著者
山本 陽介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.216-219, 2006

5本の結合をもつ炭素化合物について,CH_5^+のような3中心2電子結合系化合物とS_N2反応の遷移状態にあたる超原子価3中心4電子系炭素化合物の違いについて解説した。我々が合成に成功した超原子価3中心4電子系5配位炭素化合物の構築の考え方について解説し,その構造についても述べた。また,研究の結果,同じ配位子系を用いても置換基の違いなどにより,5配位構造をとる系と4配位構造を好む系に分かれることがわかったが,今後の展開へのステップとして,その原因についても考察した。
著者
中垣 良一 福吉 修一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.206-207, 2011-04-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

すべての生き物は,食べることにより生命を維持している。生体を構成する諸元素中に微量ながら含まれる安定重同位体(^<13>C,^<15>N,^<18>O)を通して生体成分を眺めると,食物の生産地や動物の食生態などが見えてくる。安定重同位体がどれくらい生体成分中に含まれているかは,生き物の生活歴を反映している。微量の安定同位体の含有量を調べることにより,食品生産地の偽装などを見破ることができる。
著者
忍久保 洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.268-269, 2020-06-20 (Released:2021-06-01)
参考文献数
6

反芳香族化合物は不安定な化合物であるが,それを上下に接近させて重ねると芳香族化合物になり,安定化することが分かってきた。これまで,芳香族性の起源は二次元的なπ電子の広がりであると考えられてきた。しかし最新の研究により,2つの分子の間の三次元的なπ電子の広がりによっても芳香族性が生じることが示された。また,反芳香族化合物が芳香族化合物よりも互いに接近しやすいことも分かってきた。分子が近づいて電荷が移動しやすくなるため,有機半導体などへの応用が期待される。
著者
阿部 幸紀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.448-451, 2013-09-20 (Released:2017-06-30)

本編では,全世界的なリチウムの資源とその採掘法,および炭酸リチウムへの変換法とその需要について述べる。リチウムの埋蔵量(リチウム金属換算,以下同)はおおよそ1,300万tから3,472万t,そのうち鉱石とかん水の比率は3:7程度と見積もられている。鉱石を用いる場合,製品化までの期間が1ヵ月程度と短いものの,採鉱・選鉱等でコストがかかる。一方,かん水からは自然界の天日濃縮などで製品化まで1年ほどかかるものの,生産コストは安い。国内で生産ないし消費されるリチウム金属とリチウム化合物は,出発原料,製品の全量を輸入に依存している。輸入品の主体は炭酸リチウムで,そのままで使われるほかに,臭化リチウム,酸化リチウム,塩化リチウムなどの二次加工製品の原料としても用いられる。近年,リチウムイオン二次電池の正極材および電解液中の電解質材料として急速に需要が拡大しているほか,添加剤としてさまざまな用途に使用されている。
著者
鈴本 勉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.402-405, 2003-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

ヒトはそれぞれ顔や体型が異なるように個性を持っている。このような個性はしばしば親から子へ遺伝することを,我々は経験的に知っている。これは,各個人のDNAに書き込まれた情報が微妙に異なることに由来している。最近では,体質や性格までもがDNAの仕業であることがわかってきており,ゲノム配列の解読が終了した今,これまで以上に遺伝子とヒトの個性の関係について,関心が高まっている。また,そのような遺伝子の違い(遺伝子多型)はしばしば病気のなりやすさや,治療薬に対する副作用の強弱に関わることが知られ,遺伝子多型の研究は病気の発症原因の探求と治療法の開発にも大きな貢献をしている。
著者
本吉谷 二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.32-35, 2007-01-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

化学発光(ケミルミネッセンス)とは,化学反応によって高エネルギー状態(励起状態)の分子が生成し,これが光としてエネルギーを放出する現象である。これまで,ルミノールをはじめとする多様な有機化合物の化学発光が知られており,すでにケミカルライトや微量分析などにも応用されている。また,化学発光のしくみはホタルなどの生物発光と類似し,その研究の成果が生物発光のメカニズムの解明などに役立っている。本稿では生物発光との関連を意識しつつ有機化学発光のしくみについて解説する。
著者
長谷川 一希
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.524-527, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
3

