著者
野口 仁志 内野 眞也 村上 司 山下 裕人 野口 志郎
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.128-134, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
5

甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患であり,確立した治療法は今のところ存在しない。われわれは2006年からドキソルビシン(DXR)とシスプラチン(CDDP)を使用する化学療法にバルプロ酸を併用する方法を試行しており,手術と放射線治療を加えた集学的治療によって予後の改善に努めている。その結果として,手術から2年以上経過しても無再発生存している症例を3例経験したのでここに報告する。
著者
菊地 勝一 松塚 文夫 岸本 昌浩
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-23, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
18

背景:われわれの施設における甲状腺手術時術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討し,副甲状腺の取り扱いについて考察した。 対象,方法:平成20年から24年まで,明和病院において行った248例の甲状腺手術例中,全摘(超亜全摘)術は63例,葉切除術は185例であった。全摘(超亜全摘)術の内訳は,分化癌:36例(乳頭癌35例,瀘胞癌1例),腺腫(多発):3例,バセドウ病:19例(全摘:9例,超亜全摘:10例),橋本病:5例である。手術は原則,分化癌は全摘か葉切除,バセドウ病,橋本病,腺腫は全摘,超亜全摘術を行っている。この全摘(超亜全摘)術について,術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討した。副甲状腺の取り扱いについては,疾患の如何に関わらず,上副甲状腺については可及的に温存,下副甲状腺については,可及的同定,摘出筋肉内移植をした。一過性は,1~2カ月後にi-PTHが回復カルシウム剤,ビタミンD3の投与をやめた症例,永久性はそれ以後も投与を続けた症例と定義した。われわれのテタニーの標準対処は,カルチコール2A+生食100ml/1時間点滴,経口的としてアスパラCa8錠(分4),ビタミンD3(2μg)投与である。 結果:葉切除185例の副甲状腺機能低下合併症はなかった。全摘(超亜全摘)術は63例の甲状腺術後,副甲状腺機能低下合併症は11例(17%),内訳は一過性9例(14%),永久性2例(3%)であった。分化癌36例中,副甲状腺機能低下合併症は9例(25%),内訳は一過性7例(19%),永久性2例(6%)であった。バセドウ病19例中,一過性副甲状腺機能低下1例(5%)で亜全摘(超亜全摘)の症例であった。橋本病 全摘5例中一過性副甲状腺機能低下1例(20%)であった。強いテタニー,全身けいれんを伴う症例は2例あり,バセドウ病とやせた甲状腺癌の全摘症例であった。 結論:1.一般病院における甲状腺術後,副甲状腺機能低下症の頻度を報告した。2.副甲状腺の同定と筋肉内移植は永久性副甲状腺機能低下症を避けるためには妥当な方法と思われた。
著者
中村 保宏 鈴木 貴 渡辺 みか 笹野 公伸
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.32-35, 2013

原発性アルドステロン症(PA)は,副腎組織からのアルドステロン過剰産生に伴い高血圧や重症な合併症を引き起こす病態である。通常,PAのうち術前にアルドステロン産生副腎皮質腺腫(APA)と診断された症例において手術が行われ,その後病理学的診断がなされる場合がほとんどであるが,時に腫瘍径が非常に小さいためその病理学的診断が困難なケースも決して稀ではない。その場合,免疫組織化学的検討による病変の同定が有用となる。また,APAとの鑑別診断ではアルドステロン過剰産生を伴う原発性副腎皮質過形成,すなわち特発性アルドステロン症(IHA)の病理学的診断についても十分理解しておくことが重要である。
著者
覚道 健一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.55-61, 2013 (Released:2013-05-31)
参考文献数
32

WHO分類は2004年に改訂されてから9年が経過し,その間に病理診断の分野で問題とされ,多くの論議がなされたものに,被包型乳頭癌,濾胞亜型がある。次回の改定で,これがどのように扱われるかを占うために,この1群の腫瘍の問題点を整理し,われわれの提唱している甲状腺腫瘍分類を紹介したい。T1N0M0で発見される微小乳頭癌,被包型乳頭癌,被膜浸潤のみの濾胞癌やウイリアムらの提唱したWDT-UMP(well differentiated tumour of uncertain malignant potential),FT-UMP(follicular tumour of uncertain malignant potential)は,悪性腫瘍としての特色は明らかでなく,摘出のみで多くの場合再発せず,患者の腫瘍死も起こらない。分子遺伝学的特色も,転移のある乳頭癌や濾胞癌(臨床的癌)と異なるとの発表もある。これらの例は形態学的にも良性と悪性の中間的特色を示すものが多く,われわれは転移,浸潤のある高分化癌と区別して,境界悪性腫瘍と呼ぶことを提唱した。これら1群の腫瘍が,良性に準ずる性格を持つことを日本の外科医たちは既に日常診療から体験している。そのため日本の内分泌外科医,甲状腺外科医たちは,欧米の標準治療である甲状腺全摘出術+予防的リンパ節郭清+放射性ヨードによる内照射療法+TSH抑制療法をこれら患者に適応せず,T1N0M0甲状腺癌患者に対し葉切除術を行ってきた。これら腫瘍が真の意味での悪性腫瘍(高頻度に再発,転移し,過半数の患者が腫瘍死する腫瘍)に属さず,境界悪性腫瘍(ごく一部の例外的な症例のみが臨床的癌に進行する腫瘍)とすれば,日本の甲状腺外科医たちの治療方針(縮小手術や,経過観察)を正当化することができると考えている。
著者
竹越 一博 川上 康
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.104-112, 2012 (Released:2013-02-28)
参考文献数
33

