著者
津谷 典子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.13-21,137, 1993-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

This paper seeks to explore how Chinese couples' family-building behavior is influenced by socioeconomic, emographic, cultural, and policy factors, focusing on rural areas of Jilin Province. Specifically, we first look at socioeconomic conditions, dominant family values, and changes in the family planning program in Jilin. Next, we analyze changes in the level and the age/parity structure of fertility in rural Jilin during 1971-1985, utilizing the 1985 Survey on Rural Fertility and Living Standards. After examining changes in the rate of cceptance of a one-child certificate between 1982-1985, we then attempt to explain quantitatively what factors ropel or discourage rural Jilin couples in their acceptance of a certificate, by conducting logistic regression analysis.Major findings of this paper are as follows: (1) Rural Jilin experienced a dramatic fertility decline following the implementation of the one-child family policy in 1979. (2) This decline was due primarily to curtailment of childbearing after first births by married women, especially those in their twenties. (3) Couples' acceptance of a one-child certificate was found to be influenced by the sex of child, women's ethnicity, women'sage and education, husband's educatdon, and such attitudinal factors as the ideal number of children and perception of one's own living standards.
著者
伊田 広行
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.13-22, 2003-01-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

結婚を近代主義の発想の枠内で議論しても意味がない。社会が変化しているし, 人権・多様性の尊重の観点から, 新しい水準への移行が望ましいからだ。いま必要なことは, (1) 本質視から脱して, 多様性を受け入れるように, (2) 社会変化からのメッセージを受け止めて, (3) システムを多様な生き方に中立, すなわち反差別的なものに変えることである。これは人間関係を考えるときの基礎である「恋愛」の考察についてもいえる。みんなが「ラブラブ」という「カップル単位」状態を標準とは考えられない。とすれば, 複数の人を愛する問題, 嫉妬, 秘密についても, 根本的な再考察が求められる。シングル単位論の立場では, 二者排他性と嫉妬の権利はなく, 秘密はあってもよいということになる。各人がシングル単位感覚を身につけてこそ, 新しい名のない親密な関係がつくられていくであろう。
著者
李 基平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.70-80, 2008-04-30 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23
被引用文献数
3 1

本研究は,夫の家事参加に対する妻の期待という視点を導入し,夫の家事参加が妻に与える影響を検討する。具体的には,夫の家事参加と,妻の夫に対する家事参加の期待水準の差から定義される期待充足度が妻の夫婦関係満足度に及ぼす効果を,1994年に生命保険文化センターによって実施された「夫婦の生活意識に関する調査」データを用いて検討する。分析の結果,期待充足度が正の方向に大きいほど,妻の夫婦関係満足度は高いことが示された。期待充足度の効果は,4群に区分した妻の就業形態いずれにおいても一貫しており,妻の夫婦関係満足度に大きな効果を有していることが確認された。この結果から夫の家事参加と妻の夫婦関係満足度との関連を考えるうえで,夫の家事参加のみならず,妻の期待水準とのズレの程度を考慮することが有用であることが示された。
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.50-60,118, 1991-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

This paper attempts to integrate the method of social history into family sociology and to develop macroscopic and historical perspectives of family sociology, which seems to have been more interested in the microscopic aspects.It is true that social history gives important effects to family sociology, but unfortunately there seems to be some confusion, because they differ in the way of defining “modernity” and family in modern times. This paper clarifies such confusion, and points out problems in the concept of the “modern family” used in the fields of family sociology, by using the results of historical study about the family in modern Japan. And then theoretical sophistication is suggested in order to apply the social historical approach to sociology.
著者
樫田 美雄
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.60, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)

