著者
岩井 紀子 林 萍萍
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.12_18-12_26, 2021-12-01 (Released:2022-04-22)

自分や家族が感染する不安感は、感染者の増大局面に高まり、政府の対応に対する評価は増大局面で低下した(NHK政治意識月例調査)。2回目の緊急事態宣言下の2021年2月に実施した日本版総合的社会調査によると、感染不安は、女性、高齢者、製造業と不動産業従事者、慢性疾患のある人、経済的不安を抱える人、感染リスクを強く感じている層で強かった。感染する可能性が高いと考えていたのは、50歳以下、慢性疾患のある人、正規雇用者、医療・福祉サービス従事者であった。政策への評価は従事する業種や支持政党により異なり、経済不安をもつ層で低い。感染するのは本人の責任という考え方は、他人に向けられるが、それ以上に自分に対して厳しい。経済活動より感染拡大防止を優先すべきが68%、プライバシーより行動追跡を重視する意見がやや多く38%、国境封鎖は72%、移動制限は75%が重要であると考えていた。国会議員への信頼感は低下し、2000年以降で最も低い。
著者
山極 壽一
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.9_12-9_16, 2022-09-01 (Released:2023-01-27)
参考文献数
4

現在、私たちは人新世(Anthropocene)と呼ばれる時代にいる。それは1950年代以降に始まったグレート・アクセレーションという、人口、海外投資額、化学肥料の使用量、海外への旅行者数などに見られる急激な増加に直面していることを意味する。その結果、地球上の哺乳類のバイオマスの9割以上を人間と家畜が占め、地球の陸地の4割以上が人間と家畜の食料を生産する畑地と牧場に変わってしまった。地球の限界を示す9つの指標のうち、生物多様性とリンと窒素の循環がもう限界値を超えている。このままでは地球も人類も共倒れになってしまう。いまここで立ち止まって人類の進化と文明史を振り返り、われわれがどこで間違ったかを考えてみなければならないのではないか。それが本発表の主旨である。
著者
井田 仁康
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.11_10-11_14, 2019-11-01 (Released:2020-03-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
池田 智明
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.4_8-4_14, 2010-04-01 (Released:2010-10-18)
参考文献数
15
著者
小坂 優
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1_66-1_69, 2022-01-01 (Released:2022-05-31)
参考文献数
3

IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書の第3章は、大洋・大陸~地球規模の空間スケールについて、気候モデルの再現性能の評価と、観測された変化に対する人類の影響の検出と定量化を行った章である。特に地球温暖化、つまり地球全体で平均した地表気温の上昇について、1850~1900年の平均を基準とした2010~2019年の10年平均に対し、人為起源の影響は1.07ºC(不確実幅0.8~1.3ºC)の地球温暖化をもたらしたと評価した。この推定幅は、観測データに基づく同じ期間の地球温暖化レベル1.06ºC(不確実幅0.88~1.21ºC)を内包する。地表気温以外にも様々な気候指標において人類の影響が検出され、いくつかについては人為起源影響が変化の主要因であると評価されている。これらの根拠により、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない、と結論づけられた。
著者
伊藤 公雄
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.6_15-6_18, 2021-06-01 (Released:2021-10-22)

2018年12月に開催された第1回目の地方学術会議「日本学術会議 in 京都」について、①地方学術会議の京都での位置づけや会議の名称の決定にいたるプロセス、②開催にいたる経過、③実際の会議の内容、④成果と課題、について述べる。
著者
川幡 穂高
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.2_26-2_30, 2022-02-01 (Released:2022-06-30)
参考文献数
3

脱炭素社会への具体的な取り組みが成功しないと、二酸化炭素の排出に伴う「双子の悪魔」、地球温暖化と海洋酸性化の脅威が現実のものとなる。海洋酸性化の支配因子の中で大気中の二酸化炭素濃度上昇は第二の因子で、最重要の第一因子は速すぎる環境変化速度である。現代を表すのに新たな地質年代として「人新世」が提案されている。5500万年前の暁新世/始新世(P/E)境界を現代の炭素循環に対比すると、現代あるいは「人新世」は、実は地質年代の境界期に相当すると私は考えている。人新世がどこに向かうのかを予測することは私たちにとって初めての体験なので、誰にとっても予測は難しい。しかし、研究者はその専門性を生かして、さまざまな条件ごとに未来を推定することができる。最終判断を国民あるいは全人類が決める時に役立つよう、その推定シナリオを社会に提示することが研究者の使命と考える。
著者
浅井 幸子
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.6_26-6_29, 2022-06-01 (Released:2022-10-21)
参考文献数
5

現在進められている子ども政策の総合化は、福祉的な観点が焦点化されており、教育と学びの観点は後景化している。本稿では、グローバルなECEC(early childhood education and care)政策の動向を参照しつつ、教育と学びの観点の重要性を述べている。その際に、重要なのは、ECECに二つの考え方があるという事実である。一つは、将来の労働者たるべき子どもを就学と学びへと準備するものとしてのECECであり、もう一つは、今既に市民である存在の子どもに大人や仲間との交流の機会と市民であることを学ぶ機会を与えるものとしてのECECである。後者は子どもの権利を基盤としつつ醸成されてきた権利ベースの子どものイメージを基盤としている。総合的な子ども政策を構築するにあたっても、子どもをその未熟さやヴァルネラビリティにおいてのみ定義するのではなく、大人とともに世界の意味と文化を構築する存在、今、ここの市民として位置づける視点が必要である。
著者
柳 哲雄
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.10-14, 2008-06-01 (Released:2012-02-15)
参考文献数
6
被引用文献数
2