著者
岡田 晋
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.1097-1100, 2015-12-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
17

グラファイトに代表されるsp2炭素からなるネットワーク物質は,原子欠陥やトポロジカル欠陥の導入により容易に磁気的な性質を帯びることが知られている.ここでは,カーボンナノチューブ(CNT)に端やトポロジカル欠陥を導入することにより,磁性CNTが実現されることを量子論に立脚した第一原理計算の結果を基に示す.特に,有限長のCNTと5員環と8員環からなるトポロジカル欠陥を有するCNTにおいて,詳細な原子形状に依存した磁性状態が発現することを紹介する.
著者
米沢 富美子
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.926-928, 1998-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
3
著者
西根 勤 大杉 義彰
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.761-765, 2005-06-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
4

ポストゲノムの時流の中で,より生命の本質にせまるべくプロテオームと総括される網羅的たんぱく質解析が,方法論の検討段階から結実期を迎えつつある.RNA発現プロファイルとたんぱく質発現プロファイルの相関が低いといわれているように,遺伝情報のみから生命の実体であるたんぱく質の構造と機能を解明することは難しい.また,たんぱく質を調べることは,新規診断や創薬につながる可能性を秘めており,プロテオームはゲノム同様に大いに期待されている.プロテオミクスの進展には,いくつかのブレークスルーが必要であったが,その一つが質量分析技術の発達である.
著者
井藤 賀操 加藤 由佳梨 川上 智 榊原 均
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.710-713, 2011-08-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
28

ヒョウタンゴケの原糸体細胞の成長パターンを調査し,潤沢な培養条件では指数増殖期が認められたことから,本種が裸地環境へいち早く適応し繁茂できる生存戦略をもつ種類である可能性について意見を述べた.本種の乾燥粉末を利用した金属回収方法は,一般にカーボンニュートラルなプロセスとして分類される.私たちはさまざまな環境制御要因条件で原糸体細胞を生産し,鉛吸着材としての品質評価を実施した.400L規模に大型化した装置で生産した原糸体細胞においても,鉛吸着材としての十分な性能があることが確かめられた.したがって,私たちは,原糸体細胞を鉛回収するための新素材として位置づけ,産業利用できることを提案した.
著者
中井 順吉 宮崎 隆雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.558-562, 1963-08-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
6

Electrical properties of metal-oxide-metal diode prepared by evaporation method are discussed with the theory by R. Stratton on tunneling currents through thin insulating films. Experimental results are successfully interpreted by the theory and the temperature dependency of tunneling current is found to agree in its general trend with the theory.
著者
浅川 賢一 田幸 敏治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1185-1191, 1980-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
15

The microvibration of the ground was measured by the 50 meter vacuum interferometer which was installed in the underground tunnel in the Nagatsuta Campus of the Tokyo Institute of Technology. There are often anomalous vibrations caused by cars passing on a near road for example. We propose a new method to detect and distinguish such anomalous vibrations. The signal which represents the vibration of the ground is put into a prediction error filter which is made from the normal part of the stignal. If there are any anomalous vibrations, its output, namely prediction error, becomes greater, and we can easily recognize its existence. This method is very sensitive and its characteristics is clerrly revealed by investigating the power spectrum and the frequency histograms of the signal.
著者
藤本 憲次郎 相見 晃久
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.225-229, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
29

近年「データ駆動型研究」や「インフォマティクス」をタイトルに含む研究が増え,ハイスループット・自律化実験を交えたDX化に向けた取り組みが活発になってきた.対象となる素材や形態が多くある中,本稿では多元系酸化物粉末に焦点を当てたインフォマティクス研究につながる研究として取り組んできたコンビナトリアル技術,具体的には液相プロセスに基づいた粉体試料群の自動作製,高速粉末X線回折,物性評価治具そして放射光粉末X線回折のための治具開発について紹介する.
著者
芹澤 愛
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.230-233, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
24