「共依存」は, 標準的には, 嗜癖者を可能にする, 正のフィードバック・システム (あるいはそのうちの1人の当事者) につけられた名前である。それは, 人間関係的には, 「嗜癖者-イネーブラー (嗜癖を可能にする者) 」両者間の「刺激-反応」連鎖の増幅システムであり, 子どもを「アダルト・チルドレン」にすることで, 世代間連鎖をなす永続的体系である。文化的には, 男性的な「自立・自律強制社会」において, 女性的な「依存・ケア的サブカルチャー」が, 非難される様式であり, 臨床的には, 「嗜癖者の配偶者 (しばしば女性) 」が, 「医療」的に「啓蒙・改善」の対象とされる際に, その「操作」の根拠となる「病名」である。わが国ではアメリカほど「大衆心理学化」された形では広がっていないが, すべての依存症 (薬物依存, 仕事依存, 愛情依存……) の基礎にこの「共依存」があると考えるなら, 裾野の広がりは巨大であるといえよう。本書はこのような多面性をもった「共依存」概念に関して, 臨床心理学・公衆衛生学・構築主義社会学・家族システム論等の各視点からの論考を集め, まとめたものである。実例と学史がバランスよく配置されているので, 「共依存」に関して, 現象としてのそれに関心をもつ社会学者にも, 諸議論の配置に関心のある家族心理学者にも有益な本になっている。また, アメリカの状況を集中的に紹介した章 (5章以下, とくに7章) と, 日本での実践を紹介した章 (3・4章) の両方があるため, 家族の日米比較に関心がある研究者にも読まれるべき本にもなっている。以下, 各論者の主張の簡単な紹介と評者からのコメントを行おう。まず, 序章から2章にかけては編者の清水新二が, 総括的な議論の整理をしている。「共依存」に関する近年の議論史は, 個人からシステムに関心の焦点が移動していったという点からは, 「精神分裂病」や「アルコール依存症者」に関する議論を基本的には後追いしていること, ギデンズが行ったような社会評論的な共依存論と個人を焦点とした臨床的共依存論は区別すべきこと, 治療が必要な共依存とそうでない共依存を仕分けるために, 共依存の文化社会的適合度などに基づいた「共依存スペクトラムモデル」に基づいた思考をすべきこと, などを主張している。判断の論拠はもっと知りたいが, 結論には実感的妥当さがあり, 理論と実践の架橋はこのような臨床的知によってなされるのだろうと思われた。3章と4章は, 臨床家の遠藤優子と猪野亜朗が, (「共依存物語」内的視点から) 共依存の実像と臨床的対処の実際を述べている。事例が興味深くかつ身にしみる。5章と6章は, 構築主義社会学の立場から, 上野加代子が「共依存」概念の語られ方を解析している。3・4章の議論がなぜ説得力をもつのか, の謎解きになっている。7章と8章は, V.クラークと本田恵子が, アメリカにおける文化的少数者に定位した対策の紹介と, 文献レビューを行っている。これからは, 日本の社会学者もこういうシステマティックな仕事の仕方に慣れていくべきだろう。「共依存」議論の多様さに接近するために有益な書として, 本書を広く推薦したい。
著者
多賀 太
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.93-93, 2000

本書は、「女性兵士問題」「国家と『性暴力』問題」「女性性器手術問題」という、フェミニズムにおいて近年クローズアップされてきた問題を論じた、9人の執筆陣からなる論文集である。第I部から第III部のそれぞれに男性の執筆者が1人ずつ含まれることで、議論により一層の広がりが与えられているように思える。<BR>まず第I部で、軍隊内で男女にまったく対等な処遇を行うかどうかという「女性兵士問題」を題材として、フェミニズムが「暴力」とどのような関わりをもつべきかが議論される。続いて第II部では、「従軍慰安婦問題」と「夫婦間強姦」を題材として、近代国民国家においては十分保障されてこなかった「性暴力を受けない権利」をめぐる議論が展開される。さらに第III部で、「女性性器手術問題」を題材として、「第一世界」のフェミニストたちが「第三世界」の女性の経験を「性暴力」の被害として規定すること自体の「暴力」性についての議論が行われる。最後に第IV部で、編者による議論の総括が行われる。<BR>一見しただけでは無関係にも思えるこれらの問題の背後には、共通するより大きな問いが存在している。すなわち、グローバル化が進行しつつある現代において、フェミニズムは、「性」の違いによって「暴力」に関する異なる経験を強いてきた近代国民国家 (=「ネーション」) とどう関わっていくべきかという問いである。しかし、これに答えるのはそうたやすいことではない。もし、フェミニズムが国民国家の枠を越えて「性」と「暴力」の問題に取り組むべきであるとするならば、他国に暴力を行使する軍隊の存在を前提としてそこでの男女の機会均等を主張することは慎まねばならないし、たとえ国家によって合法化・正当化された営みであっても女性の人権侵害と見なされるならば「国家批判」や異文化への「介入」も必要となってくる。しかし他方で、国家を越えた問題設定は国内での性差別を不可視化させる危険性を伴うし、女性の人権のうち国民国家の枠によってこそ保障されうる側面や、異文化への「介入」にともなう「暴力」性をどう考えるのかという問題も起こってくる。<BR>本書には、この問いに対する明確な回答は記されていない。編者がわれわれ読者に求めているのは、本書から唯一の正答を見つけだすことではなく、むしろ本書が提供してくれる議論を足がかりとして、女性あるいは男性として今後国家とどのように関わっていくべきなのかを1人1人が考えていくことなのであろう。
著者
要田 洋江
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.65-79,136, 1994

