- 著者
-
関 由起子
- 出版者
- 日本小児血液・がん学会
- 雑誌
- 日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.2, pp.148-152, 2018 (Released:2018-07-31)
- 参考文献数
- 12
小児がん患者の生存率は医学の進歩により飛躍的に向上し,成人し自立した人生を歩むことが出来るようになった.しかし,入院中の子どもたちへの学校教育への支援は不十分であり,将来の自立に負の影響を及ぼしている.本論では入院中の子どもたちの学校教育の課題を踏まえた上で,病弱の特別支援学校(小・中学校のみ)がセンター的機能を用いて行った,入院中の高校生への学習支援の取り組みと課題について論じる.A特別支援学校ではこの学習支援の目的を 1.学習空白をなくす,2.心理的安定および学習意欲を高める,3.在籍高校との所属感の維持継続を図ると定め,併設するB病院および高校生の在籍校と連携し,大学生ボランティアと共同で学習支援を行った.2016年度に支援を受けた生徒9名へのアンケートや関係者への発言等を質的に分析した結果,目的に対する効果が得られたことが明らかになった.特に大学生による支援は,高校生の心の安定に対して教員からの支援では得られない大きな成果が見られた.しかし,高等学校の制度に基づいた教育支援でないため,自己学習が困難な生徒や留年が懸念される生徒には十分な支援が出来ず,また病弱特有の“自立活動”を行うことが出来なかった.大学生ボランディアの導入にも様々な課題があるため,入院中の高校生への特別支援教育の制度体制の見直しが必須である.