褐色細胞腫は内分泌疾患の中で,その進歩において最も著しく,今世紀になって全く概念が変わってしまった疾患といってもよい。その主な理由は,遺伝的なバックグランドが急速に明らかにされた点に尽きる。すなわち,以下の3点に集約される。①新しい原因遺伝子SDHBおよびSDHDの発見,②臨床的に散発性でも潜在的に遺伝性である可能性があること,③悪性化と関係する遺伝子(SDHB)が判明したこと。さらに最近2〜3年間でもSDHA,SDHAF2,TMEM127,MAXと4つの原因遺伝子が同定されており,結果的に主なものでも計10種類の多数の原因遺伝子が知られるようになった。これら遺伝的な原因で引き起こされる褐色細胞腫・パラガングリオーマを遺伝性褐色細胞腫・パラガングリオーマ症候群(Hereditary pheochromocytoma/ paraganglioma syndrome(「HPPS」))と呼ぶことがある。褐色細胞腫は10%病とも呼ばれるが,殊に「遺伝性の頻度」に関しては,この有名な法則は既に実情に即してない。今後,遺伝子診断がHPPSの診断のみならず,分子標的薬投与などの治療方針決定にも重要な時代が遠からずやってくるはずである(個別化医療)。本稿では,その臨床的な重要性に鑑みてSDHB,D変異による「HPPS」に重点を置いて紹介する。
著者
福島 俊彦 鈴木 眞一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.24-26, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
4

永続的上皮小体機能低下症は,甲状腺手術において避けるべき合併症の一つである。本稿では,当科で行っている上皮小体温存手技の実際を解説する。1.Capsular dissection:要点は,膜解剖の正確な把握である。Surgical thyroid fasciaとtrue thyroid fasciaを確認し,その間で,剝離操作を行う。これにより,自ずと上皮小体はin situに温存できる。加えて,反回神経はsurgical thyroid fasciaと同じ層で温存されることになる。2.上皮小体の自家移植:中心領域のリンパ節郭清を併施する場合,下腺の血流は犠牲にせざるをえないことが多いので,摘出しmincingしたものを胸鎖乳突筋内に自家移植する。胸腺舌部に迷入している下腺も可及的に確認し,同様に自家移植する。3.Surgical loupeの使用:高解像で明るい2.2倍レンズのloupeとloupe装着型のLEDライトを好んで使用している。これにより,明視野下に膜解剖の認識が可能である。
著者
高見 博 池田 佳史
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.95-97, 2014 (Released:2014-08-07)
参考文献数
2

著者らが考案した完全内視鏡手術である腋下アプローチについて論説した。さらに,ロボット手術の長所・短所について記した。甲状腺におけるロボット手術は腋下アプローチが基盤となっているが,なぜ著者らが考案したCO2ガスを用いた方法を用いることなく,“gasless”に走ったのであろうか。手技的にはgaslessの方が優しいが,究極の整容性を求めるなら,CO2ガスで充満させる方法の方が明らかに優れている。
著者
福成 信博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.307-313, 2012 (Released:2013-05-01)
参考文献数
14

甲状腺腫瘍に対するインターベンションは,のう胞性病変に対するエタノール局注療法が1980年代から試みられ,臨床効果が報告されてきた。のう胞病変に対する一定の効果は得られるものの,充実性,血流豊富な腫瘍性病変に対しては十分な効果とは言えなかった。現在,本邦において熱凝固療法としてラジオ波焼灼療法(RFA)が肝臓,腎臓,乳腺において臨床応用されており,甲状腺腫瘍に対しても,その臨床応用が開始されている。海外でも甲状腺良性腫瘍や切除不可能な悪性腫瘍を対象にRFAのみならず,レーザ治療(ILP)や集簇超音波治療(HIFU)などが実施され,現在多くの臨床報告がなされている。これまでの我が国における甲状腺Interventionの経緯と海外における現状をまとめると共に,現在,われわれの施設で行っている甲状腺RFAの現状に関して述べる。