著者
田邊 稔 山田 雅子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.257-264, 2005
参考文献数
20
被引用文献数
1

外国雑誌における電子化の動きは年々加速しており, 大学図書館では煩雑な管理を強いられている。慶應義塾大学においても, ここ数年で電子ジャーナルを取り巻く環境が急激に変わってきている。また, 利用者から見ても, 利用形態が多岐に渡っていることや, オフキャンパスからのアクセス制限など不便を感じている。このような変化を受け, 慶應義塾大学において, 電子ジャーナル管理の現場担当がどのように取り組んでいるか, 今後どのようなシステムモデルを描いているかを示した上で, さらにアクセス管理の現状と展望について言及する。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.391, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

本特集ではRDF(Resource Description Framework)/SPARQL(SPARQL Protocol and RDF Query Language)による検索と可視化について特集しますが,特集の紹介をする前にまず弊誌がこれまでRDF/SPARQLについてどのような特集記事を掲載してきたか振り返ってみたいと思います。RDFについては当初から扱っており,1999年には当時W3Cにて検討中だったRDFについて,Dublin Coreのメタデータ記述と関連付けて紹介しています1)。時代が進むにつれ,身近なシステムがRDFデータを提供する動きが出てきました。2014年の特集「Web API活用術」2)ではCiNiiにおけるRDFデータの提供やその活用事例を紹介する記事を掲載しています。システム側での提供が増えると,それを利活用する動きも活発となり,2017年の特集「つながるデータ」では古崎晃司氏がLOD(Linked Open Data)活用コミュニティの取り組みの中でRDFにも言及していたり3),神崎正英氏の記事ではIIIF(International Image Interoperability Framework)のデータ構造がRDFでモデル化されていること等が紹介されています4)。ここに挙げたものに限らず,RDFについてはこれまで様々な記事を掲載してまいりました。一方SPARQLについてはどうでしょうか。2011年頃から言及する記事自体は複数掲載していますが,その利用方法などについて具体的に言及しているのは神崎正英氏ら5)の記事や,古崎晃司氏の記事6)に留まります。近年ではWeb UIでSPARQLの入力を受け付けるサービスも増えつつあり,インフォプロがRDF/SPARQLを利用する機運が高まっています。そこで本特集ではインフォプロが主体的にRDFデータを収集・利活用することを想定しました。まずはライフサイエンス統合データベースセンターの山本泰智氏にRDF/SPARQLの概要を非常に分かりやすくまとめて頂きました。次に,ゼノン・リミテッド・パートナーズの神崎正英氏に,様々なWebサービスにおけるSPARQLでの検索クエリ,及び得られるRDFデータについて概観して頂きました。個々のWebサービスからデータを得られるようになった次のステップとして,大阪電気通信大学の古崎晃司氏には得られるデータをいかにしてつなげるか,その作成方法についてご解説頂きました。ところでRDF/SPARQLはその性質上,複数ソースのデータをつなげて大規模なデータセットを作成することが可能ですが,そのままでは役に立ちません。可視化することの重要性について,コミュニケーションの媒介としての観点からノーテーションの矢崎裕一氏にご解説いただきました。最後は多摩美術大学の久保田晃弘氏に,可視化された複雑なデータの分類について人間の認知と関連付けてご紹介頂くとともに,大量かつ複雑で一貫性に欠ける現実の情報の世界にシステム的な共通の枠組みを適用する方法として圏的データベースをご紹介頂きました。最近はデータ駆動型社会の到来などと言われております。インフォプロがそのような社会を生き抜くための資料として,本特集をご活用いただけますと幸いです。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),炭山宜也,野村紀匡,海老澤直美,水野澄子)参考文献1) 杉本重雄.〈特集〉メタデータ:メタデータについて:Dublin Coreを中心として.1999,vol.49,no.1,p.3-10.2) 情報科学技術協会.情報の科学と技術64巻5号.2014.3) 古崎晃司.〈特集〉つながるデータ:コミュニティ活動を通したLOD活用の“つながり” -LODハッカソン関西を例として-.2017,vol.67.no.12,p.633-638.4) 神崎正英.〈特集〉つながるデータ:リンクの機能を柔軟に生かすデータのウェブ.2017,vol.67,no.12,p.622-627.5) 神崎正英,佐藤良.〈特集〉典拠・識別子の可能性:ウェブ・オントロジーとの関わりの中で:国立国会図書館の典拠データ提供におけるセマンティックウェブ対応について.2011,vol.61,no.11,p.453-459.6) 古崎晃司.〈特集〉ウェブを基盤とした社会:ウェブの情報資源活用のための技術:ナレッジグラフとしてのLOD活用.2020,vol.70,no.6,p.303-308.
著者
棚橋 佳子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.344-348, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