苛性ソーダ (NaOH) および金属ナトリウム (Na) は,いずれも化学的に非常に活性なアルカリ金属の化合物および単体である。これら製品は,塩化ナトリウム (NaCl) を原料にして生産されて,幅広い産業分野の原料や反応剤などに利用されている。現在,NaOHとNaの生産には,電気分解法が用いられる。前者はNaClの水溶液,後者はその溶融塩を用いた電解法である。これら製造には電気分解という共通手法を適用するが,操業に対する取り組みは当然異なる。本稿では,NaOHとNaの製造法を解説する。
著者
榎本 俊樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.134-135, 2019-03-20 (Released:2020-03-01)
参考文献数
4

ハチミツはグルコースとフルクトースが主成分の,ミツバチにより花蜜から生産される天然の調味料である。また,ハチミツには,これらの糖以外に,多様なオリゴ糖やポリフェノール,遊離アミノ酸などが含まれているが,特にオリゴ糖については,不明な点が多い。本稿では,オリゴ糖を含むハチミツ成分について解説する。
著者
八木 一三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.456-459, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
5

我々の周辺には普段から光が満ちあふれている。太陽光や星明かりなどの自然光以外にも,白熱電球や蛍光灯,最近ではLEDなどからの光があり,これらがなければ現在のような生活は営めないだろう。自然光や身の周りの人工光源からの光は基本的にインコヒーレントな光であり,波長も位相もばらばらで,あまり遠くまでは届かない。一方,我々が手に入れたレーザーという新しい光源は,コヒーレントな光を発生し,その光は単色性・指向性に優れ,高輝度で,はるか遠くまで届く。これらの光はどのように生み出されるのだろうか? 本稿では,これらの物理発光デバイスの原理と利用について概略的に述べる。
著者
杉森 公一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.328-331, 2016-07-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
5
被引用文献数
5

アクティブ・ラーニングが求められる背景から,大学教育におけるアクティブ・ラーニング型授業の定義と意義,反転授業を用いた実践例について報告する。また,アクティブ・ラーニングの深化と充実に向けて,大学教育再生加速プログラム(AP)による組織的な取組事例を紹介する。大学教師に求められる教育能力の開発と相互の学び,学習支援環境の設計と整備によって,高校・大学から社会への教育接続の実現が期待される。生涯学び続ける自律した学習主体=「アクティブラーナー」として社会へとつながるために,個の学びを始点に,他者との対話・協同を通じて深い学びを目指す,学習の共同体としての大学教育の構築がなされつつある。
著者
岡野 孝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.548-551, 2017-11-20 (Released:2018-05-01)
参考文献数
3

ファラデーが発見し,ケクレが近代有機化学の出発点となる構造式を生み出した,ベンゼンを含む芳香族化合物は,他の不飽和有機化合物とは化学的性質が大きく異なり,特異的に安定であった。ヒュッケルにより量子力学に基づいて,その安定性の原因が芳香族性として,解き明かされた。芳香族性の概念はベンゼン構造と離れて,非ベンゼン系芳香族や芳香族複素環化合物に拡張されている。
著者
柳澤 秀樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.422-423, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
7

最近スーパーなどでセスキ炭酸ナトリウム(セスキ炭酸ソーダ)がよく見かけられるが,学校教育ではあまり扱われていない。しかし,セスキ炭酸ナトリウムは世界ではアンモニアソーダ法に代わる炭酸ナトリウムの原料であり,典型金属元素の単体と化合物の単元で扱う炭酸水素ナトリウムの熱分解反応や,酸と塩基の反応の単元で扱う炭酸ナトリウムの二段滴定法を組み合わせることで,その組成を知ることができる。一部の生徒が教師役となり,予備授業を通して授業を行っていく,生徒主導型授業(略称:PIE)から生徒がセスキ炭酸ナトリウムの組成を求めるのに適した実験方法を探りあてた。本稿ではその条件と筆者が追実験した結果を述べ,さらに,PIE当日の生徒の様子についても紹介する。