著者
池田 幸弘
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.82-86, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
11

本研究では, 500字所収の複数(4種類)の漢字教材を比較した場合,500字のうち,何字ぐらいの漢字が共通して取り上げられているか調査を行った。その結果,355の漢字が4種の教材で共通して取り上げられていること,102の漢字が4種の教材のうち3種で共通して取り上げられていること,73の漢字が4種の教材のうち2種で共通して取り上げられていること,1種の教材のみで取り上げられている漢字が128あることがわかった。また、4種の教材で658の異なる漢字が取り上げられていた。この結果から,658の異なる漢字数における複数の教材で共通して取り上げられている漢字数という割合から見ると,その割合はそれほど高くないが,各教材の500字における他の教材と共通する漢字の数の割合という点から見ると,ある程度の共通性はあるのではないかということが示唆された。
著者
徳弘 康代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.11-20, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

日本語には同音語が多く存在する。さらに,それらの同音語に長音や濁音,促音,撥音が付くか付かないかによるだけの違いの類音語も多量に存在する。このような語は特に漢字語彙に多い。日本語教育における漢字教育では発音も注意が必要である。特に学習者に拍(モーラ)の意識が定着していない場合,モーラ音素(長音・促音・撥音)の持続時間が不安定で,類音語との区別がつきにくくなる傾向がある。本研究ではこのようなモーラ音素の有無による類音語を調査し,漢字語彙の発音練習の資料となる類音語の資料を作成した。これはモーラ音素が付くか付かないかによるだけの違いの類音語の組を一覧表にしたものである。調査には『EDR電子化辞書』の「日本語単語辞書」の普通名詞約124,000語を用いた。
著者
小助川 貞次
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.56-65, 2015 (Released:2017-05-29)
参考文献数
8

漢文訓読は通常,学校教育の中で中国古典文(漢文)を読解する「きまり」として学ばれ,一種のツールとして機能する。一方,漢文訓読を研究する立場からは,漢文文献を読解する加点現象として,漢字文化圏の諸地域・言語を対象として広く観察する。ユーザーとしての立場は異なるが,漢文訓読は東アジア世界・漢字文化圏全体の歴史的構造体をどう把握するのかという大きなテーマに繋がる。
著者
吉田 雅子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
no.1, pp.13-14, 2009-03-07

早稲田大学日本語センターで行われた(2007年度秋学期)漢字クラスの7B・7Fクラスの読みテストの結果と誤答の傾向を紹介する。課題作文を紹介し、彼らの文章力を読みのテスト結果と比較する。漢字圏の学習者は必ずしも高得点を取らない。漢字テストの結果と文章力は比例しない。授業の成功は、学習者の意欲による。などの結論をみた。
著者
加藤 登紀 濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.111-121, 2017

1990年以降に出版された日本語学習者のための漢字学習用教材(以下,漢字教材)は25冊以上あるものの,一度に複数の漢字教材を手にとり比べる機会はないという声をよく聞く。さらに,開講されている漢字科目の多くが初級レベル相当であるという声もよく聞くため,初級レベルの漢字教材に絞り,ワークショップを行うことにした。本稿では第60回研究会(大阪)のワークショップの成果を報告し,初級漢字教材の特徴を読者と共有したい。
著者
濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.94-104, 2014

日本語学習者のための漢字学習用教材(以下,漢字教材)といったとき,どのくらいの教材を思い浮かべるだろうか。1990年以降に出版された漢字教材(付属教材や試験対策用教材を除く)は32冊以上ある。しかしながら,所属機関が教材や進度を決めているため担当教師が漢字教材を手にとって比べる機会はないという声をよく聞く。そこで,本稿では第47回研究会のワークショップの成果を報告し,漢字教材の特徴を読者と共有したい。
著者
濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.95-102, 2013

日本語学習者のための漢字学習用教材(以下,漢字教材)といったとき,どのくらいの教材を思い浮かべるだろうか。1990年以降に出版された漢字教材(付属教材や試験対策用教材を除く)は25冊以上ある。しかしながら,所属機関が教材や進度を決めているため担当教師が漢字教材を手にとって比べる機会はないという声をよく聞く。そこで,本稿では第41回研究会のワークショップの成果を報告し,漢字教材の特徴を読者と共有したい。
著者
加藤 登紀 濱川 祐紀代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.128-136, 2017

1990年以降に出版された日本語学習者のための漢字学習用教材(以下,漢字教材)は25冊以上あるものの,一度に複数の漢字教材を手にとり比べる機会はないという声をよく聞く。さらに,所属機関で開講されている漢字科目は初級のみであり,学習者から中上級レベルの漢字教材について相談されることが多いとも聞く。そこで,本稿では第63回研究会(大阪)のワークショップの成果を報告し,中・上級漢字教材の特徴を読者と共有したい。
著者
朴 ソンジュ
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-26, 2009

最近、非漢字圏学習者とも捉えられている韓国人日本語学習者に、そのまま非漢字圏学習者と同じ方法で指導していいのだろうかと思い、筆者は韓国人に対した漢字指導・漢語指導のあり方を模索する。本発表では、「スル動詞」と「hada動詞」を対照し、両言語の間の漢語の意味を検討し、そのリストの作成について検討する。さらに、韓国人学習者にとって漢語指導案や教材案の提案していきたい。
著者
徳弘 康代
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-19, 2016 (Released:2018-01-10)
参考文献数
4