アルミニウム合金は,カーボンニュートラル実現の観点から輸送機器をはじめとした各種部材への展開が期待される軽量金属材料であるが,用途拡大のためにはさらなる高強度化ならびに高耐食化が不可欠である.本稿では,筆者がごく最近開発した,水蒸気のみを利用した環境負荷の低い新しい表面処理技術である水蒸気プロセスについて解説する.水蒸気プロセスでは,アルミニウム合金表面に水酸化物結晶を緻密に形成することでバリヤ性が発現し,耐食性が向上する.これと同時に,水蒸気の熱エネルギーを活用し,アルミニウム合金を組織制御することで析出強化により高強度化が実現する.水蒸気プロセスによって実現する,このような興味深いアルミニウム合金の多機能化手法について紹介する.
著者
山内 美穂
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.208-213, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
18

持続可能なものづくりを実現するには,高効率触媒の開拓が必要となる.本稿では,水を水素源とする電気化学的物質変換反応を活性化するために求められる触媒の組成,配列,構造を議論するとともに,筆者らが開発した無機ナノ触媒の機能を紹介する.初めに,炭素循環の要となるCO2還元反応(CO2RR)を促進する無機触媒の制御要因について議論する.また,高効率蓄電の新しい方法となる有機酸あるいはケトンからのアルコール化合物を合成するために作製されたTiO2をベースとする電極材料を紹介する.さらに,有機酸とケトンの電気化学的還元の応用例として熱電子変換とアミノ酸合成についての研究例を紹介する.
著者
竹内 一郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.199-207, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
44

With its ability to enable rapid screening of a large number of different materials, the combinatorial high-throughput approach has become an integral part of the experimental toolbox for materials exploration and discovery efforts across virtually all areas of materials science. With the advent of the Materials Genome Initiative in the U.S., high-throughput materials synthesis and characterization has come to play the complementing role to the surge of activities in computational materials science. In this article, I provide my perspective on how the combinatorial approach has evolved over the years and how informatics and machine learning have come to play a central role in the field.
著者
内田 龍男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.451-455, 1995-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
4

電気的に制御可能な波長可変フィルターについて解説する.このフィルターは,複数枚のECB形ネマティック液晶セル(電界制御複屈折セル)を積層することによって構成されている.このデバイスの特長は,二次元の画像情報を保持したまま,任意の波長成分の光を取り出すことができる点にある.本解説では,このフィルターについて設計条件を明らかにするとともに,その特性について詳細に述べる.
著者
蒲生 秀也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.431-443, 1956-11-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
9

Since optical systems have distinctive features as compared to electical communication systems, some formulation should be prepared for the optical image in order to use it in information theory of optical systems. In this paper the following formula for the inten-sity distribution of the image by an optical system having a given aperture constant a in the absence of both aberration and defect in focussing is obtained by considering the nature of illumination, namely, coherence, partial coherence and incoherence; _??_ where I(y) is the intensity of the image at a point of coordinate y, T12 the phase coherence factor introduced by H. H. Hopkins etc., E(x) the complex transmission coefficient of the object and A(x) the complex amplitude of the incident waves at the object, and the integra-tion is taken over the object plane. The above expression has some interesting features; namely, the “intensity matrix” composed of the element anm mentioned above is a positve-definite Hermitian matrix, and the diagonal elements are given by the intensities sampled at every point of the image plane separated by the distance λ/2a, and the trace of the matrix or the sum of diagonal elements is equal to the total intensity integrated over the image plane. Since an Hermitian matrix can be reduced to diagonal form by a unitary transformation, the intensity distribution of the image can be expressed as _??_ where λ1, λ2……λn, ……are non-negative eigenvalues of the intensity matrix. In case of coherent illumination, only the first term of the above equation remains and all the other terms are zero, because the rank of the coherent intensity matrix is one, and its only non-vanishing eigenvalue is equal to the total intensity of the image. On the other hand, the rank of the incoherent intensity matrix is larger than the rank of any other coherent or partially coherent cases. The term of the largest eigenvalue in the above formulation may be especially important, because it will correspond to the coherent part of the image in case of partially coherent illumination. From the intensity matrix of the image obtained by uniform illumination of the object having uniform transmission coefficient, we may derive an interesting quantity, namely _??_ where λn is the n-th eigenvalue of the intensity matrix and I0 is the trace of the matrix. d is zero for the coherent illumination and becomes log N for the incoherent illumination, where N is the “degree of freedom” of the image of the area S, namely, N=4a2S/λ2. The value of d for partially coherent illumination is a posititve quantity smaller than log N. A quantity δ=(d0-d)/d0 may be regarded as a measure of the “degree of coherence” of the illumination, where d0=log N and δ is unity for the coherent case and zero for perfectly incoherent case. The sampling theorem for the intensity distribution is derived, and the relation between elements of intensity matrix and intensities sampled at every point separated by the dis-tance λ/4a is shown.
著者
菊池 和朗
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.856-861, 2009-09-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
22
被引用文献数
2

