著者
野口 竜也 西原 正典 西田 良平
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.206-213, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
8

鳥取県内の50観測点で得られた 1464地震 (延べ 4833個) の計測震度データの分析を行った. 各観測点において, 距離減衰式による推定震度と観測による震度の差の平均を求め, 地盤増幅による増幅効果の指標とした. この指標と地盤特性を比較し関係を調べた. 地盤の深さ 30mまでの平均 S波速度 (AVS30) とは良い相関がみられ, AVSが小さいほど揺れやすい地点である関係がみられた. より深い地盤構造を反映している重力異常との比較では, 特に相関がみられなかった. また, 従来から境港市の近接 2地点で震度差が生じる地点においては, AVS30がほぼ同じあるにも関わらず, 今回の分析による増幅効果の指標においても同様な差異がみられた.
著者
常田 賢一 小田 和広 中平 明憲 林 健二 依藤 光代
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.596-604, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
4

地震時の道路では路面の段差により車両の走行機能が阻害されるが, 社会的影響の低減のためには, 特に一般車両の迅速な開放が必要である. そのためには, 段階的な補修とそのレベルに応じた車両の解放が有効であるが, このような性能評価型道路管理の視点による補修, 交通開放の基準は明確でない.本研究は既往地震での地震直後の交通規制から解除までの運用の現状を把握するとともに, 地震時に発生する段差に関して, 模擬段差に対する車両の走行実験を行い, 段差通過時の車両の挙動, 段差量と車両の走行速度の関係, 段差通過時のドライバーの意識を明らかにした. また, 地震直後の交通止めから通常走行までの段階的な補修水準および車両の種類, 車両の走行速度に応じた交通開放の運用方法を提示した.
著者
後藤 洋三 鈴木 光 村瀬 一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1362-1380, 2007 (Released:2010-07-30)

2006年8月14日に発生した首都圏広域停電が様々な事業体や防災機関の情報システムに与えた影響を調査し, 地震時の突発的な停電に対する現存の情報システムの脆弱性と事業体の減災力への影響を分析した. 幸い停電はお盆休み期間中の早朝に発生し, ほぼ1時間以内に回復したため, 人的物的な被害は小さく, 情報システムについても調査できた被害事例は少なかった. しかし, 周辺機器への非常用電源の接続の不備でシステムが機能しなかった事例や, 一度ダウンしたシステムを再起動し点検するのに長時間を要した事例, 非常用電源が普及してきた反面停電が長期化した場合の対応, 情報システムが不測のダウンをした場合代換え機能不備など, 今後参考にすべき調査結果が得られた.
著者
吉田 望 篠原 秀明 澤田 純男 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.170, 2005 (Released:2010-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

設計用の地震動は多くは工学的基盤で設定されるが, この場合, 表層地盤の存在を考慮せず設定されることが多い。本論では, まず表層を考慮しないと工学的に重要な周波数領域で増幅率の評価を誤ることをケーススタディをにより示す。表層を考慮しないで設計用の地震動を定義することは, 表層から工学的基盤への下降波, 深い基盤からの再反射による上昇波などを無視することを意味するが, これが無視できないからである。さらに, 工学的基盤より上の表層の計算用地震動を工学的基盤で設定する場合の設定法として, 表層で線形の挙動を仮定して工学的基盤の波形を求める方法, 地表で設計用の地震動を設定する方法を示す。ケーススタディによればこれらの方法は弾性時にはほぼ完全に地表の波形を再現でき, また, 非線形挙動時でも既往の方法に比べれば格段に精度よい予測ができる。
著者
山崎 浩之 金田 一広 永野 賢次
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.237-244, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
5

海溝型地震の特徴は地震動の継続時間が長いことが挙げられる. 本研究はケーソン式岸壁の振動台実験を行い, 裏埋め土 (ゆるい地盤と密な地盤) の液状化およびケーソンの変位に着目して継続時間の影響について検討した. 規則波 (正弦波) を用いて載荷回数を変えて継続時間の影響を調べ, さらに従来のものよりも長い不規則波 (シナリオ波) についても検討した. ゆるい地盤は比較的小さな入力加速度では継続時間の影響が見られ, 裏埋め土が液状化した後しばらく高い間隙水圧を保つ. 密な地盤はゆるい地盤に比べて継続時間の影響は少なく, 裏埋め土は液状化した後すぐに間隙水圧の消散が見られる. シナリオ波については密度によってケーソンの変位が異なり, シナリオ波を規則波で換算する場合は密度も考慮する必要があることを示した.
著者
藤間 功司 佐藤 紘志 鴫原 良典 竹内 幹雄 千葉 智晴 飯田 勉 砂坂 善雄 高梨 和光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.881-889, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1

我が国の沿岸には多くの下水浄化センターが存在する. これらは一般には高潮水位などを考慮して建設されているが, 地震・津波による二重被害を想定して建設されている訳ではない. 我々は既に中越地震などでパイプラインの損傷, 浄化センターの一時機能停止などにより, 生活用水が使用できなくなりトイレなどの使用自粛により, エコノミークラス症候群による犠牲者の発生と言う悲しい事実も経験している. 本文では, 東海地震・津波の来襲が予想される静岡市中島浄化センターをモデルに現在得られている予測当該地点地震波の内, 最強と考えられる地震波を用いて構造物の地震被害の予測を行うと共に, 津波の初期予想水位をパラメーターとして被害の予測と復旧日数の算定を試みた.
著者
川西 智浩 室野 剛隆 佐藤 勉 畠中 仁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.187-196, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
6
被引用文献数
6

