著者
牟田 和恵 古久保 さくら 伊田 久美子 熱田 敬子 荒木 菜穂 北村 文 岡野 八代 元橋 利恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ジェンダー平等実現のための新たな形・次元でのジェンダー・フェミニズム研究の構築を目的とし、調査研究・文献研究・実践活動の三つの方法論によって研究を行った。貧困やケアの偏在等の問題に関する新たなフェミニズム理論の重要性と、一見女性に焦点化していないように見える幅広い社会問題への関心や運動にとってのフェミニズムの有効性を確認した。また海外国内ともに「慰安婦」問題やセクハラ・性暴力と闘う運動を柱としてジェンダー平等に近づく研究と実践がエンパワメントされており、研究と運動の連携がジェンダー平等の実現には不可欠であることを再確認した。女性情報発信に資するため制作したwebサイトは今後も運営を行っていく。
著者
牟田 和恵
出版者
日本法社会学会
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.82, pp.111-122, 2016 (Released:2021-05-05)

The history of sexual harassment issue in Japan poses an interesting case for examining how gender equality develops in law and the society as a whole. The concept and words “sexual harassment” suddenly became well known when the first sexual harassment case went to court in Fukuoka and the term ‘sekuhara’ was coined in 1989. The prevention of sexual harassment was legalized in 1997 as a part of Equal Employment Opportunity Act, eight years after its problematization in 1989. It was remarkably speedy if compared to other gender related legal issues in Japan. The paper argues that the prompt legalization was brought not for the sake of women’s right but for conservative moral standard. Besides, sexual harassment issue was considered peripheral, not main labor issue for companies. In spite that the sexual harassment legalization made crucial step for women’s right, such trivialization of the problem caused insufficient outcome: the public understanding of the problem remains superficial, which causes suffering for the victims even if they might win in court. Intertwined with stark and stiff labor market structure in Japan, when a woman leaves job owing to sexual harassment, she would inevitably become irregular and unstable worker and move downward in labor market. The paper explores the relationship of law and society through the development of sexual harassment.
著者
牟田 和恵
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.292-310, 2006-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
34
被引用文献数
4 5 1

本稿は, 日本におけるフェミニズムの第2波以降の運動の歴史を振り返りつつ, 「男女共同参画」をめぐって近年生じている諸問題を考察し, その作業を通じて, 女性運動, フェミニズムの可能性と「社会運動」の現代的意味を探る.ウーマンリブ運動と国際婦人年以降の運動は, 理念・方法において互いに乖離し葛藤に満ちたものであったにもかかわらず, 現在の理解では「第2波」と一括されがちだが, その背景にはフェミニズムの政治性の変容があった.男女共同参画社会基本法以降に生じているジェンダーフリー・バッシングは, 一面では, そうしたフェミニズムの政治性, 端的に言えば, 脱政治化が招来したものであったと言える.フェミニズムの運動は, マイノリティと権力の関係を考える上での試金石でもある.その歴史は, 単線的な進化論図式で運動を捉えることの誤りを教え, 単一の「社会運動」, 一方向の「解放」はありえないことを示す.フェミニズムが多元的・多層的で矛盾と葛藤に満ちたものであるということそのものが, フェミニズムの「新しい社会運動」としての可能性を示している.
著者
岡野 八代 野口 久美子 合場 敬子 影山 葉子 内藤 葉子 石井 香江 牟田 和恵
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果は、歴史的に、ほとんどの社会で女性たちが担ってきたケア実践、すなわち、育児や家事、介護や看護の経験から、女性の身体性がいかに社会的に構築されてきたかを分析し、身体をめぐる脆弱性の社会的意味や女性たちの意思決定のあり方に新しい光を当てた。本研究を通じて発表された論文・著書は、これまで社会的に過小評価されるか、社会的弱者へと押しつけられがちなケア実践を再評価するために、思想的、歴史的、そして実践現場のなかで、ケア実践の意味を新たに問い返した。
著者
牟田 和恵
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社会科学研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.97-116, 2006