光の位相情報を活用するコヒーレント光通信の研究は,約20年の中断を経て,近年再び活発化している.新世代のコヒーレント光通信は,従来の光技術と高速デジタル信号処理の融合を特徴としており,デジタル・コヒーレント光通信と呼ばれる.本稿では,コヒーレント光通信の歴史を概観した後,デジタル技術との融合がもたらす新たな可能性について解説する.
著者
解良 聡 上野 信雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1260-1267, 2003-10-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
43
被引用文献数
2

有機デバイスの特性を理解していくうえで,分子個々の性質と集合体としての薄膜の性質に加え,有機デバイス中に必ず存在する有機/無機界面について詳細に知ることがデバイス開発側から要求されつつある重要な課題である.しかし,その複雑さのために微視的な立場から体系的に捉えることは容易でなく,これが有機デバイスが爆発的な注目を集めるまで基礎的立場からの研究参入を拒んできた理由の一つである.光電子分光法はきわめて一般的な手法の一つで,今や有機デバイス界面の研究に不可欠となっている.有機/無機界面では得られる光電子スペクトル構造(線幅・形状・位置)についての正しい解釈がこの系を理解するうえでの重要な第一歩といえる.価電子帯最上部のバンドは,薄膜中や界面におけるキャリアの動的挙動,分子間相互作用などの物性基盤を理解するうえできわめて重要な情報を含んでいる.本稿では有機薄膜界面研究の現状,問題点と今後の課題について紹介する.
著者
松村 正清
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.841-848, 1996-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

薄膜トランジスタ (TFT: Thin-Film Translsto) は長い歴史を持ってはいるが,その有用性が広く認められたのはこく最近である.この急速に重要性を増しているTFTについて,その生まれと育ち,未来展望,動作原理,構造と種類などを概説する.
著者
熊谷 悠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.172-176, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
19

計算機性能や計算技術の大幅な向上により,多数の物質に対して系統的・網羅的に第一原理計算を実行することで,データベースを構築することが可能となってきました.この計算材料データベースは,個々の物質に関する計算結果を参照するのみならず,材料スクリーニングや機械学習のデータセットに用いるなど,多様な広がりを見せています.本稿では,計算材料データベースの有用性や既存のデータベースを紹介するとともに,我々が構築した酸化物DBとその応用例を紹介します.
著者
須丸 公雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.161-165, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
22

さまざまな細胞治療が普及し,ヒト培養細胞を用いた医薬品アッセイが盛んに検討されている.来たるべき培養細胞の利活用時代に備え,細胞の分別や純化,回収などの操作を自動化すべく,筆者らは光に応答して細胞に作用する変化を遂げる光応答ポリマーを培養基材に用いるスキームを検討した.まず,光に応答して速やかに水溶化するポリマー材料を新規に開発,これを塗布した培養基材上に接着した細胞を,光照射によって生きたまま選択的に剝離回収できることを示した.また,光に応答して酸や熱を発生するポリマーを用いて,細胞を選択除去して純化し細胞単層を切断する「力ずく操作」の実現を実証した.これらの技術を,ヒトiPS細胞の維持培養などに適用した例についても議論する.
著者
角田 直人
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.354-358, 1995-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

la型に分類される大部分の天然ダイヤモンドには0.1 at%程度の窒素不純物を含み,その成長過程の環境により窒素はさまざまな形態に集合する.主な欠陥はAセンター,Bセンターおよび薄板である.Bセンターが多いlaB型のものには,薄板が部分的または完全に分解した場所にボイダイドと名付けられた欠陥も観察される.これらの欠陥は,電子顕微鏡で分布状態を直接観察できるので,その欠陥構造の解明は,ダイヤモンド中での窒素の挙動を理解するうえでたいへん重要である.ここでは,薄板やボイダイドの欠陥構造と窒素の集合過程について述べる.