著者
西垣 通
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 2012-12-15
著者
平野 孝治
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.65-73, 2008-11-30

日本で発表された中国メディア研究について,政治コミュニケーションの視座から分析を行い,その傾向と問題点を明らかにした。マスメディアと政治制度,イデオロギー,中央と地方の関係,情報発信の過程をテーマに周囲から内部へと段階を追って考察を試みた。また近年注目されるインターネット研究にも考察を試みた。その結果思想改革を目的とした報道機関の発する情報は,教育的なものであることが明らかになった。しかし,これは政権側の情報統制によって思想改革が成功するであろうという希望であって,実際に成功したかどうかは明らかになっていない。また,中央と地方の枠組みでメディア研究を行なう際には,地政学的,政治経済学的な視座で考察を行わなければならない点を明らかにした。そして,マスメディアと政府の関係が,今まで既存メディアが経済や政治的な要因によって変化が生じていたのとは異なり,インターネットの出現によって,政治エリートとマスメディアの関係が根本的に覆され,お互いの利益のために利用しあう関係へと変化したこと,インターネットの内容に左右される政府という新たな状況が形成されている点を明らかにした。
著者
細内 信孝
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.71-77, 1994-07-03

生活者がモノとコトで情報創造する'90年代のソフトウェーブ社会(情報化社会)において新しいマーケティングの在り方を考察し, 情報財によるマーケティング展開として次のようなことが判明した。情報財マーケティングとは, 情報発信者(企業又は生活者)と情報受信者(生活者又は企業)の意味(情報)の共有化をいい, 企業と生活者が相互に商品のコンセプトや価値を共有し, そのコンセプトや価値に共振, 共鳴しながら感性エリアを増幅していく一連の生活情報の共鳴活動である。この新しい生活文化に根ざした共振, 共鳴による情報活動を情報財マーケティングとした。
著者
平澤 洋一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-26, 1997-09

文化の発達につれて民族は色彩基本語の数を増やしていき, 文化度と主要色彩語との間には高い相関性がある, とバーリン・ケイはいう。また, このような普遍論には相対論からの反論が出され, 論争を繰り返してきた。本稿では, 文献調査と実態調査をもとに, 意味論の立場から外界と認知と意味領域の問題を再検討し, 普遍論では説明のつかない言語事実を提示した。そして, 日本語の色彩系列では「青」が鍵になることをつきとめた。
著者
八幡 耕一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.3-10, 2013-12-15

本稿は,情報文化学の理論的深化を目的に,「ハクティビズム」と呼ばれるサイバー空間を中心に展開される集合的な社会運動を事例として,情報文化空間をめぐる主体間のせめぎ合いについて考察する。その際,フランスの歴史家・思想家であるミシェル・ド・セルトーが論じた,日常的実践にかかる「戦術」の概念をその理論的な枠組みとして援用する。これにより,情報文化空間をめぐる主体間の力学や駆け引き等についてさらなる理解を試みる。本稿の考察は,ハクティビズムがセルトーのいう「戦術」を越えたところにある,アノニマスな情報文化主体による抵抗あるいは対抗の実践として理解可能であること,そして情報文化空間の公益性(とその変質)がハクティビズムと関係することを明らかにする。本稿の考察は同時に,ハクティビズムも含む情報文化空間内での主体間のせめぎ合いをさらに探究していく必要性を提起する。
著者
中村 隆志
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.12-19, 2008-08-01
被引用文献数
3

「ケータイのディスプレイを見る行為」は,ケータイが本来持っている通信機能を越えて,現実空間での非言語的コミュニケーションに様々な役割を果たしている。この役割をさらに明らかにするため,大学生にアンケート調査を行った。公共空間において,連絡すべき用件があるわけでも,着信があるわけでも,すぐに見たいコンテンツがあるわけでもないのに,ケータイを取り出したくなるような経験を思い出してもらい,その理由を尋ねた。得られた回答り,「ケータイのディスプレイを見る行為」は,従来から存在する小物と同じようにケータイを利用する場合と,「誰かとつながっていること」を演出する狙いでケータイを使用する場合との,大きく2通りに分けられた。もうひとつの調査では,公共空間でのケータイあるいは他の小物の利用意向を尋ねた。その結果,被験者は,「誰かとつながっていること」を周囲にアピールする必要性が相対的に高い状況において,ケータイを取り出して操作する傾向にあった。この使用法は,ユーザが多重文脈性を「まとう」かのようにケータイを利用することがあると解釈可能であり,現代の対面的コミュニケーションに影響を与えていると考えられる。
著者
村上 幸雄
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-52, 1997-09
被引用文献数
1

