著者
田沼 靖一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.348-353, 1994-05-20 (Released:2017-07-11)

多細胞生物の細胞は自ら死ぬことができる。いわば自殺ともいえる細胞死はアポトーシスとよばれ, 遺伝子にプログラムされた能動的な細胞死である。アポトーシスは多細胞生物の発生過程での体の形づくりや, 成熟個体においては正常な細胞交替, 恒常性の維持に重要な役割を果たしている。また, 最近では, がんや自己免疫疾患, アルツハイマー病などの病態にも深くかかわっていることから, アポトーシスの研究は医学の分野においても注目を集めている。生命はアポトーシスという細胞の消去機構により支えられ, 守られている, といっても過言ではないだろう。
著者
大川 忠
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.269-270, 1995-04-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
9
著者
山口 晃弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.540-541, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
6
著者
稲田 幹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.20-23, 2021-01-20 (Released:2022-01-01)
参考文献数
4

プラスチック(有機材料),金属,セラミックスは三大材料である。プラスチックや金属は高温で溶かして成型加工できるが,セラミックスは基本的に粉を固めて焼く『焼結』という方法で製造される。そのため,セラミックスの製造には,原子・分子レベルからの原料粒子調製技術,粒子集合体への成形技術,焼結の制御が高度に要求される。一方で,高温耐熱性,高強度,半導性,誘電性,磁性などのセラミックスの多様な特長は,構成原子の化学的な結合や構造と密接に関連している。
著者
久保田 港
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.260-261, 2019-06-20 (Released:2020-06-01)
参考文献数
4
著者
田村 陽介
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.30-33, 2011-01-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
7

水素自動車の一部の安全対策を取り混ぜながら,(財)日本自動車研究所で実施した水素自動車の火災時の振る舞いやガソリン車火災との比較および水素漏洩着火試験の結果を紹介し,危険なガスとイメージされる水素ガスを見直してみる。たとえば,水素火炎は視認できないため,消火活動に支障を来すとされるが,実際の火災時には水素火炎を視認することができる。また,水素は少量でも漏れたら危険だというイメージがあるが,実験の結果,自動車の構造上,容易に水素を溜めることができないことや,エンジンルームコンパートメント内では,濃度20%程度で着火させても一瞬燃えるだけで,損傷がないことなどを紹介し,水素の安全性について見直してみる。
著者
金子 静知
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.272-273, 2009-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

中学・高校・大学などで実験に必要な純水・超純水はどのような水質なのか,どのように精製されているのか,基本となる部分を知ることで正しい結果(再現性のある結果)が得やすくなる。ここでは,一般的な精製技術(蒸留,膜ろ過,イオン交換,連続イオン交換,活性炭,紫外線)について取り上げる。また単一の精製技術だけでは十分な水質は得られないことから,実験に最適な純水・超純水が得られる組合せについても記述する。
著者
永田 和宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.382-385, 2007-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2

製鉄の歴史は4000年の昔に遡る。長い間,鉄は高さ約1.2mの炉を用いて人力で送風しながら木炭を燃焼し,発生する一酸化炭素ガスを還元剤として鉄鉱石から造られた。塊鉄鉱石を用いた西洋では低炭素濃度の軟鉄を製造し浸炭によって硬くした。アジアに伝わった製鉄法は粉鉄鉱石を用いて初期の頃から高炭素濃度の鋼や銑鉄(せんてつ)を製造し,6世紀後半に我国に伝わって「たたら製鉄」に発展した。一方,14世紀後期に西洋で高炉が発明されそれまでとは異なった方法で銑鉄が製造され現代に至っている。これらの製鉄原理を述べ,「たたら」による最も簡単な鋼造りの方法を紹介する。
著者
藤村 弘行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.560-563, 2016-11-20 (Released:2017-05-01)
参考文献数
9

