著者
小田 桂吾 大垣 亮 廣野 準一 山田 恵子 宮川 俊平
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.207-211, 2021-04-30 (Released:2021-08-19)
参考文献数
18

本研究は,国内大学女子バスケットボール選手を対象に1シーズンの前向き傷害調査を行い,その実態を明らかにすることを目的とした. 発生した傷害は延べ13件で,傷害発生率は1.36件/1000 player-hoursで、受傷部位は,足関節が6件で最も多かった.全傷害のうち,復帰まで29日以上を要する重症度の高い傷害が84%を占めていた.先行研究と比較して,競技復帰まで長期間であったことから,今後,傷害発生予防に向けた取り組みの必要があると考える.
著者
来住野 麻美 坂田 淳 玉置 龍也
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.59-65, 2021-10-31 (Released:2021-11-26)
参考文献数
16

本研究は,股関節機能と投球動作中の下肢キネマティクスに着目し,肘内側障害に影響を及ぼす因子を前向きに検討した.学童期野球投手61名の投球動作を三次元動作計測システムと床反力計を用いて計測した.その後1年間,肘内側障害発生を調査し,各パラメータを発生群と非発生群で比較分析した.次に動作中のキネマティクスが障害を予測できるかロジスティック回帰分析を用いて検討した.障害発生率は29.5%で,ロジスティック回帰分析の結果よりFC時の軸足膝関節内外反が障害発生を有意に予測できる(OR=0.901,CI: 0.816 - 0.995,p=0.039)とされた.以上より学童期の肘内側障害予防においては軸足機能の評価・介入が重要である可能性が示唆された.
著者
塩田 真史
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-34, 2018-10-31 (Released:2019-01-26)
参考文献数
53

Osgood-Schlatter disease (OSD) is a well-documented clinical condition particularly in adolescent athletes. In recent years, the pathology and the factors associated with the onset has been clarified by applying the new evaluation tools and increasing in the longitudinal studies .On the other hand, there are few reports about the effect of the therapeutic exercises. Detection and intervention in early stage is required for the early return to sports. This article reviewed the scientific evidences about the pathology and the factors associated with the onset , diagnosis and treatment of OSD.The current consensus on the pathophysiology of OSD is that it is a traction apophysitis of the proximal tibial tubercle resulting from repetitive microtrauma at the stage of relatively weak strength of the tibia tuberosity. Flexibility, muscle strength, growth, and kicking motions are factors that may cause OSD. These factors have generally been reviewed retrospectively and there have been a few prospective studies. For the early detection, it is important to imaging physical examinations such as pain regularly. Current treatment protocol for OSD is conservative, consisting primarily of rest, icing, NSAIDs, and therapeutic exercise. Although therapeutic exercise is the most important treatment that therapists and trainers associate with, the effects of exercises has not been established. In future, the appropriate treatment protocols especially therapeutic exercise according to pathological conditioning and the factors associated with the onset should be established.
著者
箱﨑 太誠 川本 将太 﨑濱 星耶 倉持 梨恵子
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.189-195, 2021-04-30 (Released:2021-08-19)
参考文献数
17

本研究は日本の大学アメリカンフットボール選手を対象に,頭部衝撃の影響が評価できる輻輳近点の測定を合宿期間中における2回の練習それぞれの前後(4時点),秋季リーグ戦の2試合それぞれの前日と翌日(4時点),及びベースライン値の測定を含めて9時点で実施した.その結果,ベースライン値と比較して,合宿の練習後や試合翌日に輻輳近点が有意に増加していた.今後は頭部衝撃の曝露量を定量化し,輻輳近点への影響を調査していく必要がある.
著者
辰見 康剛
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.105-112, 2020-10-31 (Released:2020-11-28)
参考文献数
20

本研究ではAT理論試験を控えた受験生の心理変容を検証し,その要因から指導者に求められる心理的な支援方法を検討した.その結果,受験生を全体だけではなく,個別に捉える必要性が示された.また,学習成果の適切なフィードバック,早期からの学習計画の立案,資格試験と同等の経験を得ることや積極的な疲労回復などの実践を促進する支援が必要であると示唆された.指導者には個人差に応じた積極的な心理的支援の実践が望まれる.
著者
藤田 英二 末次 真啓 森崎 由理江
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.45-52, 2017-12-15 (Released:2019-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究は,サッカー競技現場でのアイスバスによる運動間アイシングの導入を想定し,運動間に行うアイスバスによるアイシングが,後半の運動能力に及ぼす効果について検証を行った.大学サッカー部に所属する男子選手13名を対象とし,実際の試合における前半と後半を想定したYo-Yo Intermittent Recoveryテスト(YYIRテスト)を行わせた.運動間に下肢をアイスバスにてアイシングする条件と,座位にて安静させる条件の2条件で,YYIRテストの走行距離,大腿の皮膚温,膝伸展筋力,垂直跳び跳躍高,ならびに30m走タイムを測定して比較した.主な結果として,アイスバス条件では後半のYYIRテストの走行距離低下を抑制し,間欠的高強度運動能力への効果が認められた.しかし,垂直跳び跳躍高ならびに30m走タイムが低下し,瞬発的な運動能力への負の影響がみられ,実際の競技での応用にはre-warm upの必要性を強く示唆するものであった.
著者
網代 広宣 小林 雄也 平田 昂大 板野 圭佑 佐藤 慎也 酒井 直也 仲島 佑紀
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.49-55, 2023-10-31 (Released:2023-11-07)
参考文献数
18

