著者
平野 誉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.376-379, 2016-08-20 (Released:2017-02-01)
参考文献数
8

化学発光と生物発光は化学反応で光子を生成する。この魅力的な発光反応は分析技術から化学教育まで重要な役割を担っている。様々な分野での発光反応の利用・応用を拡げるには反応機構の理解が不可欠である。本稿では,励起分子を与える化学励起過程を含め,発光反応の特色につながる反応の仕組みについて解説する。
著者
海江田 直子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.426-427, 2018-09-20 (Released:2019-09-01)
参考文献数
6

サリチル酸とその誘導体の実験として,市販薬のアセチルサリチル酸含有の解熱鎮痛剤を出発点とし,途中サリチル酸を経由して,消炎鎮痛剤のサリチル酸メチルを生成する実験1)を紹介する。
著者
横関 健三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.478-482, 1999-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6

グルタミン酸発酵が誕生して約40年が経過した。この間, アミノ酸の製法開発は発酵法と酵素法を中心にめざましい発展を遂げ, 現在ではタンパク質を構成する20種類の天然型アミノ酸はもとより, 非天然型アミノ酸の製造も可能となった。グルタミン酸発酵の生誕以来, 数多くの技術革新に支えられ, アミノ酸の世界市場は1500∿2000億円規模を形成するに至った。本稿では, 工業的な観点からの代表的な製造法を紹介する。
著者
中林 誠一郎 曽越 宣仁
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.8-11, 2006
参考文献数
3
被引用文献数
1

液体の水は我々にとってなじみの深い物質であると同時に,地球環境の維持に大切な役割をもっている。水の興味深い物性を決める最も大きな要因は水素結合である。磁性の観点から水を見ると,水は磁場とほとんど相互作用しない平凡な物質である。しかし10Tまでの非常に強い磁場中に水をおいて,精密にその性質を調べると,興味深い磁場への応答性がうかがえた。従来の水の研究について概観しつつ,筆者らの新しい知見について解説する。
著者
竹内 孝夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.234-235, 2009
参考文献数
2

超伝導線材は電気抵抗ゼロのままで電流を流せて磁場も発生できる。酸化物系線材による超伝導送電の実証試験が開始された。永久電流を利用して定常磁場を発生する核磁気共鳴(NMR)分光分析器等には,当面,金属系線材が使用される。核融合,高エネルギー粒子加速器などの大型応用機器には省エネルギーの観点から超伝導線材の利用が不可欠である。
著者
松本 泰正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.56-59, 2017-02-20 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

洗たく洗剤の開発にLCA(ライフサイクルアセスメント)を取り入れ,洗たくのすすぎを1回にすることで,消費者とともに洗たくに関わる環境負荷低減を実現した。社会の変化を先取りして環境性能,洗浄性能を同時に満足させるイノベーションがどのように生まれたのかを紹介する。
著者
小林 良生
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.240-242, 1988-06-20 (Released:2017-07-13)

和紙と墨は1000年以上の風雪に耐えた記録材料である。実用性からみれば, 近年では冠婚葬祭など特別の行事にしか使用しなくなったが, 芸術のジャンルでは書に活かされている。紙を構成しているセルロースは陸上の植物を鉄筋コンクリートに例えれば鉄筋に相当し, リグニンはコンクリートに当たる。セルロースの中でも最も強靱な靱皮(じんび)繊維を美しく配列して作った紙が和紙である。"どこの国を振り返ってみたとて, こんな味わいの紙には会えない"とは柳宗悦の言葉であるが, この和紙以上の紙は活発な研究開発が行われている新素材を駆使してもできていない。一方, 墨の主要成分である炭素もまた最先端を行く新素材の一つである。白と黒のコントラストのきいたこの二つの記録材料が, なぜ今なおみずみずしい新しさを持ち続けているのか本稿で考えてみよう。
著者
松井 亨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.326-329, 2017

<p>筑波大学理工学群化学類で実施される入学試験のうち推薦入試とAO入試を取り上げ,試験の内容・特徴と実施結果,それにより生じた課題を論じる。推薦入試では思考力や発想力に富んだ真面目な学生を,AO入試ではより自主性に富んだ学生が入学する傾向にある。これらの試験によって,通常のペーパーテストでは獲得しにくい層が取り込まれて,本学における多様な人材育成に貢献している。受験者の減少などの問題を抱える一方で,成績調査の結果では化学類においては入学経路に依存した大きな差異は見られないことから,さらなる人材の多様化を目指すためには今後これらの制度を活用した入試形態が望まれる。</p>
著者
大江 孝明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.288-291, 2016-06-20 (Released:2016-12-27)
参考文献数
5

ウメ加工品の食味や香りは原料果実により左右されることから,筆者らは原料の違いと加工品品質との関係について梅酒を中心に調査した。その結果,熟度や大きさ等により食味成分や保健機能にかかわる有用成分量が大きく変動することを明らかにするとともに,これら成分量が多くなる原料果実の選び方や加工方法を明らかにした。
著者
時任 宣博 武田 亘弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.618-622, 1999-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂は, フェノールとホルムアルデヒドから酸触媒または塩基触媒を用いて付加反応と縮合反応を繰り返すことにより合成される。酸触媒では, 付加反応よりも縮合反応が優先してまず直鎖構造のノボラックが生成し, さらに硬化剤と反応させることによりフェノール樹脂が得られる。これに対し塩基触媒では, 縮合反応は遅く付加反応が優先してまずレゾールが生成し, さらに加圧, 加熱することによりフェノール樹脂が合成される。酸触媒を用いた反応と塩基触媒を用いた反応の違いについてその反応機構を解説した。