The purpose of this paper is to analyze the current family system in Japan from the perspective of the independent living (civil rights) of people with disabilities, and to discuss the future family system and its social conditions.<BR>We can define the family system of current Japanese families as the Japanese type of "modern family system". This is based on the division of sex-roles and has the large responsibility of social security for family members.<BR>The two main issues for current Japanese families are as follows. As compared to the Western type of modern family system, they do not have resistance power against the larger society and the state. Second, there are not equal relationships among family members. In other words, they do not support adult members with disabilities in independent living, because they still cast them in the role of dependent children. They do not promote the social position of women outside the home, because women are seen as care-providers in the family. These characteristics of the Japanese type of "modern family system" arise from Japanese social policy which has been based on a "residual" welfare model since modernization.<BR>If we can define the future family system in the new post-industrial society as a post-modern family system, it must consist of equal relationships among each family member based on the dignity of human beings. Such a family system will only be achieved, however, through a social policy of universal application of a welfare model to all individuals and without gender bias.
著者
岩井 紀子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.30-42, 2011
被引用文献数
5

本稿は,Japanese General Social Surveyのデータを基に日本の家族の変化をとらえ,現状を把握し,今後の方向について考える資料を提供する.2000年から2010年までに継続的に尋ねた85項目を14分野に分けて変化のトレンドを記述する:婚姻状態,同居世帯員,世帯構成,就労・所得,夫婦の働き方,階層意識,結婚観,性別役割意識・夫婦別姓,子ども観,セクシュアリティ,育児・介護の社会化,家族生活,墓についての意識,満足度・幸福感.個人も家族も,雇用情勢の変化に振り回されながらも,強い不満を抱くことなく,現実に向き合っている.若年層の無職・非正規雇用が拡大し,未婚率を押し上げ,未婚成人子の親との同居が増加した.女性の就業率は全体として高まり,M字の谷が浅くなった.高齢者の生活保障と介護の社会化に続いて,育児・教育の社会化が望まれている.若年層と女性の就労の変化が,家族の今後に与える影響は大きく,税制と雇用政策と福祉の全体像の改革に左右される.
著者
田中 重人
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.30-30, 2001