現行の鉄道設計標準における耐震設計上の地盤種別は, 地盤の初期剛性に基づいて算定される地盤の固有周期により区分されている. 入力地震波のレベルが大きくなると, 地盤が非線形化して剛性が低下するが, 地盤の非線形性は粘性土や砂質土などの土質区分によって異なるため, 土質区分の影響を考慮して地盤種別を分類する方が合理的であると考えられる. そこで本研究では, 多くの実地盤に対して逐次非線形動的解析を実施するとともに, 土質区分毎の非線形性の違いを考慮した地盤の「等価周期」の算定方法について検討を行い, 等価周期を用いて地盤種別を分類した場合の精度について検証を行った.
著者
片岡 俊一 對馬 翼
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1029-1034, 2007

地震調査研究推進本部の長期評価によると, 青森県東方沖を含む三陸沖北部では, 2007年1月から30年間におけるM7クラスの地震の発生確率は90%である. 日本全国を見ても, この値は宮城県沖地震について高い値である. そこで, 青森県東方沖でM7クラスの地震が起きた際の青森県内の計測震度を著者らが求めた距離減衰式と観測点の増幅度を組み合わせて推定した. まず, 1994年三陸はるか沖地震を対象に提案手法を適用した結果, 県内の80%の観測点において±0.5の範囲で, アンケート震度と推定震度が一致した. また, 最大の差は1.0であった. 次いで1968年十勝沖地震の北側のアスペリティを予想対象地震と考えて, 各地の震度を推定したところ, 八戸市, 三沢市で震度6弱となった.
著者
Nebil Achour 宮島 昌克 池本 敏和 稲垣 潤一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.164-164, 2005

2004年新潟県中越地震における医療機関の被害状況に関する現地調査およびアンケート調査を行なった. その結果に基づき, 医療機関の建物被害, ライフライン被害, 医療施設の被害などが地震直後の医療機能に及ぼした影響を分析した. さらに, 距離減衰式を構築して各病院の最大加速度を推定し, 地震動強さと被害程度の関係を定量的に考察した.
著者
平賀 有輝 國生 剛治 石澤 友浩 西村 治久 吉野 拓也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1011-1016, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
6

近年, 新潟県中越地震のように斜面災害を多く発生させた地震もあり, その地域の住民にとってはその土地で元通り生活できるようになるのかということが非常に大きな問題である. 1939年に発生した男鹿地震は新潟県中越地震同様, 斜面災害を多く発生させている. 我々は斜面災害の比較的大きかった男鹿市北浦と同市船川の地区を視察するとともに, 当時を知る方や独自に調査されている地域の方と面談し, 地震発生から70年経った現在の男鹿半島の様子を調査してきた. この地域では斜面崩壊によって地盤に大きな影響を残しているが, 地質が良好であったり地下水の影響が小さかったことから, 地震後の生活への影響は限定的であったように思われる.
著者
伯野 元彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1002-1006, 2007

志賀原発2号機は、昨年3月耐震設計に想定された、最大地震加速度を超えるような地震動が起こるかもしれないので、その運転を差し止めるように命じられた。ただ、この判決の元になっているのは、設計のための最大加速度を超えると直ちに危険であるという考え方である。実際の構造物は少しくらい超えても壊れはしない。多度津の大振動台での耐震壁の実験では、加振最大加速度の10倍くらいまで終局状態にはならなかった。また、今回の能登半島地震では、想定の地震より大きいM6.9 であり、17kmの近距離であったが、全く何の被害も生じなかった。
著者
原 忠 國生 剛治 田中 正之 古地 祐規 平賀 有輝 松山 優子 吉野 拓也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1123-1127, 2007

1914 (大正3) 年3月15日秋田県中央部の大仙市 (西仙北町) を震源とするマグニチュード7.1の内陸型 (直下型) 地震が発生した. この地震により秋田県内陸部で斜面崩壊が発生し, 布又地区では傾斜勾配が6~7°程度の比較的緩い流れ盤斜面上での地すべりにより, 河道閉塞を引き起こした.<BR>本研究では, 緩傾斜な流れ盤斜面での地すべり発生メカニズムを解明するため, 現地より採取したすべり面近傍の試料を用いて物理試験および一軸圧縮試験を行い, 得られた結果を報告する.
著者
古地 祐規 國生 剛治 石澤 友浩 山本 純也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1007-1010, 2007

2007年3月25日に石川県能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の能登半島地震が発生した. 石川県七尾市, 輪島市, 穴水町で震度6強を観測したほか, 広い範囲で震度5弱以上を観測した. この地震により, 石川県七尾市内の能登有料道路の各所において大規模な盛土の斜面崩壊が多数発生した. 崩壊土は流動距離が大きく, 沢などに到達し河道閉塞をも引き起こしていた. 筆者らは同年4月5日にそれらの斜面崩壊地点で現地踏査を行い, 未崩壊部の盛土から不撹乱試料を採取した. これらの試料について, 物理試験, 繰返し非排水三軸試験, 繰返しせん断試験後の単調載荷試験を行い, 得られた結果について報告する.