著者
澁川 幸加
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.80-87, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

本稿では,高校と大学における遠隔授業や「ハイブリッド化」の制度上の特徴と相違を整理した.具体的には,①遠隔授業の制度上の相違を整理した結果,大学は教室外の自宅等から受講できる同期・非同期双方向型の遠隔授業が,高校は生徒が教室で受講する同期双方向型の遠隔授業が実施できること,②ハイブリッド化の相違を卒業単位・一単位・活動レベルで検討した結果,高校では一単位レベルの方法が限定されることや,活動レベルに対応するハイフレックス型が原則実施できないことなどを示した.
著者
八木澤 史子 安里 基子 遠藤 みなみ 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.3, pp.118-123, 2021-10-29 (Released:2021-10-29)

クラウドでの共同編集機能を用いて,若手教師が作成した学習指導案を,ベテラン教師の助言を受けながら修正するという実践を行った.修正は2つの方法で実施した.1つめは,クラウドサービスのアプリを利用した「共同編集機能のみ」,2つめはクラウドサービスのアプリに加えて,テレビ会議システムを利用した「共同編集機能およびオンラインによる対話」であった.結果,2つの方法ではやりとりされたコメントの数に違いがあることが示唆された.
著者
高橋B. 徹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.59-63, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

大学でのキャリア教育において自己分析と業界・企業分析を深めさせることは新卒の離職率を抑える上で重要である.一方で,キャリアに対する前向きな態度も離職率を抑える上で寄与すると考えられる.本稿ではそれらが就職後の就職先への満足度にどの程度相関があるかの調査を行った.調査の結果,自己分析や業界・企業分析やキャリアに対する前向きな態度と就職先への満足度に相関が認められた.一方で,キャリアに対する前向きな態度があっても,自己分析や業界・企業分析ほど満足度には結び付かないことも分かった.また,そもそもキャリアに対して前向きな態度を持つものほど自己分析と業界・企業分析をしていることが明らかになった.
著者
山本 朋弘 野上 俊一 石田 靖弘 小柳 和喜雄 廣瀬 真琴
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.120-127, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

本研究では,児童生徒一人1台の情報端末が整備された教室環境を想定した,教員養成課程の大学生に今後必要となるICT活用指導力に関する指標について検討した.海外のICTコンピテンシーを参考に検討した結果,教師の学びや新たな技術や方法への対応,授業のデザイン等,指標を定期的に更新する視点について整理した.また,授業でのICT活用や校務の情報化について,ICT活用指導力に関する具体的な場面と具体例を示す必要があるとともに,SNSやAI,VR・AR等の新たなテクノロジーや新たな方法への理解を加えることが必要であることを提案した.
著者
塩崎 雅基 永田 正樹
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.2, pp.13-16, 2021-07-03 (Released:2021-07-05)

現在,データを収集し分析・可視化できるエンジニアの育成が急務となっている.これらのスキルを持った人材をデータサイエンティストと呼ぶが,分野の対応領域が幅広く,明確な定義づけが難しい.そのため,教育手法も確立されておらず,就職した学生のミスマッチが発生している.本研究ではデータサイエンティストの教育手法開発及び,就職マッチングシステムの開発を目指す.
著者
稲垣 忠 平井 聡一郎 佐藤 雄太
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2024, no.1, pp.201-208, 2024-05-11 (Released:2024-05-14)

児童生徒に共通したゴール設定のもとで個別あるいはグループで探究に従事するプロジェクト型学習を対象に,生成AIと対話しながら授業構想を検討するシミュレーターを開発した.プロンプトとしてPBLをデザインするIDプロセスを組み込むことで対話的に順を追って授業設計ができるよう支援した.探究学習をテーマとした教員対象のワークショップにおいて本シミュレーターを試用する機会を設定した結果,授業アイデアを広げること,PBLに対する実践意欲の高まりとともに,生成AIを利用することに対しても意欲的になったとの評価を得ることができた.
著者
澁谷 菜穂子 尾澤 重知
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2024, no.1, pp.193-200, 2024-05-11 (Released:2024-05-14)

