著者
小嶋 隆幸
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.346-350, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
19

金属間化合物は特有の電子状態と表面規則構造を有するため新奇な触媒になりうる.三元系の金属間化合物群であるホイスラー合金(X2YZ)は,X,Y,Zの組み合わせが豊富なため高機能触媒が眠っていると期待され,また,元素置換の自由度が高いため触媒機能制御が可能と考えられる.触媒としては全く未知だった本合金の触媒機能について,金属学的に合成した粉末触媒を用いて研究してきた結果,アルキン選択水素化に優れる触媒を発見し,元素置換による触媒機能制御を達成した.また,触媒機能におけるX,Y,Zの役割や耐久性についての知見も蓄積してきた.さらに,触媒の実用的形態であるナノ粒子の合成にも成功した.
著者
大毛利 健治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.230-234, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
10

電子デバイス向け電気特性評価の環境構築と,少し高度な電気的雑音について「計測」と「除去」という観点から解説します.また,計測自動化や極低温環境に関して,トランジスタや不揮発性メモリにおける雑音計測の具体例を示しながら紹介します.
著者
河原 秀夫 斉藤 靖弘
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.343-351, 1993-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
32

昨今の地球環境問題から,エネルギー効率との関連で光を制御する窓ガラスが重要視されはじめた.中でも,次世代ガラスとも称される“調光ガラス”へは多くの分野から熱い期待が寄せられ,研究も一段と活発になってきた.現状では,実用性を考えエレクトロクロミズム,分散型液晶の応用を中心に研究が進み,異方性微粒子の分極配向を利用した複合ガラスなど新しい試みも現れはじめた.ここでは調光技術の中でも,特に人為的に光制御が可能な技術を取り上げ,調光の原理,特徴および実現までの技術的課題などについて述べる.
著者
貴堂 靖昭
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.29-32, 1997

雪国の人々は,積雪によって多くの災害を被っている.その一つとして,降雪地帯の雪崩の発生は,樹木のとう折や家屋の倒壊を引き起こすばかりでなく,人命をも奪い,その惨禍はすさまじいものである.雪崩の要因はいくつか挙げられるが,特に積雪の内部構造の変化に強く依存していることが知られている.<br> したがって,積雪層の変化(積雪の変成遇程)を明らかにすることによって,災害の来然の防止と人命救助の技衛的向上が期待できる.<br> 本稿は,まず積雪層構造を解析するために,積雪モデルを示し,次に積雪層の物性パラメーターを知るために単一モードファイバー出力光の偏波変動を利用した新しい測定法について紹介した.
著者
角倉 敏彦 森 秀夫 三宅 隆雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.334-339, 1965-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Acoustic properties of foamed polymer are affected largely by its cell structure and, to a small extent, by chemical structure of polymer itself. In this paper, examination is made on the relation between acoustic properties and resistance to air flow which is a physical quantity related to cell structure. Acoustic impedance is measured with a standing wave apparatus under various. mounting conditions. Theoretical value of acoustic impedance for a porous material with rigid skeleton is compared with experimental result. For samples with small resistance to air flow, a good agreement is found over a wide range of frequency. When samples are stuck on a rigid wall with adhesive, the resonance occurs in the rigion between 500 and 1000 c/s.
著者
増田 淳
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.339-345, 2021-06-05 (Released:2021-06-05)
参考文献数
44

屋外で曝露(ばくろ)される太陽電池モジュールにはさまざまな負荷が複合して与えられ,その結果,発電性能低下が生じる.劣化現象は複雑であるものの,劣化要因は遮光,集電能力低下,光起電力低下の3つに大別可能である.本稿では,さまざまな太陽電池モジュールの劣化現象をこれら3つの劣化要因に整理して紹介する.とりわけ,電圧誘起劣化については,最新の研究成果も含めて詳細に説明する.また,さまざまな負荷のうち,屋外で使用する太陽電池にとって避けることのできない紫外光照射が劣化現象に及ぼす影響についても紹介する.
著者
佐々木 聰 軽部 征夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1407-1413, 2001-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
44

生体分子のもっ機能を化学物質の認識に活用して成功したデバイスであるバイオセンサーは,従来法では時間がかかりすぎる測定を簡便化し,不可能であった測定を可能にしてきた。また,さまぎまな領域での利用の可能性が承さ:れている.本稿では,バイオセンサーの始まりから原理,実用例と最近の開発傾向,そして将来のデバイスへのつながりについて解説する.
著者
深田 榮一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.130-134, 1950-08-01 (Released:2009-02-09)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
安藤 寿浩 中川 清晴 蒲生西谷 美香
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.70, no.12, pp.1447-1451, 2001-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
17

気相合成法によるダイヤモンド薄膜の倉成が行われるようになっZ以来,ダイヤモンド薄膜の応用覇究が盛んになり,また不純物の制御による半導体ダイヤモンド結aeqを利用した実用化研究も注目されZいる1,2).ダイヤモンド半導体はそのバンドギャップの広さゆえ表面伝導性,表面の負性電子親和性などの特異な性質を発現する.QVO法による不純物のh一ピング,ホモ/ヘテQエピタキシー,表面伝導,電子親和性の制御,すべてダイヤモンド表面の関わる重要な研究課題である.また最近Zは電気化学分野での電極応用,DNAの固定などの生体関連材料との融合,触媒担体への応用,カーボンナノチューブとの複合化といった新たな分賢で材料としてダイヤモンドを用いる場合のダイヤモンド表面の重要性が増している.ダイヤモンドはいうまでもなく炭素単体の典型的な結最であり,炭素原子;を中心とする有機化合物の延長でもある.本稿では,ダイヤモンド,特にその表面を無機結晶固体と有機化合物のインターフェースであるとの考えから,ダイヤモンドの結晶成長および表面科学の研究の一部を紹介する.
著者
青野 真士 大古田 香織
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.580-584, 2020-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
46

本稿では,単細胞アメーバ生物・粘菌が環境に適応し最適な形状に変形する振る舞いに学び,「巡回セールスマン問題」や「充足可能性問題」といった組合せ最適化問題の解を,アナログ/ディジタル電子回路を用いて探索するユニークな計算システムを紹介する.「アメーバ型アルゴリズム」を実装するこれらの組合せ最適化マシンは,回路を流れる電流ダイナミクスの並行性や,デバイスの揺らぎからもたらされる確率的動作を活用し,そこそこ質の高い合法解を素早く確実に得る手段を提供する.その計算原理はさまざまな物理デバイスにより実装できるため,さらなる大規模化と小型・低消費電力化が可能であり,クラウドサービスのみならず,新たなIoTやエッジ計算応用への展開を期待できる.