機械学習や深層学習等のAI技術を取り入れて,データベース提供サービスを充実させることは,コンテンツ業界において,スタンダードになりつつある。本稿ではAI技術が高品質のコンテンツと融合することで見られる変化を,コンテンツ・プロバイダーの立場から考察する。ユーザの関わりや観点からAI技術とコンテンツの融合がもたらすインパクトを3つのパターンに分けた:1)製品やサービスの中にAI技術を組み込むことによる“製品+AI技術組み込み型”,2)コンテンツの製作過程にAI技術を組み込む“AI技術間接享受型”,3)ユーザとコンテンツ・プロバイダーが協働でAI技術を駆使し業務改善を実現する“AI駆動・個別構築型”。本稿では,これらの事例を概観する。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.335, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

知的財産管理が求められる業務は,事業戦略,情報分析,価値評価,発明・創造支援,ブランド・デザイン,デューデリジェンス,契約,リスクマネジメントなど様々です。こうした業務は,それぞれの専門家が様々に連携し合い,協働しながら進めてきました。一方,近年のIT技術の進展は,AI,RPA,IoTなどを駆使したより高度な情報化社会を生み出し,知的財産の分野ではIPランドスケープという言葉も頻繁に聞かれるようになってきました。こうしたいわばAI時代において,インフォプロの今後はどうなるのでしょうか。本特集号では,「知財活動に従事するインフォプロとしての心構え」,そして近年注目されている「IPランドスケープ」について解説された今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を軸に,知財情報の調査・分析業務の効率化,ツールとの協働・共創,インフォプロが吸収・成長すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験など,各国の状況や知財AI活動,学術文献調査の実態も含めて,各分野で最も輝いている専門家に執筆をお願いしました。はじめに,野崎篤志氏(株式会社イーパテント)の今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を,録音とプレゼン資料を基に再現しました。これを受けて,棚橋佳子氏(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社)には,コンテンツ・プロバイダーとしてのお立場から,特許のみではなく学術文献についても含めて,今後のデータベースはAIの発展とともにどのように変化していくのかについて解説いただきました。平尾啓氏(アイ・ピー・ファイン株式会社)には,知財AI活用研究会の研究事例についてご紹介いただき,AIの具体的な知財活動への活用について解説いただきました。酒井美里氏(スマートワークス株式会社)には,「AIとの付き合い方」という視点で,各国のAI活用状況を紹介いただきながら,サーチャ-がAIと向き合うための心構えについて解説頂きました。つづいて桐山勉氏(はやぶさ国際特許事務所)に,IPランドスケープと各種AIを駆使してC-Suiteを説得できる,将来のインフォプロ像について提言いただきました。最後に,和田玲子,中村栄両氏(旭化成株式会社)に,企業におけるIPランドスケープの取り組みについて,自社の戦略的な知財情報活動を振り返りつつご紹介いただき,インフォプロが吸収すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験などについて,人材育成の立場からもまとめていただきました。今回の特集は,AI情報検索の分類からその活用,インフォプロのAIへの向き合い方,そして未来のインフォプロ像と人材育成までを盛り込みました。是非皆様の知的財産業務にお役立ていただけたらと存じます。PD委員会(佐藤秀顕,大島優香,桐山 勉,江口佳人)知財担当理事(屋ヶ田和彦)
著者
古崎 晃司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.303-308, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