日本における家族の歴史社会学研究の蓄積について,とくに隣接領域である家族社会学との関連においてレビューする.その際,80年代以降に若手フェミニスト研究者たちを中心的担い手として展開した「近代家族」論に注目し,それが,家族をめぐる学問領域においてもっていた意味と意義を確認する.その上で,ポストモダン・フェミニズムを経た新たなジェンダー概念の導入により,「ジェンダー家族」という概念を提起し,日本近代の天皇制と家族に関する分析を行なう.結論として,家族の歴史社会学的研究を現代に生かしていく方途を提言する.
著者
牟田 和恵 丸山 里美 岡野 八代
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本年度は、第三者からの精子提供によって女性カップルのもとに生まれた子について、インタビュー調査の設計を行うとともに、7ケースの事例調査を実施した。またフランスにおいては、関連法についても調査した。事例調査は、3ケースは日本、3ケースはフランス、1ケースはニュージーランド(調査自体はイギリスで実施)のものである。フランスは2013年に同性婚が法制化され、同性カップルの養子縁組も可能になったが、同性カップルの生殖補助医療の利用は認められておらず、現政権のもとで議論がなされている最中である。ニュージーランドは、調査対象者が子をもうけた時点では同性婚は法制化されていなかったが(2013年に法制化)、生殖補助医療の利用は可能であった。各国の法制度のあり方と、それと関連はするが相対的に独立した当該家族に対する社会の許容度は、情報開示と子のアイデンティティのあり方に強く影響するが、それだけではなく、子の発達段階、家族の居住形態、精子提供者をどのように得たかなどによってもかなり異なっていることが明らかになった。同性婚はもとより、同性カップルの生殖補助医療が認められておらず、当該家族に対する社会の許容度もきわめて低い日本では、同性カップルが子をもうけるということ自体が、金銭的にも社会資源の面でも特権的な階層にしか可能ではない。それにもかかわらず子をもうけたカップルが直面した・している困難と、その際に取った戦略、そして同様の問題が他国においてどのように生じているかに関する事例を収集することによって、当該家族のもとで育つ子の法的権利・福祉のあり方を検討していくための基礎的な整理を行った。
著者
牟田 和恵
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.45, pp.252-255,321, 1993

It has been stressed that in modern Japan, Goverment utilized institutions of "Ie", traditional type of family, and patriarchal moral of Confucianism for mobilizing people's obedience to Emperor and the state.<br>But modern type of families, of which characteristics are domesticity and affectionate relationship between family members has emerged since middle of Meiji era, and this type of family was also utilized as tools of control over people by Goverment. In this paper, this will be proved by analysing textbooks on ethics used in 1870-1945.
著者
牟田 和恵
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.12-25, 1990-06-30 (Released:2009-10-13)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

本稿は欧米の近代家族史研究に触発されて、明治期刊行の七種類の総合雑誌・評論誌をデータとして近代日本の家族像の一端を探る試みである。記事の分析により得られた知見は以下の二点にまとめられる。 (1) 明治初期から旧来の封建的家族道徳を批判し新しい家族のあり方を模索する意識が現れ、二〇年代にはそれが「家庭 (ホーム) 」という言葉に象徴される、家内の団欒や家族員間の心的交流に高い価値を付与した家族への志向に結晶化する。その底を流れるロジックは、西欧化と産業化への意欲であり、国家と社会の発展のためには直系的「家」の論理は逆機能的であるという認識である。つまり「家庭」は家族員の情緒的結合の象徴であると同時に国家社会の発展の礎としても位置づけられているのである。 (2) 二〇年代後半以降、「家庭」型家族の理念にまた別の要素が加わる。明治初期の平等・友愛的な啓蒙的家族像は後退し、夫と妻の性役割分業が規範化されて「家庭」は「家婦」そして「主婦」が中心として存在し夫や老親に仕え子に献身する場となる。同時に家族や家庭は公論の対象から除外され、家庭はいわば「女性化」・「私化」する。これまで明治期以降の近代日本の家族については、明治民法による封建武士の家族制度の一般民衆への拡大、そして家族の「前近代性」、と結び付いた家族国家主義のイデオロギーによる国家の家族管理が論じられてきた。本稿はこれに異論を唱えるものではないが、明治期前半に西欧的な「家庭」型家族への志向が存在したこと、そして天皇絶対主義国家体制が確立し家族国家主義のイデオロギーの浸透する明治期中盤以降にこの新しい家族道徳もまたその土壤となり、同時に封建儒教的女性観を新たな形で普及させる機能を担ったというパラドックスが誌面から窺えることを指摘したい。
著者
牟田 和恵
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、日本における性暴力・セクハラ問題についての取り組みをとくに女性のエンパワーメントを通じて前進させるために、近年めざましい変化を遂げている韓国の経験に学びながら、またこれまで日本で女性たちが沈黙を強いられてきた状況や構造を分析することを通じて、その方途を探る試みである。何が女性たちの声を抑圧しているかについて、ネット上のバッシングや攻撃について調査分析を行う。
著者
牟田 和恵
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.57-76,168, 1986-01-31 (Released:2017-02-15)
被引用文献数
1

