著者
中 久治 土井 敦士 根岸 佑也 梶 克彦
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1526-1533, 2017-06-21

スマートフォンの普及により電車内やカフェなどの公共空間で音楽や動画,ゲームを手軽に楽しめ るようになった.それに伴い,イヤホンからの音漏れのような公共空間ならではの迷惑行為も,より顕著 な問題になりつつある.音漏れは周囲の環境音より大きいイヤホンからの漏出音であると捉えられ,音楽 を楽しむ本人が音漏れを聴けず,自身で音漏れに気付きにくい.本研究では,公共マナーの向上をねらい, スマートフォン自体が再生している音に関して音漏れ検出できる機能の実現を目的とする.しかしながら, 音漏れしやすい音域は,イヤホンと環境音に依存して変化する.また,再生する楽曲によっても変化する. そこで本稿では,再生楽曲の周波数特性のうち,イヤホンと環境音ごとの音漏れ特性を考慮し,音漏れす る可能性が高い周波数のみに注目して,マイクからの観測音と比較することで,効果的に音漏れを検出す る手法を提案する.実際に,スマートフォンを用いた楽曲の再生と録音を行い,イヤホンや環境音毎の音 漏れ特性モデルを構築し,提案手法を用いた実験を行い,音漏れ検出が可能であることを確認した.
著者
須賀 祐治
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.689-695, 2017-06-21

Bitcoinは,P2Pネットワークと暗号技術を用い,利用者の匿名性を確保しながらコインの流通が可能な仮想通貨の一方式である.匿名の研究者,中本哲史氏による論文がBitcoinのコンセプトとともに2008年11月に公開され,さらに約2ヵ月後の2009年1月にはThe Cryptography Mailing ListにオープンソースであるBitcoin v0.1が投稿された.論文だけでなく実装が登場したことでBitcoinは徐々に認知され利用されるようになった.この時点ではごく少数のコミュニティでP2Pネットワークが形成され,Bitcoinの交換が行われていたものと推測される.Bitcoinそのものも仮想的な価値があるのみで,そこまで流通していなかったと考えられ,実際初期に生成(採掘)されたBitcoinの多くはまだ利用されていないものが多く見受けられる.このように狭い範囲の閉じた世界で流通していたBitcoinに対して,実世界での価値を見出す者が現れたことが転機となった.2011年1月,通販サイトSilkRoadでの決済方法にBitcoinが利用可能になったことで,匿名で決済できる手段を持つ仮想通貨が注目され,ほぼ同時期にBitcoinの交換レートが急騰していることが報告されている.研究や実証実験で投入されたこのプロジェクトは,決済時の匿名性確保というモチベーションにより一気にユーザ層が変化した(匿名通信方式Torを利用して商取引を行うようなユーザの利用が増えた,もしくはマネーロンダリング,さらに秘密裏に国外へ貨幣を持ち出したいユーザが増えた)と分析できる.この際,やはり同時にBitcoinの暴落が起きている.為替や株式などと同様,またはそれ以上に外的要因が交換レートに影響しているとも言える.最近のBitcoin利用拡大に対し,政府によるBitcoinに対してポジティブ・ネガティブ両方の見解が表明されている.匿名性を持って取引ができ,中央組織を持たずに国境を越えて自由に流通してきたBitcoinは,技術的にも信頼できる仕組みとして認識され,今まさに一般社会に受け入れられようとしている.しかし取引所のひとつであったMt.Goxの破綻により,状況が刻一刻と変わり続けているのも事実である.本稿のコントリビューションは以下の2点である.1)仮想通貨としてのBitcoinを別の用途で利用するいくつかの提案を行う.2)仮想通貨の中の仮想通貨というLocal bitcoinの流通という新しい概念とその可能性について議論する.
著者
吉岡 大輔 杉浦 一徳 中嶋 剛太
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.91-96, 2017-06-21

二次元(アニメや漫画)と三次元(現実世界での動き)を融合した2.5次元とも呼べるコンテンツの一つとして,美少女・美少年着ぐるみ(Animegao Kigurumi),具体的にはコスプレや着ぐるみといったコンテンツのキャラクターに扮する活動が広がっている.本研究では,これら着ぐるみを楽しむ環境を拡大していく上で必要となるリテラシーに着目し,それらを1)実世界,2)インターネットの双方を活用することによってコミュニティ内で共有し,経験の共有へとつなげ,着ぐるみを発展させてゆく手法の確立を目指す.具体的には着ぐるみ活動を1)着ぐるみマスク入手・制作過程,2)着ぐるみ体験,3)着ぐるみイベントの参加,の3つに区分し,それぞれにおいて必要となる経験共有を伴ったリテラシーの共有手法について,インターネットを活用した共有基盤,ならびに実世界活動を連携することによって実現した.実証実験としてのワークショップ,イベントを例にネットワークを活用することによって効率的な経験共有を実現し,着ぐるみコミュニティの発展につながっていくための手法を提言する.本研究によって,着ぐるみ活動がより効率的に,かつグローバルに展開することが可能である事が立証できた.
著者
双見 京介 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.467-478, 2017-06-21

