著者
筒井 俊春 前道 俊宏 飯塚 哲司 鳥居 俊
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.151-157, 2020-04-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
21

本研究は野球選手の発育に伴う慣性値の変化を暦年齢ならびに相対発育の2つの発育指標から明らかにし,肘障害予防の一端を担うことを目的とした.対象は小学生から大学生までの野球選手133名とした.DXA装置を用いて全身スキャンをし,Ganleyの慣性モーメントの算出法に準じて,前腕・手部慣性値を算出した.また,肩甲帯部除脂肪量に対する前腕・手部慣性値を示す慣性値比,野球ボール保持想定での慣性値比を求めた.さらにアロメトリー法を用いて身長に基づく相対発育の観点から慣性値比および野球ボール保持想定での慣性値比の変位点を求めた.慣性値比は12歳頃,または身長約150cmでピークとなり,この時期には肘障害のリスクが高まることが示唆された.
著者
生田 啓記 谷 万喜子 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-123, 2017-03-31 (Released:2019-05-27)
参考文献数
16

膝関節における運動器疾患では内側広筋の筋緊張低下の改善に難渋する.本研究は循経取穴による鍼刺激が膝関節伸展運動時の大腿四頭筋の筋機能に与える効果を検討した.対象は健常者9名とした.課題は経穴刺激(太白穴),非経穴刺激,無刺激とし,膝関節伸展を膝関節屈曲60°,最大随意収縮60%での等尺性収縮で置鍼刺激開始前,開始直後,5分後,10分後,15分後で行い,内側広筋斜頭,内側広筋長頭,大腿直筋,外側広筋の表面筋電図を各3回5秒間計測した.経穴刺激群での内側広筋斜頭の筋電図積分値は,置鍼刺激15分後に有意な低下を認めた.太白穴を用いた鍼治療では置鍼15分後において内側広筋斜頭の疲労緩和と筋機能向上に対する効果がみられた.
著者
後藤 志帆
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.25-32, 2017-12-15 (Released:2019-01-31)
参考文献数
81

Anterior cruciate ligament (ACL) injury is a major concern of the young athletes who are engaged in sport activities. Regardless of the number of research studies focusing on prevention of ACL injury, the incident of ACL injury has steadily increased. Problems associated with ACL injury includes financial burden, short- and long-term decreased physical functionality, high recurrence rate, and early development of osteoarthritis. Thus, prevention of ACL injury is critical. The purpose of this evidence-based report is to provide overview of ACL injury, including mechanism of injury, prospective risk factors, factors associated with prospective risk factors, effectiveness and efficacy of injury prevention exercise, and suggestions for future study to help develop effective ACL prevention strategy.
著者
石郷岡 旭 山本 利春 笠原 政志
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.125-132, 2017-03-31 (Released:2019-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3

運動部活動におけるスポーツトレーナー(以下:トレーナー)介入の実態を調査するため,高等学校の部活動指導者814名に質問紙調査を行った(回収率34%).その結果,多くの指導者がスポーツ傷害への対応に困っており,それらの対応や予防を期待し,トレーナーの介入を望んでいたが,トレーナーの介入率は32%と少なかった.トレーナーが介入している部活動では,競技成績の向上や怪我の減少等の介入効果を実感している指導者が多いことが明らかとなった.トレーナーの介入を実施していない部活動では,金銭面や指導者のトレーナーに対する認識不足が,介入に至らない原因と考えられ,高等学校運動部活動へのトレーナーの介入には,これらの問題点についての検討が必要であることが推察された.
著者
八戸 美朱 倉持 梨恵子 榎 将太 德武 岳
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.171-177, 2020-04-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
10

大学キャンパス内のAED設置場所の認知度および認知度に影響する要因について検討した.C大学スポーツ系学部を対象に,基本的属性およびAED設置の有無について質問紙調査を実施し,451名からの回答を分析した.AED設置場所の認知度に関する正答数の中央値(正答率)5(25.0%)であり,所属学科によって有意な差が認められた.所属部活動の最寄りのAEDの正答者割合は67.6%であった.正答数別にみると,多くの学生がAEDの設置有無を認識しておらず,また,所属学科が正答数に強く影響していた.日頃の活動場所でも約3割の運動部活動生が誤認識をしており,更なる教育を通した認識の改善が必要であると考えられた.
著者
越田 専太郎
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.121-126, 2019-04-30 (Released:2019-11-13)
参考文献数
38

