著者
師 茂樹 石井 公成 吉田 叡禮
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-07-25)

平成27年度においては、沙門宗『因明正理門論注』の校訂と現代語訳の作成(一部)を進めた。本文献は国内外の仏教論理学研究者(インド論理学、東アジア仏教論理学)のあいだで注目されており、概要について論文を発表(『東アジア仏教研究 』)したほか、国内で二度、本文献に関する研究会が開催され、概要の報告、現代語訳の検討等を行なった。未翻刻文献を翻刻することを通じて東アジア仏教研究の再構築をはかる、という本研究の方法論は、本文献の「発見」とその後の反響によって、その妥当性が明らかになったとも言えるだろう。加えて平成27年度においては、新たな未翻刻文献として佛教大学所蔵『大智度論略鈔』の翻刻・校訂、鳳潭『因明論疏瑞源記』(一部)のデジタル化、水木家資料・唯識比量の翻刻とデータ入力等を行った。前者は、慧影、霊見、僧侃らの『大智度論』注釈からの引用が多く、南北朝から隋の仏教を知る資料として価値があると考えられる。当初の計画では、最終年度にこれまでの翻刻・校訂作業をまとめた報告書を作成し、研究者に配布する予定であったが、校訂作業等に予定以上の時間がかかり、年度内の公開には至らなかった。もっとも校訂作業自体は進んでいるので、できるかぎり早い段階で報告書として公開したいと考えている。報告書には、聖語蔵所収『法華決釈記』『法華略讚嘆』『法華経二十八品略釈巻上』『金剛般若經疏』、佛教大学図書館蔵『大智度論略抄』を収録する予定である。沙門宗『因明正理門論注』については、上記の通り、すでに大きな反響を得ているため、報告書とは別の形での発表を考えている。校訂を行なっていない文献についても、デジタルデータを公開する予定である。
著者
師 茂樹
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.58-65, 2010-12-20
著者
護山 真也 小野 基 稲見 正浩 師 茂樹
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

東アジアの知的遺産である因名学をインド仏教認識論・論理学研究との連携の上で再評価することを目指す本研究は、年度内に2回開催された研究会を中心として、以下の実績を挙げた。1. 『因明入正理論』(Nyayapravesaka)については、ジャイナ教徒による注釈文献のデータベースの構築が進められるとともに(稲見)、基の『因明入正理論疏』の解読研究が継続されている(護山)。一方、『因明正理門論』については、聖語蔵の中に師が発見した沙門宗『因明正理門論注』が散逸した古注の情報を含む貴重な資料であることが判明した。今年度は、この資料が扱う「過類」(ジャーティ)の箇所を精読し、さらにジネーンドラブッディの注釈から再構築される『正理門論』梵文とその注釈と比較検討することにも着手した。また、印度学仏教学会第66回学術大会において「過類をめぐって」のパネルを企画し、小野・室屋・渡辺の各氏による発表が行われた。2. これら因明学の基礎となる資料をもたらした玄奘とその弟子である基の思想形成に影響を及ぼしたと考えられる護法の教学についても考察が加えられた。特に、これまで研究が遅れていた『唯識二十論宝生論』と基の『二十論述記』の記述を「他心知」が扱われる最終部に限定して比較検討し、有形象認識論の形成とその受容の問題が指摘された。3. 日本における因明研究の歴史を振り返り、特に明治期に大西祝等により西洋哲学・論理学が紹介される際に、江戸期までの因明研究の素地が有効に機能したこと、宇井伯寿等の近代仏教学の確立により、梵語原典による研究が進む中で、その伝統が失われてゆく受容史が明らかにされた。4. インド仏教論理学研究の最前線を知るために、ライプチヒ大学を訪問し、新出梵語仏典である『量評釈荘厳』に対するヤマーリ注のテキスト校訂に立ち会い、インド仏教論理学における解釈作法の議論を確認した。
著者
師 茂樹
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:18840051)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1126-1132, 2015-03-25