ウェブでの情報資源を相互にリンクして公開したLOD(Linked Open Data)は,知識の相互関係をグラフ構造で表したナレッジグラフ(知識グラフ)としても位置づけられる。本稿ではLODをナレッジグラフとして活用するための技術について解説する。具体的には,オープンな知識ベースとして公開されているWikidataを例として,URIによるデータへのアクセス,SPARQLクエリを用いた検索,利用できるツール類といった技術を中心に紹介する。さらに,同様の技術が利用できるLODを国内での公開事例を中心に示し,LODをナレッジグラフとして活用するための基本情報を提供する。
著者
炭山 宜也
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.283, 2020-06-01 (Released:2020-06-01)

2020年6月号の特集は「ウェブを基盤とした社会」です。ティム・バーナーズ=リーが1989年に生み出したWWWの仕組みは,ウェブ上の情報資源の拡大に伴い人々の行動に影響を与え続けています。例えば,ウェブの情報検索による調べ物や,SNSによるコミュニケーション,ウェブサービスを利用した商品購入など,日々の生活にウェブは欠かせない存在になっています。本特集では,ウェブの成り立ちや仕組み,社会や私たちの生活に与える影響について5人の方々から解説をいただきました。総論では東京大学の大向一輝氏に,ウェブが人々のコミュニケーションや社会のあり方に与えた影響について2010年代を中心に概説いただき,今後の課題についてについて「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」の観点から議論していただきました。NTTセキュアプラットフォーム研究所の奥田哲矢氏には,ウェブサービスを支える通信技術について,セキュリティの観点からSSL/TLSとPKIに関する歴史と仕組み,そして今起こりつつある変化について解説をいただきました。国立情報学研究所の武田英明氏には,ウェブと社会との関りについてウェブの本質である「繋ぐ」ための仕組みや技術から解説をいただきました。大阪電気通信大学の古崎晃司氏には,多種多様な知識データを統合的な一つの知識ベースとして扱うナレッジグラフの技術について解説をいただきました。名古屋大学の笹原和俊氏には,ウェブの負の側面について,フェイクニュース拡散の仕組みを中心に解説をいただきました。登場から30年余りたったウェブの広がりが,今後の私たちの情報行動や生活そのものにどのような変化をもたらしていくかを見つめなおす特集となれば幸いです。(会誌編集担当委員:炭山宜也(主査),南山泰之,今満亨崇,野村紀匡)
著者
栗山 正光
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.461-466, 2004-09-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
1

OAIS参照モデルは,デジタル情報の長期保存システム構築に関する有力な指針であり,国際標準規格ともなっている。本稿では,保存のためのメタデータに焦点を絞り,0AIS参照モデルに示された情報パッケージの概念と,それに基づいて行われているメタデータの枠組み規定の実際について論じる。OAIS参照モデルは,デジタル情報の保存活動を行っている諸機関で広く認知されているものの,それぞれが規定する実際の保存メタデータの枠組みは,0AISの情報パッケージの構成とはかなり異なった形でなされているのが実状である。個々のニーズと相互運用性・再利用性とのバランスが今後の課題となる。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.428-433, 2010-10-01 (Released:2017-04-25)
参考文献数
25

感情労働とは,肉体労働,頭脳労働と並ぶ第三の労働のあり方であり,サービス業において重要な要素とされている。感情労働による感情のコントロール技術は,利用者をはじめ様々な人と接する図書館員にとって,種々の業務をこなしていく上で欠かせないスキルといえる。その一方で,感情をコントロールすることは,本来の感情と業務として求められる感情との間にズレを生じさせる。感情労働は人と接することで満足感や充足感を得る肯定的な面とともに,感情のズレによりストレスの増加やバーンアウトの誘発を招くという否定的な面を持ち合わせている。本稿では,この感情労働という視点に着目し,図書館業務との関わりについて紹介する。
著者
油谷 曉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.249-254, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)

常に安心して安全にインターネットが使用できるように,各組織にはネットワークインフラ構築部門やセキュリティ対策チームが存在し,互いに連携しながら外部からの攻撃やマルウェア感染を未然に防ぐ活動を行っており,個人が使用するパソコンや各種サーバの機能不全/個人情報や機密情報の漏洩/Webサイトの改竄などのインシデントを発生させないことを活動目標としている。本稿では,セキュリティ技術やサイバー攻撃について解説した後,大学という特殊な組織で情報セキュリティを確保するために行っている様々な手法や試み,そして日々の戦いについて紹介する。