Judo has been recognized as a high-risk sport for shoulder and elbow injuries. However, there is a lack of scientific evidence regarding their prevention strategies. Also, to the author’s knowledge, there is no intervention study aiming for the prevention of shoulder and elbow injury for judo athletes. Therefore, this overview paper provides current information regarding the epidemiology, common pathology, and injury situation/mechanisms of judo-related shoulder and elbow injuries. In addition, based on previous epidemiological data, the author suggests a possible prevention strategy for the injuries, and the future direction of judo injury prevention research.In judo, glenohumeral (GH) joint injuries (including the GH anterior dislocation), acromioclavicular joint separation, and fracture of the clavicle are the most common acute types of shoulder injuries, whereas elbow posterior dislocation and ulnar collateral ligament (UCL) injury are the most common acute types of elbow injuries. Chronic-overuse elbow injuries are also common in judo athletes, especially occurring on the turite side (the side on which the sleeve is grabbed).It has been reported that judo-related shoulder and elbow injuries frequently occur when falling on an outstretched arm (i.e. FOOSH mechanism) or a shoulder directly. Furthermore, arm lock techniques are the frequent cause of acute UCL injuries. Seoi-nage techniques may be associated with the occurrence of both acute and chronic types of shoulder injuries as well as chronic elbow injuries in judo athletes.Recognizing the high-risk situation and improving the breakfall (i.e. ukemi) may play an important role in preventing judo-related shoulder and elbow injuries from occurring. Likewise, young judo athletes who overuse seoi-nage techniques need to be identified, due to the greater risk of elbow injury associated with these actions.
著者
宮下 浩二 播木 孝 小山 太郎 太田 憲一郎 谷 祐輔 衛門 良幸
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.155-161, 2019-04-30 (Released:2019-11-13)
参考文献数
26

後方動揺性がある肩関節の外旋筋群に対するストレッチングにより外旋筋力に与える影響を分析した.対象は大学生20名とし,肩後方動揺性が陰性の安定群(10名)と陽性の動揺群(10名)に分類した.肩外旋筋力測定は,抵抗下外旋運動の前,後およびsleeper stretch後の順に計3回実施した.抵抗下外旋運動前の筋力を100として他の筋力を換算した.安定群は抵抗下外旋運動後93±10,ストレッチング後105±13だった.動揺群は同様に92±10,95±10だった.ストレッチング後に動揺群が安定群より有意に低かった.安定群では抵抗下外旋運動後よりもストレッチング後に有意に増加した.肩後方動揺性を有する場合,外旋筋群のストレッチングの実施により抵抗下外旋運動後に低下した筋力が回復しない可能性があると示唆された.
著者
小黒 喬史 広瀬 統一
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.141-147, 2018-04-30 (Released:2019-01-10)
参考文献数
13

高校年代の野球選手において投球過多が問題となっている.本研究では投球をおこなう間隔日数(登板間隔)に着目し,異なる登板間隔で投球課題を実施することによって,投球パフォーマンスにどのような影響を及ぼすのかについて比較検討した.その結果,身体機能および投球フォームについてはいずれの条件においても有意差は示されなかったが,球速についてはいずれの条件でも球速低下は生じたものの,中2日での登板は連投および中1日での登板に比べて有意に球速の低下を抑えることができた.以上の結果より投球パフォーマンス維持の効果が発揮され始めるためには,登板後少なくとも2日以上の休息日を設けることが必要であることが示唆された.
著者
岸本 恵一 神田 かなえ 日下 昌浩 大槻 伸吾 大久保 衞 前田 正登 柳田 泰義
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.67-70, 2017

<p>アメリカンフットボール競技の現場で重症度判定が適切でなかった熱中症の症例を経験した.主訴は全身性筋痙攣であり,当初は意識清明であるとの評価から軽症な熱中症を疑ったが,採血結果から重症熱中症(III度熱中症/熱射病)と診断された.スポーツ現場で利用可能な重症度判定指標は限られるため,暑熱環境下での体調不良は重症熱中症の可能性を疑い,可及的早期に病院を受診することが望ましい.</p>
著者
宮下 浩二 小山 太郎 太田 憲一郎 谷 祐輔 岡棟 亮二
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.55-60, 2018

<p>プレシーズンにおいて投手の肩外転筋力の日常的な変動の実態を明らかにするため,大学野球の現場で投手の肩外転筋力を継続的に測定した.肩外転筋力は1日目96±18N,2日目101±16N,3日目103±18N,4日目108±16N,5日目113±17Nだった.1日目と4日目および5日目の間に有意差が認められ(p<0.01),また2日目と5日目の間にも有意差が認められた(p<0.05).今回の結果は試合期に向けたプレシーズンにみられる投手の肩の特徴とも考えられる.</p>
著者
江波戸 智希 広瀬 統一 小野 高志
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-50, 2016

<p>Yo-Yo Intermittent Recovery Test Level 1(Yo-Yo IR1 test)の走行距離とYo-Yo IR1 test時の最大下心拍数の関係をシーズンを通じて縦断的に評価し,最大下間欠的運動能力評価法(Yo-Yo 6分間テスト)の有用性を検討することを目的とした.プレシーズン初期,プレシーズン後期,インシーズン中期を評価対象期間とした.その結果,Yo-Yo IR1 testの走行距離とYo-Yo IR1 test時の最大下心拍数は近似した変化を示した.したがって,Yo-Yo 6分間テストの心拍数を縦断的に評価することにより,選手に最大努力での運動を強いることなく間欠的運動能力の変化をある程度推定できるものと考えられ,Yo-Yo 6分間テストは間欠的運動能力のコンディション評価法として有用であることが示唆された.</p>