雲英晃耀(きら・こうよう,1831-1910)は,幕末から明治時代にかけて活躍した浄土真宗大谷派の僧侶で,キリスト教を批判した『護法総論』(1869)の著者として,また因明の研究者・教育者として知られる.特にその因明学については,『因明入正理論疏方隅録』のような註釈書だけでなく,『因明初歩』『因明大意』などの入門書が知られているが,その内容についてはこれまでほとんど研究されてこなかった.雲英晃耀の因明学については,いくつかの特徴が見られる.一つは実践的,応用的な面である.雲英は国会開設の詔(1881)以来,因明の入門書等を多数出版しているが,そのなかで共和制(反天皇制)批判などの例をあげながら因明を解説している.また,議会や裁判所などで因明が活用できるという信念から因明学協会を設立し,政治家や法曹関係者への普及活動を積極的に行った.もう一つは,西洋の論理学(当時はJ. S. ミルの『論理学体系』)をふまえた因明の再解釈である.雲英は,演繹法・帰納法と因明とを比較しながら,西洋論理学には悟他がないこと,演繹法・帰納法は因明の一部にすぎないことなどを論じ,西洋論理学に比して因明がいかに勝れているかを繰り返し主張していた.そして,三段論法に合わせる形で三支作法の順序を変えるなどの提案(新々因明)を行った.この提案は西洋論理学の研究者である大西祝や,弟子の村上専精から批判されることになる.雲英による因明の普及は失敗したものの,因明を仏教から独立させようとした点,演繹法・帰納法との比較など,後の因明学・仏教論理学研究に大きな影響を与える部分もあったと考えられる.
著者
師 茂樹
出版者
好文出版
雑誌
漢字文献情報処理研究
巻号頁・発行日
no.15, pp.97-99, 2014-10
著者
師 茂樹
出版者
春秋社
雑誌
春秋 (ISSN:13436198)
巻号頁・発行日
no.533, pp.20-23, 2011-11
著者
赤間 亮 川村 清志 後藤 真 野村 英登 師 茂樹
雑誌
じんもんこん2004論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.259-267, 2004-12-09

このパネルディスカッションは、デジタルアーカイブに「人文系からの視点が欠けている」という本シンポジウムの問題意識を受け、その人文科学における意義を改めて問い直し、「真の活用」の道筋をさぐるための議論を行うことを目的とする。本稿は最初の師による問題提起に続けて、各パネリストのポジションペーパーを五十音順でならべている。
著者
師 茂樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.51, pp.31-37, 2005-05-27
被引用文献数
4 or 0

デジタルアーカイブの目的として「文化の次世代への正しい継承」ということがしばしば言われる。しかし、文化が変化を前提としていると考えれば、デジタルアーカイブによって「次世代への正しい継承」はできず、場合によってはそれを阻害する可能性もある。また、デジタルアーカイブによる「次世代への正しい継承」という言説の背景には、研究者やデジタル技術による特定イデオロギーへの権威付けや、国家政策との関連が見出される。デジタルアーカイブは、むしろ、このような運動を相対化する方向で活用されるべきではないだろうか。``The right succession to the next generation of culture'' is often said as a purpose of digital archives. However, given that culture always changes, ``the right succession'' can not be attained by digital archives, but may be disturbed in some cases. Moreover, investigating the background of ``the right succession,'' we can find the authorization to the specific ideologies by the researchers or the digital technologies, and relation with a national policy. We suggest that digital archives should be developed and utilized in order to deconstruct such movements.
著者
近藤 無滴 星野 純子 村上 紀夫 福島 幸宏 師 茂樹 後藤 真
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.8, pp.1-8, 2014-05-24

本報告では、時空間情報技術を用い地蔵盆と 「お地蔵さん」 の現状と変化の分析をおこなうためのデータ作成と整理について述べた。過去の研究によると、関西では一般的な行事である地蔵盆が近年の高齢化・少子化により変化し、簡略化あるいは行われない地域が増加しているとされている。また、地域では 「お地蔵さん」 の維持管理ができなくなり、寺院へ預ける地域が増え、路地に点在する 「お地蔵さん」 の数が減少しているともされている。そこで、本報告では京都を対象として、フィールドワークを行い、GPS カメラ等を用いてデータの収集を行った。そのデータに時空間情報技術を活用して、「お地蔵さん」 と地蔵盆の現状を記録、変化・傾向を様々な面から分析し、先行研究の妥当性について検証した。これにより、「お地蔵さん」 ・地蔵盆の研究において、時空間情報の活用が有効である実践例を示すと同時に地域のお地蔵さんのデータのアーカイブを行った。In this paper, using the spatiotemporal data technology, we would like to analyze the changing of "Ojizosan" and "Jizobon." According to the previous studies, although "Jizobon" is a common event in Kansai Area, the events are decreasing in number, or being simplified due to declining birthrate and aging poplulation. Moreover, in many regions "Ojizosans" are entrusted to the temples, because the residents can no longer maintain them. Therefore, the number of "Ojizosans" on the roadsides is decreasi ng. We are collecting the data through fieldwork in Kyoto using GPS cameras in order to record the current status of "Jizobon" and "Ojizosan," analyze their change using the spatial and temporal information technology, and verify the validity of the previo us studies. In this paper, we demonstrate that the spatial and temporal information technology is useful for the analysis of "Ojizosan" and "Jizobon," and an example of the digital archive of the regional "Ojizosan."