First, I will make a brief survey of resource mobilization theory as it relates to the formation of social movements. Second I will discuss its main problematic point: because it tends to portray social movements as rational and non-emotional, resource mobilization theory reduces social movements to a form of collective action in which people act together organically in pursuit of their common interests. In my mind there is little doubt that social movements encompass larger and more dynamic concepts than those contained in collective action. Based on the work of the Italian sociologist, F. Alberoni, I introduce another theory of social movements. He defines a movement as a historical process which starts with the nacent state and ends with the re-establishment of the everyday institutionalized order within which social movements exist as the opposite of institutions. For Alberoni, movements can exist only as a temporary state. As a theory of social movements his opinion might be regaded as almost heretical. But I believe that his theory offers useful suggestions to supplement the theoretical weaknesses of the resource mobilization theory I described above. In short, by incorporating some parts of Alberoni's theory, this paper tries to develop resource mobilization theory and the theory of social movements in a wider perspective.
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.50-60,118, 1991-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
29
被引用文献数
1 1

This paper attempts to integrate the method of social history into family sociology and to develop macroscopic and historical perspectives of family sociology, which seems to have been more interested in the microscopic aspects.It is true that social history gives important effects to family sociology, but unfortunately there seems to be some confusion, because they differ in the way of defining “modernity” and family in modern times. This paper clarifies such confusion, and points out problems in the concept of the “modern family” used in the fields of family sociology, by using the results of historical study about the family in modern Japan. And then theoretical sophistication is suggested in order to apply the social historical approach to sociology.
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-1, pp.111-138,155, 1998-03-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
32
被引用文献数
2 8

There had been a historical and structual interest in family studies in Japan. As family sociology became institutionalized since the 1960s and 1970s, however, family studies shifted to take a micro-scopic view. Family scholars had to do so, in a sense, because of the rapid social change and its negative effects on the family in those days. Family studies transformed itself in order to study the family more effectively. On the other hand, the transformation caused family studies to become less historical and less interdisciplinary.Since the 1980s, the development in family history and historical demography which began in Europe in the 1960s stimulated Japanese family scholars. They have been working to interpret the 'traditional family' in Japan from the new perspective which they learned from the Western scholars. Some of these studies are comparative and fruitful enough to contribute to international academia.This field of family studies has been methodologically challenging to family sociology as a whole. I believe it has contributed, and will contribute to family sociology in Japan in the fields of the research and education.
著者
牟田 和恵
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.17-20, 2013

「家族戦略」をテーマとした3年連続の大会シンポジウムシリーズの2年目として,昨年の「経済不況と少子高齢社会の中の家族戦略」に続き,育児(子育て)と介護に関して家族はどのような戦略を立てて行動に移しているのかについて,理論的・実証的な見地から論じてもらうというねらいのもと,「育児と介護の家族戦略」と題してシンポジウムをもった.天童睦子氏「育児戦略と見えない統制——育児メディアの変遷から」,上野千鶴子氏「介護の家族戦略——規範・選好・資源」,武川正吾氏「家族戦略?——個人戦略と公共政策の狭間で」の3報告が行われ,それらを受けて,立山徳子氏が都市のパーソナル・ネットワークに着目するところから問題提起を行い,久保田裕之氏からは家族という集合的主体を構想する可能性と,家族戦略の段階性・重層性を見いだすべきことが指摘された.コーディネータおよび司会は,研究活動委員の加藤邦子と牟田和恵が務めた.
著者
牟田 和恵
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.15, no.9, pp.9_36-9_41, 2010-09-01 (Released:2010-11-16)
参考文献数
4
被引用文献数
2 5
著者
伊田 久美子 北村 文 熱田 敬子 岡野 八代 牟田 和恵 古久保 さくら 元橋 利恵 荒木 菜穂 キタムラ アヤ ムタ カズエ フルクボ サクラ モトハシ リエ アラキ ナホ イダ クミコ アツタ ケイコ オカノ ヤヨ
出版者
松香堂書店
巻号頁・発行日
2018-03-20 (Released:2018-03-20)

課題番号 : 26283013 研究課題 : ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング 平成26-29年度 科学研究費補助金 基盤研究(B)
著者
牟田 和恵
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3/4, pp.97-116, 2006-03-28

日本における家族の歴史社会学研究の蓄積について,とくに隣接領域である家族社会学との関連においてレビューする.その際,80年代以降に若手フェミニスト研究者たちを中心的担い手として展開した「近代家族」論に注目し,それが,家族をめぐる学問領域においてもっていた意味と意義を確認する.その上で,ポストモダン・フェミニズムを経た新たなジェンダー概念の導入により,「ジェンダー家族」という概念を提起し,日本近代の天皇制と家族に関する分析を行なう.結論として,家族の歴史社会学的研究を現代に生かしていく方途を提言する.