本研究は117名の高校野球選手を対象にCOVID-19感染拡大防止措置が実施された年と前年の傷害発生率を調査し比較した.季節別では,2019年と比較し,2020年の夏季で肩・肘傷害,冬季は足・足部傷害が増加した.各季節のポジション別では,夏季の投手・内野手の肩傷害,秋季で内野手の肘傷害,冬季で外野手の足・足部傷害が増加した.今後は得られた特徴より,傷害予防を講じていく必要がある.
著者
宮下 浩二
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-67, 2023-10-31 (Released:2023-11-07)
参考文献数
8

大学野球選手119名を対象に,身体操作に影響を及ぼす主観的要因に関するアンケート調査を行った.「実際のプレーと自分のイメージが一致するか?」の問に28%が「一致しない」と答えた.その要因としてオッズ比が一番高かったのは「身体感覚の低下」の35.56であった.次いで「瞬発力の低下」の8.05,「筋力の低下」の3.74の順であった.これは,大学生年代でも身体感覚の低下が生じており,スポーツ動作に影響を与えている可能性が示唆された.
著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.83-93, 2022-10-31 (Released:2022-11-19)
参考文献数
30

高校野球現場の熱中症予防に関する全体的な実態を明らかにし,今後の熱中症予防を推進していく上での課題を検討することを目的とした.質問内容は,熱中症予防に関する知識・態度・実践(KAP),実践する際の促進要因と阻害要因についてであった.その結果,選手・指導者ともに態度は良好であったものの,知識と実践については十分ではなかったため,教育の強化をしていく必要がある.また,選手と指導者間でKAPのスコアにはギャップがあり,熱中症予防の実践にあたっては,他者の存在に影響を受ける可能性が高いことから,選手と指導者がコミュニケーションを取って共通認識を高めることが,熱中症予防を強化する一助になると考えられる.
著者
山本 利春 笠原 政志 清水 伸子
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.101-108, 2020-04-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1

学校現場において,救急対応やスポーツ外傷・障害予防の必要性は高く,その対応を担う専門家が具体的に介入することが有用ではあると考えられるが,学校現場の多くにおいて,児童・生徒の事故やスポーツ外傷・障害に対して最初に対応しなければならないのは教員である.つまり,その教員が救急対応やスポーツ外傷・障害予防のコンディショニングに対して正しい知識を持って的確に対応できることが,学校現場でより求められていることになる.しかしながら現状では教員の救急対応能力は十分とは言えない状況である.したがって,今後は様々な場で多くの指導者(教員)を対象に救急対応やスポーツ外傷・障害予防のためのコンディショニングに関する講習会を開催していく必要があると考えられる.同時に,学校現場へ救急対応やスポーツ外傷・障害予防ができるトレーナーなどの専門的スタッフが配置することができれば,従来からの課題であるスポーツ外傷・障害を減らすための質を高めることができると考えられる.
著者
西川 直人 稲川 祥史 吉田 昌弘 山本 敬三
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.93-101, 2021-10-31 (Released:2021-11-26)
参考文献数
18

本研究の目的は,着地時の足部接地の違いが衝撃吸収作用に及ぼす影響を検討することである.対象は10名(後足部接地1名,前足部接地9名)とし,30 cm台からのドロップジャンプ動作を実施した.三次元動作解析装置を用いて足,膝及び股関節のパワー,床反力鉛直成分を計測し後足部接地と前足部接地で比較した.その結果,前足部接地と比べ後足部接地では,膝における負の仕事量(衝撃吸収量)が大きく,関節パワーのピークが早期に発現した.
著者
柳下 幸太郎 広瀬 統一
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-43, 2016-11-12 (Released:2019-05-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本実験では骨盤傾斜の違いが動作の遅速に与える影響を検証することを目的とした.被験者は健常な男子大学サッカー選手13名.方法は骨盤自然肢位(n.p)と後傾位(p.t)の2つの姿勢をとりダッシュを行った.評価は床反力,筋活動量(%MVC),重心位置を比較した.実験結果は動作開始時間において右脚離地までの時間がp.tのほうが有意に遅い値を示した.重心位置は静止時,体幹移動開始時の局面でp.tの方が後方にあった(p<0.05).床反力は水平方向,鉛直方向共にp.tが有意に小さい値を示した(p<0.05).%MVCではp.tが大腿二頭筋と腹直筋が共に有意に低い値を示した.体幹傾斜角度を時系列にみると,p.tでは開始からの振れ幅が大きかった.よって,後傾位は静止時の重心の後方位置,体幹傾斜変化の増大,ハムストリングスの不十分な筋活動の3要因により,動作時間の遅延につながったと示唆された.
著者
安田 良子 篠原 靖司 伊坂 忠夫 熊井 司 小柳 好生
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.61-66, 2018-10-31 (Released:2019-01-26)
参考文献数
16