研究者を志す初学者にとって, 先行研究の分厚さは大きな壁である。研究のためには, 基本的な道具として使う概念や, それらの組み合わせでできる命題を用意しておかないといけない。こうした分析道具は先行研究を読んでそこから掘り起こしてくるのだが, 関係しそうな論文を手あたりしだいにあさっていくのでは効率が悪い。論文はむずかしい専門用語で書いてあって, 理解するのに骨が折れる。しかも読むべき先行研究は山のようにあるから, どこから手をつけてどこでやめるかが大問題だ。研究を効率よく進めるには, 先行研究がどのように体系化できるのか, 系統的に整理された情報を前もって集めておかないといけない。<BR>日本家族社会学会の企画による「家族社会学研究シリーズ」の第5弾は, 家族社会学がつくりあげてきた分析道具を19種の「アプローチ」に整理して示した本である。編者の野々山によれば, アプローチとは「固有の基本的概念と基本的仮定から成り立っている」 (p.3) ものである。各章がアプローチ1つずつを担当しており, すべて「○○的アプローチ」という表題になっている。「○○」には次のようなことばが入る : (1) 比較制度論 (2) 形態論, (3) 歴史社会学, (4) 人口学, (5) ジェンダー研究, (6) エスノメソドロジー, (7) 構造機能論, (8) システム論 (9) 家族周期論, (10) 家族病理学, (11) 家族ストレス論, (12) 相互作用論, (13) 交換論, (14) ネットワーク論 (15) 家族ライフスタイル論, (16) ライフコース論, (17) 構築主義, (18) 計量社会学, (19) 事例研究。各章ではそれぞれのアプローチがもつ基本的な概念や仮定が説明されるとともに, これまでの研究, とくに日本での具体的な研究の成果が示される。家族社会学の世界にこれから足を踏み入れる初学者や, 隣接領域から興味をもってながめている研究者にとって, 家族社会学の蓄積をこのように系統的に整理した案内書があるのは心強いことと思う。<BR>この本の整理の仕方に対しては異論もあるだろう。アプローチとは, 研究者が試行錯誤を繰り返して洗練させてきた分析道具をあとから系統的に整理したものなので, 違う視点から整理すれば違うまとめ方になるはずである。だが, ともかく1つの視点から見通しよく整理された入門書として, この本は十分成功している。<BR>逆にいえば, 「○○的アプローチ」などというのは, 入門段階の読者のための便宜的な名称だともいえる。研究者として本格的にやっていくためには, 1つのアプローチにこだわることなく, 必要な分析道具を種々のアプローチから借り出してこないといけない。幸い, この本の各章ではこれまでの代表的な研究が豊富に引用されている。さらに各章末には (引用文献とは別に) 2~6本の「参考文献」があがっていて, 著者による簡単なコメントがある。自分の研究に少しでも関係がありそうな研究を探して分析道具を貧欲にかき集めるというアクティブな研究姿勢を取るために, これらの情報が役立っだろう。
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-27, 2008-04-30 (Released:2009-08-07)
参考文献数
51
被引用文献数
3 3

本稿では,男女一対一の性関係を基盤にした関係と血縁に絶対的な価値をおき,ジェンダーに基づく役割分担の再生産が行われる「従来の家族」に対し,レズビアン家族・ゲイ家族の実践から何を問いかけることができるかを,先行研究などから実例を挙げて検討した。(1) レズビアンやゲイにとって友人やコミュニティが家族になっていること,(2) 血縁家族は精神的な支えになるとの前提が疑問視され,誰を「家族」と見なすのかの再考がなされること,(3) レズビアンやゲイが親になることで,「親=父親+母親」との前提が崩され,親子関係が「無の状態から交渉できるもの」となりうること,(4)ジェンダー役割を問い,日常の家事や育児に柔軟に対応するパートナー関係の実践があることを挙げ,これらが「従来の家族」に問いかける可能性があると論じた。最後に,レズビゲイ家族の実践が主流への同化か挑戦かの判断の難しさを述べた。
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-1, pp.111-138,155, 1998-03-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
32
被引用文献数
2 8

There had been a historical and structual interest in family studies in Japan. As family sociology became institutionalized since the 1960s and 1970s, however, family studies shifted to take a micro-scopic view. Family scholars had to do so, in a sense, because of the rapid social change and its negative effects on the family in those days. Family studies transformed itself in order to study the family more effectively. On the other hand, the transformation caused family studies to become less historical and less interdisciplinary.Since the 1980s, the development in family history and historical demography which began in Europe in the 1960s stimulated Japanese family scholars. They have been working to interpret the 'traditional family' in Japan from the new perspective which they learned from the Western scholars. Some of these studies are comparative and fruitful enough to contribute to international academia.This field of family studies has been methodologically challenging to family sociology as a whole. I believe it has contributed, and will contribute to family sociology in Japan in the fields of the research and education.
著者
神原 文子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.14-23, 2004-02-29 (Released:2009-08-04)
参考文献数
19

本稿では, はじめに, 「女性にみる結婚の意味を問う」うえでの検討課題を整理する。たとえば, 結婚の意味を問う「女性」とは誰のことか?女性たちの多様な結婚観をどのように類型化するか?現代日本は, 晩婚化・未婚化と言えるのか?など。そのうえで, 既存の官庁統計, インターネットからの情報, 学生たちへのアンケートやシングル・マザーの友人たちからの聞き取りデータをふまえて, 未婚女性にみる結婚の意味について考察する。明らかになった興味深い点をいくつか列挙すると, 以下のとおりである。 (1) 結婚情報におけるジェンダー格差が顕著であること。 (2) 女性の場合, 独身生活の利点が男性よりも高く, 理想の結婚相手へのこだわりが男性よりも高い分, 独身生活から結婚生活へ乗り換えるという選択が男性以上に難しいこと。 (3) 現代女性の結婚イメージの中には, 前近代的な結婚イメージ, 近代的な結婚イメージ, ポスト近代的な結婚イメージが混在していること, など。
著者
牟田 和恵
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.17-20, 2013