A.Toffler's "The Third Wave" means the opening of a new erea of information culture. On the other hand, in this paper, "The Fourth Wave" overlapped with the preceding third wave is predicted. In this coming Fourth Wave, we ourselves should change into a new creative information source, in other words, a new human race. In order to achieve this objective, the author suggests, at the end of this paper, the importance of putting practical use of orthomolecular psychiatry as the most powerful and leading methodology.
著者
木村 めぐみ
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.47-54, 2009
参考文献数
18
被引用文献数
1

イギリス12の諸地域に存在するスクリーン・エージェンシーは今日,映画産業と地域(およびその住民であるオーディエンス)を様々な活動を通して結びつけることで,これまでイギリス映画産業が抱えてきた問題や課題の解決への道を切り開いている。その活動には教育・トレーニング,上映・制作支援,文化・遺産保存などが含まれ,文化政策や放送産業など映画産業に関わる産業との支援・協同関係により,スクリーン・エージェンシーの存在意義である地域・オーディエンスとの連携は,今日のイギリス映画産業の中でも目立った特徴のひとつである。本稿では,このスクリーン・エージェンシーの活動事例を考察しながら,フィルム・コミッションなどの日本における地域の映画組織に示唆を与える意味でも,そうした活動の映画産業への貢献を含む社会的な意義を追究する。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.87-98, 2000-11-18
被引用文献数
2

筆者らは, 北タイで情報化と経済化の進展の影響による住民の意識, 行動, 生活価値観の変化や共同体の変容について, 1992年から継続研究に取り組んできた。対象の村では, 1996年末の電化を契機にテレビを通して外部の情報が大量に流入し, 村人の情報交換が飛躍的に活発になった。急速な情報化は, 村人の意識, 行動, 生活価値観も変えつつあることを1998-99年に本紙で発表した。今回の論文は, 最近のタイ社会および当該村周辺の生活環境の変化を踏まえ, 意識, 行動, 生活価値観を13項目に整理・追加し, 村人が現在どのように意識し, 電化前後でどのように変わったかについて調査し, さらにタイ社会の「価値観」に関する先行研究である河部論文(1997)の項目についても検討をおこない, 結果を情報文化論の視点から論ずる。電化後の現在, 高収入欲求, 高学歴志向, 労働観, 勤勉性などが村人の意識が高まった。一方, 意識があまり変化しない項目として, 愛想良く暮らすこと, 保守的な意識, 冷静な心, 仏教や精霊信仰等があげられる。生活向上のための高収入欲求の昂進を軸としてその実現手段に有効な項目, 関連性の密接な項目ほど変化が急激で, この軸から距離を置くほど変化が緩慢である。新しい生活情報の流入は, 高収入欲求の昂進させ, 手段的・直接的関係の強い意識・行動・生活価値観が大幅な変化をきたし, 変化した村人の新たな行動を媒介として村文化が変容する, という図式を描くことができる。なお, 河部論文の一部の項目は, 本調査の結果では妥当性が低いと考えられる。
著者
高谷 邦彦
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.49-56, 2008-11-30

本論は,筆者が北海道稚内市で運営しているユーザ参加型ポータルサイト「さいほくネット」のデータをもとに,動画コンテンツを主体としたCGM(ユーザ参加型サイト)によって,地方都市が抱える情報発信の課題を克服する可能性を検討したものである。「さいほくネット」および動画共有サイト「YouTube」でのアクセス解析によると,日本においては主に中高年男性が地域情報の動画コンテンツを閲覧していることから,地方都市においてコストをかけずに地域情報を発信するには,地域の景観や歴史に関する動画コンテンツを制作し,ユーザ参加型のサイトを利用して発信してゆくことが現時点でもっとも有効な手段の一つであることがわかった。
著者
中村 隆志 大江 ひろ子
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.11-18, 2010-09-07
被引用文献数
1