本研究の目的は,ポテンシャル採用枠の中途採用者5名を対象に,入社から一人前に至るまでに獲得した職務上の技能とアイデンティティの変容プロセスを,組織社会化の観点から検討することである.半構造化インタビューを実施し,複線径路等至性アプローチ(TEA)にて分析した.その結果,技能獲得に至る行動は,前職で形成されたアイデンティティが影響していた.組織が定める一人前に至った後は,前職と現職を比較し,職場におけるアイデンティティを形成していた.
著者
笠原 秀浩 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.4, pp.135-140, 2023-12-04 (Released:2023-12-04)

本研究は,AIを用いた文章生成技術を応用し,児童の自由記述に対する指導・助言の生成を可能にする新たなプローチを試みるものである.具体的には,小学校の理科授業における自由記述に対してAIを適用し,生成された指導・助言が教師の指導をいかにサポートできるかを試みる.本研究により,教師の負担軽減と教育の質の向上の両方を目指す評価支援システムの開発に向けた基盤を築くことを目的とする.
著者
井坪 葉奈子 仲谷 佳恵 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.4, pp.304-311, 2022-11-28 (Released:2022-11-28)
被引用文献数
1

本研究の目的は,外国語としての英語(EFL)学習者である日本人学生が,Willingness to Communicateを高め,より積極的に留学生との英語ディスカッションに参加できるグルーピング手法を明らかにすることである.Transactive Memory Systemの概念を援用し,お互いの話題に関心を示した日本人学生と留学生がペアになるマッチングシステムを設計したところ,予備実験における介入群の日本人学生の質問数やターンテイク数の平均値が高い傾向が見られた.予備実験の結果をもとに,課題と今後の改善点について述べる.
著者
加納 寛子
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.3, pp.61-65, 2023-10-16 (Released:2023-10-16)

テレワークに対する意識と年収および幸福感の関連について分析した結果,年収が高い人ほどテレワークを希望する傾向が見られた.
著者
若月 陸央 南條 優 八木澤 史子 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.202-207, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

本研究の目的は,情報端末を活用した個別最適な学びの実践における教授行動の特徴を検討することが目的である.本調査では,小学校第4学年の国語科の授業(1時間)を対象に教授行動の分析を試行的に行った.その結果,課題の設定,情報の収集,整理・分析の段階では,「個々の学習状況をクラウド上や,直接的に確認し,児童に分かるように,具体的に問いかけるなどの教授行動が確認された.また,まとめ・表現の段階では本時の学習内容と既習事項や既有経験,次時の課題を関連づけるなどの教授行動が確認された.
著者
藤川 大祐
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.2, pp.259-266, 2023-07-21 (Released:2023-07-21)

ゲーム理論,「言語ゲーム」論,「遊び」研究,ゲーム哲学,ゲームデザイン研究やゲーミフィケーションといったゲームに関係する諸研究を概観し,教育におけるゲーム的構造として,主に児童生徒に起因する学校環境への適応,退屈への対処,人間関係形成に関するゲーム的構造や,主に教師に起因する児童生徒が積極的に教育活動に参加しやすくしたり退屈に対処したり学校環境に適応できるようにしたりするためにデザインされたゲーム的構造がありうることを示した.さらに,小学校の学級担任からのインタビューから,実際の小学校において教師の立場から見るゲーム的構造の具体例を示した.
著者
坂田 雪菜 山本 朋弘
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.90-96, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

本研究では,端末を用いた家庭学習において,児童がテーマを自己決定し,学習の成果をまとめられるよう,大学生の運営によるオンラインコミュニティを通して,チャットを用いた学習者間の協働学習を支援した.児童向けの意識調査やチャット上でのやり取りを分析した結果,家庭学習における児童の主体性と協働性で有意な差がみられ,オンラインコミュニティの有効性を明らかにした.また,チャットでは互いに学習内容やスライドへのアドバイスをしている姿が見られた.
著者
有村 美英 山本 朋弘
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.145-150, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

