著者
杉田 和幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.554-557, 2019-11-20 (Released:2020-11-01)
参考文献数
3

葉酸の合成を阻害することによって抗菌活性を示すサルファ剤に続いて,β-ラクタム系抗生物質のペニシリンが発見され,細菌による脅威から人類を守る手段が獲得され始めた。既存抗菌薬が無効な菌に対処するため,作用メカニズムの異なる抗菌薬を見出す努力を続ける中で,我々が新たに手にした新規抗菌薬の1つがキノロン系合成抗菌薬である。風邪を引いたときに,細菌による感染が疑われる場合,主として処方されるマクロライド系抗生物質およびセフェム系抗生物質と並ぶ,主要な経口抗菌薬の1つである。
著者
中谷 隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.304-308, 1998-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

接着剤はなぜくっつくのか。なぜ, 接着剤には多くの種類が必要なのか, 一種類の接着剤ではだめなのか。という疑問に対し, 私達が日常無意識に接している接着の現象を題材に接着のメカニズムを紹介した。また, 家庭用接着剤の代表である瞬間接着剤を取り上げ, その化学構造と接着性能の関係を説明し, 今後の接着剤の技術開発動向を紹介した。接着剤は, 高分子化学と界面化学を基盤とする機能製品である。今後の化学の発展とともに益々発展することを期待したい。
著者
一木 博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.162-163, 2019-04-20 (Released:2020-04-01)
参考文献数
2

化学教育に携わる中で,「過マンガン酸カリウムの方が過酸化水素より強い酸化剤である」がかなり広く認識されていることを不安に感じ,なぜそのような認識になるのかについて,2017年度京都理化学協会研究会で発表した探究活動の授業実践例を紹介する。生徒自身がわからないことや疑問に思うこと,資料から読み取ったことに対しての探究活動を行い,段階的に仮説の検証を行った。実践内容,授業での考察および生徒の感想を記すことで,正しい「酸化力の決定」についての認識を広く伝えたいと考えている。
著者
井上 晴貴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.210-211, 2006
参考文献数
3

日常生活の中で,化学の恩恵に出会うことは多い。しかし,市民から見た化学のイメージは,難しく,一部の科学者のものであるという意識もある。感受性豊かな時期に興味関心を持ち,多くの化学のおもしろさにふれながら「ふしぎ」を感じる心をもつことが大切である。その積み重ねが疑問を探究する姿勢に結びつき,新たな課題や独創性を生み出すことになる。今回,身近な生活の中にある現象「冷える」をテーマにした実験を紹介する。
著者
岡内 辰夫 北村 充
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.130-133, 2019

<p>2010年,「有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリングの開発」に貢献した3人(Heck,根岸,鈴木)に,ノーベル化学賞が与えられた。そのうち2人が日本人であったため,マスコミで大きく取り上げられ,クロスカップリングという言葉が広く知られるようになった。受賞者の1人である北海道大学名誉教授の鈴木 章先生らのグループが開発した反応が,鈴木-宮浦クロスカップリングである。この反応は,有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物に対して,パラジウム触媒を作用させることで炭素-炭素結合が形成するというものである。この反応は,我々の身の回りの医薬品,農薬,液晶材料,EL材料などの開発・量産化に大いに貢献している。</p>
著者
佐藤 光史
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.40-44, 2000-01-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
5

味覚は, 多くの化学物質を複合的に受け入れることによって成り立っている。味覚の分子生理学的な研究は近年著しく発展しており, 物質の構造と味覚との関わりを明かす化学の役割も増している。さまざまな化学物質の中でも, 基本味の一つであるうま味の主役であり, かつ食べ物の味を決定する上で大切な役割を果たすアミノ酸を中心に味覚と化学を論じた。特にその甘さや苦さに焦点を当てて, 化合物の立体化学や疎水性, 親水性といった基礎的な知識と味覚との関連について, 実用例を紹介しながら解説した。
著者
中村 卓
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.36-37, 2019-01-20 (Released:2020-01-01)
参考文献数
3

食品に必要とされる要素として「安全」・「健康」・「おいしさ」・「価格」がある。私たちの研究室では「おいしさ」を食品構造から追究し,食品構造の制御によりおいしい食品をデザインする『食品構造工学』の確立を目指している。特に,食品のおいしさは咀嚼による「変化」であるという立場から,望むおいしさの実現と効率的なものづくりに貢献したいと考えている。ここでは特にオノマトペ(擬音語・擬態語)として表現されるおいしい食感(とろ~り)とスイーツ(プリン)の破壊構造との関係について述べる。
著者
アルボーン エリック
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.346-351, 1997
被引用文献数
1