近年,コンピューティング技術を用いたモチベーション制御手法として競争を利用したものがヘルスケアなど様々な分野で開発されている.しかしながら,既存手法には競争による心理的影響を考慮しきれていないという問題がある.そこで,本研究では心理的影響を考慮した競争情報を用いたモチベーション制御手法を提案する.本稿では,まず日常の運動モチベーション向上を対象とし,競争においてモチベーションに影響する要因である,努力量に対する競争結果,競争相手との成績差,競争参加人数の3点による心理的影響への配慮をシステム設計に内包させた競争システムを開発する.提案システムでは活動量計から得た歩数を基にして,モチベーションに良い効果を与えるように補正された競争結果がフィードバックされる.プロトタイプシステムを用いた評価実験では,合計82 名の6 週間にわたる3 種類の実験を通して提示情報による歩数への効果を測定し,提案手法の有効性を確認した.
著者
内田 昂 磯山 直也 Guillaume Lopez
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.876-879, 2017-06-21

我々は物事に集中して取り組む能力として「集中力」という言葉を用いることがあるが,集中力は様々な要素が含まれることから定量化することができず,無意識下に変化する集中状態を常時把握することも困難である.集中状態を推定する手法として体動情報や生体情報を用いたものが提案されてきたが,双方を同時に用いた集中状態の推定は未だ行われていない.そこで,本研究では従来研究で用いた体動情報に加え,生体情報として脈波を使用した単一デバイスによる集中状態の推定手法を提案する.本手法を用いることで,自身の作業態度を振り返り,作業環境などを省みる機会を与えることができる.勉学中のデータを使用した教師あり学習を行い,学習結果に対し交差検証を行った結果,推定に十分な精度を得ることが出来た.また,集中状態評価を複数人で行うことで85.5%の精度を得ることができ,本手法が有効であることを確認した.
著者
濱谷 尚志 Moustafa Elhamshary 内山 彰 東野 輝夫
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1761-1771, 2017-06-21

人体の約60%を占める水分の摂取量と排出量のバランスを維持することは生命活動維持において重要である.本研究では日常生活で容易に装着可能な腕装着型センサを用いた飲水量の推定手法を提案する.腕の複雑な動きから飲水に関連するモーションおよび飲水中の細かいモーションを認識するため,本手法では時間的な認識スケールの異なる二種類の分類器(マクロ行動分類器・ミクロ行動分類器)を組み合わせる.さらに飲水中の細かいモーションにおける慣性センサの計測値を用いて飲水量推定モデルを構築し,毎回の飲水量を推定する.評価のため合計16人の学生から約22時間のマクロ行動,合計950回以上の飲水におけるデータを収集した結果,提案手法により日常生活における代表的な行動の中から適合率72.6%,再現率73.5%で飲水行動を認識可能であり,さらに実際に飲水を行っている区間を合率92.8%,再現率97.0%の精度で認識できることが分かった.また,飲水中の腕方向および親指方向の加速度の積分値を説明変数とした線形回帰モデルにより,毎回の飲水量を平均誤差1.5[g],標準偏差29.5[g]で推定できることを確認した.
著者
藤澤 功 Erick Chandra 出口 利憲 田島 孝治
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1285-1290, 2017-06-21

本稿では,環境モニタリングシステムをRaspberry Piと呼ばれるシングルボードコンピュータを用いて実現した結果について述べる.この方法により,測定対象のセンサデータだけではなく画像も取得可能である.しかし,電力の供給が困難な場所では,測定を行うデバイスはバッテリー駆動が必要である.そのような場合は消費電力の問題で長期運用は困難である.そこで,本稿ではデバイスを間欠動作させるハードウェアを試作し解決を図った.結果,一日16回モニタリングを行う場合,モバイルバッテリーで3ヶ月以上動作可能であることが明らかになった.
著者
高橋 雄太 音田 恭宏 藤本 まなと 荒川 豊
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.44-51, 2017-06-21

超高齢化社会の到来によりリハビリテーションでの人手が不足し,効果的なリハビリ支援が行えなくなる可能性がある.効果的なリハビリテーションを行うには,大がかりな装置や専用の環境による歩行評価が必要になるが,人手不足などの要因により高齢者や片麻痺患者のようなリハビリ患者の歩行評価を定期的に行うことは難しい.本研究では日常の歩行をセンサデバイスによってセンシングすることで歩行能力の評価を人手を介さずに行うシステムの構築を目指す.日常の歩行から歩行能力の評価が行えれば,歩行能力の低下の検知,歩行能力の改善度の把握,効果的なリハビリテーション計画が可能となり,リハビリテーションの支援に繋がる.日常の歩行をセンシングするにあたってセンサデバイスの装着位置が重要となるが,我々は利用者の装着時の負担が少なく,片麻痺患者のような非対称な歩行を行う患者の歩行動作の検出が容易となる理由から杖にセンサデバイスを装着することにした.杖に装着したセンサデバイスで歩行評価を行うため,本稿では歩行動作の検出をリアルタイムに行うアルゴリズムと歩行距離を推定する重回帰モデルの構築を行った.構築した歩行動作検出アルゴリズムと歩行距離の推定モデルを評価したところ,歩行動作の検出率は95.56%で,歩行距離の推定精度は83.79%となった.この結果から,杖に装着したセンサデバイスにより歩行動作をある程度の精度で認識できることがわかった.
著者
富井 規雄
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.925-926, 2017-06-21

最近,都市圏の鉄道において,ラッシュ時間帯に慢性的に発生する小規模の列車遅延が問題になっている.本稿では,そのような遅延を防止する手立てを見出すための方策として,列車運行実績データの可視化,列車運行実績データからの遅延の原因の検出アルゴリズム等に関する研究開発動向を紹介する.