造礁サンゴには褐虫藻と呼ばれる数十マイクロメートルの単細胞の藻類が共生しており,この褐虫藻の光合成で作られた光合成産物をエネルギー源としてサンゴの軟組織下部にある骨格との隙間(石灰化部位)にカルシウムイオンを送り込む。一方でミトコンドリアでの有機物分解で生じた二酸化炭素は炭酸水素イオンや炭酸イオンとなって,石灰化部位に運ばれ炭酸カルシウムが生成する。サンゴの白化現象は,強い光で破壊された褐虫藻の光合成系が高水温により修復されなくなり,サンゴと褐虫藻とのこのような物質のやり取りを通した共生関係が崩れることによって生じる。最近では海洋酸性化がサンゴ礁への新たな脅威となり,サンゴ礁は衰退の一途をたどっている。
著者
増田 泰大 今野 貴幸 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.434-437, 2020-10-20 (Released:2021-10-01)
参考文献数
21

高等学校「化学」の教科書に記述されているフェーリング液の還元とベネジクト反応について,モデル化合物および単糖を用いて還元性の原因となる構造を調べた。その結果,グルコース,マンノースおよびフルクトースにおいてα-ヒドロ-α-ヒドロキシカルボニル構造-CH(OH)CO-がこれらの試薬との反応の原因となる構造であることを示す結果が得られた。
著者
飯塚 英昭 矢島 毅彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.208-211, 2007-05-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

アミノ酸の吸収および代謝は,他のアミノ酸や生体成分に影響される。トリプトファンも例外ではない。トリプトファンは,血液中でアルブミンと結合して存在するアミノ酸で多くの代謝産物を生じる。これらの多くが生理的に重要であり,疾病の原因物質と考えられているものもある。ここでは,主にトリプトファンとセロトニン経路の代謝産物について述べ,疾病などとの関連についても述べる。
著者
伊藤 美千穂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.616-619, 2016

<p>日本古来の奥ゆかしい伝統に,沈香<sup>*1</sup>などの香木を穏やかに暖めて立ち上がる芳香を"聞く"香道がある。また,西洋でアロマセラピーが提唱されるより以前に,北宋の詩人である黄庭堅により香の精神的・身体的効能を謳った漢詩「香十徳」<sup>*2</sup>が書かれており,日本でも広く知られていた経緯がある。しかし,現代の薬学分野では,主に再現性や定量性の問題からにおい自体やにおい成分の薬理効果などは研究対象になりにくいものとされ,これらについての研究は精力的には進められてこなかった。</p><p>他方,においの効果に興味を持った著者らはマウスを使ったにおい成分の経鼻吸収モデルを構築し,香道で用いられる沈香の芳香成分に強い鎮静作用があることを明らかにした。さらに沈香等の薫香生薬類やハーブ類の精油等からのにおい成分の摂取がマウスの行動に与える効果を行動薬理的に解析することにより,これらのにおいの中の活性成分の詳細な検討や,薬としての応用の可能性について研究を行っている。</p>
著者
栗原 良枝
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.69-71, 1997-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

味覚は生活の中では, 食物のおいしさに関係する大切な感覚である。ここでは, 甘味を中心にして, 味覚を化学の目で眺めることにする。甘味に関しては, 昔から数多くの研究がなされてきたが, 甘味のメカニズムは甘味受容体の実体を含めて依然として不明な点が多い。ここで紹介するミラクリンやクルクリンは味を変えるという特異な作用をもっているタンパク質である。これらの物質は新しい甘味物質として期待されるばかりでなく, その活性部位が解明できれば, 新しい甘味剤をデザインすることも可能になるかもしれない。
著者
中村 順
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.514-517, 1996-08-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

爆弾事件や銃器使用の犯罪において, 使用された火薬類や銃器等を明らかにするために, 多くの検査が行われる。その中で, 現場の残留物の分析を, 火薬類を中心にまとめた。はじめに火薬類の基礎的事項について説明し, 実際の分析法について実験及び分析例を含めて解説した。また, 爆薬の探知についても紹介した。こうした爆弾事件, 銃器犯罪及び爆薬の探知等については, それぞれ目的, 試料の状態等異なるが, いずれも極微量の火薬類の分析が重要な課題である。