本研究では,小学校算数科の図形領域の学習において,ドローンを活用したプログラミング体験を取り入れて,空間の中にあるものの位置をドローンで表す授業を実践し,空間にあるものの位置の表し方についての理解が深まるかを検証した.その結果,授業実践前と授業実践後に行った児童向けアンケートでは,活用への気付き等の項目で有意な差が見られた.自由記述を分析した結果,空間の位置をドローンで表すことができることに驚いた,ドローンが身近で活用されていることを知ることができた等の記述が見られた.児童は授業後,空間にあるものの位置の表し方についての理解が深まり,授業前よりも身近な生活でのドローンの活用に気付いたことが示された.
著者
佐藤 智文 吉中 貴信 平野 智紀 山本 良太 石橋 純一郎 杉本 昌崇 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.112-118, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

川崎市教育委員会により行われた教員調査に基づき,GIGAスクール構想におけるICT活用の小学校・中学校比較を行った.その結果,端末整備後のICT活用は両校種ともに向上していること,授業での活用場面においては小学校の方が進んでいること,ICT利用の指導は小学校と中学校で力点が異なることが分かった.またICT活用高低群の比較では,実験や観察等の手順説明や発表場面は小学校で活用されやすいこと,教師の課題提示や学習理解の深化,子ども同士の相互学習に関しては,小中で同程度であることが分かった.
著者
柴田 美紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.207-214, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

昨今の複雑な社会問題に対処するため,大学にはこれまでの伝統的な学問分野を超えた学際的な教育研究活動が求められている.しかし,学際教育研究の必要性は認識されているが,その実践については十分明らかにされていない.そこで,本研究は,国立大学の文理融合を目指す学部に所属する教員が学際教育研究をどのように解釈し実践しているかを調査した.その結果,学部内でも学際性の解釈と実践には分野による相違が認められた.
著者
尾関 基行 山本 あすか
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.77-83, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

2022年11月に公開されたChatGPTの高い性能と利便性は教育現場においても看過できないとして,その活用方法や懸念点に関する議論が早速始まっている.本研究では,少人数の遠隔グループディスカッションにおいて,1. ChatGPTを各自で利用,2. 一人が画面共有してChatGPTを利用,3. インターネット検索のみを利用の3パターンを比較した結果を報告する.
著者
村重 慎一郎 早原 利香 鈴木 愛彩 新村 綾菜 澁倉 陶子 亀井 由衣
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.51-56, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

現代のイノベーションにはデジタル知識・スキルの活用は必須であるが,デジタルはツールであり,活用するための思考プロセスが本質的に重要と考える.大学生主体のNPO法人STEM Leadersでは,デジタル介護などの社会課題解決プロジェクトを実践しており,そこで得られた思考プロセスをモデル化し,自治体と連携した長期ハッカソンを企画運営してきた.その実践報告に加えて,社会課題解決を通じたスキル・マインドセットの成長度合いの評価方法・分析結果についても発表したい.
著者
石井 雄隆
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.1, pp.261-267, 2023-05-05 (Released:2023-05-05)

近年,高等教育におけるリーダーシップ開発は全国の大学で普及が進んでおり,その効果測定も進められている.リーダーシップの能力測定には長い歴史があり,リーダーシップ自体を探究する研究とリーダーシップ開発を念頭に置いた研究の二つの領域が存在する.本研究では,これまでのリーダーシップ研究及びリーダーシップ開発の測定に関するレビューを行い,高等教育におけるリーダーシップ開発を目的とした質問紙開発への基礎的検討を行う.
著者
墓本 晃一 藤村 裕一
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会研究報告集 (ISSN:24363286)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.1, pp.121-128, 2021 (Released:2021-10-24)

高校生に対し,性の多様性に関して集団面接を行ったところ,多様性を包摂する社会の創出に向けた取組に肯定的であり,一見すると寛容に見えるものの,当事者意識や想像力の欠如等から,無言の抑圧や無関心さが潜んでいることが示唆された.さらに,同性愛やトランスジェンダー,なかでも,トランスジェンダー女性へのフォビア(嫌悪)が,性別を問わず強く示されるなど,無意識に内在化しているフォビアの実態が明らかとなった.