著者
喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.705-711, 2013-01-01 (Released:2013-01-01)
参考文献数
6
被引用文献数
2

米国が2億ドルの研究開発投資をするとの発表以来,「ビッグデータ」なるITキーワードが急に取り上げられるようになった。本稿では,ビッグデータの背景について述べると同時に,情報爆発,情報大航海プロジェクトを振り返りながら,その本質について考察する。加えて,ITメディアを取り上げ,動画を用いつつ,ビッグデータの有用性について具体的に紹介する。さらに,ビジネスにおけるビッグデータとして,プローブカーのセンサー情報利活用,科学におけるビッグデータの動きとして第4の科学に触れ,最後に,データの利活用を促進するためのエコシステムの必要性について論ずる。
著者
佐藤 翔
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.359-369, 2010 (Released:2010-10-01)
参考文献数
24

2009年1月,英国情報システム合同委員会(JISC)が『代替学術出版モデルの経済的影響:費用と便益調査』(『EI-ASPM』)と題した報告書を発表した。これはオープンアクセス雑誌,機関リポジトリ等のオープンアクセス出版の費用と便益が従来の購読出版モデルよりも優れているとするものである。本稿では『EI-ASPM』作成の背景と報告書の概要,発表後の議論の展開を紹介するとともに,『EI-ASPM』の意義と問題点を検討した。『EI-ASPM』は出版モデルの費用と便益を検討する枠組を提供した一方,分析結果は多くの仮定に基づいており,その内容をもとに政策提言を行うには慎重な取り扱いを要する。
著者
須田 義大 青木 啓二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.809-817, 2015-02-01 (Released:2015-02-01)
被引用文献数
11 7

現在,2020年までの自動運転の実用化を目指して日本,米国および欧州において技術開発が進められている。自動運転は人間に代わり認知,判断,操作を行う必要があり,高度な情報処理や走行制御が求められる。このため自動運転として,数台の車両が車群を構成して走行する隊列走行システムが開発された。この隊列走行システムを通じ,白線に沿って自動操舵する車線維持制御技術や車車間通信技術を用いた車間距離制御技術が開発された。隊列走行システムの後,現在一般道での自動運転を目指した技術開発が行われており,キー技術として,制御コンピューターの故障時における安全を確保するフェイルセーフ技術や障害物を確実に認識するためのローカルダイナミックマップ技術およびAI化を中心とした自動運転アーキテクチャーが開発されている。
著者
山田 有美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.562-570, 2012-11-01 (Released:2012-11-01)

America Invents Act(AIA)が特許調査に与える影響について説明する。特に,2013年3月16日以降に有効出願日がくる特許出願は先発明主義から先願主義に変わり,AIAは先行技術の範囲に影響を及ぼす。また,特許調査によって得られた先行技術をいかにして使用するかに影響を及ぼすAIAによって変更または新たに制定された制度,「第三者による特許成立前の情報提供」,「付与後レビュー」,「補足審査システム」についても説明する。「第三者による特許成立前の情報提供」は安い費用で無効となるべき特許の成立を妨げうる制度である。「付与後レビュー」は新しく制定された制度で無効事由が制限されていない。このようにAIAは特許調査の重要性を高めるといえるだろう。
著者
福井 健策
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.661-668, 2014
被引用文献数
1

日本が今,貴重な予算をかけても早急に整備すべきインフラは「知のインフラ」である。欧米がその整備にしのぎを削る文化資料の巨大デジタルアーカイブについては,わが国でも価値ある活動は少なくないが,その多くは「ヒト・カネ・著作権」というべき課題にあえいでいる。特に大量の文化資料をデジタル公開しようとすれば権利処理の手間は膨大となり,わけても,探しても権利者が見つからない「孤児作品」の問題は深刻で,欧米でも対策が進む。わが国でも権利処理を推進するために,(1)権利情報データベースの整備,(2)パブリックライセンスの普及,(3)孤児作品対策を含むアーカイブ法制の立案,などの対策を早急に進めるべきである。
著者
林 和弘 黒沢 俊典 松田 真美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.408-415, 2012-09-05 (Released:2012-09-01)
参考文献数
8

MEDLINEに収録されている医学系雑誌のうち,日本が発行国のものについて,発行形態,電子ジャーナルプラットフォーム利用状況,Science Citation Indexの採録状況について調査を行ったところ,非商業誌が多く,電子ジャーナル化率が非常に高いことがわかった。また,Science Citation Indexにも採録されている雑誌のインパクトファクターを分析したところ,国内外のプラットフォーム利用でほとんど差がないことがわかった。また,インパクトファクターの経年変化を見ると,日本の電子ジャーナルプラットフォームを利用している雑誌のインパクトファクターの伸びは,他海外プラットフォームを利用している雑誌と比べて大きいことがわかった。さらにその国内外のプラットフォーム利用別にオープンアクセス化の状況を見ると,国内プラットフォーム利用のオープンアクセス化が非常に高く,両者に大きな差があることがわかった。
著者
山崎 重一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.412-419, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)
参考文献数
2