「家族戦略」をテーマとした3年連続の大会シンポジウムシリーズの2年目として,昨年の「経済不況と少子高齢社会の中の家族戦略」に続き,育児(子育て)と介護に関して家族はどのような戦略を立てて行動に移しているのかについて,理論的・実証的な見地から論じてもらうというねらいのもと,「育児と介護の家族戦略」と題してシンポジウムをもった.天童睦子氏「育児戦略と見えない統制——育児メディアの変遷から」,上野千鶴子氏「介護の家族戦略——規範・選好・資源」,武川正吾氏「家族戦略?——個人戦略と公共政策の狭間で」の3報告が行われ,それらを受けて,立山徳子氏が都市のパーソナル・ネットワークに着目するところから問題提起を行い,久保田裕之氏からは家族という集合的主体を構想する可能性と,家族戦略の段階性・重層性を見いだすべきことが指摘された.コーディネータおよび司会は,研究活動委員の加藤邦子と牟田和恵が務めた.
著者
敷島 千鶴 安藤 寿康
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.12-20, 2004-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

社会的態度の家族内伝達を媒介するのは専ら家庭環境か, それとも親子間の遺伝要因も関与しているのか。家族の凝集性は伝達に寄与しないか。本研究では一卵性双生児164組と二卵性双生児96組を用いて, 権威主義的伝統主義・集団同調性・自尊感情という3種の社会的態度の個人差に寄与する要因を解明し, 家族内伝達を媒介するものについて検討した。結果, 価値基準を伴う社会的態度である権威主義的伝統主義・集団同調性の伝達は, 家族の共有環境によって媒介され, 共有環境の寄与は家族の凝集性に依存することが明らかにされた。一方, 自尊感情の親子伝達は, 家族の遺伝的関係によって媒介されていることが示された。構造方程式モデリングを用いた行動遺伝学的解析を行うことにより, 伝達を家族の家庭環境と遺伝的関係という両側面から捉えた, 精緻な家族内伝達モデルの構築が可能となった。
著者
山西 裕美
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.41-41, 2000

日本は、1990年以降、離婚率が増加しつづけ、1998年には普通離婚率が1.94と今世紀最高水準となり、注目を集めている。しかし、日本におけるワンペアレント・ファミリーの研究は、いくつかの研究を除き、それほど体系的には行われておらず、そのほとんどが児童扶養手当等の現金給付を扱った社会保障制度との関わりである。<BR>本報告書は、ワンペアレント・ファミリーのなかでも、離別母子世帯に焦点を当て、先にあげたような従来型研究にとどまらず、詳細なインタビュー調査により、母子ワンペアレント・ファミリーの「生活世界の内側」をトータルに把握することが目的である。また、日本の離別母子ワンペアレント・ファミリーと、他国との共通性や異質性を探るうえで、アメリカ・イギリス・オーストラリア・スウェーデン・香港との比較調査研究となっている。<BR>本書は2部構成となっており、第I部では日本の離別母子ワンペアレント・ファミリーについて、第II部では諸外国の離別母子ワンペアレント・ファミリーについての調査結果が記されている。各国調査を通じ、離婚後のシングルマザーの自立度や幸福感について、大きく分けて次のような論点が設定されている。1) 離婚前の性別役割分業意識との関連、2)両親育児規範との関連、3) 離婚に先立つ準備と支援ネットワークとの関連、4) 離婚前の貨幣配分システムと妻子の生活水準との関連、5) 養育費を中心とした生活保障との関連、6)離別ワンペアレント・ファミリーをめぐるスティグマとの関連について。<BR>調査結果を、日本と諸外国との比較で述べると以下の特徴がある。日本は諸外国と比べ、二つの点で異なっている。一つ目は、性別役割分業への適応や両親育児規範、祖父母との離婚後の同居といった規範意識レベルでの差異。二つ目は、教育費や住宅費の補償給付や養育費徴収システムなど社会保障システムによる生活保障の遅れである。これらは日本のシングルマザーの自立に対し独自の影響を与える一方、離別母子ワンペアレント・ファミリーをめぐるスティグマは、いずれの国においてもうかがえる。<BR>事例研究のため、日本を含め諸外国ともサンプル数が少なく、サンプリング方法においても代表性に問題があることは免れない。しかし、得られた調査結果および知見の意義は、各国の離別母子ワンペアレント・ファミリーの現状を示唆していることだけにあるのではない。このような近代家族観の自縛を逃れた新たな「家族」の意味構成を考えていくことは、高齢者や障害者の自立など、これまで家族に内包されてきたものの表出という今日的課題に対する解釈枠組みの提示と、そのうえで必要なソーシャル・サポートのあり方を模索するうえでも有効であるといえるだろう。
著者
岩井 紀子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.30-42, 2011-04-30 (Released:2012-05-31)
参考文献数
5
被引用文献数
5