大学生野球選手110名を対象に,足趾形態および足底の胼胝箇所を調査し,肩・肘関節障害歴の有無に対する比較から投球障害への関連性を検討した.障害歴のある選手の軸足・ステップ足は,前足部外側に胼胝を認めた選手が有意に多く存在した.足趾の変形については,両群に有意な差は認められなかったが,軸足においては第4趾から内反し,ステップ足については,第3趾から内反する選手が多い傾向を示した.この結果は,肩・肘関節に障害歴がある選手は,投球時において,前足部外側に荷重が偏位した不安定な状態で足部を使用している可能性が推察され,足部形態と肩・肘関節障害歴とは,何らかの関連性があることが示唆された.
著者
成田 崇矢
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.13-17, 2019-10-31 (Released:2019-12-24)
参考文献数
21

There is no clinical evaluation of lumbar and trunk functions that can reveal all the trunk functions in one evaluation. Therefor you have to understand the clinical evaluations assessment of lumbar and trunk functions of athletes. This paper introduced clinical evaluations of lumbar and trunk functions. The contents are movement evaluation (active movement, thoracic alignment evaluation during extension), spinal segmental mobility, trunk function evaluation (Manual Muscle Test), trunk endurance, Sharmann core stability test, and motor control. When used clinically, it is important to understand the pathology of low back pain of the athlete and evaluate the dysfunction. In addition, if medical rehabilitation is insufficient, the next stage of athletic training often does not proceed as expected. So it is recommended to improve the function of the trunk at the stage of medical rehabilitation.
著者
宮下 浩二
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.137-145, 2019-04-30 (Released:2019-11-13)
参考文献数
83
被引用文献数
1

投球障害予防に関する研究は多く,日本国内でも様々な投球障害予防の取り組みが試行されてきた.その一方で,投球障害を生じる若年野球選手の数は多く,さらに増え続けているとも報告されている.様々な機能低下が投球障害の原因か?結果か?または投球動作への適応か?ということの判断は容易ではない.より良い判断のためにはスポーツ現場における経時的な評価や観察が重要となる.その経時的な変化を評価し,障害発生を予測し,対応することが最も重要である.
著者
寺田 昌史
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.99-106, 2018-04-30 (Released:2019-01-10)
参考文献数
81

Participation in physical activity has an important role in a healthy lifestyle. However, it is associated with an inherent risk of injury. A lateral ankle sprains (LAS) is the most prevalent lower extremity injury in sports and everyday life, posing a substantial healthcare burden and resulting in many long-term complications. Despite the attention and focus ankle sprains receive, it has been reported that up to 74% of individuals who experience an ankle sprain suffer from some type of residual symptoms, perceived instability (repeated episodes of “giving-way”), recurrent ankle sprains, and/or self-assessed disability, which may be termed as chronic ankle instability (CAI). The presence of CAI decreases activity levels, limits occupational involvements, and adversely impacts quality of life, as well as develops an early onset of degenerative pathology in the ankle, requiring costly medical diagnostic techniques and extensive treatments. Therefore, CAI is a significant public health concern in the physically active population and an economic burden of the global health care systems. With increasing government and societal emphasis on physical activity, the incidence of CAI would remain constant or increase as more individuals participate in physical activities. Researchers and clinicians must work together to minimize complications of CAI to maximize the potential health benefits of a physically active lifestyle.
著者
土屋 篤生 大垣 亮
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.103-110, 2021-10-31 (Released:2021-11-26)
参考文献数
22

合宿期間中における大学ラグビー選手の内的負荷データ間の相関関係を評価した.疲労度とRPEに中程度の相関関係が認められた.練習時間が長くなるようなケースにおいてはRPEデータの方が負荷を正確に反映する可能性があるといえる.またHRVデータは睡眠の質と中程度の有意な相関関係が認められたが,主観的なウェルネスデータとの相関性が認められなかった.主観的な測定に加えて客観的なデータを測定する必要性が示唆された.
著者
栖原 弘和 成相 美紀 可西 泰修 白木 仁
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.171-180, 2021-04-30 (Released:2021-08-19)
参考文献数
25

本研究の目的は,相撲で伝統的に行われている腰割りのトレーニング効果を明らかにすることとし,股関節可動域,股関節周囲筋筋力,運動能力,動的バランス能力に与える影響に関して,下肢の代表的なエクササイズであるワイドスタンススクワット(WS-SQ)と比較・検討を行った.エクササイズ介入は8週にわたり実施した.また,それぞれの測定をエクササイズ介入に先立ち実施し,4週後および8週後に再度測定を実施した.8週の介入により,股関節外転可動域,内転・伸展筋力,動的バランス能力に変化が認められた.特に股関節内転筋力に関して,腰割りはWS-SQに比べ有意な差が認められたことから,自体重負荷にて股関節周囲筋筋力の向上を目的とした場合,腰割りはWS-SQに比べ有効である可能性が示唆された.