著者
菊池 好行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.8-11, 2020-01-20 (Released:2021-01-01)
参考文献数
6

エーテル合成の人名反応で化学史にその名を残しているイギリスの化学者ウィリアムソンは,ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで日本人を教育したことで,日英交流史上でも重要な人物である。その影響は日本の化学はもとより,科学技術教育,政治思想にも及ぶことが近年の研究で明らかとなっている。今回はウィリアムソンの化学史上の業績に加え,薩長留学生にはじまり櫻井錠二に至る数々の日本人学生たちに焦点を当てることによって,彼が幕末から明治期の日本に与えた広範なインパクトを見ていきたい。
著者
内田 博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.438-441, 2012-10-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

酢酸の用途は化学工業に限らず食品工業,医薬品製造など,多岐にわたる。本格的な酢酸の工業製造法としては19世紀末に石炭を原料とするカーバイド法に始まり,1950年代に石油化学工業の勃興に伴い原料のアセトアルデヒドがエチレンを原料とする方法に変わり,オイルショック後の石油価格の高騰に伴いメタノールを原料とするカルボニル化法が製造法の主流になっている。酢酸は単鈍な構造ではあるが,その製造法には遷移金属触媒を用いた触媒反応が用いられており,有機化学の発展に貢献している。ここでは酢酸製造法の変遷について解説する。
著者
村上 雅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.246-251, 2015-05-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

キレート滴定法は,エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその類縁体が,多くの金属イオンと価数に依らず1:1のキレート錯体を形成することを利用した金属イオンの容量分析法である。この方法は,主にCa^<2+>及びMg^<2+>の滴定法(水の硬度の測定)として知られさているが,適当な条件と金属指示薬の使用によって多くの金属イオンのmg/Lレベルでの定量が可能である。本稿では,キレート滴定法の原理,そこで用いられる応用的な手法(逆滴定,置換滴定,マスキングなど)について概説するとともに,これを用いたいくつかの金属イオンの定量法を紹介する。

1 0 0 0 OA 銀の反応

著者
後飯塚 由香里
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.580-581, 2018-12-20 (Released:2019-12-01)
参考文献数
4
著者
上村 礼子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.552-555, 2015-11-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

化学基礎「物質の探究」では,ペーパークロマトグラフィーを用いた水性ペンや植物の緑葉の色素成分の分離を探究活動として取り扱っている教科書が多い。授業での学びを深め,課題研究などで,化合物の分離・定性・同定を行うにはペーパークロマトグラフィーより,シリカゲルを固定相として用いた液体クロマトグラフィーが適している。今回,高等学校でも活用しやすい薄層クロマトグラフィーの実験方法についても紹介する。
著者
須見 洋行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.358-359, 2015-07-20 (Released:2017-06-16)

「納豆」という言葉が初めて登場したのは平安時代であるが,現在の「糸引き納豆」が紹介されたのは江戸時代に入ってからで,最も古い食べ物の辞典ともいうべき「本朝食鑑」にも記載されている。この糸引き納豆は日本人の多くが好きである一方,特に外国ではニオイや粘りを嫌う人も多い。しかし,蒸した大豆よりも栄養価が高く,さらに納豆にしか含まれない血栓溶解酵素ナットウキナーゼをはじめ各種効能成分が含まれている。本稿では世界に誇る日本の糸引き納豆の魅力について紹介する。
著者
川島 慶子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.68-71, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)

キュリー夫人ことマリー・キュリーは「ラジウムの発見者」として有名だが,彼女が発見したのはラジウムだけではない。ポロニウムも発見しているし,トリウムの放射性を発見したのもマリーである。放射能という言葉を作り,この現象が当該元素の原子的性質であることを最初に見抜いた。それなのに,どうしてラジウムだけが有名なのだろう。そこにはマリーの生きた時代と切り離せない事情がある。ここでは,マリー・キュリーがいかにして,先の発見をなしとげたのか。特にラジウムは,一般にどのような発見だと受け止められたのかを見ていこう。
著者
太田 明廣
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.297-300, 2002-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

天然物として不快臭源から芳香物質まで多様なにおい物質が知られている。不快臭源としては腐敗アミン, 含硫物質が代表的で, また, 最近では加齢臭も話題になっている。これら含硫物質や加齢臭源の化学構造について説明する。一方, 芳香物質としては精油, 動物性香料が知られている。特に植物の約80科に含まれる精油はその成分と共に薬剤, 食品, 化粧品などに広い用途が見られる。これら天然におい物質の生成についてふれ, 更に, 化学構造とにおいとの関係についても述べる。
著者
西脇 芳典
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.494-495, 2017-10-20 (Released:2018-04-01)
参考文献数
3

近年,犯罪は複雑・巧妙化している。安全・安心な社会を実現するには,科学捜査技術の一層の高度化が求められている。犯罪は証拠によって明らかにされるので,化学は科学捜査において重要な役割を果たしている。その基礎は中・高校で習う化学である。覚せい剤などの乱用薬物,自動車塗膜片などの微細工業製品の鑑定の概念の一部は,高校までの化学で理解できる。学校で習う化学と関連付けて科学捜査研究の成果を紹介する。
著者
須川 哲夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.118-121, 2009-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

インビジブルインクとは特殊蛍光色素を用いて,通常の太陽光下では目に見えず,紫外線などを照射すると可視光を蛍光発光する特殊機能インクである。ここでは,特殊蛍光色素の発光原理とインクジェット技術への応用を解説したあと,区分管理・ディスプレー関連に展開されている事例を紹介する。
著者
桝 飛雄真
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.592-595, 2015-12-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
3

核磁気共鳴(NMR)の原理と,有機化合物の構造解析において重要な1H NMRスペクトルについて概説する。1H NMRスペクトルでは磁場中の試料に電磁波を照射し,水素原子による電磁波の吸収(共鳴)を測定することで有機化合物の構造に関する様々な情報(官能基の種類,水素原子の数,隣接する官能基の組み合わせなど)を得ることができる。また13C NMRや二次元NMRについても紹介する。
著者
五月女 宜裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.402-405, 2015-08-20 (Released:2017-06-16)

光学分割とは,2つのエナンチオマー(鏡像異性体)が1:1の比で混在するラセミ体から,一方のエナンチオマーを分離する方法である。19世紀中旬に,ルイ・パスツール(Louis Pasteur)が初めての光学分割を報告して以来,結晶法,HPLC法,速度論法に代表される様々な光学分割法が開発されてきた。これにより,医薬,農薬,香料や機能性材料の開発に欠かすことのできないキラル化合物のエナンチオマーを入手することが可能となった。本稿では,これらの光学分割法の歴史的な開発背景,光学分割法の原理,さらには特徴についても紹介する。
著者
川端 克彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.286-290, 1995
参考文献数
5

パソコンやワープロの普及により筆記具の需要が減るのではと危惧されたが, 顔料の微分散化技術が進み耐水性や耐光性の強い顔料インキが水性ボールペンにも使えるようになり, またカラフルな外観を持つボールペンやラインマーカーが開発され新しい需要層が増え, 逆に販売量も増えている。パソコンやワープロでは味わえない書くことの楽しさをユーザーがこれらの筆記具に感じているのではないか。またどこでも手軽にコピーできることから, ちょっと間違った箇所を簡単に修正できる修正液が大ヒットしている。これらのインキについて, 材料, 分散技術中心に紹介する。