「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」を非言語コミュニケーションと捉えて,そのコミュニケーションの実態を調査した。アンケートの結果から,ケータイのディスプレイを見せる側,すなわち「送り手」は,同じコンテンツを共に楽しんで,その評価を「受け手」と共感したいという意向を持っていること,その一方で,ディスプレイを見せられる「受け手」の方は,相手の接近的な意向を酌み取っていることが示された。この結果は,「送り手」と「受け手」の間には,その対面的相互作用において,意味の食い違いが起こりやすいことを示唆する。また,調査結果は,「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」と「ケータイのディスプレイを"見る"行為」は互いに影響下にあることを示した。その受け入れられやすさという点では,両者は相補的な関係にあり,秘匿性という点では,両者は相乗的な関係になりうることを指摘した。本稿では,「ケータイのディスプレイを"見せる"行為」を非言語コミュニケーションとして理解することの必要性を主張する。
著者
小川 晴也
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.75-80, 2007
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿の目的は,筆者が前考において示したリスク・コミュニケーションに関する概念装置をツールとして用いることにより,利害関係者の発信するリスク関連情報を分析できることを示すことである。筆者の提示した概念装置は,「パラダイム」,「コンプライアンス」および「フレーム」から成る構造モデルである。リスク関連情報はこれらのカテゴリーに分類できるが,同じ内容の情報でもリスク管理者と利害関係者の間で論点のカテゴリーにミスマッチが生じると,両者の乖離が解消されず利害関係者に不安が生じると考えられる。そこで,本稿においては,筆者がこれまでに提示した概念装置について概説した後, BSE対策見直しの事例を用いて本ツールの有効性を検証する。また, BSE問題に関して,どのような論点の混乱が起きたのかの分析を試みる。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 中野 美雅
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.54-65, 1998-10
参考文献数
13
被引用文献数
3

筆者らは, 1992年以来, 北タイのある農村で情報化が村人と共同体に与える影響と彼らの意識, 行動, 生活価値観などの変容について継続研究を行っている。この村は, 情報流入が極く少量であったが, 1996年末の電化によるテレビの普及を契機に, 爆発的に情報が流入し, 人類の情報に対する歴史的変化の縮図の様相を呈している。電化後1年半経過した最近(1998年5月)の実態の分析結果を以下に示す。情報受信の総件数は, 電化半年後に比べ増加し, 特に口コミの増加が顕著であり, テレビやラジオから新聞・雑誌へのメディア選択の拡大がみられる。受信内容としては村外情報が増加し, 経済・景気, エイズ・衛生, 王室関連など顕著で, 生活商品, ファッションなどが登場して村人の関心領域の拡大を示した。さらに, 「情報」に対する理解や認識が村人に形成されつつあること, 外部情報を積極的に取り入れ商人との売買交渉で対抗するようになったこと, 人の家族の移動が活発になってきたこと, 就労形態・方法や生活価値観に変化がみられること, 周囲の村との所得格差が解消しつつあること, 他方, 村人の一部に情報化に対する拒否反応・過剰適応の存在などが観察された。
著者
小川 晴也
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.47-54, 2006-11-15
被引用文献数
2

本稿の目的は,筆者が前考において提示したリスク・コミュニケーション改善のための「3つの限界」モデルを援用し,BSE対策見直しの事例を基に,リスク・コミュニケーションの構造をモデル化して提示することである。見直し後のBSE対策(米国・カナダ産牛肉の輸入プログラム)は日米両政府間におけるリスク・コミュニケーションの結果と考えられる。そこで本稿においては,米国・カナダ産牛肉に対する輸入禁止〜解禁〜再禁輸までの経緯を概説し,そこでの議論を本モデルにより分析可能であることを示す。また,本モデルを用いることによりリスクに関する議論を整理できることが可能となることを示す一方,議論が混乱する原因を考察し,リスク・コミュニケーション改善の可能性を考察する。
著者
稲垣 耕作
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.3-10, 1997-09
被引用文献数
3

本論文では文明の歴史をネットワークの歴史と重ね合わせる立場から, 文明のネットワーク史観を提案する。現代文明や歴史上の文明を見ると, それらはまさにネットワークによって支えられており, 新たなネットワークが生まれるところに, 新文明が誕生してきたものと考えられる。特に情報ネットワークは一種の複雑系とみなすべきであり, 今後はその創発現象を重視すべきである。また世界情報基盤構想や, 知のネットワークとしての宗教に注目することにより, ネットワークを進化させる普遍思想について本論文では検討する。地球規模の文明の目指すべき方向には, 相互の文化や文明を尊重しつつ, 日本や東洋からも独自の思想を発信し, 文化による平和を希求することが重要であり, 情報ネットワークにおける創発的な方法での文明の進化が求められていることを考察する。
著者
稲垣 耕作
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-61, 1997-09
被引用文献数
4

著者は複雑系の分野で創発仮説を提唱している。創発仮説における超指数法則は自然界のみならず, 社会における自己組織化と進化, 産業分野における技術革新や収穫逓増則などにおいても隠された法則となっている可能性がある。本論文では著者が1980年代半ばから提案してきたコンピュータの30年周期説を取り上げ, この説が超指数法則を元にして提案されたものであることを述べるとともに, いくつかの側面からその妥当性を検討する。コンピュータの30年周期説に基づけば, 21世紀初頭にはコンピュータは更に一段の進化を遂げる可能性がある。また情報ネットワークというコミュニティウェアにおける新文化の発生を含めた創発現象が今後の興味ある問題であると考える。