著者
谷藤 幹子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.372-384, 2015-08-01 (Released:2015-08-01)
参考文献数
22

オープンアクセスという新たな論文配信を転機として,日本政府は,日本発学術誌の国際発信力強化を支援し,同時に日本発論文のオープンアクセス化を後押ししている。学協会,図書館,大学・研究機関は,この政府方針を受けて何らかのオープンアクセス化に取り組み,何らかの方法でその成果を示す期待の中に置かれている。本稿では,投稿者負担金(APC)を含めオープンアクセスジャーナルの今後の課題や可能性を視野に,物質・材料研究機構(NIMS)が支援する材料科学分野でのゴールドオープンアクセスジャーナル『Science and Technology of Advanced Materials(STAM)』誌を例に,前稿からの5年の歩みに学ぶ安定的運営と発展するための出版条件を考察する。
著者
松尾 豊
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.597-605, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
19

本稿では,人工知能の近年の発展,特に最近大きな注目を集めているディープラーニングに焦点を当て,その研究の動向を解説する。画像認識等に用いられる畳み込みニューラルネットワーク,リカレントニューラルネットワーク,あるいは強化学習との組み合わせについて述べる。さらに,今後のディープラーニングの発展について述べる。そして,データ共有におけるディープラーニングの適用の可能性について,データベースの統合,画像認識の活用という2点から説明する。最後に,ディープラーニングを活用することによる日本のものづくりの可能性を述べ,本稿をまとめる。
著者
沖山 翔
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.650-657, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
4

医療情報はインターネット上にあふれているが,その信頼性は必ずしも高いとはいえない。オンライン病気事典MEDLEY(メドレー)は数百名の医師が共同編集する医療情報提供Webサイトである。ここでは医師のみが記事を記し更新することでその正確性を担保し,年間10万回の改訂によって最新の知見が集められる体制をとっている。また疾患,症状,医薬品,医療機関,医学論文といったデータベース同士の関係性を定義することで,症状や年齢,性別から,それに合致した疾患を演繹する「症状チェッカー」などのツールを開発している。MEDLEYとそのツールについて概括するとともに,情報処理アルゴリズムについて,種類ごとの特徴と医療にもたらし得る価値について考察した。
著者
細川 聖二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.156-164, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
参考文献数
27

電子ジャーナルの安定的利用と長期的保存に対応するため,世界中の図書館や出版社がさまざまなアーカイブ・プロジェクトに取り組んでいる。本稿では,グローバルなダーク・アーカイブの代表的な事例として,学術コミュニティー(大学図書館,出版社)による共同運営事業であるCLOCKSSについて,どのような仕組みでアーカイブを実現しているのか,その概要を説明するとともに,日本において国立情報学研究所や大学図書館がCLOCKSSに参加し,電子ジャーナル等の長期的保存の一翼を担うに至った経緯について紹介する。
著者
石井 夏生利
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.271-285, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本稿は,「忘れられる権利」をめぐる一連の議論から明らかになった論点と,今後の課題を論じることを目的とする。具体的には,グーグルに検索結果からのリンク削除を命じた欧州司法裁判所の判決,英国貴族院の報告書,第29条作業部会の指針,グーグルの諮問委員会意見書の概要,および日本のヤフーが公表した有識者会議報告書および同社の対応方針を取り上げた。欧州司法裁判所の判決は,EUと米国のプライバシー保護に関する対立軸の中で下されたものであり,権利者保護に偏った判断といわざるをえない。同判決の判断基準が日本の法解釈に大きな影響を与えるともいいがたい。また,過去の情報の暴露は古典的なプライバシー侵害の問題であり,「忘れられる権利」は過去の議論の延長線上の問題としてとらえるべきである。他方,本判決およびその後の一連の議論は,検索エンジン事業者に削除基準を検討させる契機を与えるとともに,表現の自由や知る権利との関係で,削除した旨をWebサイト管理者や検索エンジン利用者に通知すべきか否か等の問題を提起した点において意義が認められる。

13 0 0 0 OA ArXiv創設20年

著者
GINSPARG Paul
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.415-420, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2 7
著者
菊池 健司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.11-18, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)

本稿では,全般的なトレンド情報収集の考え方を整理し,代表的な参考情報源(Webサイト・文献)を紹介している。トレンド情報には主に以下の4種類が存在する。(1)市場トレンド情報,(2)顧客トレンド情報,(3)技術・研究トレンド情報,(4)世の中トレンド情報。特に(4)の世の中トレンド情報を意識してウオッチしておくことが重要である。情報提供・管理ビジネスに携わる関係者は,情報選別の「選択眼」を磨く意識を常にもっておきたい。そして選択眼を磨くには,まずは多くの情報源に当たり,その特性を理解しておく必要がある。
著者
青木 崇
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.166-174, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
5

ブロックチェーンはビットコインの中核技術として登場した。ビットコインは2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物がインターネット上に掲載した文書を基に考案された電子通貨である。その背景としては,日進月歩で進化するIT技術に取り残された中央集権型システムの非効率性への不満や,プライバシー情報の取り扱いに関する不信感などがあり,中央集権型システムから個人が中心となる分散型システムへの移行が期待された。分散型システムを機能させるネットワーク技術にブロックチェーンを適用すれば,新たな社会が誕生する可能性がある。一方で,ブロックチェーンに関するさまざまな情報がそれぞれの立場で語られている状況であり,必ずしもビジネス実務や金融業務を正確に把握しないまま,過度にブロックチェーンを礼賛している風潮もあるので冷静な議論が必要である。また,技術的な観点だけではなく,社会科学的なアプローチによる議論の必要性にも言及した。