イギリスでも日本でも科学技術が生活や考え方を大きく変えているのに, 理科の学習は日常性がなくつまらないと感じている生徒が多い。どうしたら理科教育を意味あるものにできるのだろうか。それぞれ文化と歴史が異なる両国には共通の事柄もたくさんあり, お互いに学び合える部分がある。両国とも学校の主要カリキュラムの変革期にあり, その流れはお互いの長所を高く評価し合っている一方, 高く評価しすぎの面もあるかもしれない。本稿では, 日英間で創造的な教師と生徒達同士が交流を持てば多くのことが学べ, またそうした関係作りの最初の段階についていくつか説明する。イギリス側から紹介できる重要な実践例は, 幅広い現場にいる科学者やエンジニアの協力を得ながら, 生徒をある程度まで実際の科学研究に取り組ませるのが目的の「生きた科学」に焦点をあてた実践である。将来, 生徒がプロの科学者になってもならなくても, こうした科学研究の体験は全ての生徒に理科学習に対する意味と意欲をもたらすだろう。
著者
岡野 透 アルボーン エリック
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.702-705, 2004
参考文献数
9

英国ではクリフトン科学トラストによって新しい探究学習が提唱されている。学校は科学者との連携を持つことにより,科学授業をもっと興味深い,意味のある,刺激的なものとすることが可能となる。実施されている小学校,中学校,高校レべルにおけるサイエンスパートナーシッププログラムを紹介すると共に,将来の日英での探究学習のあり方を考える。連携探究学習から恩恵を受ける生徒はもちろんであるが,21世紀の情報科学社会の中で科学教育が果たすべき使命,科学リテラシーを持った一般市民の育成,科学者と社会との関連が今後の連携科学探究教育の根幹である。
著者
吉本 秀之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.372-375, 2017

<p>アリストテレスの四元素説(火は,水,土,空気とならび四元素の1つであった),パラケルスス派の三原質(エン,スイギン,イオウの3つのうち,イオウは可燃性を担う原質と位置づけられていた)という17世紀までの元素説・原質説の基本をまず紹介しよう。そして,こうした背景に対し,ベッヒャーとシュタールのフロギストン説は,一体何であったのかを解説しよう。</p>
著者
小柳 めぐみ
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.24-27, 2020-01-20 (Released:2021-01-01)
参考文献数
10

高等学校「化学基礎」の教科書では,ろ過,蒸留,抽出,再結晶及びクロマトグラフィーに加え,昇華法が扱われている。これらの分離・精製法のうち,小学校ではろ過,中学校では再結晶及び蒸留を学習している。本稿では,小学校から高等学校で児童・生徒が学習する流れを踏まえて,教科書で扱われている分離・精製の実験等を紹介する。
著者
右田 俊彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.214-217, 1998-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

炭化水素はさまざまな条件下で空気中の酸素と反応し酸化生成物を与える。ラジカル発生剤存在下ではラジカル連鎖反応によって非芳香環の部分がヒドロペルオキシ化される。増感剤存在, 光照射下では芳香族および不飽和炭化水素は分子反応を通して環状過酸化物やヒドロペルオキシドなどを与える。また, ある種の遷移金属化合物を触媒とする芳香族炭化水素の空気酸化によって, マレイン酸やフタル酸の無水物など工業化学的に重要な中間体を得ることができる。
著者
荘司 隆一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.192-193, 2014-04-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
岩本 裕之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.384-387, 2013
参考文献数
3

ハチやハエのような進化した昆虫は,毎秒数百回の頻度で羽ばたくことができる。この羽ばたきを担うのは,高速振動に適するよう非常に特殊化した非同期型飛翔筋である。非同期型飛翔筋は,通常の収縮弛緩のサイクルを繰り返すのでなく,常に活性化された状態で自励振動を行うことにより,高い羽ばたき頻度を実現している。この自励振動を行うために重要な機能が,伸張による活性化である。非同期型飛翔筋を構成するタンパク質分子は結晶のように規則正しく配列するが,これは伸張による活性化を効率よく起こすための適応と考えられる。