本稿は,Japanese General Social Surveyのデータを基に日本の家族の変化をとらえ,現状を把握し,今後の方向について考える資料を提供する.2000年から2010年までに継続的に尋ねた85項目を14分野に分けて変化のトレンドを記述する:婚姻状態,同居世帯員,世帯構成,就労・所得,夫婦の働き方,階層意識,結婚観,性別役割意識・夫婦別姓,子ども観,セクシュアリティ,育児・介護の社会化,家族生活,墓についての意識,満足度・幸福感.個人も家族も,雇用情勢の変化に振り回されながらも,強い不満を抱くことなく,現実に向き合っている.若年層の無職・非正規雇用が拡大し,未婚率を押し上げ,未婚成人子の親との同居が増加した.女性の就業率は全体として高まり,M字の谷が浅くなった.高齢者の生活保障と介護の社会化に続いて,育児・教育の社会化が望まれている.若年層と女性の就労の変化が,家族の今後に与える影響は大きく,税制と雇用政策と福祉の全体像の改革に左右される.
著者
西野 理子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.12-12, 2000

『入門』とあるが、「家族社会学ってなにやってるの?」という疑問に、半分答えて半分答えない本である。「答えない」というと否定的に聞こえるが、本書の意義は前半の「答える」部分にある。というのも、本書は「若い研究者、院生、学生のためのテキスト」として編集された『社会学研究シリーズ-理論と技法』の第1巻であり、「理論と実証の統合、統一」をめざして、「先行研究の整理、そこからの問題の発見などについて」「実際に研究を進めていく手だて、技法を教えるもの」になるように編集されている。その点、ほかの教科書とは異なり、家族ではなく家族研究を理解するための書である。日本家族社会学会の機関誌でも、創刊号と第2号では「いま家族に何が起こっているのか」をとらえようという特集が、10周年記念特集号では「家族社会学の回顧と展望-1970年代以降」と題する特集が組まれた。10年の間をおいて、現象としての家族理解から、家族研究自体を認識し直そうという動きがあり、本書の登場もそうした時代的要請にみあったものといえよう。そもそも、実証研究が多い割に理論的蓄積が十分に進んでいないという家族研究の課題克服への試みでもある。<BR>全体は4部構成となっており、第1部が「家族研究の系譜と概観」、第2部で「家族発達的研究」「歴史人口学」「社会的ネットワーク論」それぞれの分野における家族研究の展開が、基本的な用語の解説とともに紹介されている。第3部で夫婦関係と親子関係から家族の内部過程への接近を概括し、第4部で実証研究の方法と理論研究の動向を概説している。単なる研究動向の概述というより、すでにさまざまなかたちで公表されている各分野のレビューをふまえたうえでの整理と展望である。とりわけ第3部は、論者自身の問題関心も織り込んで、研究者相互のコミュニケーションを啓発している。<BR>事象への関心をどのように展開させていくか。研究の最初の一歩に大変有益な教科書である。学部生には、本書が編集された背景など、社会学全般と関連させた解説があったほうがよさそうだが、家族研究を志す大学院生には、ぜひ精読しておいてもらいたい必読書である。本書の随所に「袋小路に陥らせず」「停滞状況に突破口を見出すには」とあるように、研究者がもう一度、全体を見渡して理論的地盤を固めるのにも役立つ書である。また欧米諸国の家族研究書の章構成と比較してみるのも一興である。