語彙マップを用いて会話をしながら言葉や漢字を学ぶ初級学習者用の教材について述べる。初級では語彙学習は,語句のみを取り出して分類してマップで提示しても,実際に表現することにつなげるのは難しい。本研究で開発した語彙マップには,独立語を提示するだけでなく,助詞や表現文型や活用させた動詞等も載せて語彙と文法を混在させ,学習者がそのマップを見てすぐに表現できるように工夫した。また,イメージを膨らませることを容易にするため,絵やイラストも多く取り入れた。
著者
三嶋 博之
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-18, 2009-03-07 (Released:2017-05-26)
参考文献数
3

米国の心理学者James J. Gibson(1904-1979)による生態心理学の理論について概観する。ギブオン生態心理学では、人間や動物にとっての認識の単位として、伝統的な心理学とは異なる、環境に内在した行為の意味としての「アフォーダンス」の知覚が主張される。
著者
笹原 宏之
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-14, 2010

学術用語における表外漢字・表外音訓を中心とする漢字の使用実態を把握し、その生じた背景について通時的な観点を加えつつ検討した。仮名書き、交ぜ書き等に代わり、表外漢字が増加する一方、略字がしばしば使用されており、位相的慣用音とともに特定の社会において用字に体系性を整える方向が見出せた。一般との関わりが深まる情報化時代において、新常用漢字表や他国の用語との比較を通じ、その意義も考察した。
著者
池 絵里子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.37-43, 2012

筆者が勤務していた米国の小規模大学は,漢字指導,漢字学習に充てられる時間が十分に確保しにくい環境下にあった。そこで,短時間で効果的に漢字を導入し,自律的な漢字学習にも利用できるよう,パワーポイントを用いて教材を開発した。本稿では主に,1)教材開発の目的,2)教育実践,3)学習者アンケートの結果について報告する。そして,これらを踏まえパワーポイント教材の効果と利用の可能性について考察する。
著者
善如寺 俊幸
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.37-44, 2015 (Released:2017-05-29)
参考文献数
23

常用漢字,旧日本語能力試験4〜1級漢字を含む2800余字から成る「漢字系統樹表2800」(漢字2800字の関係図表)を提示し(会誌第7号付録「漢字系統樹表2800」を参照),その仕組みや見方さらには意義,利用法などについて述べる。
著者
石原 嘉人
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-71, 2013

いわゆる漢字圏の学生を対象とした漢字音読語の指導方法を提案する。具体的には「運動」を「ウンドン」と読むなど漢字圏の学生が陥りやすい誤用を未然に防ぐために,中国語(北京語と広東語),韓国語,ベトナム語の漢字音の韻尾との対応関係について整理する。また,入声音Pを含む漢字語彙の促音化現象(納得,合宿など)について,旧仮名遣いを廃止したために見えにくくなった部分を指摘し,指導に生かすことを提案する。
著者
リドワン ルッシー ノファリダ
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-7, 2011

インドネシア人大学生を対象に、初級日本語学習者の漢字学習に対する意識を調べ、今後のインドネシアにおける漢字教育にとって効率のよい指導方法を考えるためにアンケート調査を試みた。調査内容は、(1)漢字に興味があるかないか、(2)その理由として考えられる漢字学習意識、(3)漢字の学習方法/学習ストラテジー、(4)漢字学習における問題点であり、主に5段階方式で回答を求めた。その結果、インドネシア人大学生の90%が漢字に興味を持っており、その理由として積極的なプラス回答が多いことがわかった。また、よく使われている学習方法として「繰り返し書く」「漢字に読み仮名を振る」「教科書にある漢字の単語をすべて覚える」「辞書を引く」などが挙げられた。学習における問題点としては、「数が多い」「似ている字が多い」、「形が複雑だ」など予想された問題ばかりではなく、「読み方が多くて複雑だ」「似ている発音が多い」などの問題もあることが明らかになった。
著者
山田 京子
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
no.6, pp.25-29, 2014-03-20

戦後の日本語教育では,学習者の漢字の習得に対する困難を指摘する声が多数あがってきた。当初,漢字圏の学習者の漢字学習には大きな問題が存在しないと言われ続けてきた。しかし,母語による干渉が,日本語の漢字の習得に影響を与えていることも明らかになってきている。本稿では,1960年代から現在までの漢字教育について各時代の主な研究の中から,漢字圏学習者を対象とした漢字教育についてまとめることとする。
著者
関 麻由美 池田 幸弘
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
no.6, pp.80-86, 2014-03-20

近年,マインドマップを利用した教育が日本語教育においてもなされてきている。本稿では,執筆者それぞれが実践したマインドマップを用いた漢字学習の事例を紹介する。そして,マインドマップを使用した学習法についての学習者のコメントをSteps for Coding and Theorization (SCAT)という質的データ分析手法を用いて分析し,マインドマップを漢字学習に用いることにどのような特徴があるかを考察する。