ブロックチェーンの定義に迫るためには,まずユースケースの具体化による知見の集積と分析が不可欠である。「ブロックチェーン・エコノミー」とは,ブロックチェーンを前提とする未来の経済圏だが,本稿では,コンセンサスとガバナンスの視点から,ブロックチェーン・エコノミーを題材にブロックチェーンの概念の整理と分析を試みる。ブロックチェーン技術は,仮想通貨を超えたより汎用的な技術的イノベーションとして期待されているが,ブロックチェーン技術を,仮想通貨を超えて拡張しようとすると,複雑なエコシステムが登場する。複雑なエコシステムを整理するために,技術,経済,法制度の3層に分けて分析した。
著者
北本 朝展 川崎 昭如 絹谷 弘子 玉川 勝徳 柴崎 亮介 喜連川 優
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.413-421, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3

地球環境情報統融合プログラムDIASは,大規模かつ多様な地球観測データを中心に,社会経済データなどとも統融合することで,環境問題など社会課題の解決に有用な情報を国内外に提供することを目的とする。DIASは研究データの基盤システムを構築するだけでなく,基盤システム上のアプリケーション開発を主導するコミュニティを確立している点で,世界的にもまれなプロジェクトである。本稿ではまずDIASの概要を紹介し,DIASが基盤システム,アプリケーション開発,研究開発コミュニティという3つのシステムから構成されることを述べる。次にデータ共有の観点から,データアクセス,メタデータ,データポリシーに関するDIASの考え方をまとめる。そして,DIASが国際的な社会課題解決に貢献した例として,チュニジアを対象に行った気候変動予測に基づく洪水対策の立案に資するデータ統合解析を紹介する。最後にDIASの研究開発における今後の方向性について考える。
著者
平野 千博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.371-379, 1999 (Released:2001-04-01)
参考文献数
13

「科学技術」という言葉は,現在では広く日本社会に定着し,普通に使われる言葉となっているが,日本語としては比較的新しく登場した言葉である。他方,この言葉には独特の語感があることから,あえてこの言葉の使用を避けようとする識者もいるなど,時折論議の対象となる言葉でもあった。本稿においては,「科学技術」という言葉のもともとの意味は何であったのか,どのような時代背景の下で日本社会に登場してきたのかを探るとともに,これまでこの言葉が使われてきた状況の中から,この言葉が獲得するに至った語感とその現代的な意義について検討する。
著者
真野 浩
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.391-402, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)
参考文献数
4

ウェアラブルデバイスや制御機器,センサー,スマートフォン,スマート家電などインターネットに接続する情報機器が急速に拡大し,これらを称してIoT(Internet of Things)時代の到来が広くうたわれている。しかしながら,現在普及しつつあるIoT産業の多くは,サービスとデバイスが密に結合した垂直統合型にとどまっており,本来インターネットのもつ自律分散,相互接続による創造的な産業革新を引き起こすには至っていない。そこで,開かれた真のIoTを実現するには,デバイスに依存しない自律分散型相互接続と,接続される情報のオーナーシップ,価値の配分,プライバシー,公平性を確保する仕組みが必要となる。本稿では,これらの課題を解決し,スケーラビリティーのある新しい情報流通交換の仕組みとして,オープンなデータ取引市場を実現する取り組みについて概説する。
著者
住本 研一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.919-928, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
3

「情報管理」誌は,創刊以来60年間にわたってその時々の科学技術情報に関するトピックスをとらえてきた。2007(平成19)年度に50周年を迎えるに当たって50年間の記事等のまとめを行った。今号をもって休刊となるに当たり,それ以降10年間の記事の一部を紹介する。最近の情報流通分野の変化は非常に激しいが,記事を通じて振り返ることで最近10年間に起きた変化を俯瞰したい。
著者
今村 文彦 佐藤 翔輔 柴山 明寛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.241-252, 2012-07-01 (Released:2012-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

東北大学災害科学国際研究所では,総務省,国立国会図書館,文部科学省,科学技術振興機構,全国および東北企業,海外などの80を超える機関と連携して,東日本大震災に関するあらゆる記憶,記録,事例,知見を収集し,国内外や未来に共有する東日本大震災アーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」を展開している。本プロジェクトは,今回の震災の被災地を中心にして,歴史的な災害から東日本大震災について分野横断的な研究を展開し,東日本大震災の実態の解明や復興に資する知見の提供を進めていく。これらの取り組みは,低頻度巨大災害の対策・管理の学問を進展し,今後発生が懸念される東海・東南海・南海地震への対策に活用する。本稿では,産学官民の連携を通した活動の事例について紹介する。
著者
徳永 勝士
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.882-886, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
2

人類遺伝学あるいはゲノム医学分野においては,医学研究のみならずゲノム医療の発展のためにも,疾患遺伝子変異のデータ共有の重要性が高まっている。日本人類遺伝学会は,独自の簡易データベースを備えたオープンアクセスジャーナル「Human Genome Variation」を2014年から出版している。その構想から創刊まで,さらに現状と今後の課題を述べる。
著者
柴藤 亮介
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.709-715, 2015-01-01 (Released:2015-01-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

近年,アイデアをもつ人が不特定多数の支援者からインターネット経由で資金を募るクラウドファンディングの取り組みが盛り上がりをみせている。当初は,災害復興やスポーツ,音楽,映画,地域活性化などに関するプロジェクトが立ち上げられ,数々のプロジェクトが目標とする支援金額を集めることに成功した。ここ2,3年では,国内外で研究費獲得のためのクラウドファンディングが盛んに実施されるようになってきている。本稿では,世界の学術系クラウドファンディングの現状を整理するとともに,国内初の取り組みである「academist(アカデミスト)」の紹介を通して,学術系クラウドファンディングの可能性について考えていきたい。