)住宅地で記録された外来種,を明らかにした.その結果,繁殖期,越冬期を通じて,記録地点数,記録率ともに最も高かったのは,スズメとヒヨドリだった.よくみられる種の大部分は,人工構造物,街路樹,植栽に依存する,またはそれらを利用可能な種だったが,そうではない種もあった.季節による種のランクが大きく変動したのはメジロ,カワラヒワ,ハクセキレイ,ウグイスなどで,その理由として,鳥の個体数の変化のほか,行動の季節変化や餌台による誘引,観察者による認識のしやすさが考えられた.長期調査によると,住宅地では,地点ごとに観察される種数は,繁殖期には安定しているが,越冬期は繁殖期よりばらつきが大きいことが示された.調査地点数や調査年数を増やしていくことで更なる発展が望める.そのためには,ベランダバードウォッチは参加型調査であるため,調査結果を定期的に還元するなどの工夫が必要と考えられた.</p>
著者
佐藤 重穂 佐藤 錬
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F13-F20, 2014 (Released:2014-11-26)
参考文献数
15

高知市中心部にある高知城公園では1990年から毎月,日本野鳥の会高知支部により,探鳥会が開催されている.この探鳥会では,鳥類の出現種と種ごとの確認個体数が記録されている.これは市民参加型の環境モニタリングとみなすことができる.そこで,1990年から2010年までの20年間の高知城探鳥会で出現した鳥類の記録を整理した.20年間で85種の鳥類が確認された.5年単位の4期間に区切って,鳥類の種ごとの出現率と出現個体数の変動を比較した結果,出現率,出現個体数とも減少しているのはモズ1種であり,トビとスズメの2種は出現率の低下は認められないものの,個体数が有意に減少していた.一方,出現率,出現個体数とも増加しているのはヤマガラ1種であり,ハシブトガラスとジョウビタキの2種は出現率の上昇は認められないものの,個体数は有意に増加していた.出現率の動向と出現個体数の動向の異なる種が多く,出現率のみでは個体数の変動を評価するには不十分であると考えられた.
著者
三上 修 三上 かつら 森本 元 上野 裕介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.A11-A19, 2021 (Released:2021-04-30)
参考文献数
21

都市に生息する鳥類は,大量にある電柱電線を足場として利用している.その止まり方にパターンがあるかどうかを国内7都市で調査した.その結果,次のことが明らかになった.(1)止まる場所全体に対する電柱および電線を利用する割合は,種によって違っていた.(2)鳥類は,越冬期よりも繁殖期に,電柱および電線に頻繁に止まっていた.(3)体重が重い鳥種ほど,電線よりも電柱に止まる傾向があり,また,電線に止まる場合でも,電柱に近い部分に止まっていた.(4)多くの鳥種が最上段の線によく止まっていた.